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少し広がっていく関係性
log-閑話 ある悪魔の独白 その②
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ーーー聖女というくくりがあっても、そのありようには様々なものがあるだろう。
持っていたイメージとしては優しく、人々を笑顔にし、癒し、活気づけるようなもの。
だがしかし、アウトフェルノ聖国の聖女はそのイメージを盛大にぶち壊すような豪快さを持っていた。
「必殺、聖女パァァァンチ!!」
パァァアン!!
「…マジか、あの単眼巨人が一撃で爆散したんだけど」
「それが、我らが聖女様の実力だからな。あの聖なる力が溢れすぎて、穢れ過ぎた瘴気のものでは耐えきれないのだろう」
目の間で拳が沈み込む前に、纏っていた光だけで爆散したモンスターを見てゼリアス…もとい、その時代の人間として過ごすためのリアと言う名を得ていた青年ががそうつぶやくと、聖女のための神聖騎士の一人であるアルミナがそう答えた。
「あのお方は生まれ持っていた力が強すぎてな、ああやって攻撃に取り入れることで、これまで大量のモンスターを潰したものよ…」
「怖ぁ…」
「さらに自身を強化し、巨体のモンスターがいればそれ自体を武器として、振り回す光景も凄かった。一撃で上半身が砕け、二撃で足首から先が消失し、最後は投げつけ多くを爆散させ…余すところなく活用したあの戦いぶりは、後世にも語り継がれることだろう」
「それ本当に語り継いで良いものなのか?」
色々と思うところがあるが、そもそもなぜ今…ただの人間に過ぎないはずのリアはこの場にいさせられているのか。
「そのうえ何故、騎士にされたのか…」
着ている衣服は普通の町人のものではなく、騎士としての鎧。
騎士団と共にならばされている状態であり、半ば拉致の上の強制入団と言ったところだろうか。
しかるべきところに訴えれば、勝訴をもぎ取れそうなものではあるが…
「聖女様が、お前をどうしても手元に置きたいからと言うことで、無理やりだが引きずり込んだのだ。本来ならば許されぬことだが…枢機卿や教皇を埋めたからな。滅多にそのような脅しの手を使わぬ聖女様だが、それだけ貴様を置きたかったのだろう…聖女様をたぶらかした貴様は今すぐにでも、斬首してやりたいがな」
「だからそれ本当に聖女!?悪魔、いや、それ以上にヤバい何かの所業としか思えないんだけど!?」
明かに職権乱用、聖女が行って良いことではない。
と言うか、既に被害者が出ているのだが‥‥埋めてって、その後どうしたのだろうか。
「普通は聖女の称号剥奪の上の追放になりそうなのだけれども…」
「そうはいかないのが、私なのですよ!」
「うぉっ!?」
ぼそっと本来は起こりえるであろう聖女の未来に関してつぶやくと、突然背後から声をかけられぎょっとするリア。
振り返ってみれば、そこにはこの状況にさせた凶悪極まりない元凶、聖女…ステラ。
キラキラと虹のように輝く髪をたなびかせながら、にやりと笑みを浮かべた。
「これでも聖女としての実力は、この国一番!いえ、瘴気がどぶどぶと溢れ出る状況では私のような存在が必要ですからね!勝機があろうとなかろうとも、敵対する者は常に見敵爆殺の精神でやってますけれどね!」
「言い方が恐ろしいんだけど!?聖女があげるべきではないモットーを言ってどうするの!?」
本当に聖女なのか疑いたくなるが、これでも本当に聖女としての実力は嘘偽りなくトップクラスのものであり、中身を見なければ、黙ってさえいれば聖女としての姿を持っているのだろう。
だがしかし、ひとたび動けばありとあらゆるものを粉骨砕身‥‥本来の意味とは大きく外れ、間違った意味合いとして相手を文字通りのものに変えさせる。
「大体俺を騎士にしてどうするの!?ただの何の変哲もない一般人がなれるわけないだろ!!」
「そのあたりは問題ないですわ。アルミナ、貴女が教えてあげなさい」
「はっ、聖女様」
「彼女の指導を受ければ、一夜漬けでも大丈夫ですわ」
何が大丈夫なのか、理解できるようにしてほしい。
「ああ、そもそもなぜあなたを引きずり込んだのかが分からないって顔をしてますわね」
「そりゃそうだろ」
