絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

志位斗 茂家波

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少し広がっていく関係性

log-128 スッパサヒドサ

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―――それは、呼び出されてすぐに身近に危険な存在がいることを察知していた。

 あらかじめ、魔法陣でそのような情報が刻み込まれており、どれほどのものなのかは理解していたつもりだが、感じ取れるものはそれ以上のもの。

 それゆえに、すぐに見つかってはいけないと、力を蓄えている間は全力で自身の存在を隠しつつ、与えられた魅了の力を用いて大地の力を少しづつ狙っていった。




 エルメリア帝国の地脈は非常に大きく、それを理解していた人間がいたのだろう。
 帝国の地脈は人為的に操作された形跡があり、あれだけの城を…空高く浮かせ、大地に深く根付かせ、その巨大さを悟られぬように隠すだけの力に利用しているようだった。

 単純に城の構造に干渉しているだけではなく、国の守りとして目には見えない結界も張るような仕掛けも施されており、豊かさやその他諸々…どれほどの人が力を注いだのか、計り知れない代物。


 だが、それを悪魔は利用することにした。
 魅了によって力を、その仕組みを、全てを得るために。

 少しづつ、バレないように自身の糧としてさらに効果を引き上げ、ゆっくりと着実に進めていき…そして今宵、その地道な努力は実った。


『ヒャハッハ、ハハハハハッハハア!!』

 高笑いが止まらない。
 この帝国の地脈は既にその悪魔の手中にあり、あふれ出る力が高揚感をもたらしていく。

 この力があれば、なんだってできてしまうだろう。
 魅了を世界中に振りまくこともできが、この悪魔は人が嫌いだ。

 いや、あえて魅了することで自身に目を向けさせ、徹底的に潰すことで絶望を与えるのも悪くはない。



「悪魔だ、悪魔がいたぞーー!!」
「こっちだ、こいつがやっているんだーー!!】
『ヒャハァ?』

 笑っている中、どうやら悪魔の存在に気が付いたのか、武器を携えてやってくる人間たちの姿が見えた。

 どうやらこの王城内で警備をしていた兵士たちのようだが、すぐに気が付けるようで練度は悪くはない模様。


…しかし、圧倒的に相手が悪いだろう。

『ヒャハハハハハ!!挑むか、弱い人間が挑むか!!この支配と色欲の悪魔、ゼルモンドラに!!』

 地脈から溢れんばかりのエネルギーを得て、悪魔は高笑いしながら手を振る。

『そぉぉれ!!魅了ーーー!!』
「な、なにぃいい!!」
「おぉわぁぁぁぁっづ!!」

 恐れずに立ち向かってきたことだけは、褒めておこう。
 しかし、それでも圧倒的な実力差では抗えないもの。

 あっという間に兵士たちは皆魅了にかかり、抵抗の手を奪われてしまう。

【さて、全員魅了されたなら…ああ、こういう方法もありか。このまま…首を、かっ切ってしまえ】

 いちいち相手をして、一人ずつ首を落とすのも面倒なもの。

 ならば、自らの手で自決させた方が良いだろう。

 そう考え、悪魔が命令を下した…その時だった。


【『スラ・スプラッシャー』!!】
『!!』

 どこからともなく、何やら液体が噴き出し、兵士たちにかかる。
 ツーンとするような、強烈な果汁の香りは…

「うっつ、な、なんだ、今まで…すっぱぁあああああああああああああ!?」
「おぐぁぁぁぁあっづ!!すっぱいすっぱすぱぁぁぁあああああ!!」

 兵士たちから魅了の効果が消え、たちどころに正気に戻った様子。
 しかし、その代償と言うべきか、強烈な酸味が襲い掛かったようで、びたんびたんと陸に打ちあがった魚のように悶え苦しんでいた。


【対魅了用果物『ズババの実』…搾った原液を10分の1にして薄めた安全なものにしても、これですカ】

 びくびくと、これはこれで悲惨なことになっている兵士たちの近くに出てきたのは、半透明のような、宝石のようなきらめきを持つスライムは、そうつぶやくのであった…


「うっぐぉおおお!!いっぞごのままぎぜつざぜでぐれぇぇ!!ずばいずっばずぎでいっぎぃいいい…!!」

【…これ、目を覚ます効果も相まって、気絶できない悲惨な状態になるのですネ。ギルドの魅了対策本ではこれで適切なはず…ン?…あ、間違えタ。コレ、原液のほうだっタ…】

…おかしい状態に疑問を抱いたのか、手元を見直して呟かれたその言葉にお前のほうが悪魔じゃないかと、悪魔側のほうが心の中で思ったのは言うまでもない。

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