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少し広がっていく関係性
log-139 まともなのとは一体何か
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―――やれるだけのことはやった。
【…だからこそ、あと一息って感じがもどかしいのなの。くしゃみをしかけて中々でないような感覚なの】
【それは確かにもどかしいな】
…カトレアに進化の兆しが出てから3日目。
準備は十分できているようだが、どうも中々先へ進まないらしく、もどかしい気持ちになっているらしい。
あと一歩、それが踏み出せないような、何とも言えないような感覚があって、なかなか眠りにくくもあるようだ。
「それで、気分転換に夜の学園内を出歩こうってか…許可はもらったけど、こういうのっていいのかな?」
【変わった刺激を受けたほうが、良い方向に変わるかもってのあの悪魔教師に聞いているのなの。月夜の明かりで夜の学園内を探検するのも悪くはないのなの】
寝付きにくくもあり、だからこそ気分を変えるために、彼女たちは一緒に夜の構内を歩いていた。
先日の悪魔騒動によって、警備の関係上夜の構内探索の許可の取得は少々厳しいものがあった。
しかし、面子が面子だけに出てきたとしてもまだどうにかなるというのもあってか、何とか許可はもらえたのである。
普段は生徒たちで賑わい、先日の騒動で警備等が増えて控えめになっていた部分もあるような場所とはいえ、夜はその賑わいも消え失せ、静けさが支配している。
月明かりが窓から差し込み、照らす明かりはスズランのような花でありつつ、中で淡い光を放つ植物が足元の安全を確保してくれる。
【こういう雰囲気も、悪くはないですね…人がいたのに、失われた静けさもありと言えばありですよ】
【まぁ、我ら主殿を除けばモンスターだからな…人の世に紛れ込んで生活しているとはいえ、人がいないこの雰囲気もまた気分的には落ち着けるか】
皆で静かに歩き回るが、確かに夜の構内の雰囲気と言うのは、昼間と違った刺激を与えてくるだろう。
ちょっとした肝試し気分だが、人数を考えるとそこまで恐怖ではない。
「というか、そもそもこういうことができる許可があるってのも不思議なような」
【そう珍しいことではないらしいですヨ。寮室に戻って宿題やるよりも、こういう場所でやる方が捗るって方もいるらしいでス。夜のほうが目が冴えたり、あるいは何かいいものが思いついたり、そういうことがあるので、その手の許可申請は存在するようですネ】
【ただ、だからこそきちんとモラルを守る必要はあるらしいぜ。過去の例だと、構内を馬で爆走した輩もいるとか…】
ちょっとレトロすぎる暴走族モドキのようなものもいたのだろうか。
何にしても、こういう雰囲気は普段感じられないものもあり、カトレア以外にもジャックたちにも変わった刺激になるだろう。
【こういう静かな夜もありですねぇ…今度は二人きりで、やってみるのもありですね、ジャック】
【おっと、我が君注意してほしいぜ。それ絶対に危ないからな】
【…】
【…】
ばちぃっと何かがぶつかった気がするが、気にしないでおこう。
夜の構内で下手に暴れるのも駄目なのは彼女たちも理解しているだろうし、争いごとを諫める場所としてはこれはこれでありかもしれない。
【ふぅ…ひたひたと歩くのも良いけど、やっぱり屋上で伸びるのもありなの~】
「太陽が昇っている時なら分かるけど、月明かりでそれはありか?」
【問題ないなの。月の光は確かに弱いけど…月光もまた、モンスターに良いって聞いているのなの】
一通り探索しつつ、屋上にたどり着き月光を浴びるカトレア。
太陽とは異なる明かりを浴び、ゆったりと身体を伸ばす。
【ふふふ…これでしっかりと、ミーはドリアードに成れるかもなの…】
「そう都合よく進化するのかなぁ?」
月光を浴びながら期限良さそうにつぶやくカトレアに、ジャックは疑問の声を浮かべる。
誰も彼もが都合よく進化できたのであれば、世の中もっとモンスターが跋扈していても不思議ではないからだ。
【まぁ、そうですよね。自分のなれたいものに楽になれたら楽ですけれども…変な方向に成ることだってあると思いますし】
【でも、思い続けて叶うのであれば、それはかなり良いんだぜ】
カトレアの思いに対して、ハクロ達は理解を示す。
願い続けるその気持ちは、分かるのだ。
【なのなの…なのっ、来た来たきたなの!!】
「っと、どうやらその時が来たのか」
目を見開き、彼女の身体が光に包まれ、変わっていく。
花びらが飛び交い、その身に宿していた葉っぱもちぎれ、空へ舞う。
花が失われ、足が生え、ぐぐっと栄養が消費されてなのか成長していき、月明かりの元舞台に立つかのようなきらめきをもって、その身を大きく転じさせる。
薄い桃色の花弁は足元から背中へ、その羽根へ。
風にあおられ、髪色は月明かりの白さも加わってきらめくように風になびく。
【なの…ついに、ドリアードへ…いや、これ何か、違うのなの】
「うん、確かにどう見てもドリアードと言うか、別ものになったというべきか…」
【どっちかと言えば…妖精とかそういう類に近いような】
【…なのぉおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?】
…望んでいた姿とは、また違う変化。
ファイがそのスライムボディを器用に変えて鏡のように姿を映し出し、自身の状態を見て声を上げるカトレア。
これはこれでありなような気がしなくもないのだが、望んでいた姿とは違うことに、嘆いているようであった…
【悪くはないけれど…確かに、前よりはあるけどなの、無いのなの!成長はしているけど、していないのと言って良いのなのぉおお!!】
「床を叩きつけて、嘆いているな…」
…ひとまずどういう種族が、わかりそうな教師へ確認しに向かいますか。
【…だからこそ、あと一息って感じがもどかしいのなの。くしゃみをしかけて中々でないような感覚なの】
【それは確かにもどかしいな】
…カトレアに進化の兆しが出てから3日目。
準備は十分できているようだが、どうも中々先へ進まないらしく、もどかしい気持ちになっているらしい。
あと一歩、それが踏み出せないような、何とも言えないような感覚があって、なかなか眠りにくくもあるようだ。
「それで、気分転換に夜の学園内を出歩こうってか…許可はもらったけど、こういうのっていいのかな?」
【変わった刺激を受けたほうが、良い方向に変わるかもってのあの悪魔教師に聞いているのなの。月夜の明かりで夜の学園内を探検するのも悪くはないのなの】
寝付きにくくもあり、だからこそ気分を変えるために、彼女たちは一緒に夜の構内を歩いていた。
先日の悪魔騒動によって、警備の関係上夜の構内探索の許可の取得は少々厳しいものがあった。
しかし、面子が面子だけに出てきたとしてもまだどうにかなるというのもあってか、何とか許可はもらえたのである。
普段は生徒たちで賑わい、先日の騒動で警備等が増えて控えめになっていた部分もあるような場所とはいえ、夜はその賑わいも消え失せ、静けさが支配している。
月明かりが窓から差し込み、照らす明かりはスズランのような花でありつつ、中で淡い光を放つ植物が足元の安全を確保してくれる。
【こういう雰囲気も、悪くはないですね…人がいたのに、失われた静けさもありと言えばありですよ】
【まぁ、我ら主殿を除けばモンスターだからな…人の世に紛れ込んで生活しているとはいえ、人がいないこの雰囲気もまた気分的には落ち着けるか】
皆で静かに歩き回るが、確かに夜の構内の雰囲気と言うのは、昼間と違った刺激を与えてくるだろう。
ちょっとした肝試し気分だが、人数を考えるとそこまで恐怖ではない。
「というか、そもそもこういうことができる許可があるってのも不思議なような」
【そう珍しいことではないらしいですヨ。寮室に戻って宿題やるよりも、こういう場所でやる方が捗るって方もいるらしいでス。夜のほうが目が冴えたり、あるいは何かいいものが思いついたり、そういうことがあるので、その手の許可申請は存在するようですネ】
【ただ、だからこそきちんとモラルを守る必要はあるらしいぜ。過去の例だと、構内を馬で爆走した輩もいるとか…】
ちょっとレトロすぎる暴走族モドキのようなものもいたのだろうか。
何にしても、こういう雰囲気は普段感じられないものもあり、カトレア以外にもジャックたちにも変わった刺激になるだろう。
【こういう静かな夜もありですねぇ…今度は二人きりで、やってみるのもありですね、ジャック】
【おっと、我が君注意してほしいぜ。それ絶対に危ないからな】
【…】
【…】
ばちぃっと何かがぶつかった気がするが、気にしないでおこう。
夜の構内で下手に暴れるのも駄目なのは彼女たちも理解しているだろうし、争いごとを諫める場所としてはこれはこれでありかもしれない。
【ふぅ…ひたひたと歩くのも良いけど、やっぱり屋上で伸びるのもありなの~】
「太陽が昇っている時なら分かるけど、月明かりでそれはありか?」
【問題ないなの。月の光は確かに弱いけど…月光もまた、モンスターに良いって聞いているのなの】
一通り探索しつつ、屋上にたどり着き月光を浴びるカトレア。
太陽とは異なる明かりを浴び、ゆったりと身体を伸ばす。
【ふふふ…これでしっかりと、ミーはドリアードに成れるかもなの…】
「そう都合よく進化するのかなぁ?」
月光を浴びながら期限良さそうにつぶやくカトレアに、ジャックは疑問の声を浮かべる。
誰も彼もが都合よく進化できたのであれば、世の中もっとモンスターが跋扈していても不思議ではないからだ。
【まぁ、そうですよね。自分のなれたいものに楽になれたら楽ですけれども…変な方向に成ることだってあると思いますし】
【でも、思い続けて叶うのであれば、それはかなり良いんだぜ】
カトレアの思いに対して、ハクロ達は理解を示す。
願い続けるその気持ちは、分かるのだ。
【なのなの…なのっ、来た来たきたなの!!】
「っと、どうやらその時が来たのか」
目を見開き、彼女の身体が光に包まれ、変わっていく。
花びらが飛び交い、その身に宿していた葉っぱもちぎれ、空へ舞う。
花が失われ、足が生え、ぐぐっと栄養が消費されてなのか成長していき、月明かりの元舞台に立つかのようなきらめきをもって、その身を大きく転じさせる。
薄い桃色の花弁は足元から背中へ、その羽根へ。
風にあおられ、髪色は月明かりの白さも加わってきらめくように風になびく。
【なの…ついに、ドリアードへ…いや、これ何か、違うのなの】
「うん、確かにどう見てもドリアードと言うか、別ものになったというべきか…」
【どっちかと言えば…妖精とかそういう類に近いような】
【…なのぉおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?】
…望んでいた姿とは、また違う変化。
ファイがそのスライムボディを器用に変えて鏡のように姿を映し出し、自身の状態を見て声を上げるカトレア。
これはこれでありなような気がしなくもないのだが、望んでいた姿とは違うことに、嘆いているようであった…
【悪くはないけれど…確かに、前よりはあるけどなの、無いのなの!成長はしているけど、していないのと言って良いのなのぉおお!!】
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…ひとまずどういう種族が、わかりそうな教師へ確認しに向かいますか。
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