絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

志位斗 茂家波

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少し広がっていく関係性

log-130 避難は先にしていたり

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―――エルメリア帝国の城が、悪魔の手に堕ちた。

 それだけでも相当とんでもないことなのだが、さらに国の地脈をモノにしてより一層暴れまわるとは、誰が想定できただろうか。


「…まぁ、そのような事態も想定してこそ、王の立場ではあるがな」
「陛下、それでも被害は相当なものになるかと…」

 エルメリア帝国の帝都、その近くにある草原。

 そこには密かに建設されていた、仮設避難所があった。
 そのテントの一つに、既に避難済であった帝国の皇帝は、情報を確認していた。



 悪魔が出現し、その狙うものが何なのかはわからない。
 だが、それでも確実に上の存在を…地位が高いモノや、利用価値があるモノを狙うだろうと想定し、ある程度の被害を抑えようと動きはした。

 その結果として、城に努めていた者たちの大半は逃れることができたのだが…それでも、悪魔が帝都内を蠢いている状況は変わらない。


「帝都の民たちの避難は?」
「それが、帝都の壁そのものが悪魔の手に堕とされ、妨害されて思うが儘に進んで…いませんでした」
「と言うと、今は変わったのか」
「はい。報告によれば、例の留学生の従魔たちが…特殊監視対象の者が有する彼女たちが、あちこち壁を破壊しながら突き進むため、内側にいた民ほど外へ逃げ出せているようです」
「そうか、壁を破壊しながらか…民の避難の助けになるのは良いが、あの壁をぶち壊すか…」

 帝都に住む人々の避難も想定していたが、思った以上に悪魔の妨害が強かった。
 しかし、それを上回る無茶苦茶な特殊監視対象…厄災種及びその予備軍を従魔にする者のおかげで、そちらもある程度の成果を上げられるようになったのは良いことだろう。

 ただし、ぶち壊されまくっている壁に関しては、後で見直しが必要そうではある。

 元々、そういうモンスターの襲撃等から守るためにあるはずだが…あっさりと突破される以上は、今回の一件が済み次第しっかりと確認し、より強固にしなければいけない。


「現在、特殊監視対象たちは城へ向かって進撃中。城に残された非常用の報告魔道具が最後まで報告し続ける状況では、内部で色欲…支配と色欲となのる悪魔に対して、監視対象の従魔の一体、スライムのものが交戦中とのこと。避難し遅れた者たちは魅了されつつも、事前に用意していたらしい魅了対策の道具で瀕死の状態ながらも生きながらえているようです」
「そうか…ならばすぐにでも救助及び戦闘への応援を送りたいところだが、相手は地脈を掌握したようだからな…おいそれと、並の兵士たちを向かわせたところで魅了されて妨害されるのがオチだろう。幸い、悪魔と敵対して動いてくれるのはいいが…こうも、手出しができない無力さは、辛いな」
「陛下…」

 色々な対策を練っていたとはいえ、それでも悪魔の得てしまった力は大きなもの。
 そのため、ここで兵士たちを向かわせたとしても、無駄に命を散らすだけになるのが目に見えている。

 ならば今、その悪魔へ向かいつつあるジャックたちが、美味いこと悪魔相手に勝利を収めてもらうようにしか願えないだろう。

「対悪魔特殊部隊を備えた国からの返答は?」
「緊急グレートマチョポッポで救援を要請していますが、まだ帰還せず。時間はまだかかりそうです」
「そうか…ならば一刻も早く対応できるように願いつつ、今は民の避難誘導を最優先に動け」
「はっ」

 悪魔の動きがどうであれ、住まう人々の避難も優先だ。
 先に避難した身が何を言うのかと言われそうだが、立場と言うものやその他様々な都合もあり、もどかしく思う部分があるだろう。

 しかしそれでも、適切に判断を下し、指示をしなければいけないのが皇帝としての立場の者の務め。
 
 今は犠牲を可能な限り減らすように動かしつつ、城での悪魔との戦いに行く末をゆだねるしかないのであった…



「…厄災種やその予備軍がいるとはいえ、相手は地脈を得た悪魔。どれほどやれるのかはわからぬが…任せるしかないというのも、もどかしいものだな」
「陛下…大丈夫です。いざとなれば、遠隔で地脈、いえ、帝都ごと敵の手に渡らぬように自爆する仕掛けもありますから。避難が済み、悪魔だけにどうにか残せる状況になればその手も…」
「それは本当に、最後の手段だからな」

…歴代皇帝のとある人物が仕掛けたという、帝都丸ごと自爆システム。
 使う機会はないと思いたかったが…もしかすると…
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