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39 現実からこの惨劇に目を背けておきたい

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‥‥‥モンスター・パレード。

 それは一種の災害でもあり、数多くのモンスターが津波のごとく、溢れ出してくる。

 
「くっ!!数が多い!!」
「タンクマンたちはどうだ!!」
「ダメだ!!盾になり切れずに、踏まれていくことを快楽と見出した奴がいるようだ!!」
「どうしようもないなぁ!?」

 首都の郊外、早朝から溢れ出したモンスターの群れに対し、対抗できる者たちは出陣していたが、いかんせん数の暴力には不利であった。

 盾役を自ら買って出たタンクマンたちの鉄壁で、ある程度進行を遅らせ、後方からどんどん吹きとばしたいところなのだが、そのタンクマンたちの防衛ラインを突破され、現在防戦一方である。

「くそう!!どっからわいてきやがった!!」
「新しいダンジョンだとさ!!この規模だと、相当大きいのがありそうだという話もあるぞ!!」
「ハイリスクハイリターンの面倒災害物か!!なんてやっかいなんだ!!」

 剣で斬りつけ、魔法で焼き払い、拳で貫く。

 数多くの職業を持つ者たちが集まり、各々の実力を活かして戦うのだが、相手の数が多すぎる。

「やべぇぞ!!次はモゲェイラァってモンスターの大群だぁ!!」
「おいおい!!あいつらは地中を移動するから防ぎようがないじゃねぇかぁ!!」

 モンスター・パレードにでるモンスターたちは、その発生するたびに種族が異なっていく。

 今回はまだ地上で応戦できる相手が多かったのだが、ここへ来て地下から攻めてくる輩が出て来たらしい。


「モッゲェェェ!!」
「モゲモゲェェェ!!」
「うわぁっ!!何をもぐつもりだぁ!」
「あいつら、もぐんじゃなくて掘るんだよ!!」

 ツッコミどころは多いが、巨大なサイズのモグラたちが一斉に地面に潜り、突き進んでくる。

 その大きさゆえにボコボコと地面が盛り上がるが、その肉体を貫くには毛皮が厚く、切り裂きにくくもある。

「どうしろっていうんだぁぁぁぁぁぁ!!」

 地中からの攻撃に、対抗手段が無い者たちは叫んだが…‥‥そのすぐ後に、その対抗手段が現れた。



ズドドドドドドドドドド!!
「「「「モッゲェェェェェェェェ!?」」」」

‥‥‥突如として、巨大な木の根の杭のような物が土中から突き出したかと思えば、分厚い毛皮で覆われているはずのモゲェイラァたちの体が貫かれ、地上に出ると同時に爆散していく。

「な、なんだ!?」
「助かったけど、光景グロいんだけどぅ!?」
「なんでもいい!!今のうちに刺さり切らなかった奴の首を狙えぇぇぇ!!」

 杭から逃れ、ギリギリ地上へ出た相手に対して、すぐさま人々は攻勢へ移り始めるのであった‥‥‥







「ギャァァァス!!」
「ゴッギャァァァス!!」

「くっ!!なんでワイバーンの群れがこんなにいるんだよ!!」
「空飛ぶ召喚獣たちが応戦しているけど、数が多すぎるぞ!!」

 上空では、この騒ぎに乗じてやって来たのかワイバーンの群れが闊歩し、攻撃を仕掛けてきた。

 魔法や空を飛べる召喚獣たちが応戦するも、流石の数に対応しきれない。


「チキチキナッテドッカ、」
「ギャァァァァァァァス!!」
「ギエェェェェ!!」
「ああ!!なんか既に一羽がやられたぁ!!」

 空を飛べる召喚獣たちでも対応しきれない、ワイバーンの群れ。

 空の機動力を誇る相手に対して、そこまで大した攻撃ができない中…‥‥そこへ、一陣の赤い閃光が走った。

 いや、違う。閃光などではなく…‥‥


ゴォォォォォォォウウ!!
「「「「アンギャァァァァァァァァァス!?」」」」
「うぉっと!?なんだ今の爆炎は!!」
「ワイバーンたちが、瞬時に丸焦げに⁉」

 広範囲を焼き尽くすかのように、膨大な炎が解き放たれ、宙に浮いていたワイバーンたちは身を焦がし、墜落していく。

 今の一撃で命を落とすものもいれば、辛うじて生きて焦げるだけですんだものもいたが‥‥‥

「仕返シジャァァ!!チキチキナッテドッカァァァン!!」

 息の根を完全に止めるために、召喚獣たちが急降下で攻撃を仕掛け、地上に落ちたものは、人々が集団で襲い掛かる。

 何にしても、空の相手に対しての対抗策がそれほどなかった中、今の一撃で一気に減ったことに歓喜を覚え、士気が向上していく。

 何者が放ったのかは分からないが、とにもかくにも彼らも攻勢に移り始めるのであった…‥‥









「ノイン、戦況は?」
「カトレア、ご主人様の血を飲んで本領発揮。フルで植物を操作し、全てを串刺しにして突き進み、後方支援に徹していマス。ルビー、空中を移動できることを活かして機動力で翻弄し、集めて火炎放射で焼き払い中デス」
「うん、目視で思いっきりわかる事だけど…‥‥その他に、防戦一方になっている部分は?」
「4時と6時の方向に、モンスターの群れ増加。数は減少しているようですが、ゴブリン・オークの集団及び、スライム系統と確認。それぞれの方へ分配し、適切に対応すれば大丈夫カト」
「わかった。カトレア!ゴブリン・オークの方へ回れ!!全部を貫くのも良いが、足元を狙って草を生やし、バランスを崩させて倒していくことも考えろ!!ルビー!!そっちはスライムに関して焼き払うんじゃなくて、何か適当なものを投げて弱点の核とやらを破壊していけ!!火炎放射だと有毒な気体が出る例があるって、前に授業であったぞ!!」
「了解ですわ!」
「了解でござるよ!!」

 俺の言葉に二人は頷き、直ぐにその指示を実行に移す。

 表立って戦闘をするよりも、客観的に戦況を見てそこから指示を出し、敵を殲滅しつつ、味方が攻めやすいように動いているのである。

「あとノイン、絶対に手を離すなよ?空中から見下ろして戦況が見えるのは良いけど、落ちるのは怖いからな」
「わかっていマス」


‥‥‥現在、俺はジェット噴射とやらで飛行するノインに捕まれた状態で空から周囲を見渡し、カトレアとノインへ指示を飛ばしていた。

 前線へ出向くこともできるが、そちらは騎士学科の生徒や魔法学科の生徒、その他首都を守る騎士たちやタンクマンたちによってできた陣形があるので、それにむやみに加わる必要性は無い。

 迂闊な事をするよりも、まずは後方支援として攻撃に加わったほうがいいと判断したのである。

 ゆえに、その判断を適切なものにするためにノインの手によって宙へ運ばれ、周囲を見渡しながら彼女達へ声を張り上げて指示を出し、なんとかうまいこといっていた。

「にしても、地上よりも上空からの方がはっきり見えるとはいえ‥‥‥やっぱ寒気がするな、この光景」
「蛆虫のごとく、これでもかとうじゃうじゃ湧き出てますからネ」

 各自を分散し、指示を出すことで適切な対応を取りつつ、ルビーは良いとしてノインとカトレアのぶつかり合いを避け、こうして今の場にいるわけなのだが…‥‥うん、はっきり見えてしまう分、モンスター・パレードの恐ろしさが見えてしまう。

 地上にいれば、見えるのは正面から迫りくるモンスターの群れだけ。

 けれども、上空から見れば、際限なく後方から湧き出ているモンスターの群れがさらに確認でき、どれだけの災害なのか実感させられてしまうのだ。

「ですが、現状60%の駆逐が完了しているようデス。森にできたダンジョン方面からの供給も減っていますし、もう間もなく終局を迎えるでしょウ」
「だけど、まだ油断はできないか…‥‥」


‥‥‥ダンジョン・パレードの発生要因、今回は新たなダンジョンが出来上がり、そこから溢れ出したことのようである。

 ダンジョンから溢れ出したモンスターは多くいるようだが、一つの法則があるらしい。

 それは、最初に出ている方が一番楽であり、最後の方が一番苦労しているということ。

 これは、ダンジョンの構造によるものらしく、後半に出るモンスターほど厄介なものが大勢いるのだ。



 最初の爆発時は、ただ自爆するだけのモンスター「ビックリボール」というやつが起こしただけであり、放置すれば勝手に絶命してくれるので逃げるだけで良い。

 だが、だんだん好戦的・凶暴的なモンスターが増え始め、ここから見る限り後方のモンスターたちの強さはさらに強そうなのが確認できた。

「っと、なんか結構でかい、巨人のような奴もいるな…‥‥」
「『サイクロプス』デス。単眼の巨人で、怪力を誇るらしいデス」


ドブッシュ!!

「‥‥‥でも、発揮前に貫かれましたネ」
「なんだろう、指示を出して対応させているとはいえ、なんかこう‥‥‥相手が色々悲惨になっていくんだけど」

「あ、今度は『マッチョビースト』デス。筋肉と偽り、分厚い脂肪で身を固めている猪のようなモンスターですガ…‥‥」

ごううううううううううううう!!

「…‥‥丸ごと炎上し、ついでに木刀で貫かれましたネ」
「いい機会だから、力加減を覚えてもらうためにあえて木刀を持たせたけど‥‥‥殺傷能力、変わってないな」

 というか、今更だけど俺の召喚獣たちの戦闘能力のおかしさを見せつけられている感じがする。

「このまま放置しても、もうあいつらだけで良いような…‥」
「その言葉は間違ってもないデス。っと、あのあたりに大きな巨大昆虫モンスター…‥‥ふむ、ご主人様、私に攻撃許可ヲ。あれは一気に潰さねば、体中から幼体が湧きだすモンスターデス」
「じゃあ、その前にやってしまえ」
「了解デス」

 そういうと、一旦俺をつかんでいた腕のうち、左手の方を離し、変形させる。

 何処をどうしたらそうなるんだというような、巨大な筒が形成され…‥‥

「目標ロック、収束充填率120%。『荷電粒子砲』発射デス」

 そう言った瞬間、膨大な光線がその筒から解き放たれ、件のモンスターへ降り注ぐ。

 断末魔を上げる間もなく、そのモンスターは光に包みこまれ、数秒後には塵一つすら残らない状態へと、帰られてしまうのであった…‥‥


「‥‥‥っと、今のでだいぶ加熱しますネ。クールタイムは30秒ほど…‥‥まだまだ、改良が必要デス」
「いや、十分すぎるんだけど。これ以上やったらどうなるの?」
「一国を瞬時に消し飛ばせマス」
「アウトだよ!!」

…‥‥何処の世界に、相手を瞬時に消滅させるようなメイドがいるんだよ!!

 というか、なんだその武器、何だよこの威力!!

 ああ、これは後で絶対に色々と言われるコースをたどるだろうなぁ‥‥‥‥学園長からの説教か、それとも王子コンビからの苦笑しながらの言葉か。

 どっちにしても胃が痛い問題である…‥‥
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