137 / 178
少し広がっていく関係性
log-127 じっくりねっとりと
しおりを挟む
…悪魔が呼び出されてから二週間ほど。
これまでの時間の中で警戒態勢を強めていたが、相手の動きはすぐに出てこなかった。
こちらの警戒を緩むのを待っているのか、それとも既にいないだけなのかは定かではないが、どちらの結果も出ていないことから結論をすぐに出すことはできない。
【それゆえに、警戒をしたままですが…中々相手が動きませんね】
【むぅ、面倒だぜ。堂々とでてくれれば、一発で魔法を、いや、拳で粉砕してやるのに】
【…その前に二人とも、しっかり反省しているのなの?今晩も縛ったけどなの】
【【まだ何もしていないのに…】】
ぶらんぶらんと宙に縛り上げられつつ、答えるハクロとルトライトに、そんな二人をジトっとした目でツッコミを入れるカトレア。
「んんぅ…んにゅ…」
【騒がしくすると、主殿が起きるぞ】
【うっ…大丈夫ですよ、今から声小さくしますから】
【圧縮言語で手短にするぜ】
ルミの指摘に言いにくくなり、言葉を切り替える。
普段はジャックとの会話に支障がないように人と近い言語を喋ってはいるが、そうじゃ無ければ短い鳴き声程度で済むので、声を小さくして会話するには最適であろう。
【シュル…(それで、一応日々警戒してますけれども、まったく悪魔の姿が見えないですよね】
【ピー(帝国ギルド内で働いて、情報収集もしているけど、今のところはないヨ)】
【ウガ…(ああもう、出てくれば早いのになー。いっそもうこの国からいないのなら、出ていったとでもいえばいいのにもどかしいのだぜ)】
色々と警戒する日々は、ハクロ達の精神的にも疲弊する部分があるだろう。
周囲を糸や植物の声、人混みの中の雑音やその他様々な手段で探りっている彼女たちでさえも、呼び出されたであろう悪魔の足取りを掴めないのだ。
【---(いっそ、何事もなく、消えていれば楽だが…むぅ、圧縮言語、慣れぬな。他の皆と違い、我一応は元人間の類ゆえか…)】
【ナノ(あ、でも完全0ではないかもなの。怪しい影なら、ちらほら見たよって、中庭の花壇の植物たちが教えてくれたなの)】
【シ!?(本当に!?】
色々と探る中、手掛かりはほぼ無しに等しかった。
それでもかろうじて、何かそれにつながりそうなものはあったようだ。
【ナノナノナノ(でも、おかしい話だったんだよねぇ…怪しい人影を見たというか、影事態を見たらしいというか…何もいないのに動いていた影があったって言ってたなの)】
【ウ(何もないのに影が動く…影の中に、悪魔が潜むとでも?)】
【ピキ(ない話ではないヨ。悪魔に関しての知識も仕入れているんだけど、結構力を付けた悪魔の中には、実体を持ちながらも闇に物理的にも潜むことができるらしいからネ)】
要は探していても目撃談がほぼ無いのは、その悪魔が普段影に動いている可能性があるということ。
砂漠のような場所ならば非常に目立つだろうが、ここはエルメリア帝国の帝都。
多くの人の影や建物の影、あるいは周囲を囲う壁などが影となり、身をひそめる場所としては多すぎるのだ。
それゆえに、ハクロ達がいくら警戒したとしても、すぐに見つけられないもの。
たとえ怪しい影がいたとしても、混ざってしまえばすぐ見失ってしまう。
【シュ…(そう考えると、今の夜の時間もかなり危ないですね。影の中に潜むのであれば、まともな施錠等も意味がないですし…全身ピカピカに輝かせるとか?】
【ウガウ(やろうと思えばできなくもないぜ?雷を纏う魔法を皆にかけちまえばいい話だ)】
【ナ…(…それ、多分是認痺れて駄目になるやつなの)】
【ピキ―(いっそ、全身光らせてしまおうかナ?あたし、ジェリースライムだから光線をこうぶわっと纏って全身発光の技あるヨ)】
色々と思うところはあるが、出てきた情報を考えるとまともに相手にできる様なものではないらしい。
以前出くわしたほかの悪魔たちのほうが、直接出てきたからこそ相手をしやすくもあったが、こういう絡めての相手には厳しいところ。
いくら力があったとしても、それをかわすような相手がいては意味がないのだ。
相手の可能性としての情報ならばいくらか出てきて理解できたとしても、それに対応できるかどうかが問題なのである。
(…潜んでいるとしても、そうし続けるわけが分からない…やろうと思えば逃亡しても良いと思うけど、逃げているわけでもなさそうなら、何かを準備しているとか‥?)
