上 下
41 / 373

38 人の都合というものは聞かれないらしい

しおりを挟む
ドォォォォォォォォン!!

「うおっ!?なんだなんだ!?」

…‥‥何か大きな爆発音にディーが目覚めると、まだ周囲は薄暗かった。

 もう間もなく朝日が昇ろうとしている早朝のようだが、今の大きな音の説明がつかない。

「何か音が響きましたが…‥‥首都の郊外の方ですネ」
「んぅ……寝ているのに、何事ですの?」
「ふわぁぁ‥‥‥眠いでござるよ」

 音に驚いたのか、ノインたちも起床し、速攻で傍に集まる。

 それぞれ寝ていたのか、普段着のメイド服を着ているノインを除き、他二人はまだ寝巻のまま。

 何か起きたらしいが、彼女達もまだ把握できていないようであった。



「何事だ何事だ?」
「何処かの馬鹿が、薬でも爆発させたのか?」
「いや、違う。見ろよ郊外の方、煙が上がっているぞ!」

 寮室を出て見れば、他にもいた生徒たちが目を覚ましてうろついていたようで、誰かがその異変に気が付き指をさす。

 その方角を皆で見れば、首都の郊外のほうに、大きな黒煙が立ち昇っていた。

「何じゃありゃ?」
「爆発させた‥‥‥というよりも、現在進行形で炎上でもしているのか?」

 がやがやと騒がしく、情報が交錯する。

 誰かが爆裂魔法でも誤射したという話もあれば、薬物の調合失敗、どこかの国の侵略行為だのと、噂が流れていく。


「っ…‥‥ふむ、マスター、植物の方が情報伝達が早かったようですわ」
「ん?」

 どうやらその辺に映えている雑草などを介して、カトレアの方に情報が先に入ったようだ。

「爆裂魔法でも薬品でも侵略でもないようですわね…‥‥これはある意味、災害と言って良い物ですわ」
「災害?」
「ええ、どうやら以前、わたくしを初召喚されたあの森‥‥‥そこにダンジョンが産まれ、中身が飛び出してきたようですわね」
「ダンジョン‥‥‥まさか、『モンスター・パレード』!?}

―――――――――――――――――――
「ダンジョン」
世界にできる、洞窟だったり、はたまた洋館だったりと、その形態は色々な種類がある不思議な存在。
中には召喚士が呼びだすようなモンスターがわんさか詰まっており、新たな召喚獣を求める召喚士が契約を結ぶために出向く場所でもある。
それ以外にも、中にいるモンスターたちは食用可能だったり、希少金属でできていたりするので、ひとつできればそれだけで騎士・魔法使いなど戦闘系の職業を持つ人たちが一斉に攻略し、街一つを1年以上裕福に暮らせるだけの資源を獲得できる、貴重な資源場ともなる。
だがしかし、出来立てか、中のモンスターが一定数以上増えた場合、モンスター・パレードという災害が起きてしまうので、管理ができない場合は潰さないといけない。

「モンスター・パレード」
踊り狂う、モンスターの祭り‥‥‥っと、そう聞くだけならば、危そうなものではない。
だがしかし、その実態は凶悪な自然災害。
ダンジョンにたまりにたまったモンスターたちが凶暴化し、ダンジョンから飛び出して周囲へ被害を与えまくるもの。
しかも、そのダンジョンに通常出る種とは異なるものが多く存在し、普段通りに挑もうとして大けがをする者たちが続出してしまう。
凶暴化している分、攻撃なども滅茶苦茶であり、仲間意識もなく互に傷つけ合うので、うまくいけば自滅させ合う事もできるのが、何も気にせず周囲へ被害を与えてくるので、そううまくいかない。
―――――――――――――――――――

「その通りですわ。どうやら新しくダンジョンが出来たようで、その入り口からモンスターがあふれ出し、今、こうして首都の郊外部分から攻めてきているようですわね」

 あの黒煙はその第1陣が攻めてきた印のようで、まだまだモンスターが溢れているらしい。

 数は限られているので、全滅させればそれで終わる話なのだが、凶暴化したモンスターは普段以上の力を発揮しており、容易くいかないのである。






 朝日が昇り始めるにつれ、カトレアの報告してきた内容が外部からも伝わり始め、学園内が騒がしくなり始める。

 王国の首都ゆえに、守りもそれなりに厳重なのだが、いかんせん人の力で災害に立ち向かうのは厳しいところがある。

 ゆえに、どうせ責められるのであれば早めの実戦へ出向こうと騎士学科、魔法使い学科などの戦闘が可能な者たちは我先にと前線へ出向き始め、他の者たちは避難を開始し始める。

「あくまでも、戦闘が可能な人たちで向かうから、俺たちの場合は得意って訳でもないから避難側に移りたかったが…‥‥」
「ああ、それはダメだろうね。というか、生徒会の人が真っ先に逃げるのも色々と体裁がね」
「お前の場合、その召喚獣たちは戦闘できるからな。学園内で暴れたことがある分、逃げられんぞ」

‥‥‥避難しようと思ったら、生徒会長第1王子副生徒会長第2王子に捕まりました。

 そう言えば、俺一応名目上は生徒会所属だった‥‥‥‥そりゃ、真っ先に逃げるのも色々言われる可能性もあったか。


「仕方がないというか‥‥‥すっごい混戦していそうなんだけど、召喚士の俺が混ざっても大丈夫なのか?」
「ああ、彼女達が攻めてくるモンスターと間違われないかって?それは大丈夫だと思うよ」
「人に近い見た目が、今回ばかりは功を奏したな。今、攻めてきているのはそういう類ではないから、混戦したところで攻撃されることもないだろう」

 避難をあきらめ、戦闘に関する不安を言ってみたが、どうもそのあたりは大丈夫らしい。

 戦闘よりも諜報向きなのだが…‥この非常時に気にすることもできないか。



「ノイン、カトレア、ルビー!戦闘態勢!」
「「「了解!!」」」

 駆り出されても、俺が直接戦う訳ではなく、彼女達に指示を出すだけ。

 余計な被害が出る前に、ついでにどさくさに紛れての喧嘩もしないように見張りつつ、戦闘に挑ませるしかないだろう。

 すぅっと深呼吸をして気持ちを落ち着かせ、俺たちはそのモンスター・パレードの最前線に向かうのであった‥‥‥

しおりを挟む
感想 771

あなたにおすすめの小説

好色一代勇者 〜ナンパ師勇者は、ハッタリと機転で窮地を切り抜ける!〜(アルファポリス版)

朽縄咲良
ファンタジー
【HJ小説大賞2020後期1次選考通過作品(ノベルアッププラスにて)】 バルサ王国首都チュプリの夜の街を闊歩する、自称「天下無敵の色事師」ジャスミンが、自分の下半身の不始末から招いたピンチ。その危地を救ってくれたラバッテリア教の大教主に誘われ、神殿の下働きとして身を隠す。 それと同じ頃、バルサ王国東端のダリア山では、最近メキメキと発展し、王国の平和を脅かすダリア傭兵団と、王国最強のワイマーレ騎士団が激突する。 ワイマーレ騎士団の圧勝かと思われたその時、ダリア傭兵団団長シュダと、謎の老女が戦場に現れ――。 ジャスミンは、口先とハッタリと機転で、一筋縄ではいかない状況を飄々と渡り歩いていく――! 天下無敵の色事師ジャスミン。 新米神官パーム。 傭兵ヒース。 ダリア傭兵団団長シュダ。 銀の死神ゼラ。 復讐者アザレア。 ………… 様々な人物が、徐々に絡まり、収束する…… 壮大(?)なハイファンタジー! *表紙イラストは、澄石アラン様から頂きました! ありがとうございます! ・小説家になろう、ノベルアッププラスにも掲載しております(一部加筆・補筆あり)。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

目覚めれば異世界!ところ変われば!

秋吉美寿
ファンタジー
体育会系、武闘派女子高生の美羽は空手、柔道、弓道の有段者!女子からは頼られ男子たちからは男扱い!そんなたくましくもちょっぴり残念な彼女もじつはキラキラふわふわなお姫様に憧れる隠れ乙女だった。 ある日体調不良から歩道橋の階段を上から下までまっさかさま! 目覚めると自分はふわふわキラキラな憧れのお姫様…なにこれ!なんて素敵な夢かしら!と思っていたが何やらどうも夢ではないようで…。 公爵家の一人娘ルミアーナそれが目覚めた異なる世界でのもう一人の自分。 命を狙われてたり鬼将軍に恋をしたり、王太子に襲われそうになったり、この世界でもやっぱり大人しくなんてしてられそうにありません。 身体を鍛えて自分の身は自分で守ります!

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます

里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。 だが実は、誰にも言えない理由があり…。 ※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。 全28話で完結。

【完結】妃が毒を盛っている。

ファンタジー
2年前から病床に臥しているハイディルベルクの王には、息子が2人いる。 王妃フリーデの息子で第一王子のジークムント。 側妃ガブリエレの息子で第二王子のハルトヴィヒ。 いま王が崩御するようなことがあれば、第一王子が玉座につくことになるのは間違いないだろう。 貴族が集まって出る一番の話題は、王の後継者を推測することだった―― 見舞いに来たエルメンヒルデ・シュティルナー侯爵令嬢。 「エルメンヒルデか……。」 「はい。お側に寄っても?」 「ああ、おいで。」 彼女の行動が、出会いが、全てを解決に導く――。 この優しい王の、原因不明の病気とはいったい……? ※オリジナルファンタジー第1作目カムバックイェイ!! ※妖精王チートですので細かいことは気にしない。 ※隣国の王子はテンプレですよね。 ※イチオシは護衛たちとの気安いやり取り ※最後のほうにざまぁがあるようなないような ※敬語尊敬語滅茶苦茶御免!(なさい) ※他サイトでは佳(ケイ)+苗字で掲載中 ※完結保証……保障と保証がわからない! 2022.11.26 18:30 完結しました。 お付き合いいただきありがとうございました!

処理中です...