絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

志位斗 茂家波

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移り変わる季節と、変わる環境

log-092 闘争本能は訴えつつ

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 大闘争会、それは両学園の交流の場にして、底知れぬ闇すらも吐き出し昇華させる場。
 何かとぶつかるようなことが無かったとしても、どこかで人は何かを抱え込むことがある。

 その抱え込みのすれ違いゆえに引き起こされる悲劇もあり…だからこそ、こういう場で発散してこそ、未然に防ぐことができるのだ。

「とはいえ、そんなことなくても普通に楽しめるのもあるけどね」
 
 運動会の各種目に近いものがあるが、それでも別物と言い切って良いようなのものもある。

 例えば今やっているのは『玉入れ』の種目名だが、籠の中に玉を投げ入れるだけじゃない。


「そこ、弾幕薄いぞ!!もっと投げ込め!!」
「うぉぉぉ!!相手も全力で投げて来て、高い球は防ぎようがねぇ!!」
「こういうとき、ハクロさんたちが参加してくれれば、高い部分のガードとかができるのに!!」

 玉入れの種目だが、お互いの陣地が決められ、その陣地内に置かれた自分たちの得点となる籠にどれだけ玉を入れられるのか、全力で投げ入れ合う。

 外れた球を素早く広い、それを投げ返し自陣の得点へ帰ることもできる。

 また、高い球に関しれは防ぐことが難しいためか、数人だけそれを弾き返せるほどの高さを持つ棒を有することを許されるが、それでも完全には防ぎきれない。

「うぉぉぉ!!全力で投げこめ、敵の球ははじけ、勝利へ導け!!」
「ぽぽんっぽいぽいぽいっと!!」



【…大闘争会と言うだけあって、中々激しいですね】
【でも見ごたえあって楽しいのなの】

 観客席の中で、闘争の様子を見て楽しむハクロとカトレア。
 他の観戦者たちに混じって明らかい人ではないので目立つが、それよりも試合のほうに目を向ける人が多い。

 いや、そもそも王都内で過ごしてそれなりに時間も経過しているので見慣れている人もおり、そこまでの騒ぎになるようなことはない。


 ただし、平民側のほうは良いとして…その姿に驚かされる人が多いのは、貴族側。
 
 話に聞いていたりするとは言え、こうやって実際に目にすると驚かされたり、その美しさに見惚れるものも多い。

 何よりも、そんな彼女たちが…


【っと、そこですよジャック~!!頑張ってくださーい!】
【頑張るのなの!!そこを投げて勝負を決めるのなの!!】

「うぉぉぉい!!そっちの方にモンスターだけど美女の声援が送られている奴がいるみたいなんだが!!」
「籠じゃ無ければ得点にならず、人に当てて得点ならば全力で集中砲火をしたいのだが…!!」
「安心しろ、こっちも同じ気持ちだ!!」
「同士討ちにならない範囲であれば、協力もするぞ!!」

「いや、思いっきり裏切りと何かもっとひどいものをやってないかな!?」
【おおっと、マスターに対しての集中砲火の打ち合わせカ!!これはこれで、ぶっ飛んだ垣根を超えた友情が生まれているようダー!】

「おいあいつ、マスターって呼ばれているってことは彼女も」
「ああ、そうだ。あのスライムも同じだ!!」
「ならばより一層、念入りにやらねば…!!」

「火に油が注がれたぁぁぁぁぁぁぁあ!!」


…主であるジャックに対して、貴族側の生徒や密かに同じ思いを抱く平民側の生徒が意気投合するのは当たり前のことだろうか。





 とにもかくにも、大闘争会は順調に進みつつ、午前の部が終了し、昼食をとる昼休憩の時間となった。
 この時間を過ぎて午後の部を行い、最終的な総合得点で結果が決まる。

【それで、今のところは平民側のほうが優勢…ですが、得点的には午後の部の種目のほうが高いものが多いですね】
「そうみたいなんだよね。だからまだ、わからない状況だな」

 もぐもぐとお弁当を食べつつ、ハクロ達と話し合う。
 昼休憩の時間は保護者と昼食が可能であり、ハクロ達もそのカテゴリーに入っているのか認められており、観客席からこの昼食の場に来ている様子。

 まぁ、その分周囲の平民や貴族を問わない生徒たちからの視線の圧力がかかっているのが実感できるが…もうあきらめたほうが早い。

「あれ?それにしてもルミは?闘技場周辺で警護をしているって話は聞いていたけど」
【今、闘技場の奥の方に行ってますね。何やら喧嘩が起きたようで、そちらを収めるために向かったようデス】
「喧嘩?この大闘争の場所で?」
【親馬鹿すぎる人たちが、やらかしかけたらしいなの。うちのこが一番すごいぞと自慢しあっての、ヒートアップらしいのなの】
「そういうのもあるのか…」

 熱くなるのは何も、参加している生徒たちだけではない。
 来ることができた親たちも見るだろうし、貴族側ならば将来の評価とかを考えて、我が子の大活躍を望む親だっている。

 だからこそ、どうにかできないかと応援する中で、やらかす人もいるようで…それを抑えるために人手も必要になる。
 

「我が子が大事でも、暴走はしてほしくは無いよね…」

 どれほど子供が大事だとしても、どこまでもやり過ぎるのはいけないこと。
 それはどこの世界であっても、大体同じようなことが言えそうであった…





…だが、何も親ばかりがやらかすわけでもなかった。

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