心の中で色々と考えるハクロ。
悪魔がどのようなことを目的としているかは不明だが、聞いた情報では色欲…魅了関係の力を持っているのであれば、やらかせる幅は広いだろう。
人相手があるいい正しいような間違っているような使い方だが、その他のものにもやろうと思えば通用するもの。
(そこまで強かったとして、人を魅了しないで隠れながら動いていたとしたら…何か、別のものに時間をかけているとか?相手に魅了が効きにくかったり、あるいは大きくてその全てを魅了するのに時間をかけて…は、相当な力を使うかも…力?)
【シュ(あの魔法陣に、書いてあった内容って色々あったけど…そもそも、アレをどう発動させたかとかはわかっているの?】
【ピ?(そんなの解析済みだヨ。ただの生徒が使えるわけがないのはわかっていたようで、仕掛け自体を解析すると、外からもっと大きなものを引っ張ってきていたようだヨ)】
【ウガァ(確か、地脈とかだったぜ。地面のでっかいエネルギーをどうも引っ張ってきたらしいぞ)】
(…地面の大きなエネルギー…召喚するだけの力…まさかっ!?)
得た情報をもとに思案し、ハクロは考え、そしてある答えに気が付いた。
【シューーー!!(悪魔はもしかして、その地脈を今、魅了して良いように操る準備をしているのでは!?)】
【【【【ーーーーー!?】】】】
ハクロの言葉に対して、すぐに理解したルトたち。
その答えが正しいのであれば、今、確実に相当ヤバい状況になっているのは間違いないだろう。
見つからないように影に潜みながら、大地の力に対して魅了を賭けていたのであればどうなのか。
魅了の対象として成り立つのかはわからないが、悪魔ならばやらかしてもおかしくはない。
それこそ、とんでもないエネルギーを…と考えていたその時、答え合わせが…起きてしまった。
ーーーーーズゥウウウウウウウウウンン!!
突然大きく、帝都全体が音を立てて震える。
今まさに、その悪魔が…準備を終えたことを知らせるのであった…
これまでの時間の中で警戒態勢を強めていたが、相手の動きはすぐに出てこなかった。
こちらの警戒を緩むのを待っているのか、それとも既にいないだけなのかは定かではないが、どちらの結果も出ていないことから結論をすぐに出すことはできない。
【それゆえに、警戒をしたままですが…中々相手が動きませんね】
【むぅ、面倒だぜ。堂々とでてくれれば、一発で魔法を、いや、拳で粉砕してやるのに】
【…その前に二人とも、しっかり反省しているのなの?今晩も縛ったけどなの】
【【まだ何もしていないのに…】】
ぶらんぶらんと宙に縛り上げられつつ、答えるハクロとルトライトに、そんな二人をジトっとした目でツッコミを入れるカトレア。
「んんぅ…んにゅ…」
【騒がしくすると、主殿が起きるぞ】
【うっ…大丈夫ですよ、今から声小さくしますから】
【圧縮言語で手短にするぜ】
ルミの指摘に言いにくくなり、言葉を切り替える。
普段はジャックとの会話に支障がないように人と近い言語を喋ってはいるが、そうじゃ無ければ短い鳴き声程度で済むので、声を小さくして会話するには最適であろう。
【シュル…(それで、一応日々警戒してますけれども、まったく悪魔の姿が見えないですよね】
【ピー(帝国ギルド内で働いて、情報収集もしているけど、今のところはないヨ)】
【ウガ…(ああもう、出てくれば早いのになー。いっそもうこの国からいないのなら、出ていったとでもいえばいいのにもどかしいのだぜ)】
色々と警戒する日々は、ハクロ達の精神的にも疲弊する部分があるだろう。
周囲を糸や植物の声、人混みの中の雑音やその他様々な手段で探りっている彼女たちでさえも、呼び出されたであろう悪魔の足取りを掴めないのだ。
【---(いっそ、何事もなく、消えていれば楽だが…むぅ、圧縮言語、慣れぬな。他の皆と違い、我一応は元人間の類ゆえか…)】
【ナノ(あ、でも完全0ではないかもなの。怪しい影なら、ちらほら見たよって、中庭の花壇の植物たちが教えてくれたなの)】
【シ!?(本当に!?】
色々と探る中、手掛かりはほぼ無しに等しかった。
それでもかろうじて、何かそれにつながりそうなものはあったようだ。
【ナノナノナノ(でも、おかしい話だったんだよねぇ…怪しい人影を見たというか、影事態を見たらしいというか…何もいないのに動いていた影があったって言ってたなの)】
【ウ(何もないのに影が動く…影の中に、悪魔が潜むとでも?)】
【ピキ(ない話ではないヨ。悪魔に関しての知識も仕入れているんだけど、結構力を付けた悪魔の中には、実体を持ちながらも闇に物理的にも潜むことができるらしいからネ)】
要は探していても目撃談がほぼ無いのは、その悪魔が普段影に動いている可能性があるということ。
砂漠のような場所ならば非常に目立つだろうが、ここはエルメリア帝国の帝都。
多くの人の影や建物の影、あるいは周囲を囲う壁などが影となり、身をひそめる場所としては多すぎるのだ。
