絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

志位斗 茂家波

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少し広がっていく関係性

log-135 代償と言うものはそこにもあり

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―――悪魔は打ち滅ぼされた。

 それは良いだろう。この帝国内で一つの脅威が失われたのだから。

 ただ、学生が召喚をしたという事実は残されており、また外部からの介入で引き起こされる可能性はあるだろう。

 そのため、現在帝国の学園…だけではなく、帝都全体で警戒態勢は続けられており、油断せずに対策を練り続けているようだ。


「…まぁ、あれだけのやばい悪魔が出たのは地脈を利用されたのもあるけど…本当に厄介だな、悪魔って」
【可能ならば、今のうちに全部滅ぼしたほうが良いのだろうが…たいていの場合、こういう輩はほとぼりが冷めるまで隠れることがあるから厄介なんだよなぁ】

 はぁぁっとため息を吐きつつ、周囲は未だに警戒態勢とはいえ、帝都内の学園もまた通常の授業の状態に戻り、一時の平穏な時間は流れていた。

 しいて問題を一つ上げるのならば、人の口にそう簡単に出せないものが追加されたというべきか…



【しいてどころか、我としては相当納得いかぬが…いいのか、悪魔が教師をやっていて】
『一応、教員免許は正式なものを持っているから問題は無いよ』
【何で悪魔が持っている?偽物でも用意したのか?】

 ある授業をジャックが受講している時、別室…学園内に密かに作られたとある室内にて、ルミは悪魔ゼリアス…この学園に改めて教師として潜り込んでいた悪魔ゼリアスに問いかけていた。


『悪魔は基本、願いをかなえるために人を学ぶ。その中で、培ったものがあるんだよ。まぁ、この教員免許に限っては、偽物じゃなくて本物だ。記憶操作を行ってこっそり入り込むってこともできるが…アレは色々と面倒でね。堂々と真正面から人間のふりをして揃えたものがある方が、何かと楽だったりするんだよ。この教員免許も、しっかりと十数年前にとある召喚で必要になったから、取得しているから本物だ。まぁ、更新とかで少々厄介な部分もあるから、そこはどうしようもないから色々とやっているが…非合法ではなく、正規の手段のものだから問題ないよ』
【生前の、その人間研修時代…人間の肉体を持っていた時の性格と、本当に変わらんな。あの時も聖女様に色々強制されたとは言え、割と真面目にやっているのは変わらぬか】
『いや本当に、アレはきつかった。騎士にされたし、本当ならば全力で離れられるようなものになろうとして…何故かやることなすこと全てが裏目に出て、とんとん拍子で立身出世したからなぁ…』

 遠い目をしてそうつぶやくゼリアスに対して、はぁっとため息を吐くルミ。
 先日の色欲の悪魔騒動以来、この悪魔ゼリアスが居ついた様子であり、警戒しているとはいえこの真面目さに関して疑うところがない。

 彼に関してはこれまで襲ってきた悪魔たちとは違い、生前の関係があるからこそ、危険性としては他よりは低いだろう。
 いや、その悪魔としての階級や実力等ははるかに上を行くのだが…それでも、それなりの安全性は持っているとは言える。

【大体、お主が興味を持ったのは我が主殿に関してであろう?】
『そうだね。アルミナ隊長…いや、今のデュラハンとしての名であればルミだったか。そんなのも飼い慣らすような人間なんてもの、人でなくても興味を持たないわけがない。…厄災種を手元に持つ人間なんて、お目にかかれるようなものでもないよ』

 ルミの問いかけに対して、そう答えるゼリアス。
 のらりくらりと、ジャックに関して興味を持ったからと言う理由だけでその真意を見せないのが不信感を持つ部分もあるが、人間の時のリアとしての彼を知っている身でもあるからこそ、完全に悪意を持ってではないこともまた理解している。

『まぁ、だからこそ…周囲は放っておかない。それはあくまであっても同じだし…違法な召喚術式によって呼び出された悪魔を引き寄せる餌としても十分効果的だと思うけれど』
【主殿を餌呼ばわりするな】
『ははは…こりゃ失敬。でも、間違っていないだろう?』
【ぬぅ…】

 ハクロにカトレア、ルミ、ファイ、ルトライト…様々なモンスターであり、その実力も桁外れなものを率いている人間と言うだけで、様々な物の興味を引き、なおかつ物理的に引き寄せる可能性は否定できない。

 使えるべき主に対してこう思うのはどうかと言う部分もあるが、言い訳の仕様がない。

『それで他のやつらを引き寄せる可能性があるなら、近くで見ていたほうが良いし…それに何よりも、この感じだと…いや、今は言うべきではないか。とりあえず、気になることが色々とあるから、しばらくの間はこれで過ごすよ。何かあった時は、手助けぐらいは少しはしてあげるしね』
【手助け?特に貴様の手を借りることはないが…】
『必要になる時はあるよ。これは悪魔として珍しく代償の無い取引のような物だから気にするようなこともないよ』

 ゼリアスの言葉に対して、思うところはあったが…今は何か、言えるようなものもない。

 悪魔が紛れ込んでいるこの状況は良いものではないのだが、それでも自身の主のためになるのならばと考え、渋々黙っておくことにしたのであった…



『それにしても、あのアルミナ隊長がデュラハンか…あの最後ならば分かるが、こうやって目の当たりにすると本当に驚くよ』
【あの最後とやらか…念のために聞くが、我の死後に何か干渉したりとかはしてないよな?】
『やっていない。やるならあの聖女に施して、来ないようにすることができた。あの当時は、本当に悪魔の力がない人間としての時代だったしな…本当に、そんなことが出来たら来なかったのに‥‥』
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