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面倒事の拭い去りは拒絶したくとも
log-閑話 厄災同士の思うこと
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「すぅ…んにゅ…」
【ふふふ、ジャックは今日もよく眠ってますね…】
しんしんと雪が降り始め、夜の寒さが訪れてくる今日この頃。
部屋はカトレア特製の薬草は熱をもって温めており、冷えこむことはないのだが、そっとジャックを抱えながら、その寝顔をハクロは堪能していた。
【ここ最近、何かとごたごたしていましたし…こういう時が、一番癒されますね…ふふふ】
きゅっと、眠りを邪魔しないように優しく抱きしめながら精神的に癒されるハクロ。
他の面々が増えてくる中、必然的にジャックとの時間が少し割かれて減ってしまうため、寂しい思いもあるだろう。
けれども、彼は誰にでも優しいことを理解しており、向けられる思いは純粋なものだ。
家族が増えているのならば、それは喜ばしいことだと思えばいい。
【でも、そういう風に寝ている間にやっているのは、ずるいぜ】
【っと、ルトライトですか…良いじゃないですか、私の番ですもの】
本日の寮の自室での宿泊は、ハクロ以外にもルトライトが来ていた。
彼女自身、過ごした場所はあっちの邸のほうが居心地が良いはずだが…
【んーでもなぁ、我が君の独り占めはされたくないからなぁ…賭けて戦ってみる?ハクロお姉ちゃん?】
【…それはやめなさい。私たち同士ではシャレにならないのは…わかっているでしょう?】
【…へへっ、お姉ちゃんよくわかっているよ。冗談だって】
ハクロの冷徹な瞳にぞくっと震えるルトライト。
彼女自身もまた、自身がどういうものなのか理解している様子。
だからこそ、ハクロと本気での戦闘を行ったらどうなるのか、わかっているからこそ戦う気はない。
軽いじゃれ合い程度ならばまだしも…いや、それはそれで色々とシャレにならない部分もあるだろう。
【だって、オレも心からわかったいるもの。…この愛は、狂おしいほど愛おしいものだということを】
ハクロに対して、そう口にするルトライト。
今はまだルミやカトレア、ファイはこの境地に至っていない様子だったから気にすることをハクロはしていなかったが…まさかこうなるとは彼女たちもまた予想していなかっただろう。
【でもね、ハクロお姉ちゃん。お姉ちゃんが我が君をいくら番と言っても…負ける気はないからね】
ずぃいと顔を近よらせ、にやりとルトライトは笑みを浮かべる。
【すでに亡くなったお父さんのためにも、そして奪われた他の家族への弔いも兼ねて…と言うのは、建前で、オレ自身の恋心だもの】
そう言いながら、そっと起こさないように気を使いジャックの頭をなでるルトライト。
【助けてくれた、弱かった人間。でも、それだけ思ってくれたことに…心が打たれたもの。愛って、怖いねぇ…オレたちを、こうも怪物に転じさせるとは】
【そこは、同意見ですかね。ええ、愛って怖いものです…美しく、いとおしく、それなのに…モンスターとは違う、怪物が目覚めるもの】
お互いに微笑みながら、その身のありように関して本能で理解し、笑いあうハクロとルトライト。
しかし、その中身は微笑みどころか燃え滾る怪物そのもの。
厄災種…狂愛の怪物はまた、目覚めてしまった。
お互いにそれがわかっているからこそ、表立ってぶつかる気もないし、家族の一員ではあるからこそおとなしく仲良く過ごすことができる。
しかし、それはあくまでも表であり…今はまだ、ジャックが子供であることが幸いしているというべきだろうか。
【何にせよ、もう夜も深いですし、さっさと寝なさい。私は眠る必要が特にないので、一晩中ジャックを抱きしめて堪能しますからね】
【むぅ、そこはずるいぜ…ふわぁ…似たようなものがあっても、種族としての部分で異なる優位性を活かすのはなぁ…まぁ、今はおとなしく寝つつ‥‥また明日も、よろしくね、ハクロお姉ちゃん】
そう言いながら、すぐに寝息を立てて眠り始めるルトライト。
進化して大きく姿が変貌したとはいえ、そのありようはまだまだ子供のような物。
【…ああ、独り占めしたいのにできない、それがもどかしくもありつつも、やってはいけないと理解しているこの心が、何とも言えなくなりますね…もぅ、ジャックは罪づくりな番ですね】
自分の大事な番が、こうも厄介事を引き寄せるとは誰が思えただろうが。
しかし、それでも最終的に結ばれれば、良いのだ。
【…今度こそ…と思えるのは、前の前の…いくつもの私の思いですかね】
ハクロは覚えていない。自身の前の生に関して。
長い道のりを経て、積み重なっていった哀れな恋に狂った怪物たちの死体の山も何もかも。
それでも、どこかで理解しているのは…それだけ、元が…
…寒い冬景色の中、ゆっくりと時間は流れ、過去に思いをはせるよりも今のこの時間を、ハクロは大事に過ごす。
