絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

志位斗 茂家波

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少し広がっていく関係性

log-127 じっくりねっとりと

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…悪魔が呼び出されてから二週間ほど。

 これまでの時間の中で警戒態勢を強めていたが、相手の動きはすぐに出てこなかった。

 こちらの警戒を緩むのを待っているのか、それとも既にいないだけなのかは定かではないが、どちらの結果も出ていないことから結論をすぐに出すことはできない。


【それゆえに、警戒をしたままですが…中々相手が動きませんね】
【むぅ、面倒だぜ。堂々とでてくれれば、一発で魔法を、いや、拳で粉砕してやるのに】

【…その前に二人とも、しっかり反省しているのなの?今晩も縛ったけどなの】
【【まだ何もしていないのに…】】

 ぶらんぶらんと宙に縛り上げられつつ、答えるハクロとルトライトに、そんな二人をジトっとした目でツッコミを入れるカトレア。


「んんぅ…んにゅ…」

【騒がしくすると、主殿が起きるぞ】
【うっ…大丈夫ですよ、今から声小さくしますから】
【圧縮言語で手短にするぜ】

 ルミの指摘に言いにくくなり、言葉を切り替える。
 普段はジャックとの会話に支障がないように人と近い言語を喋ってはいるが、そうじゃ無ければ短い鳴き声程度で済むので、声を小さくして会話するには最適であろう。


【シュル…(それで、一応日々警戒してますけれども、まったく悪魔の姿が見えないですよね】
【ピー(帝国ギルド内で働いて、情報収集もしているけど、今のところはないヨ)】
【ウガ…(ああもう、出てくれば早いのになー。いっそもうこの国からいないのなら、出ていったとでもいえばいいのにもどかしいのだぜ)】

 色々と警戒する日々は、ハクロ達の精神的にも疲弊する部分があるだろう。

 周囲を糸や植物の声、人混みの中の雑音やその他様々な手段で探りっている彼女たちでさえも、呼び出されたであろう悪魔の足取りを掴めないのだ。

【---(いっそ、何事もなく、消えていれば楽だが…むぅ、圧縮言語、慣れぬな。他の皆と違い、我一応は元人間の類ゆえか…)】
【ナノ(あ、でも完全0ではないかもなの。怪しい影なら、ちらほら見たよって、中庭の花壇の植物たちが教えてくれたなの)】
【シ!?(本当に!?】

 色々と探る中、手掛かりはほぼ無しに等しかった。
 それでもかろうじて、何かそれにつながりそうなものはあったようだ。

【ナノナノナノ(でも、おかしい話だったんだよねぇ…怪しい人影を見たというか、影事態を見たらしいというか…って言ってたなの)】
【ウ(何もないのに影が動く…影の中に、悪魔が潜むとでも?)】
【ピキ(ない話ではないヨ。悪魔に関しての知識も仕入れているんだけど、結構力を付けた悪魔の中には、実体を持ちながらも闇に物理的にも潜むことができるらしいからネ)】

 要は探していても目撃談がほぼ無いのは、その悪魔が普段影に動いている可能性があるということ。

 砂漠のような場所ならば非常に目立つだろうが、ここはエルメリア帝国の帝都。
 多くの人の影や建物の影、あるいは周囲を囲う壁などが影となり、身をひそめる場所としては多すぎるのだ。

 それゆえに、ハクロ達がいくら警戒したとしても、すぐに見つけられないもの。

 たとえ怪しい影がいたとしても、混ざってしまえばすぐ見失ってしまう。


【シュ…(そう考えると、今の夜の時間もかなり危ないですね。影の中に潜むのであれば、まともな施錠等も意味がないですし…全身ピカピカに輝かせるとか?】
【ウガウ(やろうと思えばできなくもないぜ?雷を纏う魔法を皆にかけちまえばいい話だ)】
【ナ…(…それ、多分是認痺れて駄目になるやつなの)】
【ピキ―(いっそ、全身光らせてしまおうかナ?あたし、ジェリースライムだから光線をこうぶわっと纏って全身発光の技あるヨ)】

 色々と思うところはあるが、出てきた情報を考えるとまともに相手にできる様なものではないらしい。

 以前出くわしたほかの悪魔たちのほうが、直接出てきたからこそ相手をしやすくもあったが、こういう絡めての相手には厳しいところ。
 いくら力があったとしても、それをかわすような相手がいては意味がないのだ。

 相手の可能性としての情報ならばいくらか出てきて理解できたとしても、それに対応できるかどうかが問題なのである。


(…潜んでいるとしても、そうし続けるわけが分からない…やろうと思えば逃亡しても良いと思うけど、逃げているわけでもなさそうなら、何かを準備しているとか‥?)

 心の中で色々と考えるハクロ。

 悪魔がどのようなことを目的としているかは不明だが、聞いた情報では色欲…魅了関係の力を持っているのであれば、やらかせる幅は広いだろう。

 人相手があるいい正しいような間違っているような使い方だが、その他のものにもやろうと思えば通用するもの。

(そこまで強かったとして、人を魅了しないで隠れながら動いていたとしたら…何か、別のものに時間をかけているとか?相手に魅了が効きにくかったり、あるいは大きくてその全てを魅了するのに時間をかけて…は、相当な力を使うかも…?)

【シュ(あの魔法陣に、書いてあった内容って色々あったけど…そもそも、アレをどう発動させたかとかはわかっているの?】
【ピ?(そんなの解析済みだヨ。ただの生徒が使えるわけがないのはわかっていたようで、仕掛け自体を解析すると、外からもっと大きなものを引っ張ってきていたようだヨ)】
【ウガァ(確か、地脈とかだったぜ。地面のでっかいエネルギーをどうも引っ張ってきたらしいぞ)】


(…地面の…召喚するだけの力…まさかっ!?)

 得た情報をもとに思案し、ハクロは考え、そしてある答えに気が付いた。

【シューーー!!(悪魔はもしかして、その地脈を今、魅了して良いように操る準備をしているのでは!?)】
【【【【ーーーーー!?】】】】

 ハクロの言葉に対して、すぐに理解したルトたち。
 その答えが正しいのであれば、今、確実に相当ヤバい状況になっているのは間違いないだろう。

 見つからないように影に潜みながら、大地の力に対して魅了を賭けていたのであればどうなのか。

 魅了の対象として成り立つのかはわからないが、悪魔ならばやらかしてもおかしくはない。

 それこそ、とんでもないエネルギーを…と考えていたその時、答え合わせが…起きてしまった。




ーーーーーズゥウウウウウウウウウンン!!

 突然大きく、帝都全体が音を立てて震える。

 今まさに、その悪魔が…準備を終えたことを知らせるのであった…






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