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61 気を取り直してまずは情報確認しあいつつ

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 ガタガタっと、修理を施し、襲撃者たちの仲間であった御者を少々お話恐喝し、ディーたちは今、進路をしっかりと修正して、神聖国の方へ向かっていた。

 
 元々、馬車を利用しているのは学園の臨海合宿のための海へ向かうためであり、今回は襲撃。王族誘拐への対応のために、生徒会として向かわされただけの話。

 なので、この面子の中で、一番早く教員の方とも連絡が取れるルビーが先に飛行して事情を話し、神聖国内で生徒全員がいったん合流し直すのである。

 

「これで何とか、海の方面には迎えるのは良い事か。‥‥‥ところで、ノイン」
「ハイ」
「アレ、どうにかならないの?」
「無理デス」
「うわぁ‥‥‥あいつらの自業自得とは言え」
「これ、ちょっとした処刑に近いな…‥」

 ずるずると、馬車の後方を引きずられているそれらを見て、俺たちはそうつぶやき合う。

 後方にいるのは‥‥‥一応、血とかが流れないように、その辺の木の皮などを鞣し、軽く乗せた、王族誘拐犯とも言える犯罪者たち。

 流石に第3王子が連れてきた子供たちもいる馬車内に、あれ全部が入るわけもないし、仕方がないと割り切って引きずる形で輸送しているのだが、全員気絶していて悲鳴を上げないのは幸いな方だろうか。


「まぁ、念のために回復魔法も、薬草も使っておるからのぅ。健康体で引き渡せるはずじゃ」
「全身粉砕骨折された方は、辛うじて息してますわね」
「それ、健康体なのか…‥?」
「それよりも色々つっこみたいところが多すぎるわよ!!」
「うおっ!」


 っと、俺のつぶやきのすぐ後に、先ほど救出し、こちらの事情を話した少女‥‥‥第1王女のミウがそう叫んだ。

 王族相手には敬語とか様付けが必要そうなものだが、第1王女はどうもゼノバース第1王子グラディ第2王子と同じように、そこは気にしないらしい。

 だがしかし、別の方で気にされていたようで、解放当初は黙っていたのだが…‥‥どうも今、決壊したらしい。

「まずお兄様方!!こちらの方々は本当に何ですの!!静かに説明を聞かされ、事情をちょっと理解して見たものの、無理があり過ぎますわ!!」
「というと?」
「グラディ兄様もゼノバース兄様も平然としすぎでしょ!!召喚士とか召喚獣とかは、王族たるもの各職業把握は当然としても、あの召喚獣とかは見たことなさすぎる類でしょ!!同性の身でも美女とわかるレベルの、ここまで人に近いものたち何て、見たことないですわ!!」
「一応、手紙で近況報告ぐらいは言っていたはずだが…‥‥」
「直接目で見ると、聞くよりも摩訶不思議すぎるのよぉぉぉぉぉ!!」

‥‥‥何だろう、ツッコミを入れられる光景を見て、心の中で物凄く同意している俺がいる。

 うん、そうそう、それなんだよ。そのツッコミが欲しかったんだよ。共に過ごしていて、ちょっとなくしかけていたツッコミが今、蘇って来たよ。

「うんうんと頷かれているけど、先ずあなたの方に聞きたいのだけれども、何なのよこの召喚獣たち!!普通に見るようなものとかに比べると、おかしいこと理解してますの?」
「ああ、十分理解している。‥‥‥いや、本当にね、ツッコミ切れないレベルでさ‥‥‥」
「‥‥あ、なんかその悟ったような、諦めたような目から心中察しましたわ」

 え、そんなに諦めたような目をしていた?




 とりあえず、色々と事情を話すことにした。
 
 助けた当初は簡易的な状況説明であったが、一応、俺の方での召喚での境遇を説明していく。

 召喚当初、召喚後の経緯、その他諸々無茶苦茶な行動…‥‥うん、前半よりも後半、やや愚痴に近くなっていただろう。

 そしてその度に、第1王女もといミウが、ツッコミを入れまくる。

「ゴーレムでメイドなものはまだ良いけれども、武器過剰搭載しすぎよ!!メイドどころか一国の軍隊すら屠れそうじゃないの!!いえ、家事能力の高さとかはいいけれども、色々と面倒な予感しかしないわよ!!」

「あー、植物系で、これはこれでまだいい方‥デモないですわよね!?いえ、育成を早めるとかはあるけれども、戦闘能力とかもさっきの人と同等すぎますわよ!!粉骨砕身を文字通りにやってあげているところとか、滅茶苦茶よ!!」

「連絡でこの場にいないとはいえ、ドラゴン目当なのに少女を召喚するって何よ!!え?グラディ兄様、一度挑んだの?それでぶっとばされるって当り前よ!!」

「あ、その方はダンジョンの元ダンジョンマスターでしたか。ふぅ、まだ許容範囲‥‥‥に入っていると思いますかぁぁぁぁぁぁ!?アンデッドとか、元人間だからこそその人の容姿は他の3名よりも納得いくものなのは間違いないですけれども、元聖女の部分が色々ツッコミどころがありますわよ!!」


‥‥‥おお、まともなツッコミの嵐である。

 グラディもゼノバースも同意して頷いているけど、そっちはツッコミ入れてないからね。

「なんというか、忙しい方ですネ」
「忙しくさせているのは、目の前の貴女たちなんですがぁぁぁぁぁあぁぁ!!‥‥ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ…‥」


 話し終え、ツッコミ終え、息を切らすミウ。

 彼女の職業は遊び人でもあるらしいが、それ故にまともなツッコミができるのだろうか?

 何にしても、頼もしいツッコミ役に巡り合えたことに、心の底から喜べたのであった…‥‥


「ぜぇ、ぜぇ…‥あら?そう言えばエルディム第3王子兄様は?捕らえられていたのを助けたのであれば、いるはずよね?」
「「「あ」」」

…‥‥そう言えば、第3王子ってアジトで、王子二人の一撃で沈んだままだったよね。

「なぁ、ノイン。ルビーに頼んで先に行って居る教師陣に報告していたけど、第3王子の回収とかも言っていたかな?」
「いえ、ないですネ。放置状態デス」

 どうしよう、今から向かうにしても、勝手に動いている可能性も無きにしも非ずなんだよなぁ。

「ふむ、なら儂が誘導しようかのぅ?あやつが子供好きならば、子どもの幻覚でも見せてこっち側に駆けだすようにすればいいじゃろ」
「けっこう距離あるけど、できるの?」
「儂の今の種族、ナイトメア・ワイトの力なら可能じゃな。ある程度ターゲットを知っておれば、遠距離からでも幻術などを仕掛けられるのぅ」
「なら、僕らが思いっきりあの愚弟が引っ掛かりそうな幻覚のアイディアを提供しよう」
「利用するとはいえ、自分の力だけで走るようなものであり、特に影響はないからな」

「兄様方、エルディム兄様に対して相変わらず辛らつですね。‥‥‥まぁ、あの兄様の事ですからそれで充分いいでしょう」

 この王族兄弟、仲がいいのやら悪いのやら…‥‥血で争うようなことはそうないようだし、マシな方だと、俺は思いたいのであった…‥‥




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