大事な大事な、彼女にとっての番。
その命の温かみが今ここにあることを、心の底から感じ取って…
【ふふふ、ジャックは今日もよく眠ってますね…】
しんしんと雪が降り始め、夜の寒さが訪れてくる今日この頃。
部屋はカトレア特製の薬草は熱をもって温めており、冷えこむことはないのだが、そっとジャックを抱えながら、その寝顔をハクロは堪能していた。
【ここ最近、何かとごたごたしていましたし…こういう時が、一番癒されますね…ふふふ】
きゅっと、眠りを邪魔しないように優しく抱きしめながら精神的に癒されるハクロ。
他の面々が増えてくる中、必然的にジャックとの時間が少し割かれて減ってしまうため、寂しい思いもあるだろう。
けれども、彼は誰にでも優しいことを理解しており、向けられる思いは純粋なものだ。
家族が増えているのならば、それは喜ばしいことだと思えばいい。
【でも、そういう風に寝ている間にやっているのは、ずるいぜ】
【っと、ルトライトですか…良いじゃないですか、私の番ですもの】
本日の寮の自室での宿泊は、ハクロ以外にもルトライトが来ていた。
彼女自身、過ごした場所はあっちの邸のほうが居心地が良いはずだが…
【んーでもなぁ、我が君の独り占めはされたくないからなぁ…賭けて戦ってみる?ハクロお姉ちゃん?】
【…それはやめなさい。私たち同士ではシャレにならないのは…わかっているでしょう?】
【…へへっ、お姉ちゃんよくわかっているよ。冗談だって】
ハクロの冷徹な瞳にぞくっと震えるルトライト。
彼女自身もまた、自身がどういうものなのか理解している様子。
だからこそ、ハクロと本気での戦闘を行ったらどうなるのか、わかっているからこそ戦う気はない。
軽いじゃれ合い程度ならばまだしも…いや、それはそれで色々とシャレにならない部分もあるだろう。
【だって、オレも心からわかったいるもの。…この愛は、狂おしいほど愛おしいものだということを】
ハクロに対して、そう口にするルトライト。
今はまだルミやカトレア、ファイはこの境地に至っていない様子だったから気にすることをハクロはしていなかったが…まさかこうなるとは彼女たちもまた予想していなかっただろう。
【でもね、ハクロお姉ちゃん。お姉ちゃんが我が君をいくら番と言っても…負ける気はないからね】
ずぃいと顔を近よらせ、にやりとルトライトは笑みを浮かべる。
【すでに亡くなったお父さんのためにも、そして奪われた他の家族への弔いも兼ねて…と言うのは、建前で、オレ自身の恋心だもの】
そう言いながら、そっと起こさないように気を使いジャックの頭をなでるルトライト。
【助けてくれた、弱かった人間。でも、それだけ思ってくれたことに…心が打たれたもの。愛って、怖いねぇ…オレたちを、こうも怪物に転じさせるとは】
【そこは、同意見ですかね。ええ、愛って怖いものです…美しく、いとおしく、それなのに…モンスターとは違う、怪物が目覚めるもの】
お互いに微笑みながら、その身のありように関して本能で理解し、笑いあうハクロとルトライト。
しかし、その中身は微笑みどころか燃え滾る怪物そのもの。
厄災種…狂愛の怪物はまた、目覚めてしまった。
お互いにそれがわかっているからこそ、表立ってぶつかる気もないし、家族の一員ではあるからこそおとなしく仲良く過ごすことができる。
しかし、それはあくまでも表であり…今はまだ、ジャックが子供であることが幸いしているというべきだろうか。
【何にせよ、もう夜も深いですし、さっさと寝なさい。私は眠る必要が特にないので、一晩中ジャックを抱きしめて堪能しますからね】
【むぅ、そこはずるいぜ…ふわぁ…似たようなものがあっても、種族としての部分で異なる優位性を活かすのはなぁ…まぁ、今はおとなしく寝つつ‥‥また明日も、よろしくね、ハクロお姉ちゃん】
そう言いながら、すぐに寝息を立てて眠り始めるルトライト。
進化して大きく姿が変貌したとはいえ、そのありようはまだまだ子供のような物。
【…ああ、独り占めしたいのにできない、それがもどかしくもありつつも、やってはいけないと理解しているこの心が、何とも言えなくなりますね…もぅ、ジャックは罪づくりな番ですね】
自分の大事な番が、こうも厄介事を引き寄せるとは誰が思えただろうが。
しかし、それでも最終的に結ばれれば、良いのだ。
【…今度こそ…と思えるのは、前の前の…いくつもの私の思いですかね】
ハクロは覚えていない。自身の前の生に関して。
長い道のりを経て、積み重なっていった哀れな恋に狂った怪物たちの死体の山も何もかも。
それでも、どこかで理解しているのは…それだけ、元が…
…寒い冬景色の中、ゆっくりと時間は流れ、過去に思いをはせるよりも今のこの時間を、ハクロは大事に過ごす。
大事な大事な、彼女にとっての番。
その命の温かみが今ここにあることを、心の底から感じ取って…
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