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84 おぅまいごっどという言葉もあるらしい

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‥‥‥王城内、議会室。

 そこでは今、緊急招集をかけられた国の重役たちや、その他王族たちが集まり、その報告について話し合っていた。

「森林国での、学園襲撃か‥‥‥」
「しかも使用されたのは、正体不明の怪物か‥‥‥」

 ディーからの報告を第2王子グラディが行い、説明していき、その内容を聞いてその場にいる者たちの眉間のしわが深くなる。

 何しろ、一国の適正学園の生徒たちが狙われた上に、その情報はまだ他国へ入ってきていない。

 職業に関しての学び舎の重要性はどこの国でも理解しており、万が一にでも事件があればすぐにでもその情報が入るというのに、既に発生して10日は経過しているはずが、その情報が全くないのだ。

 何者かの妨害を受けている可能性もあるが、それでも人の口には戸が立てられない。

 しかも、以前から誘拐情報などもあったようで、国がそこに本腰を入れていなかった点、襲撃のタイミングが良すぎる点から、国そのものが、その怪物たちの黒幕の方に乗っ取られている可能性が出ていた。

「フルー森林国は我が国の友好国でもあり、何かがあればすぐにでも情報が来るが‥‥‥それもないとなると、本気で何かがあったのだろう」
「亜人種族が治める国でもあり、目の保養のために、半月に一回程度は行きたくなる国なのに‥‥‥何が起きたのだ?」

 ああだこうだと言っても、何が起きたのかその詳細が良く分からない。

 怪物の襲撃などを考えると、誰かの悪質な実験か、何処かの組織の陰謀か、他国の侵略のためなのかなど様々な憶測が飛び交うが、どれが正しいのかすらわからない。

 情報や意見が混線し、まとまらない中で…‥‥その声がかけられる。


「静まれ!」
「「「「!!」」」」

 会議室の議長横に座って意見を聞いていた、ヴィステルダム王国の国王にして職業遊び人‥‥‥最近、何故か縦に真っ直ぐな不毛の大地が形成された国王の言葉に、その場の者たちは静まり返る。

「今、話し合うべきことは推論しあうだけではない。ああだこうだと話すだけであれば、時間がある限りいくらでもできるだろう。だが、その議題の本質‥‥‥フルー森林国での異変については、こうしている間にも状況が深刻化しているだろう!!故に今、やるべきことは確実な情報収集及び事態の鎮静化ではないだろうか!!」
「おおおお!!国王陛下から、物凄くまともな意見が!!」
「確かに!話し合うだけであれば、ここでもできるからな!!国王が珍しく真面目に取り組んでいらっしゃるぞ!!」
「その声の一言で、議題を的確にしてくれるとは、流石国王陛下!!普段の遊びっぷりとは思えない、真剣さがにじみ出てますぞ!!」

「…‥‥おい、なんか物凄く余計な言葉が多くないか?」

 せっかくまとめ上げようとしている中で、色々聞こえてくる国王への評価。

 これでもこの国の王であり、ここにいる者たちの中でも最も偉く、遊び人という職業だけれども、その職業での能力をフルに活用して働いており、人望もそれなりにある…‥‥はずである。多分。

 色々ツッコミどころはあるのかもしれないが、今は時間が惜しい。


「ひとまずは、情報を得なければならぬ。ここで推測しているだけでは意味がない。ならばこそ、国の諜報機関を動かし、素早く情報を集めるのだ」
「しかしながら陛下、怪物どもが跋扈しているかもしれない国へ、どの様な者を送り込めばいいのでしょうか?」
「報告によれば、怪物一体でもそれなりに厄介そうなのですが‥‥‥」

 情報だと、その怪物の動力源として学生などが使用されている可能性が高く、しかもその戦闘能力も馬鹿にできないものであるらしい。

 学園の生徒たちが利用されているのであれば、多くの怪物たちが歩き回っている危険性があるのだ。

 そこに、普通の諜報を潜り込ませようとも、戦闘などになれば情報を集められずに退却するしかないだろう。

「むぅ‥‥‥それが問題か」

 国王もしばし唸り、黙り込んだが‥‥‥ふと、ある事を思いついた。

「‥‥‥息子よ」
「「「はい」」」
「いや、第2王子グラディよ、お前のその情報はどこからのものだ?」
「学友からです」
「ふむ…‥‥」

 グラディの言葉を聞き、しばしその学友とやらの情報を国王は頭に浮かべた。

 息子たちともかかわりがあり、娘である王女も救出し、その他色々と功績がある息子の学友ディー。

 その人物がどの様な者であるのか調べたところ、悪しき願望などは無い事ぐらいわかっている。


‥‥‥いや、無いのは良いのだが、情報を集めると色々と厄介な事しか出てこない。

 召喚士でありつつ、その職業は「異界の召喚士」と聞いたことの無いようなものであり、その召喚獣たちもまた異質なものであると聞いている。

 全ての家事を完ぺきにこなしつつも、その他諸々一番やらかしている感じがする、メイドの者。

 あらゆる植物を操りつつも、吸血によってさらなる力を魅せる、植物の者。

 ドラゴンとは姿が違えども、その能力はまさに同等かそれ以上か、竜の者。

 元聖女でありつつも、今は悪夢と言われるような存在になっている、死体の者。

 そして、先日更に加わった、箱のような者。


 容姿だけを見るのであれば、どれもこれも美女だというのに、色々と調べると厄介な者たち。

 その者たちをしっかりと従えているようではあるが、その能力がフルに発揮されればどれだけの脅威になるのかが、良く分かる。‥‥‥むしろ、それだけの力を有しておきながら、本当に悪い方向へ利用しないというのはすごいだろう。国王自身、自分がその立場だと考えると、少々自信がない。

 学園の夏季休暇明けに、今までの功績などを考慮し、国の面子もあるので準男爵あたりの爵位を与えようとしていたのだが‥‥‥‥どうやら今回のその情報は、その者からもたらされたらしい。

 しかも、すでに怪物を撃退してその中身の救出もしているという話もあり、ならばこそ…‥‥


「…‥‥まさかとは思いますが、父上」

 考え込む国王の表情を見て、王子たちは国王が何を言わんとしているのか察し、そう口にする。

「ああ、そのまさかが当たっているだろう…‥‥現状、可能な手段としてはそれしかないだろうからな」

 そして、その相手の推測に対して、肯定するかのような言葉で、国王は返答する。


「父上‥‥‥自ら特攻して森林国へ向かい、情報を集められるのですね」
「ああ、そうす…‥‥いやいや、違うからな!!」

 まさかの考えの食い違いに、国王は思わずそうツッコミを入れるのであった‥‥‥‥


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