97 / 178
移り変わる季節と、変わる環境
log-090 闘技場のメンテナンス
しおりを挟む
―――ベクトラン闘技場。
いざという時の緊急避難所としても利用されるこの場所だが、大闘争会のための会場としても利用するために、しっかりと日頃から定期的なメンテナンスが施されており、放置されっぱなしの場所ではない。
しかし、そもそもなぜこのような場所があるのかというのも謎があり、様々な調査が行われはしたが…
【それでも謎は解けず、結局のところ無害なのと頑丈なので、こういう時に使える全天候対応闘技場としての利用があると…メンテナンスしつつも、その内部構造や材質などは不明…本当に大丈夫な場所ですよネ?】
「そのはずだけれども、だからこそ万が一に備えて、生徒たちに何か起こらないように、闘技場の状態をギルドのほうでチェックを入れていくのよ」
「そうよ、ファイさんの主も今回の大闘争会に出るのでしょ?安全のためにも、しっかりと確認をしないとね」
大闘争会まであと三日となった頃、その闘技場内ではギルド職員たちによってメンテナンスが行われており、その中にファイの姿もあった。
ジャックの従魔であり、当初は経験目的でギルドの鑑定員としてのアルバイトに努めていた彼女だったが…なんやかんやあってその手腕が認められていき、今ではほぼ正式な職員と変わらない扱いとなっていた。
そのおかげもあって、大闘争会の解説役も務めることになったが…事前の下見も兼ねて、このメンテナンスにも加わったのである。
【それにしても、謎が多いだけあって確かに不思議でス。ちょっと、経験の糧にしようと捕食を試みましたが、出来ないようでス】
「え?スライムってなんでも食べれるイメージがあったけど…」
【スライムに限らず、モンスターはやろうと思えば何でも自身の糧にできるのですが…駄目ですね、弾かれるような感覚がしまス】
「ふむ、今まで従魔の攻撃を当てて耐久力を測定し、避難所として優れた耐久性を確認していたが…そのような感想を述べるとは、人の言葉ができるならではの興味深い話になるな」
腕を伸ばし闘技場のあちこちに触れてそう口にするファイの言葉に、他のギルド職員たちも興味深そうな声を上げる。
「ファイさん、慣れ親しんでいたけどそういえばスライムだっけ…スライムと言えば不定形だけど、人型だから普段忘れがちになるよね」
「いや、喧嘩をしていた冒険者相手に、0距離レーザーで脅した姿でモンスターだと分かるだろ…」
「セクハラをやろうとした馬鹿を、スライムならではの捕食で瞬時に衣服だけ全て溶かして社会的抹殺した光景も良かったよ」
職員の仲間として過ごしている中で、忘れそうにもなるが…しっかりとスライムなのだ。
そんなスライムの有名な特徴としては、色々と取り込めることだが…どうやらこの闘技場は取り込めないらしい。
腐食性が高いのかと思われそうだが…どうやらそれとはまた別の何かがあるようだ。
「改めて、この闘技場の謎が出てきたわね…スライムで融解実験はやったことがあるらしいけれども、その時は単純に溶けない素材…でも、弾かれる感覚と言う感想は初めてのはず」
「そもそもまともなスライムが人の言葉を話せないから、感想を聞こうにも分らないよな」
【モンスターの言語は基本、圧縮されていますからネ。理解できなくとも無理はないというか、大抵鳴き声にしか聞こえないらしいですシ】
感想が聞けたことで謎が増えたが、今はそれを詳しく追及できるようなものは無い。
あくまでも今はメンテナンスのために来ただけであり、そのような情報は後でその手の専門家へ流し、調査を依頼するしかないのである。
仕方が無いのでメンテナンスのほうに彼らは意識を向けつつも、一度疑問が出てくればその他のことにも追求したくなる思いがあふれ出てくるのであった…
「…それにしてもファイさんがスライムなおかげで、いちいち梯子など持ってこなくても、伸びたりするだけで片付くのが凄い楽よね」
【スライムですから、こういう作業はお手の物でス。レーザー…までいかずとも先端を光らせて暗い場所も見やすくしたり、隙間もこうやってじゅぞぞっと中に入り込めば…うん、問題なく確認できますネ】
「本当に便利だなスライム…クリーナースライムとかいうのが欲しがられたりするわけだ」
…ギルド内でも役に立つファイの能力。
スライム系統は最弱のイメージも持たれやすいが、その利便性はかなり優れているのであった。
いざという時の緊急避難所としても利用されるこの場所だが、大闘争会のための会場としても利用するために、しっかりと日頃から定期的なメンテナンスが施されており、放置されっぱなしの場所ではない。
しかし、そもそもなぜこのような場所があるのかというのも謎があり、様々な調査が行われはしたが…
【それでも謎は解けず、結局のところ無害なのと頑丈なので、こういう時に使える全天候対応闘技場としての利用があると…メンテナンスしつつも、その内部構造や材質などは不明…本当に大丈夫な場所ですよネ?】
「そのはずだけれども、だからこそ万が一に備えて、生徒たちに何か起こらないように、闘技場の状態をギルドのほうでチェックを入れていくのよ」
「そうよ、ファイさんの主も今回の大闘争会に出るのでしょ?安全のためにも、しっかりと確認をしないとね」
大闘争会まであと三日となった頃、その闘技場内ではギルド職員たちによってメンテナンスが行われており、その中にファイの姿もあった。
ジャックの従魔であり、当初は経験目的でギルドの鑑定員としてのアルバイトに努めていた彼女だったが…なんやかんやあってその手腕が認められていき、今ではほぼ正式な職員と変わらない扱いとなっていた。
そのおかげもあって、大闘争会の解説役も務めることになったが…事前の下見も兼ねて、このメンテナンスにも加わったのである。
【それにしても、謎が多いだけあって確かに不思議でス。ちょっと、経験の糧にしようと捕食を試みましたが、出来ないようでス】
「え?スライムってなんでも食べれるイメージがあったけど…」
【スライムに限らず、モンスターはやろうと思えば何でも自身の糧にできるのですが…駄目ですね、弾かれるような感覚がしまス】
「ふむ、今まで従魔の攻撃を当てて耐久力を測定し、避難所として優れた耐久性を確認していたが…そのような感想を述べるとは、人の言葉ができるならではの興味深い話になるな」
腕を伸ばし闘技場のあちこちに触れてそう口にするファイの言葉に、他のギルド職員たちも興味深そうな声を上げる。
「ファイさん、慣れ親しんでいたけどそういえばスライムだっけ…スライムと言えば不定形だけど、人型だから普段忘れがちになるよね」
「いや、喧嘩をしていた冒険者相手に、0距離レーザーで脅した姿でモンスターだと分かるだろ…」
「セクハラをやろうとした馬鹿を、スライムならではの捕食で瞬時に衣服だけ全て溶かして社会的抹殺した光景も良かったよ」
職員の仲間として過ごしている中で、忘れそうにもなるが…しっかりとスライムなのだ。
そんなスライムの有名な特徴としては、色々と取り込めることだが…どうやらこの闘技場は取り込めないらしい。
腐食性が高いのかと思われそうだが…どうやらそれとはまた別の何かがあるようだ。
「改めて、この闘技場の謎が出てきたわね…スライムで融解実験はやったことがあるらしいけれども、その時は単純に溶けない素材…でも、弾かれる感覚と言う感想は初めてのはず」
「そもそもまともなスライムが人の言葉を話せないから、感想を聞こうにも分らないよな」
【モンスターの言語は基本、圧縮されていますからネ。理解できなくとも無理はないというか、大抵鳴き声にしか聞こえないらしいですシ】
感想が聞けたことで謎が増えたが、今はそれを詳しく追及できるようなものは無い。
あくまでも今はメンテナンスのために来ただけであり、そのような情報は後でその手の専門家へ流し、調査を依頼するしかないのである。
仕方が無いのでメンテナンスのほうに彼らは意識を向けつつも、一度疑問が出てくればその他のことにも追求したくなる思いがあふれ出てくるのであった…
「…それにしてもファイさんがスライムなおかげで、いちいち梯子など持ってこなくても、伸びたりするだけで片付くのが凄い楽よね」
【スライムですから、こういう作業はお手の物でス。レーザー…までいかずとも先端を光らせて暗い場所も見やすくしたり、隙間もこうやってじゅぞぞっと中に入り込めば…うん、問題なく確認できますネ】
「本当に便利だなスライム…クリーナースライムとかいうのが欲しがられたりするわけだ」
…ギルド内でも役に立つファイの能力。
スライム系統は最弱のイメージも持たれやすいが、その利便性はかなり優れているのであった。
41
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw
かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます!
って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑)
フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。


てめぇの所為だよ
章槻雅希
ファンタジー
王太子ウルリコは政略によって結ばれた婚約が気に食わなかった。それを隠そうともせずに臨んだ婚約者エウフェミアとの茶会で彼は自分ばかりが貧乏くじを引いたと彼女を責める。しかし、見事に返り討ちに遭うのだった。
『小説家になろう』様・『アルファポリス』様の重複投稿、自サイトにも掲載。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。


【完結】「図書館に居ましたので」で済む話でしょうに。婚約者様?
BBやっこ
恋愛
婚約者が煩いのはいつもの事ですが、場所と場合を選んでいただきたいものです。
婚約破棄の話が当事者同士で終わるわけがないし
こんな麗かなお茶会で、他の女を連れて言う事じゃないでしょうに。
この場所で貴方達の味方はいるのかしら?
【2023/7/31 24h. 9,201 pt (188位)】達成
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる