絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

志位斗 茂家波

文字の大きさ
上 下
144 / 178
少し広がっていく関係性

log-閑話 ある悪魔の独白 その①

しおりを挟む
―――悪魔には、という制度がある。

 様々な時代、ありとあらゆる国々や人種、その他世界の垣根すらも超えて、悪魔は呼ばれたらその願いを代償と共に叶えるわけなのだが、同時に願い事も幅広く、叶えきれないことがある。

 そのため、今はどのぐらいの願い事がちょうどいいのか、どういうものが好まれるのか、代償としてはどこまで差し出せるようなものになっているのかなど、自分たちを呼び出す人間に関しての調査を行うために…人間そのものになって、過ごす研修会が時々行われるのである。





『…その中で、かつてアウトフェルノ聖国と呼ばれた国に人間として、俺は研修氏に入ったことがあったんだ』
 

 悪魔ゼリアスが語る、かつて存在した国での日々。

 人間研修をする以上、人として生を謳歌し、人として生を終え、得られた成果をもとに悪魔としての仕事でどうするのかが決めていく。
 まぁ、人間になっている間は悪魔としての部分が邪魔をしないように記憶や力も何もかも封印した状態で、本当にただの人として過ごす…はずだった。


 だがしかし、運命のいたずらと言うべきか、運命の神がいるならばその時、ゼリアスは全力でぶん殴りたかったのだろう。

 
『当時は世界的にも色々とヤバいことが多くて…特に、瘴気と呼ばれるものが発生していた。モンスターが湧きだす原因にもなり、穢れなどと呼ばれるようなものが活発に湧き出して…それを収めるために、聖女が各国を回っていたのさ』

 聖女、それは聖なる力を有した人であり、聖魔法の頂点にも君臨する慈愛の象徴。
 聖国においては最高権力を有し、瘴気を浄化し、モンスターを根本から打ち滅ぼすような存在。

 関わり合う気はなかったが…相手が向こうからやってきたのであれば、どうしようもない。
 いや、むしろ超絶迷惑な日々がそこから幕を開けてしまった。


『…何で、ああなったのだろうか。あの聖女。俺と出会う前からまず、聖女としてのイメージをぶち壊すような奴だった』

 たまたま近くにできたという、瘴気だまり。
 そこを浄化するために聖女がやってきたのだが、その近くに人間だったゼリアス…その時はリアと言う名を持った青年が近くを通ってしまったことで、普通の人間として過ごす運命を狂う羽目になった。


 そう、彼は…運の悪いことに、聖女に一目惚れされたのだ。

『あの時は一瞬、なんだと首をかしげて考えたが…そんなことをせずに、逃げれば、本当に全力でその場から逃げるかあるいは別の道を行けばよかった…!』
 
心の底からの、絶望を吐き出し、嘆くゼリアス。


見つかったその時から、その運命は色々とおかしくなったのであった…
しおりを挟む
感想 386

あなたにおすすめの小説

兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?

志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。 そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄? え、なにをやってんの兄よ!? …‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。 今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。 ※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。

てめぇの所為だよ

章槻雅希
ファンタジー
王太子ウルリコは政略によって結ばれた婚約が気に食わなかった。それを隠そうともせずに臨んだ婚約者エウフェミアとの茶会で彼は自分ばかりが貧乏くじを引いたと彼女を責める。しかし、見事に返り討ちに遭うのだった。 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様の重複投稿、自サイトにも掲載。

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw

かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます! って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑) フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

そんなの知らない。自分で考えれば?

ファンタジー
逆ハーレムエンドの先は? ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しております。

王家に生まれたエリーザはまだ幼い頃に城の前に捨てられた。が、その結果こうして幸せになれたのかもしれない。

四季
恋愛
王家に生まれたエリーザはまだ幼い頃に城の前に捨てられた。

自分の家も婚約した相手の家も崩壊の危機だと分かったため自分だけ逃げました

麻宮デコ@ざまぁSS短編
恋愛
ミネルヴァは伯爵家に養女として引き取られていたが、親に虐げられながら育っていた。 侯爵家の息子のレックスと婚約させられているが、レックスの行動を見て侯爵家は本当は危ないのでは?と嫌な予感を抱く。 調べたところレックスの侯爵家は破綻寸前であることがわかった。 そんな人と心中するつもりもないミネルヴァは、婚約解消をしようとするがどうしても許してもらえないため、家と縁を切り自分だけ逃げることにした。

先にわかっているからこそ、用意だけならできたとある婚約破棄騒動

志位斗 茂家波
ファンタジー
調査して準備ができれば、怖くはない。 むしろ、当事者なのに第3者視点でいることができるほどの余裕が持てるのである。 よくある婚約破棄とは言え、のんびり対応できるのだ!! ‥‥‥たまに書きたくなる婚約破棄騒動。 ゲスト、テンプレ入り混じりつつ、お楽しみください。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

処理中です...