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少し広がっていく関係性

log-117 迎える者の心意気

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…エルメリア帝国は、グラビティ王国と友好関係にある国ではあるが、全てが一枚岩と言うわけではない。

 お互いに利権を目論んだり、あるいは隙を伺ったりと、やらかそうと考える輩がいるのはどこの世界のどこの国も同じだろう。

 だからこそ、より良からぬ輩も出てきたりするわけだが…そういう者たちほど、痛い目を見るだろう。


「…それでこの度、その痛い目を見て潰された馬鹿どもが出たが、どうしてくれようか」
「まさか、厄災種たちに手を出そうとするとは‥‥我々自身が一応、悪いことをしている自覚があるとはいえ、悪には悪なりの矜持もあるのに」
「盛大に手を出して潰されるとはなぁ…」

 はぁぁぁっとため息を吐く者たちが集っているのは、エルメリア帝国の帝都内にある邸の一室。

 本日も愉快で最悪な企み事を張り巡らせようとしていた者たちだったが、残念ながらその話は叶うこともなく、出てきた情報に頭を抱え込んでいた。


 彼ら自身、自分たちが法律を犯したりすることは自覚はしている。
 だからこそ、下手にはみ出ては排除されるのがわかっているからこそ、ある程度の自制はしていたのだが…どうやら今回、その自制が効かぬ愚か者が盛大な自爆をしてしまったようだ。



「帝国に短期留学の話がある少年…その者が連れている、絶世の美女たちともいえるモンスターに目がくらんだのは分かるが…情報の中に、厄災種とあるのならば下手に手を出してはいけないとわかっているだろうに」
「やるとしても、念入りな準備をしっかりとして、切り捨てられるような手駒とかも用意すべきなのに」
「「「どうして突撃して、ぶっ飛ばされる馬鹿が出るのか…」」」


 再び溜息を吐くが、無理も無いだろう。
 こういうことも考慮して、自分たちとつながりがないと徹底的に証明するだけのものも常日頃用意しており、自分たちの懐が痛むことはない。

 しかし、そうでなくても馬鹿どもがやらかしたことは周囲へより一層警戒を上げさせてしまい、今後の活動がしばらくの間やりにくくなるのが目に見えている。


「道中で賊に扮して襲撃をしようと…使い捨ての傭兵たちを利用しようと考えたのは、まぁ並大抵の相手ならばよかった」
「しかし、相手がモンスター…聞いた情報では厄災種というとんでもないものがいるのならば、その策は愚策になりえるが…ああ、切り捨てたのは良いが、今後の活動がやりにくくなるのは厳しいか」

 はぁぁあっと繰り返し溜息を吐くが、誰一人としてやらかしたものの心配をしていたいのは、その程度の絆だとも言えるだろう。

 とにもかくにも、これで彼らがやりたいことも当分の間は自制させられる。

「だが、それでも馬鹿は馬鹿なりにやったか…手に入れた最新の姿絵が、これらか」

 そう言いながら彼らに配られた資料には、ハクロ達の姿絵が記載されていた。



「グラビティ王国の少年が、従魔にしたモンスターたち…ふむ、生ではないとはいえ、姿絵だけでも相当見麗しいものが多いのは、確かに見た目だけならば欲望に正直すぎるものは動いてしまうだろうな」
「でも、馬鹿どものおかげで今後の、同レベルぐらいの者はどうにか抑えられるようになったと考えれば…悪くも無いか。少なくとも、このオーガの娘に殴り飛ばされて爆散する光景は見えぬか‥む?これで魔法を扱うのか」
「ふぅむ、ジェリースライムもいるのか…この宝石のような輝きは、ひとかけらでもいただけたら裏が凄い盛り上がりそうだが…」
「デュラハンもいるのがな…死の宣告が恐ろしいが、暗殺には物凄く使えそうなものだというのに…」

 色々と考える者たちがいるが、残念ながら馬鹿がやらかしたせいですぐに動くこともできない。
 贄にして自分たちが見つかりにくい隠れ蓑にはできたが、関われる機会が制限されたのは惜しむべきか。


「何にせよ、それでも留学の期間中はこの帝都にこの者たちが留まるのは間違いない。機会を待つだけの時間が与えられたとでも考え、馬鹿がさらなる馬鹿をやらかさないようにするための仕組みを更に加えていくか…」


 悪は悪なりの道がある。
 だからこそ、その悪が栄えるためにもまずは、身辺整理を行い、まとめて連帯責任で潰されることを防ぐための方法を模索する。

 ある意味、まともな道を歩んでいる者たちと同じ結論を出しているとも言えるのだが、同じような馬鹿が出てくることに悩むのも、また似通っているのであった…



「それにしても、モンスターと言えども本当に美女が多いな…この少年、こちらの道に引きずり込んだほうが良いのでは?」
「いや、それは絶対にやめたほうが良いぞ。いきすぎた力が、良からぬ方へ出されると、善悪関係なく世界を滅亡させかねん…世界があるからこそ、騙し、あくどく儲け、贅沢に暮らせるのだからな。それを失いかねない代物は、引き寄せぬ方が良いだろう…」

…悪人だからこそ、自分たちの道に彼を引き入れた時のリスクが大きすぎるのも、理解するのである。




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