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19 シャレにならない逃走劇
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「「「「ギャァァァァァァス!!」」」」
「まだ追ってくるのかよ!!」
「しつこいですネ。煙幕、痺れ薬、眠り薬、猛烈痒み薬などをぶちまけましたのに、さほど数が減りませんカ」
…‥‥背後から聞こえてくるワイバーンたちの怒りに満ちた声。
怒りに対して、火に油を注ぐような事をしてはいるとはいえ、それでも数が減らない現状。
ディーたちは今、森で偶然遭遇したワイバーンの群れに襲われ、逃走していた。
「ギャアァァァァス!!」
「っ、ご主人様しっかり捕まってくだサイ!」
「わかっているよ!!」
熊に追いかけられた時同様、お姫様抱っこの状態で運ばれつつ、俺はノインにしっかりとしがみつく。
態勢的に色々と柔らかいものとかを感じてしまうが、今はそれどころではなく、彼女がジャンプすると同時に、その位置にワイバーンが突撃してきた。
「ふむ、落下による加速‥‥‥割とシャレにはならない体当たりデス」
「地面に頭をぶつけても、続けて他のが来るのかよ…‥‥」
ワイバーンの攻撃手段は、主に毒の爪や牙。
ただ、空を飛べるだけあってか、急加速をしての体当たりなども交えており、狭い森の中ではフルに生かせないとはいえ、それでもその突撃は脅威である。
「対空用装備もいくつかありますが‥‥‥この状況だと難しいですネ。教師やそのほかの方々がいる場所へ合流したところで、被害は増えるだけデス」
「その装備があるのというツッコミはしないけど、それは確かに不味いな」
今はただ逃げているだけであり、他の皆がいる場所へ合流して逃げようとも思ったが‥‥‥冷静になって考えて見れば、それは人に押し付けるだけであり、被害が増加するだけでもある。
かと言って、このまま逃走していても振り切れておらず、追い詰められてしまうだろう。
「出来れば、他に戦える人材がいれば、それを囮にして撃墜できそうですが…‥‥」
「さらっと酷いこと言ってない?」
何にしても、今のこの二人だけの状況では好転は無い。
ジリ貧という状況でもあるだろうし、逃走にも限界が‥‥‥
「‥‥‥なぁ、ノイン。あと一人ぐらいがいれば、まだ何とかなるのか?」
「ええ、ご主人様は戦力外ですので、そこを考慮するのであればデス」
‥‥‥さらっと言われたその言葉に、ちょっと心がグサッと来た。
分かっているけど、言葉の刃が酷く痛い。いや、今はそうじゃなくて…‥‥
「‥‥‥この体勢のまま、なおかつできるのかもわからないけど‥‥‥召喚を行う」
「‥‥‥2体目の召喚獣をこの状態で呼ぶト?成功確率は低いですが‥‥‥」
「低いだけ?ならば不可能って訳でもないじゃん!」
‥‥‥召喚士は、基本的に召喚獣を1体しか使役しない。
というか、一体だけしかできていない。他と契約したり、もしくは第2、第3の例もあるのだが、それでも2体目を得られるかどうかも分からない。
だが、俺の職業は普通の召喚士ではなく、異界の召喚士。
これまでに立てた予想では、何かしらの常識外のやつを召喚する可能性が高く、場合によっては危険な召喚獣を出してしまう可能性も大きいが‥‥‥やって見なくては分からない。
「ノイン、このまま逃走に集中してくれ。こっちは召喚を行う!」
「了解デス!」
成功を祈りつつ、俺は召喚に手をかける。
心を落ち着かせ、集中し、ノインを呼びだした時のように思うと‥‥‥自然と、その文が頭の中に現れ始めた。
「‥‥‥『来たれ、来たれ、この地に来たれ』」
召喚時に使う、詠唱。
ノインの時とは詠唱が異なるし、言い切ったとしても現れるという保証もない。
けれども、やって見なくては分からないじゃないか。
「『汝は常に、我が元へ、この地に根を張り、すべてに芽を向けて従え』」
頭の中に自然と現れる詠唱を唱えつつ、徐々に召喚時に出る魔法陣が現れて輝き始める。
色々と文章が異なるし、なんか嫌な予感がしなくもないのだが…‥‥今はこの状況を変えられるだけあればいい。
「『我が命を受け、発芽し咲き誇れ、さすれば汝に名を与えん』」
最後につける、この名前の部分…‥‥果たして、どう名づけるべきか、いや、その答えはもう出ている。
「『さぁ、さぁ、さぁ、顕現せよ、汝に与えし名はカトレア!!我が元へ来たまえ!!』」
その言葉と同時に、魔法陣の輝きが瞬時にまばゆいものとなり…‥‥辺り一面に光が満ちた。
そして、次の瞬間、魔法陣から何かが飛び出し…‥‥
ズバババババババババババババ!!
地面から、ものすごい勢いで木々が生えまくり、ワイバーンたちに激突していく。
「グゲェイ!?」
「ギャァァァァ!?」
「ギゲェェェェス!!」
ノインが足を止め、俺を降ろし‥‥‥その光景を改めて見れば、物凄く悲惨な状況とも言えた。
地面から突き上げるように、急に現れた木々によって、ワイバーンたちの大多数が、くし刺しになっている。
そして、それを行った本人は…‥‥こちらの方をゆっくりと振り返った。
「‥‥‥個体名、カトレアここに推参いたしましたわ。さぁ、わたくしをお呼びした召喚主様は、あなたで良いですわね?」
そこに立っていたのは、褐色の肌色で、木々の緑にも負けないような、翡翠色をした目と髪を持ち、大きな木の椅子に腰かけている女性。
惰性と妖艶さをどことなく感じさせる召喚獣…‥‥カトレアが、そう言いながらにっこりと微笑み、俺達へ向けて挨拶をするのであった‥‥‥‥
「まだ追ってくるのかよ!!」
「しつこいですネ。煙幕、痺れ薬、眠り薬、猛烈痒み薬などをぶちまけましたのに、さほど数が減りませんカ」
…‥‥背後から聞こえてくるワイバーンたちの怒りに満ちた声。
怒りに対して、火に油を注ぐような事をしてはいるとはいえ、それでも数が減らない現状。
ディーたちは今、森で偶然遭遇したワイバーンの群れに襲われ、逃走していた。
「ギャアァァァァス!!」
「っ、ご主人様しっかり捕まってくだサイ!」
「わかっているよ!!」
熊に追いかけられた時同様、お姫様抱っこの状態で運ばれつつ、俺はノインにしっかりとしがみつく。
態勢的に色々と柔らかいものとかを感じてしまうが、今はそれどころではなく、彼女がジャンプすると同時に、その位置にワイバーンが突撃してきた。
「ふむ、落下による加速‥‥‥割とシャレにはならない体当たりデス」
「地面に頭をぶつけても、続けて他のが来るのかよ…‥‥」
ワイバーンの攻撃手段は、主に毒の爪や牙。
ただ、空を飛べるだけあってか、急加速をしての体当たりなども交えており、狭い森の中ではフルに生かせないとはいえ、それでもその突撃は脅威である。
「対空用装備もいくつかありますが‥‥‥この状況だと難しいですネ。教師やそのほかの方々がいる場所へ合流したところで、被害は増えるだけデス」
「その装備があるのというツッコミはしないけど、それは確かに不味いな」
今はただ逃げているだけであり、他の皆がいる場所へ合流して逃げようとも思ったが‥‥‥冷静になって考えて見れば、それは人に押し付けるだけであり、被害が増加するだけでもある。
かと言って、このまま逃走していても振り切れておらず、追い詰められてしまうだろう。
「出来れば、他に戦える人材がいれば、それを囮にして撃墜できそうですが…‥‥」
「さらっと酷いこと言ってない?」
何にしても、今のこの二人だけの状況では好転は無い。
ジリ貧という状況でもあるだろうし、逃走にも限界が‥‥‥
「‥‥‥なぁ、ノイン。あと一人ぐらいがいれば、まだ何とかなるのか?」
「ええ、ご主人様は戦力外ですので、そこを考慮するのであればデス」
‥‥‥さらっと言われたその言葉に、ちょっと心がグサッと来た。
分かっているけど、言葉の刃が酷く痛い。いや、今はそうじゃなくて…‥‥
「‥‥‥この体勢のまま、なおかつできるのかもわからないけど‥‥‥召喚を行う」
「‥‥‥2体目の召喚獣をこの状態で呼ぶト?成功確率は低いですが‥‥‥」
「低いだけ?ならば不可能って訳でもないじゃん!」
‥‥‥召喚士は、基本的に召喚獣を1体しか使役しない。
というか、一体だけしかできていない。他と契約したり、もしくは第2、第3の例もあるのだが、それでも2体目を得られるかどうかも分からない。
だが、俺の職業は普通の召喚士ではなく、異界の召喚士。
これまでに立てた予想では、何かしらの常識外のやつを召喚する可能性が高く、場合によっては危険な召喚獣を出してしまう可能性も大きいが‥‥‥やって見なくては分からない。
「ノイン、このまま逃走に集中してくれ。こっちは召喚を行う!」
「了解デス!」
成功を祈りつつ、俺は召喚に手をかける。
心を落ち着かせ、集中し、ノインを呼びだした時のように思うと‥‥‥自然と、その文が頭の中に現れ始めた。
「‥‥‥『来たれ、来たれ、この地に来たれ』」
召喚時に使う、詠唱。
ノインの時とは詠唱が異なるし、言い切ったとしても現れるという保証もない。
けれども、やって見なくては分からないじゃないか。
「『汝は常に、我が元へ、この地に根を張り、すべてに芽を向けて従え』」
頭の中に自然と現れる詠唱を唱えつつ、徐々に召喚時に出る魔法陣が現れて輝き始める。
色々と文章が異なるし、なんか嫌な予感がしなくもないのだが…‥‥今はこの状況を変えられるだけあればいい。
「『我が命を受け、発芽し咲き誇れ、さすれば汝に名を与えん』」
最後につける、この名前の部分…‥‥果たして、どう名づけるべきか、いや、その答えはもう出ている。
「『さぁ、さぁ、さぁ、顕現せよ、汝に与えし名はカトレア!!我が元へ来たまえ!!』」
その言葉と同時に、魔法陣の輝きが瞬時にまばゆいものとなり…‥‥辺り一面に光が満ちた。
そして、次の瞬間、魔法陣から何かが飛び出し…‥‥
ズバババババババババババババ!!
地面から、ものすごい勢いで木々が生えまくり、ワイバーンたちに激突していく。
「グゲェイ!?」
「ギャァァァァ!?」
「ギゲェェェェス!!」
ノインが足を止め、俺を降ろし‥‥‥その光景を改めて見れば、物凄く悲惨な状況とも言えた。
地面から突き上げるように、急に現れた木々によって、ワイバーンたちの大多数が、くし刺しになっている。
そして、それを行った本人は…‥‥こちらの方をゆっくりと振り返った。
「‥‥‥個体名、カトレアここに推参いたしましたわ。さぁ、わたくしをお呼びした召喚主様は、あなたで良いですわね?」
そこに立っていたのは、褐色の肌色で、木々の緑にも負けないような、翡翠色をした目と髪を持ち、大きな木の椅子に腰かけている女性。
惰性と妖艶さをどことなく感じさせる召喚獣…‥‥カトレアが、そう言いながらにっこりと微笑み、俺達へ向けて挨拶をするのであった‥‥‥‥
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