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少し広がっていく関係性
log-134 帝国救いし者
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―――支配と色欲の悪魔が撃ち滅ぼされ、エルメリア帝国の帝都には平和が戻った。
帝国の地脈を利用し、莫大な力を得た悪魔だったとはいえ三日天下…いや、一日にも満たなかったとはいえ、それでも放置しておけば相当な被害をもたらしただろう。
それを阻止したこともあって、功績も中々大きなものになるだろうが…
「…褒美云々よりも、まずは市井の人々への安心と警備の強化を優先すべきかと。悪魔に潜り込まれていた状況、呼び出した者たちに関して把握をしても、そもそも彼らに悪魔召喚の儀式を指示した黒幕もまた、見つかってはいませんからね」
「うむ…ある程度の被害状況に関しての保証はできたが、そのあたりの問題は残っているからな」
臣下のものたちの言葉に対して、そう答えるのはエルメリア帝国の皇帝。
避難場所から城の跡地へと戻り、仮設の城を作り上げ、その場で報告を受けていた。
悪魔はいなくなった、しかし負った傷は大きい。
まだこの程度の被害で済んだのは良かったが、それでも次があってはならないのだ。
調査を進める中で、出てきたのは大きな黒幕の影。
この帝国の中で、悪魔召喚を行うための術式や、地脈を利用した仕込みなど様々なものを作り上げる中では、どう考えてもまともなものが行ったわけではない。
「それと報告では、どうやらモンスターに伝わる圧縮言語の類を組み込んでいるらしく…真似たのか、あるいは黒幕そのものが何かしらのモンスターなのか…」
「不気味だな…そのうえ、悪魔を型枠に当てはめて変質もさせたりなどと、どれほどのものを…」
呼び出すための助力をかけた黒幕。
やらかした生徒は既に命で代償を支払ったようだが、そのやらかしのための準備をした相手は一体何者なのか。
「また、地脈の過剰乱用により当面城の再建後の運用の見直し等も…」
「問題が多いなぁ…」
後始末と言うのは、いつの時代、どこの国であっても大変な様子であった…
『…とまぁ、多分お前たちに帝国側からの褒美が出されるのが、まだ先になりそうな様子だったぞ』
「別に、褒美目当てでやってはないけど…被害全部は、悪魔のほうに上乗せになったのは良かったかもね」
【向かうまでの間に、壁をどれだけ破壊したのか考えたくもないですからね】
【そうだな…いや、待てリア…もとい、ゼリアス。何故貴様が、主殿の部屋にいる】
…仮設王城でそのような会議が行われているその頃。
寮の一室…ジャックの部屋には今、悪魔ゼリアスが訪れていた。
『何故かって?そりゃ…面白そうだと思ったからさ』
ルミが大剣を構える中、ゼリアスはそう答える。
『悪魔は基本的には、取引によって呼び出され、それでこの世界にとどまることはできる。だが、上位の悪魔は…そんな手続きを踏まずとも顕現は可能なのでね。たいていの場合はすぐに帰るが…面白いものを見つけた時は、留まることもあるのさ』
そう言いながら、ジャックたちを見た。
『悪魔を足せるだけの実力を兼ね備えた、モンスターたち…そして、それを従える少年。悪魔的に見ても中々珍しくてね。力の大きさ的に、見過ごせないのさ』
「見過ごせない…脅威になるから、消すとかは?」
『そんなこと、やる気はないよ。相手にできないことはないけど、無駄な労力は使わない主義でね。それに…人間研修時代の同僚もいるのもあるな』
敵対する気はなく、単純にジャックたちに興味を持っただけの模様。
また、何やら過去にルミと関係があったのも影響しているらしい。
【よく言うな…聖女様をたぶらかした悪魔が】
『一方的なひとめ惚れの被害に遭った被害者でもあるんだけどな…できれば地獄から引き取ってほしいんだけど…それができないのがな…』
「え、聖女が地獄にいるの?」
聖女と名の付く相手ならば、むしろ天国とかそっちの方ではないだろうか。
ちょくちょく入ってくるルミの過去話からしても、善行は一応積んでいるようなのだが…
『…色々とあるんだよ。いや、本当に、ほんっとうに‥‥はぁ…』
その質問に対して、何やら口を濁すゼリアス。
それだけで、相当な苦労がうかがえたので、聞くのをやめた。
…聞いたところでどうにかできるわけでもないし、下手に掘り起こしたらそれこそかなり厄介なことになりそうだ。
『まぁ、それはさておき、今の時代においては悪魔と関わるのはそう良くないこと認識はしているからな。今日は顔を出すだけで、普段は別の場所で少し見させてもらうつつもりだ』
【貴様、ストーカーにでもなる気か?】
『誰がなるんだよ、ストーカー被害は12件目で本当に嫌になっているからさぁ…』
悪魔的には今回は少し顔を見せただけで、何か他の目的もありそうな気がしなくもない。
