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104 削れるのか粉砕されるのか

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「‥‥‥‥で、どういう訳でしょう、父上」
「場合によっては、母上たちによる第35回夜の大講習会強制折檻祭り開催を提案します」
「さらっとその提案を出すのはやめろ!!]

 王城内の議会室にて、王子たちの案に対して国王はそうツッコミを入れる。

 現在、式も終了し、片付けが行われている中、国王がやらかしたとある事について、重鎮たちや王子たちが集結し、緊急の会議を開いていた。


「まぁ、既に母上たちには連絡済みなので、今晩辺りに実行決定したそうですが、それはそうとして父上は、何故式の中で急に決定をしたのでしょうか?」
「そうそう、ディー君に対して、本当は準男爵の位を与える予定だったのに、なんで急に変更して城伯にしたのだろうか?」
「それには色々と思惑があるのだが…‥‥いや、ちょっと待て、今なんか聞き逃せないことがあったような」

「まぁまぁ陛下。今はその理由を我々全員に教えてくださいませんか?」
「そうそう、陛下の勝手な判断で、仕事が増えるのも困りますからな」
「ええその通りですな。王妃方には陛下宛のプレゼント折檻用の道具を送りたくなりますからなぁ」
「!?」


‥‥‥まぁ、こんな者であれどもこの国の国王であり、それなりに慕われてはいる。

 とはいえ、それとこれとは別だというような王子たちの意見に対して、ツッコミを一通り入れ終えたところで、国王は一から説明することにした。

「まず、今回の件に対しては色々思うことがあってだが‥‥‥あの場で述べていたことに関しては偽りはない」
「ああ、将来的功績を見込んで、なおかつ今はいないからですよね」

 城伯にした理由の一つは、その位に就いている貴族家が本当に無く、それに将来を考えるとディーはさらに功績を生み出しそうなので、前もって置いておくというものはあったらしい。

「そもそも、功績の量もそれなりにあるのも関係しているだろう。準男爵では合わないとも思えるからこそ、それにあった地位を見出し、授けたのだ」
「で、本音は?」
「普通に爵位一つずつ上げるのが面倒でもあり、いっその事、褒美を色々と用意する時間稼ぎをしておきたかった…‥‥あ」

‥‥‥国王のその本音に、その場にいた者たちは呆れたような目を向ける。

「そもそも、一つずつ上げるのであればそれが一番有用な時間稼ぎのような‥‥‥」
「褒美にしても、何を与えるのかという問題が解決できないような…‥」

「…‥‥」

 何も言えないというような表情で、黙り込む国王。

「ついでにもう一つ本音を言うのであれば?」
「いきなり準男爵ではなく城伯という地位に上がった事で他貴族を刺激させ、功績稼ぎに研鑽させるか、狙って馬鹿をやらかさせて掃除するという目的も‥‥‥あ」

 国王、先ほどから王子たちの質問に乗せられ過ぎである。

 政治的な場‥‥‥他国との付き合いなどでは、きちんと腹の探り合いはできる国王。

 だがしかし、攻められるような状況でありつつ自身の息子たちによる自然な問いかけに対しては防げなかったようで、自ら墓穴を掘っていく。

「まぁ、確かにいきなり準男爵を飛ばした地位の貴族がでれば‥‥‥」
「当然、目立つだろうし、その功績の上げぶりに危機感を覚えて研鑽に励んでくれたらいいが…‥‥愚か者であれば、自分の出世の障害になると考えて動くだろうな」

 そう考えると、あながち悪い事でもないのかもしれない。

 だがしかし、そういう輩が何かももめ事を引き起こしてしまえば、解決できたとして事後処理の面倒さがたっぷりと残ってしまうのだ。

 単純明快に「潰してハイ終わり」というようなことはできない。

 何しろ、例えば無能がいたとしても、領地を治めているのであればその領民に迷惑が掛かったり、借金をしていた場合踏み倒す可能性があるなど、多くに迷惑をかける可能性があるのだ。


「‥‥‥掃除にはちょうどいいけれど、周囲に多大な迷惑を被る可能性があるよねぇ父上」
「耄碌したか‥‥‥ここはおとなしく、王位をさっさと譲って隠居し、母上たちによって丁寧に缶詰にされてください」
「まだ譲らん!!というか、その缶詰とか先日されそうになったトラウマを掘り返すのはやめてくれ!!」
(あ、されそうになったのか)
(そう言えば使用人の噂話でそういう話があったが‥‥‥真実だったのか)
(むしろ缶詰にされてしまった方が、平和なのではなかろうか?)

 何にしても、今はこれ以上言及することはできないだろう。

 多くのトラブルがこの先待ち構えていそうなのだが、この状況ではまだまだ後手に回ることができないような気がして、その場にいる者たちは溜息を吐く。

 ひとまずは、正妃たちに国王へのお仕置き処刑が決定したところで、会議の場は終わるのであった…‥‥

「なんか不穏な言葉が隠れてないか!?」







…‥‥国王が正妃たちの手によって文章にするのも恐ろしいような目に合っている丁度その頃。

 新しい城伯が決まったという知らせは他の貴族家にも十分に伝わりつつ、その相手が領地持ちではないことを知ると大半は興味を失った。

 というのも、領地がないという事は、領地経営による手腕を魅せることがない。

 戦争とかがない場合、その経営手腕によって評価されることもあり、領地を持たないのであれば特に目立つようなことはないだろうと考えるのだ。


 けれども、そうではないと勘づく者たちの中には、自身の地位が脅かされる可能性をはっきりと感じ取る者もあった。

 平民から貴族になるには、まず準男爵あたりが相当であろうと想っている中での、それよりも地位が高い位への就任。

 それはすなわち、その地位に見合うだけの何かをその新しい城伯は持っているという事であることを示す。

 また、領地が無くとも、それだけの地位につけたのであれば今後もさらに向上する可能性があり、自分達の地位が脅かされる可能性に気が付くのである。

 そこまで考えつければ、後は自己研鑽に励むか、あるいは脅かされる可能性があろうとも自分は自分のやり方で良く、特に興味を持たない、観察しておくなどの立場を取れるとは思うのだが‥‥‥残念ながら、傍観するようなこともしなければ、自己研鑽に励むことなく、ただ相手を陥れるだけで守ろうと考える輩もいるのだ。

 そしてそのためにも、彼らは密かに結集し始める。

 一人でやるか、他人任せかという手段も取れるのだが‥‥‥失敗した時のことなども考えると、誰かに思いっきりすべてを押しつけられるだろうし、成功率を高めるのであれば集団で行った方が良いという知恵ぐらいはあったようでもある。

 とにもかくにも、国王の思惑通りというべきか、厄介そうな掃除すべき対象の者たちが動き出すのであった。



「‥‥‥なるほど、そういう事ですカ」
「城の観葉植物からも、話が聞けましたが…‥理解しても、ちょっと納得しにくいですわね」
「ん?珍しく仲良く話して、どうしたんだ二人とも」
「いいえ、何でもないデス」
「ええ、今はただ、互に舌戦でやり合っているだけですわ」
「そうか?」

‥‥‥舌戦って、何をしているのだろうか。

 互いの悪口の言い合い…‥‥うん、そっとしておこう。

「大丈夫でありんすよダーリン。あの二人が万が一やらかしかけたら、こんどはちょっとあれなツボを押して大人しくするでありんす」
「リザ、ちょっとあれなツボってなんだよ?」
「んー‥‥‥悶死のツボでありんす。普段隠しているような欲望を、純度120%越えで圧縮して曝け出させ、爆発させるものでありんす」
「‥‥‥どう考えても、色々と不味いような気がするんだが」

 気になりはするんだけど、ちょっと命の危機を感じるような気がするのは何故だろうか?施されるとしたらあの二人のはずで、各々の爆発なのだろうが…‥‥巻き込まれそうな身の危機を悟ったからかな?

 絶対にそのツボは押さないように言っておくのであった…‥‥‥
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