120 / 178
面倒事の拭い去りは拒絶したくとも
log-112 鬼の怒りは空より高く
しおりを挟む
―――パチパチパチ…
「っ…ごほっ…な、何…?」
意識がほぼ飛びそうなほどの激痛の中、ふとそれが消え失せ、身体が楽になった。
喉にちょっと溜まっていた血反吐も吐き出しつつ、見ればジャックの身体に手を当てている人の姿があった。
【---ふぅ、治療完了だぜ。良かった、ぶっつけ本番でやれると分かっていても、無事にできて…】
【ジャック、大丈夫ですか!!無事に治ったようで…!!】
「ハクロと…君は…?」
ぐぐっと体を起こせば、泣き叫びながら喜ぶハクロに、見たことのない女性の姿。
いや、まず人ではないが…赤い地肌に、黄色い瞳に短髪の金髪。
豊満な胸元には稲妻のような模様も入っており、来ている衣服はゆったりとしたローブのようでありつつ、チャイナドレスのような大胆なスリットが入っている。
何よりも、頭には大きく立派な二本の角が、ばちばちと紫電を放っているが…その容姿には、どこかあの子の面影があるような…
「…って、まさか」
【ええ、そうですジャック。この子…あのオーガの娘です】
「----はぁぁぁぁっ!?」
やみあがりとはいえ突然の事実を突きつけられ、驚愕の声を上げるジャック。
目を思いっきり見開きしっかりとその容姿を見るが、急成長にもほどがあると言いたいだろう。
「って、そういえばそもそも今戦闘中なんじゃ…悪魔は!?」
【大丈夫、今…カトレアとファイの連携でぶっ飛ばした後、全員彼女のエンチャントで強化されて、盛大にしばき倒していますからね】
「え、エンチャント?と言うかどういう状況で…ああ」
何がどうなっているのか気になるが、悪魔のことはどうなったのか。
そう問いかければ、ハクロはその方向を示し、目を向ければどういう状況なのかすぐに理解できた。
【『ボルトスラ・レイン』!!】
【『スパーキングバンブーアッパー』!!】
【『爆雷氷炎拳』!!】
『ぐっぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ!!』
降り注ぐ雷を纏った光の暴風雨に、地面から電撃を放ちながら出現する竹やりのようなものに突き刺され、その顔面に爆発する拳をぶつけられる、オーガの肉体をもった悪魔の姿。
戦況は当初は苦しかったはずだが…全員何故かバチバチと電撃を纏っており、普段以上に強力な攻撃を放っていた。
「あれが…エンチャント?」
【はい。どうも電撃を身に纏えるようになったようで…その分、全員パワーアップするみたいです】
【その通り。オレの電撃は他人にも施せるし、相手の弱体化に利用できるんだぜ!】
ハクロの説明に対して、言葉を話せるようになったオーガの少女がそう告げる。
にやりと口角を上げており、どこか誇らしげな表情をしているが、実際に相当強力なバフがかかるのだろう。
そのおかげで、悪魔が見ているこっちが憐れみそうになるほどフルボッコに叩きのめされているが…いや、同情する気も無いか。
「そっか、ありがとう…でもこれ、どういう感じになっているの?」
【どうやら、オーガから進化して…えっと、種族名としては『オーガ・エレクトリカルハイウィザード』になるみたいです】
【ふふん、電撃による強化が基本だけど、それ以外に魔法も扱えるようになったんだぜ!!そら、敵を打ち滅ぼせ、『バーストサンダー』!!】
ドンガラゴッシャァァァアン!!
