絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

志位斗 茂家波

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面倒事の拭い去りは拒絶したくとも

log-111 吹き飛ばされ、生み出され

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―――宙を舞う、小さな体。

 モンスターではない、ただの人間が利益にもならないものを助けて何になるのか。

 その問いかけをしたくとも、轟音と共に雷が突き抜け、吹き飛ばされる彼が答えられるだろうか。

【ウ、ウガーーーッヅ!!】

 怒りも忘れ、オーガの少女は身に纏わされた糸の塊をすぐに振り払い、彼の元へ駆け寄る。

 だが、彼女よりも素早い動きで蜘蛛の女が彼を受け止めた。


【ジャック…!!】

 ぼすんっと音を立てて抱えられ、勢いを殺してそのまま着地する。
 すぐにその様子を確認したが‥‥ひどい状態だった。

「ゴボッ…!!よ、よかった…ギリ生きているかも…流石、ハクロの服」
【いや、流石に限度がありますよ!!確かに私の糸は防御力は高いですが、それでもこれは…!!】

 ごぼっと血の塊を吐き出しつつ、かろうじて彼は生きていたようだ。
 しかし、それでも限界ギリギリのようで、一刻も早い手当てが必要に…


『---よそ見をしていていいのか?容赦なく、攻めさせてもらうぞ!!』
【【!!】】

 敵が簡単に、やすやすと時間をくれるわけがない。

【そうはさせるか!!】
『おっと、でもそれもう限界だねぇ、おらぁ!!】

 前にでてデュラハンが大剣を使って食い止めようとしたが、振るわれた拳にすでに限界が来てしまった武器では耐えきれず、砕かれて横へ吹き飛ばされる。

ドッガァァン!!
【グゥッツ!!】
『さぁ、これでもくらえぇ!!』

 剛腕がそのまま振りかぶられ、迫ってくる。
 彼の容態を考えると下手に動かせず、ぎゅっと蜘蛛の女が彼を守るように抱きかかえる。

 今度は、自分が守ろうと前に出るも、意味を成しえない抵抗になるだろう。

 でも、そうでもしないと守り切れない。

(ここに、力があれば‥‥!!)

 心の底から願いつつ、目の前に迫りくる拳からは目を離せない。

 大好きだったはずの、父の拳
 悪魔によって乗っ取られたそれは、もはやその拳にあらず。

 だからこそ、ここは守るために…!!

【ウッガァァァァァァァ!!】

 心から、あらん限りの咆哮を。
 奮い立てろ、この感情を。

 守るために、戦うために、敵を討つために。

【ウーーーーガーーー!!】

 拳が目の前にあと少しで到達するその瞬間…オーガの娘から強烈な光が解き放たれた。

カァァァッツ!!
『ぐぁぁぁぁあっつ!?目が、目がぁぁぁあ!!』


 真正面からまともに光を喰らい、悪魔はひるむ。

【あれは…まさか】

 ぎゅうっと大事なジャックを抱えつつ、ハクロは彼女に起きた変化に気が付いた。

【ぜぇ、ぜえようやく追いついたのなの…って、なにこの状況なの!?】
【マスター!?大丈夫ですか!!】
 
 輝きがあたりを照らす中、ようやく追いついたカトレアとファイ。
 状況を瞬時に理解して慌てるが、同じくオーガの娘の変化に驚愕する。


【…なるほど肉体面での修復は終えても、精神面は終わっていなかったか。それが今、守るべきものが出来たことで、一気に心身が共に成長したのか】

 剣が砕けた上に吹っ飛ばされたルミも、何とか立ち上がり、その光景を見てそうつぶやく。

【と言うか、今思いっきりあの悪魔隙だらけでは無いか!!皆、今のうちに畳みかけろ!!】
【あ、私はジャックを守ってますので!!】
【何がどうなのかわからないけど、とりあえずこのおっさんが全部悪いのはわかったのなの!!すぐにぶっ飛ばすのなの!!】
【準備、既に完了。マスターたちから、離れなさイ!!】

 目がくらんだ悪魔のその姿は、まさに絶好の攻め時。
 突然の変化に驚かされつつも、すぐにこの相手が敵だとカトレアたちも認識し、攻撃を仕掛ける。

【ボボンの実の100倍の爆発力のボボンガボボンの実喰らうのなのぉ!!】
【急速収束、ターゲットロックオン、『スラ・ウェーブカノン』照射!!】

 ジャックの身体をハクロに守ってもらいつつ、前に出たカトレアとファイ。
 大量の爆発する木の実を投げまくり、極太の光線が解き放たれ、オーガのガワをもった悪魔に直撃させていく。

『ぐぁぁぁぁぁぁっつ!?』

 油断して、まともに喰らった悪魔は、爆風と光の圧力に吹っ飛ばされ、宙を舞う。


 そのまま重力に引かれて地面に叩きつけられる間にも、光はあたりを照らし…消え失せた時には、そこには変貌したオーガの姿が現れたのであった…


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