それゆえに、ハクロ達がいくら警戒したとしても、すぐに見つけられないもの。
たとえ怪しい影がいたとしても、混ざってしまえばすぐ見失ってしまう。
【シュ…(そう考えると、今の夜の時間もかなり危ないですね。影の中に潜むのであれば、まともな施錠等も意味がないですし…全身ピカピカに輝かせるとか?】
【ウガウ(やろうと思えばできなくもないぜ?雷を纏う魔法を皆にかけちまえばいい話だ)】
【ナ…(…それ、多分是認痺れて駄目になるやつなの)】
【ピキ―(いっそ、全身光らせてしまおうかナ?あたし、ジェリースライムだから光線をこうぶわっと纏って全身発光の技あるヨ)】
色々と思うところはあるが、出てきた情報を考えるとまともに相手にできる様なものではないらしい。
以前出くわしたほかの悪魔たちのほうが、直接出てきたからこそ相手をしやすくもあったが、こういう絡めての相手には厳しいところ。
いくら力があったとしても、それをかわすような相手がいては意味がないのだ。
相手の可能性としての情報ならばいくらか出てきて理解できたとしても、それに対応できるかどうかが問題なのである。
(…潜んでいるとしても、そうし続けるわけが分からない…やろうと思えば逃亡しても良いと思うけど、逃げているわけでもなさそうなら、何かを準備しているとか‥?)
心の中で色々と考えるハクロ。
悪魔がどのようなことを目的としているかは不明だが、聞いた情報では色欲…魅了関係の力を持っているのであれば、やらかせる幅は広いだろう。
人相手があるいい正しいような間違っているような使い方だが、その他のものにもやろうと思えば通用するもの。
(そこまで強かったとして、人を魅了しないで隠れながら動いていたとしたら…何か、別のものに時間をかけているとか?相手に魅了が効きにくかったり、あるいは大きくてその全てを魅了するのに時間をかけて…は、相当な力を使うかも…力?)
【シュ(あの魔法陣に、書いてあった内容って色々あったけど…そもそも、アレをどう発動させたかとかはわかっているの?】
【ピ?(そんなの解析済みだヨ。ただの生徒が使えるわけがないのはわかっていたようで、仕掛け自体を解析すると、外からもっと大きなものを引っ張ってきていたようだヨ)】
【ウガァ(確か、地脈とかだったぜ。地面のでっかいエネルギーをどうも引っ張ってきたらしいぞ)】
(…地面の大きなエネルギー…召喚するだけの力…まさかっ!?)
得た情報をもとに思案し、ハクロは考え、そしてある答えに気が付いた。
【シューーー!!(悪魔はもしかして、その地脈を今、魅了して良いように操る準備をしているのでは!?)】
【【【【ーーーーー!?】】】】
ハクロの言葉に対して、すぐに理解したルトたち。
その答えが正しいのであれば、今、確実に相当ヤバい状況になっているのは間違いないだろう。
見つからないように影に潜みながら、大地の力に対して魅了を賭けていたのであればどうなのか。
魅了の対象として成り立つのかはわからないが、悪魔ならばやらかしてもおかしくはない。
それこそ、とんでもないエネルギーを…と考えていたその時、答え合わせが…起きてしまった。
ーーーーーズゥウウウウウウウウウンン!!
突然大きく、帝都全体が音を立てて震える。
今まさに、その悪魔が…準備を終えたことを知らせるのであった…
41
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw
かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます!
って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑)
フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。


てめぇの所為だよ
章槻雅希
ファンタジー
王太子ウルリコは政略によって結ばれた婚約が気に食わなかった。それを隠そうともせずに臨んだ婚約者エウフェミアとの茶会で彼は自分ばかりが貧乏くじを引いたと彼女を責める。しかし、見事に返り討ちに遭うのだった。
『小説家になろう』様・『アルファポリス』様の重複投稿、自サイトにも掲載。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。


【完結】「図書館に居ましたので」で済む話でしょうに。婚約者様?
BBやっこ
恋愛
婚約者が煩いのはいつもの事ですが、場所と場合を選んでいただきたいものです。
婚約破棄の話が当事者同士で終わるわけがないし
こんな麗かなお茶会で、他の女を連れて言う事じゃないでしょうに。
この場所で貴方達の味方はいるのかしら?
【2023/7/31 24h. 9,201 pt (188位)】達成
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる