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少し広がっていく関係性

log-114 小さな積み重ねはいつの間にか

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…厄災種、およびその予備軍。

 それらがいるだけでも脅威だが、協力的な物であればむしろ頼もしいものでもあるだろう。

 近頃動きを見せる、悪魔たちの企み。
 それが何であれ、対応できるだけの戦力があるだけでも心強いものがある。



「しかし、逆に言えばそういうものを持たざる国であれば、むしろ悪魔以上の脅威にもなりえるか‥‥」
「そのようですが、今のところは人への敵対を行う気はないようです。いえ、厄災種たちの主の影響もあると思われますが…」
「だが、グラビティ王国だけにこれほどの戦力が集中するというのも…」

(…重い、重すぎる…と言うか、盛大なとばっちりを喰らってないだろうか…)


…重々しい議会の中、心の中でそう叫びたがっているのはグラビティ王国の国王。
 そしてここはいつもの王城の議会ではなく、数年ぶりに開かれた国同士の対談を行う国際会議の場。


 悪魔の動きが近年見せてきたことで、開催が企画され、多くの国々が参加しているのだが…国王は思いっきり帰りたい気持ちもあった。

 自分が原因ではない。ある少年が原因である。

 可能であればこの場に突き出したいところだが、あいにくながらこの場にはいない。

 物凄く居心地が悪いが、自国が関わることだけに逃れることもできない。

(ああ、胃が痛くなりそうだ…ここ最近薬の質も上がってきたとはいえ、これでは意味がないのではなかろうか)

 なお、その薬の一部は本件に関わる予備軍の一名が、ある程度察して同情から密かに供給した特殊な薬草が含まれているため効能が上がっているが、その報告は入ってきてはいる。
 むしろ、その心遣いができるのであれば、もう少しどうにかならなかったのかと言いたいぐらいだ。

「何にせよ、悪魔対策はここ数年の間に上昇させねばな。一部の馬鹿がやらかす前に、しっかりとしたものをやっておきたいが…グラビティ王国に至っては既に、討伐実績もあるか」
「それもまた、例の厄災の一体が行ったそうだ。強烈な魔法を操る厄災種…魔法大国や魔導国の類ならば興味も惹かれるだろう?」
「割とやれにならないのだが…我が国の魔法が負けるわけがないと言いたいが、厄災種相手だとどこまでやれるのかも気になるな」
「むしろ、各国へ来てほしいと思うのだが…それが難しいならどうにか引き込めないだろうか」
(ああああ~…やっぱり面倒なことになるか…)

 ワイワイガヤガヤと白熱する議論の中、遠い目をする国王。
 色々と厄介事とは言え、一番上にこうものしかかってくるのはたしかに厄災と言っても過言ではないだろう。
 
 いっそ今この場所に、悪魔がどんっと攻めてきた方がうやむやになりそうなものだが、その対策として法国やらその他悪魔に対しての対策も練られている場所だからこそ、そう簡単にやってくることも無いのかもしれない。

「ふむ、白熱するのは良いのだが、一旦落ち着いてくれたまえ。下手にヒートアップしては、国同士の関係性を悪化して、付け入るスキを与えるだけだろう」
「え、エルメリア帝国の皇帝陛下…」
「む…それもそうか。一度、抑えよう」

 そんな中、グラビティ王国と友好関係にあるエルメリア帝国の皇帝が声を上げ、皆いったん止まる。

 現在、皇子・皇女たちによる皇位継承争いが起きており、色々と大変な面もある国ではあるが、その影響力は大きい。
 今の皇帝もそろそろ隠居を考えているともいうが、それでも放たれる圧力は他の国々を担う者たちと比較して大きなものだろう。

「助かった…エルメリアの皇帝よ。おかげで静まった」
「いやなに、我が国としても放置できぬ問題だが、下手な争いの種が生まれるのは避けたいものだからな。今回多くの国が参加しているが‥そのどれかに悪魔の魔の手が入り、隙をつかれるようなものを得られてしまうのが困るのもあるがな」

 はははと笑うエルメリア帝国の皇帝だが、その眼の奥はより全てを見ているかのようだ。
 ぞくっとする感覚を感じ取りつつも、国王は礼を述べておく。


「それにしても、厄災種に予備軍に、その他悪魔の話題…既に隠居を決めようとしている身の中で、次代につなげるのに不安な要素がこうも出てくるのは、今は良いが後が心配になってくるものだ。可能であれば我が帝国にも協力的な厄災種が来てくれればいいのだが…」
「それはそれで相当シャレにならないような…下手すれば帰国の帝位継承権争いに火種を注いで、激化する可能性もあるのでは」
「そもそも、そう簡単に厄災種と遭遇できるかと言う時点で、話にはならないのだが。貴国の少年…ジャックとかいうものだったか。よくもまぁ、そんなホイホイと引き寄せるのも凄まじいものだな」

 それは国王も同じ感想を持つだろう。
 いや、他の国々からして見ても、ツッコミどころしかない。


「そもそも、各国のスケジュール調整をして開けたが…その間に増えては無いだろうな?」
「一応、数は今のところ変化はないと。隠しているならわからないですが…報告自体に嘘偽りはないとも聞いてますね。ええ、嘘偽りなさすぎてむしろ、そのせいで余計にどれほどのものなのか、まざまざ出てくるというのも困りものですが‥」
「虚飾によるごまかしの見栄は聞くが、偽りなきものでもまた影響が大きいか…失礼な質問をしてしまったな。その心中、大いに察するぞ…」

はぁぁぁっと盛大に溜息を吐く国王に、皇帝も少しばかり反省して謝罪を入れておく。

「だが、それでも実際に見てみたくはあるな…いい機会が無いだろうか?」
「ああ、それならばちょうど、彼の今の学年であれば…」


 どの国であろうとも、興味を持つだろう。
 だが、そう簡単に見れるかと言えば、立場ゆえにそう簡単にいかないものも多い。

 それでも作り出そうと思えばできるものもあり…そして今、一つの機会が生まれるのであった。
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