『ぎゃあああああああああああああああああああ!!』
見ればいつの間にか杖を持っており、それを振り下ろしただけでとんでもない雷が悪魔へ直撃する。
雷を纏った拳を使っていたからある程度の電撃への耐性を持っている可能性もあったが…それすらもやすやすと貫通できるほどの威力のようだ。
【あはははは!!良いね、良いね、この力!!守るべきものを守るために、大事なものを失わないために願ってみるのも悪くなかった!!…これがもう少し早くあれば、もっと良かったけど…ああ、でも今は、守りたいものを守れたから良しとするぜ!】
「なんか、元気だったけど、ちょっと男勝りのような話し方になっているような…」
【進化して、正確とかも結構変わったみたいですが…いえ、もしかするとこっちが素だったのかもしれないですね。角が戻ってますし、それで元に戻ったとか…】
やけに意気揚々とするオーガの少女に対して、その変貌に驚かされるが元気になったのなら言うまでもない。
【さぁて、とどめをそろそろ刺してあげようか!!カトレアお姉ちゃん、ファイお姉ちゃん、ルミの姐さん!!申し訳ないけど、仲間のかたき討ちのために、トドメ譲って!!】
【む?別に良いのなの!】
【なら、譲りましょウ】
【何か我だけ、呼び方違くないか?まぁ、別に良いが…】
ばっとそれぞれが距離を取り、オーガの娘はボコボコにされている悪魔へ向き直る。
【さて…本当なら今すぐにでもちょっとやりたいことがあるけど…筋を通すならまずは、お前を絶対に倒さないといけないからね…仲間の、大好きだったお父さんの仇を取らせてもらうよ!!】
ぐわっと腕を振り上げると、上空が瞬時に雷雲で覆いつくされる。
ばちばちと放電し始め、ただの雷撃が落ちるのではないことを予感させる。
『や、止めろ、このガワを壊すな…!!やっと手に入れた、強い肉体なんだ…!』
ボコボコにされてもはやあちこちが悲惨な状態になっている悪魔だが、必死に懇願し始める。
どうやら相当この攻撃が不味いと理解しているようだが…彼女はそれに耳を貸すわけがない。
【この世界から、消えて滅びつくされろ!!『ライジング・ブレイカー』!!】
ドォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!
『いっぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーーー…』
…以前、別の悪魔が雷を堕としたことがあったが、それとは比較にならない極太の落雷。
それが悪魔全体を包み込むように堕とされ、断末魔と共に声が失われていく。
そして、ようやく落ち着いたころには…穴の底がかろうじて見えるほどの大穴が残されているだけとなり、悪魔の姿も形も、完全に失われた。
【…仇はとれたよ、お父さん、皆…】
ぎゅっと杖を握り締め、そうつぶやくオーガの少女の声。
勝利をつかんだとはいえ、失われたその重みを感じさせるのであった…
「っ…ごほっ…な、何…?」
意識がほぼ飛びそうなほどの激痛の中、ふとそれが消え失せ、身体が楽になった。
喉にちょっと溜まっていた血反吐も吐き出しつつ、見ればジャックの身体に手を当てている人の姿があった。
【---ふぅ、治療完了だぜ。良かった、ぶっつけ本番でやれると分かっていても、無事にできて…】
【ジャック、大丈夫ですか!!無事に治ったようで…!!】
「ハクロと…君は…?」
ぐぐっと体を起こせば、泣き叫びながら喜ぶハクロに、見たことのない女性の姿。
いや、まず人ではないが…赤い地肌に、黄色い瞳に短髪の金髪。
豊満な胸元には稲妻のような模様も入っており、来ている衣服はゆったりとしたローブのようでありつつ、チャイナドレスのような大胆なスリットが入っている。
何よりも、頭には大きく立派な二本の角が、ばちばちと紫電を放っているが…その容姿には、どこかあの子の面影があるような…
「…って、まさか」
【ええ、そうですジャック。この子…あのオーガの娘です】
「----はぁぁぁぁっ!?」
やみあがりとはいえ突然の事実を突きつけられ、驚愕の声を上げるジャック。
目を思いっきり見開きしっかりとその容姿を見るが、急成長にもほどがあると言いたいだろう。
「って、そういえばそもそも今戦闘中なんじゃ…悪魔は!?」
【大丈夫、今…カトレアとファイの連携でぶっ飛ばした後、全員彼女のエンチャントで強化されて、盛大にしばき倒していますからね】
「え、エンチャント?と言うかどういう状況で…ああ」
何がどうなっているのか気になるが、悪魔のことはどうなったのか。
そう問いかければ、ハクロはその方向を示し、目を向ければどういう状況なのかすぐに理解できた。
【『ボルトスラ・レイン』!!】
【『スパーキングバンブーアッパー』!!】
【『爆雷氷炎拳』!!】
『ぐっぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ!!』
降り注ぐ雷を纏った光の暴風雨に、地面から電撃を放ちながら出現する竹やりのようなものに突き刺され、その顔面に爆発する拳をぶつけられる、オーガの肉体をもった悪魔の姿。
戦況は当初は苦しかったはずだが…全員何故かバチバチと電撃を纏っており、普段以上に強力な攻撃を放っていた。
「あれが…エンチャント?」
【はい。どうも電撃を身に纏えるようになったようで…その分、全員パワーアップするみたいです】
【その通り。オレの電撃は他人にも施せるし、相手の弱体化に利用できるんだぜ!】
ハクロの説明に対して、言葉を話せるようになったオーガの少女がそう告げる。
にやりと口角を上げており、どこか誇らしげな表情をしているが、実際に相当強力なバフがかかるのだろう。
そのおかげで、悪魔が見ているこっちが憐れみそうになるほどフルボッコに叩きのめされているが…いや、同情する気も無いか。
「そっか、ありがとう…でもこれ、どういう感じになっているの?」
【どうやら、オーガから進化して…えっと、種族名としては『オーガ・エレクトリカルハイウィザード』になるみたいです】
【ふふん、電撃による強化が基本だけど、それ以外に魔法も扱えるようになったんだぜ!!そら、敵を打ち滅ぼせ、『バーストサンダー』!!】
ドンガラゴッシャァァァアン!!
