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15 叩き潰すにはまず捜査‥‥‥潰す?
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『この者たちは女性相手に不埒な行いを致しました』
単純に、そう書かれたプレートが全員の首にかけられ、廊下に逆さづりになっている、異様な光景。
吊るされている者はどれもがスキンヘッド、落ち武者頭、バーコードなどの呼ばれるらしい髪型に変えられており、『ご自由にどうぞ』と、例を添えた筆が設置され、多数の落書きがなされていた。
「‥‥‥社会的な抹殺というよりも、人として何か終わってないかアレ?」
「生ぬるいですが、まぁ、ほどほどに抑えておいたほうがいいと聞きましたからネ」
ざわざわと人が集まって、その異様な光景を見ている中、俺はそう尋ねたが、ノインからは冷たい声での返答しかなかった。
‥‥タンクマンたちによる奇行、ノインのスカート捲り事件。
全員の処罰としては、公開処刑もとい公開恥辱刑が下されたので、あのようなことになっているのだが、その元々の行動の原因は分かっていない。
なお、その刑罰に関しては、生徒会内で決めたのだが、いつの間にかノインの有無を言わせないような雰囲気にのまれ、こうなったとだけとしか言えない。
ノインが尋問を行い、その動機について尋ねたのだが…‥‥どういう訳か、誰一人としてその動機に走った理由を覚えていなかったのだ。
「ふーむ‥‥‥これは生徒会に持ち込んでいい類の案件だね。これ、いたずらにしても悪質なものがされているようだ」
生徒会の場にて、副生徒会長のグラディがそうつぶやく。
「悪質なもの?」
「ああ、今回のような奇行自体は、タンクマン学科では特に珍しい事ではないからね。被虐欲求などを満たすために、擦り傷に塩を塗り込むとか、わざと挑発して攻撃を喰らうとか…‥‥うん、最近ではタンクマン学科をサンドバック科として変えようという話もあるけど…‥‥一応、それなりのアフターフォローもできる範囲でやっているんだよ」
いわく、できるだけ後できちんと関係を修復できる範囲であれば、彼らはいろいろやらかしてもしっかり謝るなどをして、どうにかして許してもらえるようにしてもらうらしい。
ただ、流石に異性に対してのフォローはし辛く、過去には灰色の青春を送った例もあって、異性へのやらかしは厳重に暗黙の了解で禁じられているはずなのだ。
「それなのに、召喚獣とは言え、ノインさんを狙って襲撃したのはおかしいんだよね‥‥‥この話が広まれば、当然過去の灰色青春の例のようにもなるだろうし、そうならないように徹底した教育がされているはずなんだよ」
「いや、その前に問題を起こす時点で色々アウトじゃないか?」
「操られていたとか、そういう類だとしても有罪デス」
珍しくノインのツッコミも入ったが…‥‥
「操られた、ね…‥‥うん、その可能性が大きいかもね」
「え?」
「‥‥‥で、過去の記録の方を捜してみたら、意外にもあったのか」
「そちらの場合は、より悪質でしたけどネ」
学園の書物が集まっている図書室。
そこには様々な記録なども保管されており、少し探せば似たような事例が過去にもあったことが判明した。
まぁ、その事例は今回とは色々と異なるが…‥‥
「記憶がない、ってのは同じか‥‥‥この時は、黒幕ははっきりしているのか」
「下手すると、国滅亡レベルで、処刑されたようデス」
過去の学園の記録を見る限り、とある魔法の影響を受け、受けた命令をこなし、執行後はその記憶がないという事例があった。
なんでも、とある女学生が、当時の学園の生徒会長を務めていた王子に対し、次期王妃の座を狙い、婚約者がいたのにその相手を陥れるために、様々な悪事を行ったのだとか。
職業は「魔法使い」であり、禁術とされる魔法で人を操り、意のままに動かし、敵をすべて排除したようだが‥‥‥その魔法が効かない相手がいて、そこからあっという間に芋づる式に悪事が判明し、職業も封じられ、処刑されたのだというのだ。
今回のノインのスカート捲りを行ったタンクマンたちも、どうやらこの禁術の類にあてられ、わざわざ命知らず真似をやらかしたというが‥‥‥
「‥‥だったら、あそこまでしなくても良いような」
「黒幕発覚後の利用も考えてデス。操られていた記憶がないにしても、やらかしたのは消せない事実。ならばこそ、そのやらかしをさせた相手に憎悪を抱いてもらい、捕縛するために手伝ってもらうのデス」
ふふふふっと笑いながらそう答えるノイン。
だが、その目が全然笑っておらず、恐怖を感じさせる。
「そもそも、なぜそんなことをさせたのかという理由も見当つきませんが‥‥‥ええ、売られた喧嘩は丁寧に買うのが良いでしょウ」
「やっぱりけっこう気にしているんじゃないか?」
どこの誰がやったのかは知らないが、俺はこれ以上彼女を抑制することはできなさそうだ。
理由が分からなくとも、少なくとも犯人さんや、お前絶対にろくでもない結末を迎えるだろう。
相手を考えて冥福を祈るべきか、それとも悪質な手口でもあるので捕縛されるように祈るべきか‥‥‥
どっちにしても、犯人の命は無さそうだなぁと、ディーは遠い目をして思うのであった。
「‥‥‥魔法の可能性もありますが、職業『魔法使い』以外も視野に入れたほうがいいでしょウ」
「なんで?」
「こういう記録があるという事は、あえて視野を狭くして見えないようにする相手がいる可能性もありますからネ。魔法以外の手段で、バカを誘導する阿呆も考えられるのデス」
‥‥‥意外に、冷静に考えているな。でもその本はやめた方がいいと思う。というか、何で図書室に『あなたにおすすめする抹殺方法数千選』っていう物騒なものがあるんだよ。
単純に、そう書かれたプレートが全員の首にかけられ、廊下に逆さづりになっている、異様な光景。
吊るされている者はどれもがスキンヘッド、落ち武者頭、バーコードなどの呼ばれるらしい髪型に変えられており、『ご自由にどうぞ』と、例を添えた筆が設置され、多数の落書きがなされていた。
「‥‥‥社会的な抹殺というよりも、人として何か終わってないかアレ?」
「生ぬるいですが、まぁ、ほどほどに抑えておいたほうがいいと聞きましたからネ」
ざわざわと人が集まって、その異様な光景を見ている中、俺はそう尋ねたが、ノインからは冷たい声での返答しかなかった。
‥‥タンクマンたちによる奇行、ノインのスカート捲り事件。
全員の処罰としては、公開処刑もとい公開恥辱刑が下されたので、あのようなことになっているのだが、その元々の行動の原因は分かっていない。
なお、その刑罰に関しては、生徒会内で決めたのだが、いつの間にかノインの有無を言わせないような雰囲気にのまれ、こうなったとだけとしか言えない。
ノインが尋問を行い、その動機について尋ねたのだが…‥‥どういう訳か、誰一人としてその動機に走った理由を覚えていなかったのだ。
「ふーむ‥‥‥これは生徒会に持ち込んでいい類の案件だね。これ、いたずらにしても悪質なものがされているようだ」
生徒会の場にて、副生徒会長のグラディがそうつぶやく。
「悪質なもの?」
「ああ、今回のような奇行自体は、タンクマン学科では特に珍しい事ではないからね。被虐欲求などを満たすために、擦り傷に塩を塗り込むとか、わざと挑発して攻撃を喰らうとか…‥‥うん、最近ではタンクマン学科をサンドバック科として変えようという話もあるけど…‥‥一応、それなりのアフターフォローもできる範囲でやっているんだよ」
いわく、できるだけ後できちんと関係を修復できる範囲であれば、彼らはいろいろやらかしてもしっかり謝るなどをして、どうにかして許してもらえるようにしてもらうらしい。
ただ、流石に異性に対してのフォローはし辛く、過去には灰色の青春を送った例もあって、異性へのやらかしは厳重に暗黙の了解で禁じられているはずなのだ。
「それなのに、召喚獣とは言え、ノインさんを狙って襲撃したのはおかしいんだよね‥‥‥この話が広まれば、当然過去の灰色青春の例のようにもなるだろうし、そうならないように徹底した教育がされているはずなんだよ」
「いや、その前に問題を起こす時点で色々アウトじゃないか?」
「操られていたとか、そういう類だとしても有罪デス」
珍しくノインのツッコミも入ったが…‥‥
「操られた、ね…‥‥うん、その可能性が大きいかもね」
「え?」
「‥‥‥で、過去の記録の方を捜してみたら、意外にもあったのか」
「そちらの場合は、より悪質でしたけどネ」
学園の書物が集まっている図書室。
そこには様々な記録なども保管されており、少し探せば似たような事例が過去にもあったことが判明した。
まぁ、その事例は今回とは色々と異なるが…‥‥
「記憶がない、ってのは同じか‥‥‥この時は、黒幕ははっきりしているのか」
「下手すると、国滅亡レベルで、処刑されたようデス」
過去の学園の記録を見る限り、とある魔法の影響を受け、受けた命令をこなし、執行後はその記憶がないという事例があった。
なんでも、とある女学生が、当時の学園の生徒会長を務めていた王子に対し、次期王妃の座を狙い、婚約者がいたのにその相手を陥れるために、様々な悪事を行ったのだとか。
職業は「魔法使い」であり、禁術とされる魔法で人を操り、意のままに動かし、敵をすべて排除したようだが‥‥‥その魔法が効かない相手がいて、そこからあっという間に芋づる式に悪事が判明し、職業も封じられ、処刑されたのだというのだ。
今回のノインのスカート捲りを行ったタンクマンたちも、どうやらこの禁術の類にあてられ、わざわざ命知らず真似をやらかしたというが‥‥‥
「‥‥だったら、あそこまでしなくても良いような」
「黒幕発覚後の利用も考えてデス。操られていた記憶がないにしても、やらかしたのは消せない事実。ならばこそ、そのやらかしをさせた相手に憎悪を抱いてもらい、捕縛するために手伝ってもらうのデス」
ふふふふっと笑いながらそう答えるノイン。
だが、その目が全然笑っておらず、恐怖を感じさせる。
「そもそも、なぜそんなことをさせたのかという理由も見当つきませんが‥‥‥ええ、売られた喧嘩は丁寧に買うのが良いでしょウ」
「やっぱりけっこう気にしているんじゃないか?」
どこの誰がやったのかは知らないが、俺はこれ以上彼女を抑制することはできなさそうだ。
理由が分からなくとも、少なくとも犯人さんや、お前絶対にろくでもない結末を迎えるだろう。
相手を考えて冥福を祈るべきか、それとも悪質な手口でもあるので捕縛されるように祈るべきか‥‥‥
どっちにしても、犯人の命は無さそうだなぁと、ディーは遠い目をして思うのであった。
「‥‥‥魔法の可能性もありますが、職業『魔法使い』以外も視野に入れたほうがいいでしょウ」
「なんで?」
「こういう記録があるという事は、あえて視野を狭くして見えないようにする相手がいる可能性もありますからネ。魔法以外の手段で、バカを誘導する阿呆も考えられるのデス」
‥‥‥意外に、冷静に考えているな。でもその本はやめた方がいいと思う。というか、何で図書室に『あなたにおすすめする抹殺方法数千選』っていう物騒なものがあるんだよ。
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