絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

志位斗 茂家波

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少し広がっていく関係性

log-138 あっちもこっちもうごくもの

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「…進化のために、頑張っているということですの?」
「そうらしいよ。光合成を一杯やって、全力で理想の進化先へ…っと力を入れているらしい」
「ああ、だからですの…」

【なのなのなの…】

…お昼時、昼食を食べつつミラージュは気になっていた光景があったので、その原因を知っていそうなジャックに問いかけていた。

 なんでも現在、彼の従魔の一体であるアルラウネ…学園の校庭であちこちから名一杯葉っぱを生やし、全力で光合成を浴びている彼女に進化の兆しがあるらしい。

 ただ、進化には色々と条件もあるようで、彼女は何か理想の進化先があるのか、それになるために全力で光合成をおこない、栄養を蓄えている様子。


(…厄災種予備軍ともされる、モンスターの進化。順当にいけば進化種としてまだ厄災種になりそうな気がしなくもないですけれども…)

 皇女としての立場からすれば、可能ならば不安なことではあってほしくないとは思う。

 今はしっかり敵対せずに、仲はそこそこの学友として話すことがあるからこそ、彼は悪意を持っているようには見えず、危険性が高いわけではない。


 だがしかし、ひとたび力を振るう機会があれば、それこそこの帝国すらも軽く凌駕するだけの力を…厄災種及びその予備軍とされるモンスターたちを操るのだ。

【まぁ、進化先って選べるわけじゃないですからね。自分の成りたい方向に成れる可能性があるのであれば、欲するのもわからなくもないですよ】
【まぁ、そういうものだな。オレもコノ姿に進化して強くなっているのは良いが…時々あの小さかった時のほうが楽だったなぁ、って思うこともあるぜ】
「そういうものですの?」

 進化に関して想うところがあるのか、ハクロやルトライトが語るその内容に、ミラージュはふと問いかけた。

【そういうもの…といえばそうなるかナ?あたしのようなスライムは、基本的に環境要因が色濃く出て様々な方向へ進化するのはわかっているのですが、そうでないもの、普通のモンスターがその身を大きく転じる進化が起こりえる時、自身でも理解できないことがきっかけで、変わってしまうことが多いのでス】

 正確に言えば進化と言う言い方も正しくはないらしい。
 生態的な肉体恒星の再構成及び最適化や特化を行う…色々と様々な説明が入り混じった言葉になるようだが、過去にとあるモンスターに関しての学者が面倒くさいから一言で「進化」でくくったらしいが、その様々な内容が入り混じっているがゆえに、理想の姿へ変貌するのは難しいものでもあるようだ。

【そういうものらしいがな…我としてはわかりづらい感覚だ。そもそも、元人間の身であるからこそ、純粋なモンスターのその進化への熱望も理解しづらいのもあるが…】
【そもそも既に死体であるアンデッド系のモンスターが、進化による成長ってあるのでしょうかね?】
【ありえなくはないらしいですヨ。帝国ギルドの公式記録によれば、デュラハン・ボンバーマンというものも大昔いたらしいですシ】
【なんだそれ?】
【デュラハンの離れる頭が爆弾になっていて、投げつけまくってきたらしいですネ。最終的には聖水がたっぷり入った水に頭を突っ込んで、自爆したそうですガ】

 一体何をもって、そんなことをするデュラハンになったのだろうか。

 ツッコミどころがありそうだが、とりあえず目の前にいる方のルミと言うデュラハンにはその適正はないだろう。

【うーん、私もなってみたい進化はあるんですけれども…正直、今の姿だと確実に無いなぁと思う気持ちとこれはこれで良かったかなと思う気持ちがありますねぇ…】
「え?ハクロも何か、カトレアがドリアードになりたいみたいに、何かなりたかった進化先があったの?」
【ええ、私の小さいときに憧れですが…お母さんみたいな姿になりたかった時があったんですねぇ。今にして思えば、もしもそうなっていたら…確実に、ここ潰れるのでなれなくてよかったような悲しいような…】
「どんな姿をしていますの?その理想の姿と言う…貴女のお母様って」

 ハクロの語る、過去に抱いていたという理想の姿。
 彼女の母親と言うが、このモンスターの母親ってどういうものなのか、気になるのだ。

【そのままというか…大きくて、力づよくて、優しくて、厳しくもありつつ時々寝相で山が一つ潰れるのに巻き添えになったりするように抜けたところもありましたが、私や家族みんなを愛してくれた凄い大好きなお母さんの姿ですよ】
「普通のお母さん、寝相で山を潰さないと思うけど…」
「その言葉だけで、桁外れな体格を持った姿が思い浮かびますわね…」

 情報量が少ないが、少なくともまともに人前に出てきてはいけないものなのは予想できる。
 厄災種の母親は下手すればそれ以上のものなのかもしれない。

(…でも、それはそれで妙な話ですわね。そこまで大きなものならば、どこかで情報もありそうなものですのに…)

 非常に時に備えてなのと、国としてはしっかりと知っておく必要があるからこそ、実はハクロ達に関しての過去情報を探っているところは多い。

 下手な逆鱗に触れたくもないということで、どこかで情報が滞っている可能性も無きにしも非ずだが…


(…植物の彼女は道中で、デュラハンの彼女は過去のとある聖国の騎士で、スライムの彼女は実験の失敗作らしくて、オーガの彼女はどこかの群れが悪魔によって…様々な場所は、色々と出てくるけれども、蜘蛛の…ハクロさんに関しての情報は、少ないですわねぇ…過去にデュラハンと旅をしていたということで、その目撃談等は集まってますけれども…)

 それよりももっと前の情報に関しては、やけに少ない。
 
 モンスターではあるが、美しい女の姿である彼女たちに関して目撃情報は山ほど出てくるというのに、ハクロに関してはその過去のほうが中々探れないのだ。

(…まぁ、それでも彼を…ジャックを番として第一に見ていて、その彼が彼女を御せているのであれば問題は無い…はずですわよね?)

 将来的にジャックがハクロに性的な意味で捕食されそうな気がしなくもないが、危害を加えるということはおそらくないだろう。

 ジャック自身が悪人ではないということで、悪くなることはないとは思うが…それでもわからない部分が多い。


 どうして彼女は、厄災種としてのそこまでの力を持っているのか。
 情報によれば過去の悪魔との対峙の中で、『格が下がっている』という話もあり、もしかするとモンスター以上の何かと言う可能性もあるかもしれない。

「…まぁ、それはそれで何かあったとしても、どうしようもならないのが問題しかないですわね」
「ん?何か問題が?」
「いいえ、何でもないですわ」

 正直言って、とんでもない存在だとしても、国が総力を挙げてどうにかなるのかと言えば、どうにもならないという現実がある。

 物凄く馬鹿な物ならばそれでも手段があると考えて、やらかし、そして盛大に迷惑をかけるというのもまたあってほしくはないがありえなくもない可能性だろう。


 今やれることとすれば、とりあえずは信頼関係を着実に構築していくしかないかと、思うのであった…


「しかし進化かぁ…自分も違う姿になれるなら、なってみたくもあるな」
「え?ジャックにも何かありますの?」
「…その、もう少しこう…身長とか色々と…」
「…」


…彼女たちに関して考えるよりも前に、まずはジャック自身がもっと肉体的な意味での成長を望んでできたほうが良いだろう。

 見た目的な意味と言うべきか、もっと好青年といった雰囲気になったほうが良いような…

「もっと、自分の成長の可能性を、カトレアさん以上に信じて頑張ったほうが良いですわよ」
「何そのものすっごく憐れそうな目!?」
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