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少し広がっていく関係性
log-閑話 ある悪魔の独白 その③
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…アウトフェルノ聖国の聖女ステラの企みとして、キープのために騎士団に入れられて一年。
正直言って、ここまでやれるとはリア自身思っていなかったところもある。
しかし、これが現実なのだと受け入れるしかないというべきか…
「…これより、鬼神聖女騎士団長と対をなす鬼神聖騎士団の団長として任命する」
「はっ…」
聖国の教皇の名のもとに行われた、就任式。
それは、聖女の護衛を行う騎士団長の任命だったが、リアがそれに選ばれたのである。
聖女に騎士に任命され、様々な手ほどきを得て騎士としての型を取得して働いた日々。
各地のモンスターを討伐する功績を上げていったが、凄い多いわけでない。
しかし、討伐して見せたものが、より大きな価値があったのだ。
「まさか、竜種災害の予兆が出た地域で、一晩もかからずに全滅をさせたりしたの驚いたな」
「ああ、その他にも海でのクラーケンを釣り上げての勝負だとか、アダマンタイトゴーレムが出てきたときは剣を使わずに拳で砕いたとか、聖女様に負けず劣らずと言って良いレベルで凶悪な奴らをぶちのめすとはな」
「戦いだけではなく、孤児院への慰問や騎士団への予算の流れの見直しや、不正な部分を見直してさらに利益を上げるようにしたとか、どれだけやっているんだよって話だ」
(…やっちまったなぁ)
生来の性分と言うべきか、なんというか。
騎士団として過ごす中で気になったものが色々とあったので、やりやすいように手直しをしているつもりだったが、功績をかなり挙げてしまったらしい。
そのせいで色々積み重なり、ついには騎士団長の座にまで上りつめてしまったのであった。
「ついでに言うのならば、剣の腕前もほぼ互角とはな…悔しいが、その実力だけは認めざるを得ないか」
「初日はぼっこぼこにされましたからね…ははは」
それでも、ここまでやるだけの実力はついた。
人間研修の中で、この立身出世の記録と言うのは大きな経験になるだろう。
そう考えれば、悪魔ゼリアスとしての経験でも、そう悪くはないのかもしれない。
(…と言うか本来、人間研修中は悪魔の記憶も封印しているはずなんだが…何度か、死にかけたせいかロックが壊れたか)
そう、研修期間中は悪魔としての力も記憶も封印された状態。
そのため、それらの知識や力も使うことができないはず。
だがしかし、何度か死にかけ…正確に言えば、騎士として無茶苦茶な討伐命令などで出向いたりして死線をいくつかかいくぐりまくったのが原因で、封印が解けている様子。
ただし、あくまでも記憶だけであり、悪魔のものが行かせはしなかったので、ほぼこの人間リアとしての実力だけでやり遂げたものである。
「正直言って、時折あった聖女の突撃もきつかったなぁ…」
「ある意味ご褒美のような物だというのに文句を言うな」
「そうは言われてもなぁ…」
聖女の身であるはずなのに、彼女、肉食系過ぎないだろうか。
そのあたりに関しては、もっと女騎士団長のアルミナのほうに制御してほしいところがある。
「まぁ、先日の邪竜騒動では笑顔で話しかけながら竜の尻尾をつかんで武器代わりに扱っていたりして、助かったりしているから…何とも言えないか。と言うか、本当に聖女なのかと疑いたくなるようなことが多かったような…」
…ああいう聖女が過去にいなかったわけではない。
聖女とは、確かに慈しみ人々を癒し、瘴気を祓い、人々を魔から解放する者。
それが魔法であれ物理的なものであれ、そのやり方は様々な物であり、この国の今の聖女の方向性は拳で語るもの。
間違ってはない…はずなのだが、絵面が色々と酷く、ツッコミが追い付かないだろう。
過去の似たような聖女だと、拳ではなく足でけり飛ばしたり、あるいは目からビームを打ったなんて話も…後者の方がまだ人間離れしているからそっちの方が聖女らしい気がする。
とにもかくにも、騎士団長の座に就任した以上はより一層その責任が問われるもの。
人間研修中の身としては、こういう高い地位についてのものも学ぶこともあるから悪くはない。
「そしてついでに、各地の情報も集めての騎士の派遣や訓練内容の確認、賞与のための各騎士たちの勤務態度や人間関係の構築修正その他作業…量が多いな」
上の立場の者だからこそ、仕事量もかなり多くなる。
書類の山を効率よく仕分けし、手早く進めていた…そんな時だった。
「ふへぇ‥‥リア、ちょっとここにかくまってほしいなぁ」
「っと、聖女様…どうしたんですか、珍しく疲れた様子で」
いつも元気いっぱいで、本日も瘴気を全力で祓いまくっていた聖女が、何やら疲れた様子で室内に入ってきた。
「ちょっとねぇ、あの人…教皇候補たちの身辺調査をしてたんだよ」
「教皇候補たち…今、我々も色々調べてますが、何かありましたか?」
今の教皇は歳のこともあって隠居を考えており、そろそろ次代へ変わる時期が近づいている。
そのため、時期教皇を定めるために何人かの候補が出ており、何か怪しいところがないか調査を行っているのだ。
聖女自身が調査に出なくてもいいのだが…どうも気になるものがいるらしい。
「5名出ているけど、1名は良し、2名は微妙なところ、1名は救いようのない変態だったことがわかったけど表立つようなことはないから見なかったことにできるとして…残る一名が真っ黒過ぎてアウトだったよ」
「真っ黒って…教皇候補になる時点でそれなりに身を改めてないとなれないはずなのだけど、そこまでですか?」
一名変なのが混ざっていたが、それは見ないふりをしておく。
「ええ、そうなのよ。ほら、この資料を見て」
そう言いながら聖女が手渡してきた資料に、リアは目を通す。
拳で何もかも爆砕していくような彼女だが、こういう仕事ができないわけでもないのだ。
「これは…裏帳簿に…違法薬物…いや、他にも悪魔召喚の手続きだと…真っ黒にもほどがないか?」
「そうでしょ。怪しいから調べてみたけど、どうも賄賂以外にも…悪魔を呼んでやらせていたこともあるらしいのよね」
…悪魔を利用した改ざんの痕跡。
並の人間ならば気が付けないだろうが、聖女だからこそ暴けたのだろう。
(…この様子だと、中…いや、上の下ぐらいの悪魔か。これを呼び出すとなると、それ相応の代償が必要になるが…ああ、こっちの人身売買系のほうで調達してか…)
悪魔としての知識があれば、さらにどのような流れで行われていたのかも見えるが…中々ひどい様子だ。
「ふむ…いや、これ聖女様が手を出すまで気が付かなかったというのもおかしな話だな…これは相当、隠蔽工作が行われているかもしれない」
「そうなのよね。そのあたりも探るのも大変で…ちょっと癒してほしいなぁ~」
「仕事へ戻れ。癒しは専門外だ」
「え~~」
リアの言葉に対して、残念そうに口をとがらせて応える聖女。
実は悪魔の知識を使えば使えないこともないが、この聖女には無駄である。
「そもそも、聖女様なら常に自身を回復させて最適な状態にしているだろ」
「それもそうだけどね~。でも、やっぱり人に触れて癒されたくもあるのよ。特に、一目ぼれした相手とはこう濃厚で熱烈な!!」
ばっと飛び掛かる体制に切り替え、ジャンプする聖女。
しかし、その動きは読めている。
「『偽物の聖剣改めハリセン』!!」
スッパァァァァンン!!
「あーーーーーーーーーーーー!!」
聖騎士になっている以上、聖なる攻撃は一応可能。
悪魔の肉体ではなく人間の肉体だからこそより扱いやすく、なおかつ聖女特攻用にこればかりは魔改造した技である。
創り出された輝くハリセンは相手に一切のダメージは与えないが、概念として『必ず吹っ飛ぶ』ようになっており、お手軽かつ安全な道具として扱えるのだ。
そんなわけで、聖女が綺麗に部屋から吹っ飛んで星になったが…どうやら厄介な案件が出てきたようであった…
「それにしても、悪魔の手が混ざっているとはいえ、こういうのも出るとはなぁ…この国、だいぶ週末に近いのかもしれないか…」
…終わりが見えてきた国と言うのは、どこかでおかしくなるもの。
そのおかしいものが表面に出てきたのであれば…防ぎようがないだろう。
正直言って、ここまでやれるとはリア自身思っていなかったところもある。
しかし、これが現実なのだと受け入れるしかないというべきか…
「…これより、鬼神聖女騎士団長と対をなす鬼神聖騎士団の団長として任命する」
「はっ…」
聖国の教皇の名のもとに行われた、就任式。
それは、聖女の護衛を行う騎士団長の任命だったが、リアがそれに選ばれたのである。
聖女に騎士に任命され、様々な手ほどきを得て騎士としての型を取得して働いた日々。
各地のモンスターを討伐する功績を上げていったが、凄い多いわけでない。
しかし、討伐して見せたものが、より大きな価値があったのだ。
「まさか、竜種災害の予兆が出た地域で、一晩もかからずに全滅をさせたりしたの驚いたな」
「ああ、その他にも海でのクラーケンを釣り上げての勝負だとか、アダマンタイトゴーレムが出てきたときは剣を使わずに拳で砕いたとか、聖女様に負けず劣らずと言って良いレベルで凶悪な奴らをぶちのめすとはな」
「戦いだけではなく、孤児院への慰問や騎士団への予算の流れの見直しや、不正な部分を見直してさらに利益を上げるようにしたとか、どれだけやっているんだよって話だ」
(…やっちまったなぁ)
生来の性分と言うべきか、なんというか。
騎士団として過ごす中で気になったものが色々とあったので、やりやすいように手直しをしているつもりだったが、功績をかなり挙げてしまったらしい。
そのせいで色々積み重なり、ついには騎士団長の座にまで上りつめてしまったのであった。
「ついでに言うのならば、剣の腕前もほぼ互角とはな…悔しいが、その実力だけは認めざるを得ないか」
「初日はぼっこぼこにされましたからね…ははは」
それでも、ここまでやるだけの実力はついた。
人間研修の中で、この立身出世の記録と言うのは大きな経験になるだろう。
そう考えれば、悪魔ゼリアスとしての経験でも、そう悪くはないのかもしれない。
(…と言うか本来、人間研修中は悪魔の記憶も封印しているはずなんだが…何度か、死にかけたせいかロックが壊れたか)
そう、研修期間中は悪魔としての力も記憶も封印された状態。
そのため、それらの知識や力も使うことができないはず。
だがしかし、何度か死にかけ…正確に言えば、騎士として無茶苦茶な討伐命令などで出向いたりして死線をいくつかかいくぐりまくったのが原因で、封印が解けている様子。
ただし、あくまでも記憶だけであり、悪魔のものが行かせはしなかったので、ほぼこの人間リアとしての実力だけでやり遂げたものである。
「正直言って、時折あった聖女の突撃もきつかったなぁ…」
「ある意味ご褒美のような物だというのに文句を言うな」
「そうは言われてもなぁ…」
聖女の身であるはずなのに、彼女、肉食系過ぎないだろうか。
そのあたりに関しては、もっと女騎士団長のアルミナのほうに制御してほしいところがある。
「まぁ、先日の邪竜騒動では笑顔で話しかけながら竜の尻尾をつかんで武器代わりに扱っていたりして、助かったりしているから…何とも言えないか。と言うか、本当に聖女なのかと疑いたくなるようなことが多かったような…」
…ああいう聖女が過去にいなかったわけではない。
聖女とは、確かに慈しみ人々を癒し、瘴気を祓い、人々を魔から解放する者。
それが魔法であれ物理的なものであれ、そのやり方は様々な物であり、この国の今の聖女の方向性は拳で語るもの。
間違ってはない…はずなのだが、絵面が色々と酷く、ツッコミが追い付かないだろう。
過去の似たような聖女だと、拳ではなく足でけり飛ばしたり、あるいは目からビームを打ったなんて話も…後者の方がまだ人間離れしているからそっちの方が聖女らしい気がする。
とにもかくにも、騎士団長の座に就任した以上はより一層その責任が問われるもの。
人間研修中の身としては、こういう高い地位についてのものも学ぶこともあるから悪くはない。
「そしてついでに、各地の情報も集めての騎士の派遣や訓練内容の確認、賞与のための各騎士たちの勤務態度や人間関係の構築修正その他作業…量が多いな」
上の立場の者だからこそ、仕事量もかなり多くなる。
書類の山を効率よく仕分けし、手早く進めていた…そんな時だった。
「ふへぇ‥‥リア、ちょっとここにかくまってほしいなぁ」
「っと、聖女様…どうしたんですか、珍しく疲れた様子で」
いつも元気いっぱいで、本日も瘴気を全力で祓いまくっていた聖女が、何やら疲れた様子で室内に入ってきた。
「ちょっとねぇ、あの人…教皇候補たちの身辺調査をしてたんだよ」
「教皇候補たち…今、我々も色々調べてますが、何かありましたか?」
今の教皇は歳のこともあって隠居を考えており、そろそろ次代へ変わる時期が近づいている。
そのため、時期教皇を定めるために何人かの候補が出ており、何か怪しいところがないか調査を行っているのだ。
聖女自身が調査に出なくてもいいのだが…どうも気になるものがいるらしい。
「5名出ているけど、1名は良し、2名は微妙なところ、1名は救いようのない変態だったことがわかったけど表立つようなことはないから見なかったことにできるとして…残る一名が真っ黒過ぎてアウトだったよ」
「真っ黒って…教皇候補になる時点でそれなりに身を改めてないとなれないはずなのだけど、そこまでですか?」
一名変なのが混ざっていたが、それは見ないふりをしておく。
「ええ、そうなのよ。ほら、この資料を見て」
そう言いながら聖女が手渡してきた資料に、リアは目を通す。
拳で何もかも爆砕していくような彼女だが、こういう仕事ができないわけでもないのだ。
「これは…裏帳簿に…違法薬物…いや、他にも悪魔召喚の手続きだと…真っ黒にもほどがないか?」
「そうでしょ。怪しいから調べてみたけど、どうも賄賂以外にも…悪魔を呼んでやらせていたこともあるらしいのよね」
…悪魔を利用した改ざんの痕跡。
並の人間ならば気が付けないだろうが、聖女だからこそ暴けたのだろう。
(…この様子だと、中…いや、上の下ぐらいの悪魔か。これを呼び出すとなると、それ相応の代償が必要になるが…ああ、こっちの人身売買系のほうで調達してか…)
悪魔としての知識があれば、さらにどのような流れで行われていたのかも見えるが…中々ひどい様子だ。
「ふむ…いや、これ聖女様が手を出すまで気が付かなかったというのもおかしな話だな…これは相当、隠蔽工作が行われているかもしれない」
「そうなのよね。そのあたりも探るのも大変で…ちょっと癒してほしいなぁ~」
「仕事へ戻れ。癒しは専門外だ」
「え~~」
リアの言葉に対して、残念そうに口をとがらせて応える聖女。
実は悪魔の知識を使えば使えないこともないが、この聖女には無駄である。
「そもそも、聖女様なら常に自身を回復させて最適な状態にしているだろ」
「それもそうだけどね~。でも、やっぱり人に触れて癒されたくもあるのよ。特に、一目ぼれした相手とはこう濃厚で熱烈な!!」
ばっと飛び掛かる体制に切り替え、ジャンプする聖女。
しかし、その動きは読めている。
「『偽物の聖剣改めハリセン』!!」
スッパァァァァンン!!
「あーーーーーーーーーーーー!!」
聖騎士になっている以上、聖なる攻撃は一応可能。
悪魔の肉体ではなく人間の肉体だからこそより扱いやすく、なおかつ聖女特攻用にこればかりは魔改造した技である。
創り出された輝くハリセンは相手に一切のダメージは与えないが、概念として『必ず吹っ飛ぶ』ようになっており、お手軽かつ安全な道具として扱えるのだ。
そんなわけで、聖女が綺麗に部屋から吹っ飛んで星になったが…どうやら厄介な案件が出てきたようであった…
「それにしても、悪魔の手が混ざっているとはいえ、こういうのも出るとはなぁ…この国、だいぶ週末に近いのかもしれないか…」
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