憧れの召喚士になれました!! ~でも、なんか違うような~

志位斗 茂家波

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86 前にも考えていた手段

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「‥‥狙い定め‥‥‥ここニャ」
「タイミングはどうするでござる?」
「同時に、いや、ルビーの方が早めに出した方が良いだろう」
「それじゃ、そうするでござるよ」

 カトレアが素早く生やした木々に紛れ、速攻でノインが作った弓矢をルナティアが構え、同じ方向へルビーが顔を向ける。

 狙いを定めるのは、ちょうど都合よくいる一体の怪物の頭部。

 心臓部分には動力源とされた人々がいるようだが、ノインの分析によれば頭部の方には誰もいない。

 そしてゼネの幻術魔法で相手にこちらが察知できないように厳重に隠し通し、万が一に備えて盾になれるようにリリスが前に出る。

「発射、10秒前」

 そして発射までのカウントダウンを行い、微調整をしてもらい…‥‥確実に当てる。

 微調整しつつ、カトレアの木々が分かれて道を作り、外れないように慎重にする。


「3‥‥2…1…撃て」

 その合図と共に、まずはルビーが火炎放射もとい、連続した火炎ではなくファイヤボールなどに近いような火球を吐き出し、続けてルナティアが矢を放ち、その矢に風が宿る。



…‥‥焚火をしている際に、風が入り込むことで、火が大きくなる。

 ノインいわく、空気中の酸素が流入し、より火に勢いが付くらしいが、その現象を利用する。


 ルナティアは弓兵だが、その放たれる弓には風が付く。

 そしてルビーの火球よりも速度が速く、怪物よりも先に着弾し…‥‥火球の色が一気に青白く変色し、その規模と熱量を上昇させる。


ドドォォォォォン!!
「ギャアアアアアァァァァア!!」

 火力集中、ルビーの放つ熱線にとはまた違う、重みのある火の攻撃。

 矢もしっかりと溶けないように加工されていたようで、ついでに突き刺さり、傷口へ火が入り込み、怪物はのたうち回る。

 ちょうど都合よく、怪物に顔があってよかっただろう。何しろ、周囲を見渡すために必要な眼や、探るための鼻、音を聞くための耳があるから。

 それらを一気に焼き尽くすことで、情報を一斉に遮断させ、混乱に陥れることができる。


 そして、状況の把握をする前に、のたうち回る怪物には‥‥‥

「この程度で良いかのぅ」

 ほいっと言いながらゼネが杖を振ると、紫色の霧が発生し、更に怪物の頭へ纏わりつく。

 体内へ循環させないようにしつつ、その場にだけとどまる粘着質な毒の霧。

 ついでにカトレアも怪物の周辺に蔓を発生させ、巻き付いていく。


「あとはざくっとデス」

 動きを徹底的に封じ込めたところで、ズバッという音と共にノインが首を切り落とし、怪物は絶命するのであった‥‥‥‥






「‥‥‥普通に攻撃するよりも、混乱、毒、封じ込めで弱らせて、確実に絶命させるという作戦だったけど、無事に成功したな」
「あたしの弓が火にあそこまで影響を与えるのはちょっと驚いたニャ」
「熱線、火炎放射よりも連発しやすいから楽でござるよ」

 怪物を絶命させ、ノインとゼネの二人掛かりで開腹して内部から人を救助しつつ、俺たちはそう話し合う。

 今回の作戦、一体ずつでも行けるし、連射できれば複数相手にもできると思ったが、どうやら成功したようだ。

 囚われた人へのダメージを極力減らすために、怪物のみを徹底的に殲滅するのだが‥‥‥思いのほか、絵面だけ見るとどっちが悪党か分からない感じがする。

 まぁ、それは気にしない方が良いだろう。結局は解体するだけなのだから。






 ノインたちと共に解体したところ、中から予想通りというか、多くの動力源にされていた人たちが出てきた。

 誰もこれも肉袋に入っており、全員を怪物から切り離すと、怪物の肉体は砂のように風化して消えていく。

「やっぱり喰らいあっていたのか」
「強いものだけを残し、なおかつさらに力を付けるには合理的と言えば合理的ですからネ」
「同級生たちばかりニャ」

 ルナティアに確認してもらうと、生徒たちが大半。

 ただ、その他にも教員や知らない人も混じっているようだ。

「‥‥‥ふむ、となると学園以外も襲撃されたのじゃろうか?」
「そうじゃないわね。多分、国中の人達が取り込まれているんじゃないかしら」

 そうだとすると、情報が入ってこなかった原因もある程度推測できる。

 これらを創り出した黒幕が妨害した可能性もあるが、まず伝えるべき人たちが先にやられていたのではなかろうか?

 そして、国の外側から徐々に喰っていき、外部との伝達手段をたって、陸の孤島状態にしていたのだろう。

 後は全員、まとめてしまえば救助もできないだろうし、すぐにばれる危険性もないのだ。

「そう考えると、ルナティアが俺たちのいた村近くに出没したのはラッキーだったな」

 国内で共食い状態のようだが、おそらく彼女は偶然抜け出してしまったのだろう。

 そこからあれよあれよという前にこの状況が把握されたのは、運が良かったのかもしれない。


「何にしてもまだ騒動は終わってないし、この調子なら片付けやすい。黒幕がいないか捜索しつつ、救助して回る方が良いか」
「ところでご主人様、一つ問題がありマス」
「なんだ?」
「助けた方々、このまま放置できませんヨネ?」
「…‥‥そうじゃん」

 起きてくれれば避難してもらうだけでいいのだが、まだ彼らは全員眠ったまま。

 しかもルナティアの時とは違い、動力として大勢が動員され、どのぐらい負担がかかっていたのか分からないこともあり、どの程度で目覚めるのかもわからない。

 かと言って、この場に放置したら他の怪物たちが狙う可能性もあるし…‥

「グゲグー」
「ん?どうしたリリス」
「グゲグゲ!」
「…‥‥そっか、その中に全員入れろと?でも、大丈夫なのか?」
「グ!」

 ‥‥‥何やらリリスが袖を引っ張り、自信満々にそう提案してきた。

 彼女の箱の中身は確かに物凄く広いけど、取り出す時とか目覚めた時がちょっと不安でもある。

 でも、この際贅沢は言ってられないし‥‥‥

「それじゃ、全員箱詰めするか」
「グゲェ!」

 びしっと指を立て、きちんと入れると言いたげな表情でリリスはそう返答してくれたのであった。

「でも、途中で目覚められても困るような」
「でしたら、目覚めなくする薬草を一緒にかけておきますわ。それなら、終わった後に目覚める薬草で起こせますものね」
「その手があったか」

 にしても、どれだけの人数がいるのやら‥‥‥騒動起こした黒幕、さっさと見つけて帰りたい。

 もしかして黒幕も動力源にされていないよな?それはそれで面倒な気がするのだが…‥‥‥
 
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