『ぎゃあああああああああああああああああああ!!』
見ればいつの間にか杖を持っており、それを振り下ろしただけでとんでもない雷が悪魔へ直撃する。
雷を纏った拳を使っていたからある程度の電撃への耐性を持っている可能性もあったが…それすらもやすやすと貫通できるほどの威力のようだ。
【あはははは!!良いね、良いね、この力!!守るべきものを守るために、大事なものを失わないために願ってみるのも悪くなかった!!…これがもう少し早くあれば、もっと良かったけど…ああ、でも今は、守りたいものを守れたから良しとするぜ!】
「なんか、元気だったけど、ちょっと男勝りのような話し方になっているような…」
【進化して、正確とかも結構変わったみたいですが…いえ、もしかするとこっちが素だったのかもしれないですね。角が戻ってますし、それで元に戻ったとか…】
やけに意気揚々とするオーガの少女に対して、その変貌に驚かされるが元気になったのなら言うまでもない。
【さぁて、とどめをそろそろ刺してあげようか!!カトレアお姉ちゃん、ファイお姉ちゃん、ルミの姐さん!!申し訳ないけど、仲間のかたき討ちのために、トドメ譲って!!】
【む?別に良いのなの!】
【なら、譲りましょウ】
【何か我だけ、呼び方違くないか?まぁ、別に良いが…】
ばっとそれぞれが距離を取り、オーガの娘はボコボコにされている悪魔へ向き直る。
【さて…本当なら今すぐにでもちょっとやりたいことがあるけど…筋を通すならまずは、お前を絶対に倒さないといけないからね…仲間の、大好きだったお父さんの仇を取らせてもらうよ!!】
ぐわっと腕を振り上げると、上空が瞬時に雷雲で覆いつくされる。
ばちばちと放電し始め、ただの雷撃が落ちるのではないことを予感させる。
『や、止めろ、このガワを壊すな…!!やっと手に入れた、強い肉体なんだ…!』
ボコボコにされてもはやあちこちが悲惨な状態になっている悪魔だが、必死に懇願し始める。
どうやら相当この攻撃が不味いと理解しているようだが…彼女はそれに耳を貸すわけがない。
【この世界から、消えて滅びつくされろ!!『ライジング・ブレイカー』!!】
ドォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!
『いっぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーーー…』
…以前、別の悪魔が雷を堕としたことがあったが、それとは比較にならない極太の落雷。
それが悪魔全体を包み込むように堕とされ、断末魔と共に声が失われていく。
そして、ようやく落ち着いたころには…穴の底がかろうじて見えるほどの大穴が残されているだけとなり、悪魔の姿も形も、完全に失われた。
【…仇はとれたよ、お父さん、皆…】
ぎゅっと杖を握り締め、そうつぶやくオーガの少女の声。
勝利をつかんだとはいえ、失われたその重みを感じさせるのであった…
45
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw
かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます!
って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑)
フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。


てめぇの所為だよ
章槻雅希
ファンタジー
王太子ウルリコは政略によって結ばれた婚約が気に食わなかった。それを隠そうともせずに臨んだ婚約者エウフェミアとの茶会で彼は自分ばかりが貧乏くじを引いたと彼女を責める。しかし、見事に返り討ちに遭うのだった。
『小説家になろう』様・『アルファポリス』様の重複投稿、自サイトにも掲載。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。


【完結】「図書館に居ましたので」で済む話でしょうに。婚約者様?
BBやっこ
恋愛
婚約者が煩いのはいつもの事ですが、場所と場合を選んでいただきたいものです。
婚約破棄の話が当事者同士で終わるわけがないし
こんな麗かなお茶会で、他の女を連れて言う事じゃないでしょうに。
この場所で貴方達の味方はいるのかしら?
【2023/7/31 24h. 9,201 pt (188位)】達成
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる