絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

志位斗 茂家波

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少し広がっていく関係性

log-136 アシキモノドモタクラミウマクユカズ

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…色欲の再召喚は成功した。
 
 しかし、それはすぐに失敗に終わった。


 召喚を行わせ、地脈を利用した強化までは良かっただろう。
 だが、その後の行為が…盛大にやらかしていたのもあり、自滅したという悲しい結果になっているのはよくわかる。


『済まない、馬鹿を焚きつけて調子に乗らせてまでは良かったが…呼ばれた色欲の型枠に入った悪魔が、とんでもない大馬鹿者のせいで、再び失った』
『呼び寄せる…までは良かったのに、そこで何でやばいやつらへ挑んじゃったかなl』


 エルメリア帝国帝都近く…とある宿屋。
 その場にて、常識と憤怒の悪魔であるガルストは、通信用の魔道具を用いて報告を行っていた。

『数年前にゴルズドンも失って、嫉妬のほうもまだ欠けているというのに…何で時間がかかってようやく目途が付いた色欲が自爆まがいなレベルでやらかしてしまうのやら』
『力に溺れてしまったようだ。地脈を糧にパワーアップを測るというのは良かったのだが、常識的に考えてそのまま静かに潰していけばよかったのに…元となっていた悪魔が相当駄目だったらしい。相性が良くて一気に力の底上げが出来たとしても、元からの性質的なものにも影響されて愚かな選択をしてしまったようだ』
『…あの、魔法陣の構築には相当時間がかかったのに、何たる結果か。それとも、贄などの質が良くなかったのか…』

 様々な理由が想像できるが、それでも納得いく結果にならなかった。

 一応、今回挙げられた功績といえば、他者を利用しての召喚は可能と言うことぐらいだろうか。



『愚者を利用しての召喚術はうまくいくか…利用できる愚かなものは多いから、そこは数を重ねて確認するしかないか』
『しかし、滞在の型枠は現在少ないのでは?』
『誰が貴重な型枠を消費してまでやると言った。枠を消費せず、どのようなものならば最適なものを引き当てることができるのか調べるだけで良い』
『ふむ…しかしそれだと、大量の同胞が…悪魔が消費されますが』
『構わない。どうせ貴様らは、いくらこの世界で消滅させられようが、魔界とやらで復活できるのだろう?使い切ったところで、その頃には大量の実績を得ているわけだから、復活までの帰還で準備もしやすいだろう』

 その言葉に、ガルストは面白くなさそうな表情を浮かべる。
 確かにそのとおりであり、悪魔はこの世界で肉体を滅ぼされようが、並の方法ではそう簡単に存在を失うようなことはない。

 あるとすれば、それこそ神の御業レベルか、聖女と呼ばれるような輩の攻撃か、あるいはより高位の悪魔による存在をぶつけられることか、はたまたは…数えると意外にあるが、失う時の痛みはあるモノ。


 どこの誰が、せっかく得たこの世界での活動できる肉体を好き勝手に消滅させられるような目に遭いに行くというだろうか。


 しかし、それに逆らうことはできない。

『…分かった。適当な愚者を見繕って、広めてくるとしようか』
『ああ、そうすればいい。ああ、それともう一つやってほしいのだが無気力のやつがいただろう?ちょっとそちらにこれを届けてほしい』
『む?あいつは今、無気力教とかでガッツリ広めている最中だが…何かあるのか?』
『その通りだ。どうやら蟲のやつから得た情報だが、今代の聖女が討伐しに向かったらしい。悪魔のやっていることだ、相手はようやくわかったようだが…念のためにな。無気力のやつがそうやすやすとやられるわけがないとは思うが…』
『字面的に無気力だからこそ負けそうな気がするのに、知っているから敗北の光景が浮かばないが…』

 悪魔としての呼び名を考えると、もうちょっとマシなものがなかったのかと思いたい。

 しかし、それでもやることはやっておく必要があるだろう。


『かつて、とある聖女にこの術式を破られた苦い思い出もあるが…今代では無理だろう。だが、油断せずに進めてくれ』
『分かった』

 確認し、そこで通信が途切れる。

 企みはじっくりと、進んでいくようであった…






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