しかし、見たところ本気で相当な苦労を背負い込んでいそうな悪魔だったために、とりあえずは何か悪いことは考えていなさそうかなと判断するのであった…
…本当に、偽りなき心労がこぼれているような。
帝国の地脈を利用し、莫大な力を得た悪魔だったとはいえ三日天下…いや、一日にも満たなかったとはいえ、それでも放置しておけば相当な被害をもたらしただろう。
それを阻止したこともあって、功績も中々大きなものになるだろうが…
「…褒美云々よりも、まずは市井の人々への安心と警備の強化を優先すべきかと。悪魔に潜り込まれていた状況、呼び出した者たちに関して把握をしても、そもそも彼らに悪魔召喚の儀式を指示した黒幕もまた、見つかってはいませんからね」
「うむ…ある程度の被害状況に関しての保証はできたが、そのあたりの問題は残っているからな」
臣下のものたちの言葉に対して、そう答えるのはエルメリア帝国の皇帝。
避難場所から城の跡地へと戻り、仮設の城を作り上げ、その場で報告を受けていた。
悪魔はいなくなった、しかし負った傷は大きい。
まだこの程度の被害で済んだのは良かったが、それでも次があってはならないのだ。
調査を進める中で、出てきたのは大きな黒幕の影。
この帝国の中で、悪魔召喚を行うための術式や、地脈を利用した仕込みなど様々なものを作り上げる中では、どう考えてもまともなものが行ったわけではない。
「それと報告では、どうやらモンスターに伝わる圧縮言語の類を組み込んでいるらしく…真似たのか、あるいは黒幕そのものが何かしらのモンスターなのか…」
「不気味だな…そのうえ、悪魔を型枠に当てはめて変質もさせたりなどと、どれほどのものを…」
呼び出すための助力をかけた黒幕。
やらかした生徒は既に命で代償を支払ったようだが、そのやらかしのための準備をした相手は一体何者なのか。
「また、地脈の過剰乱用により当面城の再建後の運用の見直し等も…」
「問題が多いなぁ…」
後始末と言うのは、いつの時代、どこの国であっても大変な様子であった…
『…とまぁ、多分お前たちに帝国側からの褒美が出されるのが、まだ先になりそうな様子だったぞ』
「別に、褒美目当てでやってはないけど…被害全部は、悪魔のほうに上乗せになったのは良かったかもね」
【向かうまでの間に、壁をどれだけ破壊したのか考えたくもないですからね】
【そうだな…いや、待てリア…もとい、ゼリアス。何故貴様が、主殿の部屋にいる】
…仮設王城でそのような会議が行われているその頃。
寮の一室…ジャックの部屋には今、悪魔ゼリアスが訪れていた。
『何故かって?そりゃ…面白そうだと思ったからさ』
ルミが大剣を構える中、ゼリアスはそう答える。
『悪魔は基本的には、取引によって呼び出され、それでこの世界にとどまることはできる。だが、上位の悪魔は…そんな手続きを踏まずとも顕現は可能なのでね。たいていの場合はすぐに帰るが…面白いものを見つけた時は、留まることもあるのさ』
そう言いながら、ジャックたちを見た。
『悪魔を足せるだけの実力を兼ね備えた、モンスターたち…そして、それを従える少年。悪魔的に見ても中々珍しくてね。力の大きさ的に、見過ごせないのさ』
「見過ごせない…脅威になるから、消すとかは?」
『そんなこと、やる気はないよ。相手にできないことはないけど、無駄な労力は使わない主義でね。それに…人間研修時代の同僚もいるのもあるな』
敵対する気はなく、単純にジャックたちに興味を持っただけの模様。
また、何やら過去にルミと関係があったのも影響しているらしい。
【よく言うな…聖女様をたぶらかした悪魔が】
『一方的なひとめ惚れの被害に遭った被害者でもあるんだけどな…できれば地獄から引き取ってほしいんだけど…それができないのがな…』
「え、聖女が地獄にいるの?」
聖女と名の付く相手ならば、むしろ天国とかそっちの方ではないだろうか。
ちょくちょく入ってくるルミの過去話からしても、善行は一応積んでいるようなのだが…
『…色々とあるんだよ。いや、本当に、ほんっとうに‥‥はぁ…』
その質問に対して、何やら口を濁すゼリアス。
それだけで、相当な苦労がうかがえたので、聞くのをやめた。
…聞いたところでどうにかできるわけでもないし、下手に掘り起こしたらそれこそかなり厄介なことになりそうだ。
『まぁ、それはさておき、今の時代においては悪魔と関わるのはそう良くないこと認識はしているからな。今日は顔を出すだけで、普段は別の場所で少し見させてもらうつつもりだ』
【貴様、ストーカーにでもなる気か?】
『誰がなるんだよ、ストーカー被害は12件目で本当に嫌になっているからさぁ…』
悪魔的には今回は少し顔を見せただけで、何か他の目的もありそうな気がしなくもない。
しかし、見たところ本気で相当な苦労を背負い込んでいそうな悪魔だったために、とりあえずは何か悪いことは考えていなさそうかなと判断するのであった…
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