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移り変わる季節と、変わる環境
log-087 見えないところでぶっ倒れている人も
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―――宴から二週間が経過したころ、ジャックたちの元にある連絡が入った。
それは、その宴の場でお願いした皆で過ごせる家に関して、手に入ったというもの。
家の鍵及び地図を受け取りつつ、手続きのための書類もありそうだったがそこは国がやってくれたとのことで、あとは移住するだけで良いらしい。
「と言うわけで、その場所にやってきたけど…ここが、その家か」
【家と言うよりも、邸ですね…学生寮からそこまで距離が離れているわけでもないので、移動が楽ですが】
【ここが本当に、褒美でもらえる邸なのか?】
休日が来てすぐに、確認のために皆で向かったが、地図の場所にあった建物は貴族が使っていたらしい邸で、想像していた家よりも大きいサイズである、
【ここは元々はクォライト侯爵が所持していた邸とのことですネ】
【侯爵家の邸だったのなら納得だけど、どうして今はその貴族のモノじゃなくなっているのなの?聞いた話だと、いくつか押収…接収したものの中で、選ぶとかだったはずなの。その貴族、やらかした類なの?】
【いえ、ギルドのほうからも実は記録が回ってきているのですが、わりとまともな理由ですネ】
「まともな理由?」
かくかくしかじかと手短にこの邸が流れてきた経緯を聞いたが、まともな方なのか首をかしげたいものだった。
「…奥さんに浮気バレしないために密かに愛人と過ごすための邸だったの?」
【そのようですネ。ただ、先日それがばれたらしく、当主交代の騒ぎにもなって…降格するついでにこの邸も手放し、国の管理に置かれたようなのでス】
【決め手がへし折り…何を?】
【想像しないほうが、幸せかもしれないですね』
とにもかくにも、微妙ないわくがあったが、物凄く変なものは無いらしい。
事前に色々と国のほうで調査済みのようで、ある程度ハクロ達が住んでも不自由が無いように改装もしているようだ。
【まぁ、それでも直したいところは自力でやれますよ。ふふふ、改造箇所があったら、しっかりとやって過ごしやすくしたいですね】
【土壌も良い具合なの。毒も何もないけど、改良してもっと居心地よくしていきたいなの】
【ついでに部屋数もそれなりにあるようだが…ふむ、個室があるのは良いな】
【物置に、ちょっと溜めたいかもネ。マスターとの寮だと、流石に私物溜めづらいシ】
余裕がある邸だが、一つ問題があるとすれば掃除ぐらいか。
それなりの広さを有するため、皆で協力する必要がある。
【できれば、メイドさんとか雇えたらいいかもしれないですが…まぁ、私たちでもできないことはないですし、問題にはならないはずです】
【防犯関係も気になるが…はて、このあたりの盗人情報とかはなかったかな?】
…そのことに関してはたぶん大丈夫だとは思う。
普段共に生活していると忘れそうになるが、ハクロ達はモンスター。
そんな巣窟に対して、挑む勇者…いや、泥棒ならば愚者と言うほうが良いのかもしれないが、挑む勇気を持つ者はいるのだろうか。
【なのなのなのぉ…庭もあるからちょっとした家庭菜園も出来そうなの!良い家もらえてよかったのなの!】
「本当にそうだよねぇ。あ、でもまだ僕は学生だから、ここに居を構えるのはまだ先かな…ハクロ達が先に過ごせばいいよ」
学生の身ゆえに、基本的には寮暮らし。
ここで過ごすのは休みの日とかになるだろうが、ハクロ達が過ごすには問題はないはずである。
【…ああ、でも私はこっちじゃなくて、ジャックと一緒に過ごし続けたいですね。ふふふ、なので他の皆さんはこちらで…】
【ちょっと待っタ】
さりげなくハクロがジャックを持ち上げ、寮のほうに引き上げようとしたところで、ファイがその肩をつかんだ。
【マスターと一緒に過ごすのは良いけど、ここで過ごしたほうが良いと思ウ、マスターの部屋は確かに、従魔がいても過ごせるようになっているけれども、彼にも一人の時間は必要だと思ウ】
【それもそうですが…でも私はジャックと一緒に過ごしていたいのですが…】
【ちょっと耳、貸しテ】
【ん?】
【…情操教育的に、圧縮言語で…キュピキュピ、ピキー】
【…キュルゥッツ!?】
ボンッツ!!
「ハクロが一瞬で、ゆでだこのように真っ赤になって爆発したぁ!?」
何をささやかれたのは、人に理解できないかなりの言葉が圧縮されているというモンスター本来の言語で短く話されたかと思った次の瞬間、ハクロが爆発した。
【な、なのなの…ああ、ハクロはミーたちよりも耐性が無かったのなの。知識が無ければ、危うかったのかもなの】
【わーお、久しぶりの聞いた気がするのだが…何だったか…聖女様が蟲に対して語った言葉だったか?生前はほぼ覚えてないはずなのに、何をきっかけで思い出すものがあるのかわからないな】
「いや本当に、何をハクロに告げたの、ファイ」
【まだまだ子供のマスターにはお聞かせできないものなので、大人になってからでお願いいたしまス】
「本当に何をハクロに語ったの!?」
内容は不明だが、知らなくて良いことでもありつつ、大人になったら知ることでもあるらしい。
真っ赤になって黙り込むハクロを見て、聞かないほうが良いかと思うのであった…
【はぅううっ…考えたことはちょっとあるけど、そこまで濃密に言わなくても…】
【ピキピキーッ】
【うっ‥‥!!】
「…本当に何を語っているの。と言うか、あれでわかるの?」
【我らが使っているこの言葉は、単純にほどいただけだからな…圧縮言語の中身が分かれば凄い情報量だが…主殿は聞かなくていいな】
【ハクロ、思った以上にうぶだったようなの…】
…モンスターの圧縮言語、解読出来たら便利そうだけど、同時にその危うさもにじみ出る会話だな。
それは、その宴の場でお願いした皆で過ごせる家に関して、手に入ったというもの。
家の鍵及び地図を受け取りつつ、手続きのための書類もありそうだったがそこは国がやってくれたとのことで、あとは移住するだけで良いらしい。
「と言うわけで、その場所にやってきたけど…ここが、その家か」
【家と言うよりも、邸ですね…学生寮からそこまで距離が離れているわけでもないので、移動が楽ですが】
【ここが本当に、褒美でもらえる邸なのか?】
休日が来てすぐに、確認のために皆で向かったが、地図の場所にあった建物は貴族が使っていたらしい邸で、想像していた家よりも大きいサイズである、
【ここは元々はクォライト侯爵が所持していた邸とのことですネ】
【侯爵家の邸だったのなら納得だけど、どうして今はその貴族のモノじゃなくなっているのなの?聞いた話だと、いくつか押収…接収したものの中で、選ぶとかだったはずなの。その貴族、やらかした類なの?】
【いえ、ギルドのほうからも実は記録が回ってきているのですが、わりとまともな理由ですネ】
「まともな理由?」
かくかくしかじかと手短にこの邸が流れてきた経緯を聞いたが、まともな方なのか首をかしげたいものだった。
「…奥さんに浮気バレしないために密かに愛人と過ごすための邸だったの?」
【そのようですネ。ただ、先日それがばれたらしく、当主交代の騒ぎにもなって…降格するついでにこの邸も手放し、国の管理に置かれたようなのでス】
【決め手がへし折り…何を?】
【想像しないほうが、幸せかもしれないですね』
とにもかくにも、微妙ないわくがあったが、物凄く変なものは無いらしい。
事前に色々と国のほうで調査済みのようで、ある程度ハクロ達が住んでも不自由が無いように改装もしているようだ。
【まぁ、それでも直したいところは自力でやれますよ。ふふふ、改造箇所があったら、しっかりとやって過ごしやすくしたいですね】
【土壌も良い具合なの。毒も何もないけど、改良してもっと居心地よくしていきたいなの】
【ついでに部屋数もそれなりにあるようだが…ふむ、個室があるのは良いな】
【物置に、ちょっと溜めたいかもネ。マスターとの寮だと、流石に私物溜めづらいシ】
余裕がある邸だが、一つ問題があるとすれば掃除ぐらいか。
それなりの広さを有するため、皆で協力する必要がある。
【できれば、メイドさんとか雇えたらいいかもしれないですが…まぁ、私たちでもできないことはないですし、問題にはならないはずです】
【防犯関係も気になるが…はて、このあたりの盗人情報とかはなかったかな?】
…そのことに関してはたぶん大丈夫だとは思う。
普段共に生活していると忘れそうになるが、ハクロ達はモンスター。
そんな巣窟に対して、挑む勇者…いや、泥棒ならば愚者と言うほうが良いのかもしれないが、挑む勇気を持つ者はいるのだろうか。
【なのなのなのぉ…庭もあるからちょっとした家庭菜園も出来そうなの!良い家もらえてよかったのなの!】
「本当にそうだよねぇ。あ、でもまだ僕は学生だから、ここに居を構えるのはまだ先かな…ハクロ達が先に過ごせばいいよ」
学生の身ゆえに、基本的には寮暮らし。
ここで過ごすのは休みの日とかになるだろうが、ハクロ達が過ごすには問題はないはずである。
【…ああ、でも私はこっちじゃなくて、ジャックと一緒に過ごし続けたいですね。ふふふ、なので他の皆さんはこちらで…】
【ちょっと待っタ】
さりげなくハクロがジャックを持ち上げ、寮のほうに引き上げようとしたところで、ファイがその肩をつかんだ。
【マスターと一緒に過ごすのは良いけど、ここで過ごしたほうが良いと思ウ、マスターの部屋は確かに、従魔がいても過ごせるようになっているけれども、彼にも一人の時間は必要だと思ウ】
【それもそうですが…でも私はジャックと一緒に過ごしていたいのですが…】
【ちょっと耳、貸しテ】
【ん?】
【…情操教育的に、圧縮言語で…キュピキュピ、ピキー】
【…キュルゥッツ!?】
ボンッツ!!
「ハクロが一瞬で、ゆでだこのように真っ赤になって爆発したぁ!?」
何をささやかれたのは、人に理解できないかなりの言葉が圧縮されているというモンスター本来の言語で短く話されたかと思った次の瞬間、ハクロが爆発した。
【な、なのなの…ああ、ハクロはミーたちよりも耐性が無かったのなの。知識が無ければ、危うかったのかもなの】
【わーお、久しぶりの聞いた気がするのだが…何だったか…聖女様が蟲に対して語った言葉だったか?生前はほぼ覚えてないはずなのに、何をきっかけで思い出すものがあるのかわからないな】
「いや本当に、何をハクロに告げたの、ファイ」
【まだまだ子供のマスターにはお聞かせできないものなので、大人になってからでお願いいたしまス】
「本当に何をハクロに語ったの!?」
内容は不明だが、知らなくて良いことでもありつつ、大人になったら知ることでもあるらしい。
真っ赤になって黙り込むハクロを見て、聞かないほうが良いかと思うのであった…
【はぅううっ…考えたことはちょっとあるけど、そこまで濃密に言わなくても…】
【ピキピキーッ】
【うっ‥‥!!】
「…本当に何を語っているの。と言うか、あれでわかるの?」
【我らが使っているこの言葉は、単純にほどいただけだからな…圧縮言語の中身が分かれば凄い情報量だが…主殿は聞かなくていいな】
【ハクロ、思った以上にうぶだったようなの…】
…モンスターの圧縮言語、解読出来たら便利そうだけど、同時にその危うさもにじみ出る会話だな。
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