絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

志位斗 茂家波

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移り変わる季節と、変わる環境

log-閑話 ケッセキアリ

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―――誰も知らない、とある場所。

 他国とのハブのような位置にありつつも人が入ることはなく、話し合うには都合の良い場所。

 だが、残念なことに全員がそろうということは、決してない。

『そもそも、悪堕ちと色欲のやつが駆け落ちした時点で、そろわねぇだろ…』
『ついでに知識と強欲、破滅と暴食がズタボロになって欠席中だよね』
『それで集えたのが、この面子か…召喚したからわかっていたとはいえ、お前らがそろう時が来るのはあるのだろうか?』

 円卓のような席が用意される中、その中心にいる人物は彼らを召喚した者。
 いったいどのような相手なのか、呼ばれた彼ら自身にも悟られないように魔道具か何かで身を隠しており、その正体を探るのは難しいだろう。

 ただ一つ、言えるとすれば…召喚した主の立場のはずなのに、悪魔たちの動きが想定以上にバラバラ過ぎて、統率が中々取れないことに嘆き続けている日々を送っていることぐらいか。


『まぁ、ここに集ったのはその色欲の馬鹿が原因だが…出欠を先に取るか。一人ずつ、確認のために司るものと今の名前を告げていけ。この場にいないが色欲が、変な名前で名乗ったせいでひどい風評被害を受けたからな…ついでに今の課題や成果も載せていけ』
『『『了解』』』

『それでは、先に名乗るか。常識と憤怒、ガルスト。現在、悪魔としての常識を叩き込む調教を行っているが…悲しいことに、理解を得られなくてな。勢い余って、島の者が消し飛んだ。また次を見つけねば…』
『それでよく、常識を名乗るな…いや、消し飛んだとは、この間の爆発騒ぎは貴様か』

『筋肉と傲慢、マチョスラー。現在、筋肉の魅力を利用した筋肉のための筋肉を作り上げるための筋肉を色々やっているが…こっちもうまくいかないねぇ。実験台を見つけて飛躍を投与したけど、やっぱり精霊の扱うようなマナを利用するのは不味いのかもねぇ。王都を吹き飛ばしかけちゃったよ』
『本来は自然の力のような物を、筋肉に固めるのがまずいのでは…?いや、そもそもマナを筋肉に利用するって、どういう発想でそうなるんだ』

『はぁ…面倒だが、真面目と怠惰のケルダー。現在、無気力を地道に広め…今ちょっと、ある国で無気力教を水面下で進行…良い感じだけど、やるのがだるぅ…』
『真面目なのか怠惰なのか、どっちだと言いたい』

『はっはっはっはっ!!それでもこの中で一番真面目にやって進んでいるんだから、良いねぇ、その順調さに嫉妬するなぁ!!暴力と嫉妬のゴルズドン!!現在、オーガの群れを襲撃し、その長の肉体を新たな側にしたことで獲得してやったわ、この嫉妬するほど欲した怪力を!!』
『おおお!!すっごい筋肉!!いーなー、人間の皮だとやっぱり筋肉に限界があるから、そういうのも憧れるよなー』
『だが、それだと逆に目立ち過ぎないか?一応、人間社会に紛れて動く必要があるだろう?』
『心配ご無用!!この剛力で見たものを叩き潰せば問題なし!!ああ、一応残っていた群れのやつらもひき肉に変えたり、資金稼ぎのためにこの肉体が率いていた仲間や娘も奴隷商へ売り払ってやったから、金に余裕はあるからな。ごまかせる衣服を見繕うぐらい楽過ぎるぞ。賊稼業でじわりじわりと各国を騒がせて、名をとどろかせつつあるからこっちも順調だ!!』

『それで欠席なのは知識と強欲のゲラト…あいつは蟲を使っていたっけか』
『寄生虫による肉体改造を行っていたからね。ただ、最近微妙な結果しか残せないのを嘆きつつ、この間の色欲のやつのせいで多く失ったのを悲しんでいたぞ』
『破滅と暴食…ガビルードもな、奴は食べることで力を得るのに、腹パンで吐き出して失ったのが多すぎたと…人間料理集も作ってそろそろ出版しようとしていたのに、燃やされてこっちはこっちで嘆いていたか』
『その二名の欠席となった原因が…あの悪堕ちと色欲の、ペロリストだったからな。奴め、聖女候補を消すために淫欲を利用しようとしてたはずなのに…何をどうして、駆け落ちしたのやら』
『聖ヴァレス公国は、微妙な信仰心のやつらが多いけど、同時にそれなりの素養もあるやつもいたからなぁ…悪魔にとっての苦手な聖なるものを所有していたからこそ、それらを失わせるために大事なことをやっていたのに、お前が色欲に溺れてどうするんだよと言いたいぞ』
『まったく、頭の筋肉が足りんやつだな…失敗作なのはわかっているが、この秘薬を奴に打ち込んで、筋肉による色欲を産みださせればよかった』
『『筋肉による色欲って何?』』


 筋肉馬鹿の話は誰もが呆れつつも、今回集ったのはその色欲の悪魔が原因である。
 彼らが色々とやるために必要なことを、各々のやり方で進めていたはずなのだが…その役目を放棄して逃げるのは言語道断なのだ。

『そのせいで今、公国自体も混乱に陥っているから、我々が蠢いても問題なく潜り込めるだろうが…それでも、もっとやりようが合っただろ…』
『しかも逃避行を防ぐために悪魔に対が重傷とか、愛って怖いなぁ‥』


 たとえ悪魔だろうと何だろうと、愛の力は強烈な物らしい。
 それだけに、狂愛種なんてものが生まれるだろうと、改めて彼らは認識させられる。

『なんにしても、大怪我の二名は放置しておいても治るから良いが…問題なのは色欲の欠席だ。来るべき時まで好き勝手に目的へ向けても良いが、最終的にすべていないといけないのだが…ここで離反されては困る』


 彼らは全員がそろっていなくてはいけない。
 それなのに、色欲が色欲に溺れていなくなるとは論外である。

『こうなってくると、追手を仕向けるよりも新たな人員を…いや、悪魔を呼ぶしかないか…良いのはいるか?』
『今の色欲を送還して、別のやつをですか?』
『うーん、都合の良い奴がいたかなぁ…悪魔の中に。そもそも、受肉用の肉体のストックってあったか‥‥?』

 色々と話し合いつつも、結論としては新しい悪魔を呼び出すことにした彼ら。

 今度はできるだけまともな奴が来てほしいと、彼らを呼んだ元凶の主は心の底からそう願うのであった…




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