「単純な話、私が…貴方に惚れたからです。でも、聖女として身である以上そうやすやすと婚姻を結べないので、ある程度の準備ができるまでの間手元に置き続けられるようにしただけなのです!」
「…はぁ?」
…理解しようとしたが、どうやら無理だったようだ。
「非常に、ええ、ほんっとぉぉぉに、度し難いのですがどうも聖女様は貴様に一目惚れしたようでな…結婚が可能になる準備ができるまでの間、キープするために聖女の側に仕える神聖騎士として捕らえることにしたらしい」
苦々しい顔で、本当に苦い決断をしたかのような声を出しながら、アルミナがもう少しかみ砕いた内容を説明する。
どうやらこの聖女、見た目はだいぶきれいだが実はまだ婚姻可能な年齢ではないらしく、その年になるまでの間に、リアに恋人が出来たら非常に不味いと考えたようである。
そこで、それまでの間のつなぎとして自分の手元に置いてより身近で見て感じ取れるようにするため、無理やり引き込んだようだ。
「…そこまで嫌そうな顔をするなら、全力で聖女様に意見を出して諦めさせればいいような」
「聖女様にそんなことができるか!?恐れ多くも立派なこのお方に、諦めるような意見を出せと!?」
「力づくで押さえつけられているとかは…」
「無い。はっきりいって忠誠は本気で誓っている。それゆえに、聖女様の決定は絶対であり、どれほど否定したいものだとしても…聖女様の害になるような輩を雇うようなことになっても止めきれん。ああ、だが安心しろよ?聖女様に任された以上、徹底的に騎士としての心得や精神を叩き込む。そう、聖女様に不埒なことをやらかさないようにもするためになぁ!!」
「全力で、逃げて良いですか?」
「駄目よ、ふふふ…」
逃げる手立ては当の昔に潰されているらしい。
悲しいが、これが現実の要であった…
「…というか、年齢が問題なら教皇とかを脅せるぐらいだし法律を強制的に変えることもできなくはなさそうな」
「そこは聖女様も、流石に自重されたらしい。と言うか、それを許す法律を作るとやばい変態が色々といてな…仕事がらモンスターとまとめて潰しているが…瘴気に関わらずおかしな者が出るのはどうしようもないことだろう」
「え、この国そんなにヤバい人いるのか…?」
…もうこの国、その時点で色々と終ってない?
持っていたイメージとしては優しく、人々を笑顔にし、癒し、活気づけるようなもの。
だがしかし、アウトフェルノ聖国の聖女はそのイメージを盛大にぶち壊すような豪快さを持っていた。
「必殺、聖女パァァァンチ!!」
パァァアン!!
「…マジか、あの単眼巨人が一撃で爆散したんだけど」
「それが、我らが聖女様の実力だからな。あの聖なる力が溢れすぎて、穢れ過ぎた瘴気のものでは耐えきれないのだろう」
目の間で拳が沈み込む前に、纏っていた光だけで爆散したモンスターを見てゼリアス…もとい、その時代の人間として過ごすためのリアと言う名を得ていた青年ががそうつぶやくと、聖女のための神聖騎士の一人であるアルミナがそう答えた。
「あのお方は生まれ持っていた力が強すぎてな、ああやって攻撃に取り入れることで、これまで大量のモンスターを潰したものよ…」
「怖ぁ…」
「さらに自身を強化し、巨体のモンスターがいればそれ自体を武器として、振り回す光景も凄かった。一撃で上半身が砕け、二撃で足首から先が消失し、最後は投げつけ多くを爆散させ…余すところなく活用したあの戦いぶりは、後世にも語り継がれることだろう」
「それ本当に語り継いで良いものなのか?」
色々と思うところがあるが、そもそもなぜ今…ただの人間に過ぎないはずのリアはこの場にいさせられているのか。
「そのうえ何故、騎士にされたのか…」
着ている衣服は普通の町人のものではなく、騎士としての鎧。
騎士団と共にならばされている状態であり、半ば拉致の上の強制入団と言ったところだろうか。
しかるべきところに訴えれば、勝訴をもぎ取れそうなものではあるが…
「聖女様が、お前をどうしても手元に置きたいからと言うことで、無理やりだが引きずり込んだのだ。本来ならば許されぬことだが…枢機卿や教皇を埋めたからな。滅多にそのような脅しの手を使わぬ聖女様だが、それだけ貴様を置きたかったのだろう…聖女様をたぶらかした貴様は今すぐにでも、斬首してやりたいがな」
「だからそれ本当に聖女!?悪魔、いや、それ以上にヤバい何かの所業としか思えないんだけど!?」
明かに職権乱用、聖女が行って良いことではない。
と言うか、既に被害者が出ているのだが‥‥埋めてって、その後どうしたのだろうか。
「普通は聖女の称号剥奪の上の追放になりそうなのだけれども…」
「そうはいかないのが、私なのですよ!」
「うぉっ!?」
ぼそっと本来は起こりえるであろう聖女の未来に関してつぶやくと、突然背後から声をかけられぎょっとするリア。
振り返ってみれば、そこにはこの状況にさせた凶悪極まりない元凶、聖女…ステラ。
キラキラと虹のように輝く髪をたなびかせながら、にやりと笑みを浮かべた。
「これでも聖女としての実力は、この国一番!いえ、瘴気がどぶどぶと溢れ出る状況では私のような存在が必要ですからね!勝機があろうとなかろうとも、敵対する者は常に見敵爆殺の精神でやってますけれどね!」
「言い方が恐ろしいんだけど!?聖女があげるべきではないモットーを言ってどうするの!?」
本当に聖女なのか疑いたくなるが、これでも本当に聖女としての実力は嘘偽りなくトップクラスのものであり、中身を見なければ、黙ってさえいれば聖女としての姿を持っているのだろう。
だがしかし、ひとたび動けばありとあらゆるものを粉骨砕身‥‥本来の意味とは大きく外れ、間違った意味合いとして相手を文字通りのものに変えさせる。
「大体俺を騎士にしてどうするの!?ただの何の変哲もない一般人がなれるわけないだろ!!」
「そのあたりは問題ないですわ。アルミナ、貴女が教えてあげなさい」
「はっ、聖女様」
「彼女の指導を受ければ、一夜漬けでも大丈夫ですわ」
何が大丈夫なのか、理解できるようにしてほしい。
「ああ、そもそもなぜあなたを引きずり込んだのかが分からないって顔をしてますわね」
「そりゃそうだろ」
「単純な話、私が…貴方に惚れたからです。でも、聖女として身である以上そうやすやすと婚姻を結べないので、ある程度の準備ができるまでの間手元に置き続けられるようにしただけなのです!」
「…はぁ?」
…理解しようとしたが、どうやら無理だったようだ。
「非常に、ええ、ほんっとぉぉぉに、度し難いのですがどうも聖女様は貴様に一目惚れしたようでな…結婚が可能になる準備ができるまでの間、キープするために聖女の側に仕える神聖騎士として捕らえることにしたらしい」
苦々しい顔で、本当に苦い決断をしたかのような声を出しながら、アルミナがもう少しかみ砕いた内容を説明する。
どうやらこの聖女、見た目はだいぶきれいだが実はまだ婚姻可能な年齢ではないらしく、その年になるまでの間に、リアに恋人が出来たら非常に不味いと考えたようである。
そこで、それまでの間のつなぎとして自分の手元に置いてより身近で見て感じ取れるようにするため、無理やり引き込んだようだ。
「…そこまで嫌そうな顔をするなら、全力で聖女様に意見を出して諦めさせればいいような」
「聖女様にそんなことができるか!?恐れ多くも立派なこのお方に、諦めるような意見を出せと!?」
「力づくで押さえつけられているとかは…」
「無い。はっきりいって忠誠は本気で誓っている。それゆえに、聖女様の決定は絶対であり、どれほど否定したいものだとしても…聖女様の害になるような輩を雇うようなことになっても止めきれん。ああ、だが安心しろよ?聖女様に任された以上、徹底的に騎士としての心得や精神を叩き込む。そう、聖女様に不埒なことをやらかさないようにもするためになぁ!!」
「全力で、逃げて良いですか?」
「駄目よ、ふふふ…」
逃げる手立ては当の昔に潰されているらしい。
悲しいが、これが現実の要であった…
「…というか、年齢が問題なら教皇とかを脅せるぐらいだし法律を強制的に変えることもできなくはなさそうな」
「そこは聖女様も、流石に自重されたらしい。と言うか、それを許す法律を作るとやばい変態が色々といてな…仕事がらモンスターとまとめて潰しているが…瘴気に関わらずおかしな者が出るのはどうしようもないことだろう」
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…もうこの国、その時点で色々と終ってない?
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