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移り変わる季節と、変わる環境
log-085 小さな望み、大きな利益
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―――竜種騒動を収めた冒険者たちへの宴の場。
それと同時に、その功績をたたえての褒章の場でもあり、ある程度の時間が経過したところで、各自に褒章を渡すための人が到着した。
「今宵、ここに集まってくれたこと、そして騒動を収めるために各地で奔走してくれた冒険者たちよ、この場をもってこのベクトルア公爵家当主、シャレアが礼を述べよう」
会場の中心に、上から演出のための光を浴びながら現れたのは、公爵家の人物。
流石に国王がこの場に来ることはできなかったようだが、それについでの高い爵位の貴族が対応するようで、その背後には各自へ向けた多くの褒章が詰まった袋やら宝箱やら、様々なものが用意されていた。
「ベクトルア公爵家…貴族の爵位としても、おもいっきりわかりやすいほど高い位置にいる方が来るとは」
「これは思いのほか、大物が来たなぁ…」
「威厳溢れるおじいさんって感じで、凄いな」
【本当ですよね。村の村長さんよりも何倍もの貫禄がありそうですよ】
公爵家の登場に会場はざわめきつつも、すぐに宴の場から褒章の場へと空気が切り替わる。
各自、先日の竜種騒動で収めた功績が記録されており、内容によって与えられるものが変わってくるようだ。
単純にお金から貴金属、何かしらの許可証や珍しい品物など、その中身は多岐にわたるだろう。
「なっ…こ、これは幻の超毛薬…!!ほ、本当にこれが褒章で良いんですか!?」
「ああ、いや。これはおまけのような物だ。輝きのラッパの面々よ、貴公らは竜種騒動で前線に立っていたという報告もあるから、こちらの金が本来の褒章だが…冒険者たちの素行等も調査する中で、その悲劇を聞いて…目の前で見てわかるような状態なのが、同じ男としては同情できるからな」
「ありがとうございます…!!」
また、褒美を与えるにしても普段の素行等でしっかりと人間性などを把握しつつ、本当に彼らが欲しがっているのは何かというのを前もって調べているようで、誰もかれもが思わぬ褒美に涙していたりする様子がうかがえた。
というかダンデームさん、誰が見てもガチ涙…復活するといいね。
【あれ、本物のようだヨ。間違いなく、復活するね、毛根】
「公爵家が偽物を渡して来たら、色々と不味いだろ」
そうこうしている間にも次々に渡されて行き…ついに、ジャックたちの番となった。
―――
「それでは最後に、今回の竜種騒動の中で、その元凶と対峙し収めたとされる…ジャック及び、その従魔たちよ前へ!!」
…名前を呼び、壇上に上がってきた者たちを見てベクトルア公爵家当主のシャレアは表情を変えずに内心思っていることを悟られないようにしながら、観察を行う。
王国の中で、噂に名高いモンスターたち。
厄災種、その予備軍などと言われているらしいが、見た目だけであれば美しい女性たちと言って良いだろう。
(…見た目だけでも美しいが…その実力もまた、とんでもないか)
一部上層部には伝わっている、竜種騒動の中でのさらなるヤバい情報。
取り逃がしたとはいえ、それでも悪魔との対峙やドラゴンとの戦闘など、並大抵のものではできないことだ。
幸いなことに、それだけの力を持ちながらも、今のところは人への敵対はなく…力の矛先を向けられていない状況は安心したいところ。
しかし、それは彼女たちの判断によって簡単に覆る可能性もあり、付き合い方を考えなければ相応の代償を支払わされる可能性すらある。
「さてと…それでは褒美を与えていくとしよう。ただ、その前に一ついいだろうか?」
「何か、ありましたでしょうか?」
「ああ、大したことではないが、君たちの功績が色々と大きくてね。褒美としての金なども用意してあるが、その他にも一つ、何か欲しいものがあれば用意しようと思ってね。可能なものに限るが…何か、望みたいものがあるか?」
少なくとも、相手の考え方を読まなければいけない。
こういう時に、このような場は何かと利用しやすくもあるだろう。
相手の望むものを確認し、それをどう使おうかと考える様子を見て、今後の予想は立てやすい。
強大な力を持つ従魔たちを有していながら、更に欲するものがあれば…それを満たせる範囲で補うことができれば、多少はこちらの手元に置いて制御しやすくなる。
「…望みですか。そうですね…」
単純に金であれば、まだ余裕はある。
これが領地や爵位であれば、今の段階であれば男爵の位を与えて、少しずつ貴族として楔を付けていくこともできる。
他の物であっても、その望み次第で…今後の対応を考える必要がある。
さて、この少年は何を望むのか。
これだけの従魔を率いておきながら、どのような欲望を持つのか。
「…でしたら、一つ欲しいものとしては…家、ですかね」
「…家、だと?」
「はい。今回冒険者としての活動を行ってますが、自分はまだ学生でして…寮暮らしをしております、大型従魔を持ち込んだ方々の寮室をつかってますが、少々手狭なので…思い切って、全員でゆったりと過ごせるような家でもあればなぁと‥」
「なるほど…」
竜種騒動を収めた功績から、富や名声なども与えることができるだろう。
だが、どちらと言えば冨のほうに寄っているが、彼が望むのは家だという。
皆でゆったりと過ごす…安らぎの場所を求めるか。
(---なるほど、まだ楽な方か)
考えてみればこのものは、まだ幼き学生の身。
大人への道を進みつつも、欲深き者共のには染まっていない様子だ。
ならば、悪しきものが混ざらないように手助けできる場所を提供したほうが良いだろう。
「わかった、ならばその住まいに関しても、こちらのほうで手配をしていこう。都合よく、先日少々訳ありでいくつかの家から没収したものがあってな…少々整理してから、そのどれかを与えることにしよう」
その没収した原因も、実は色々と辿ると彼らが関わっている部分もあるが…ひとまずは、手ごろなものがあって良かったと内心安堵の息を公爵は吐くのであった…
それと同時に、その功績をたたえての褒章の場でもあり、ある程度の時間が経過したところで、各自に褒章を渡すための人が到着した。
「今宵、ここに集まってくれたこと、そして騒動を収めるために各地で奔走してくれた冒険者たちよ、この場をもってこのベクトルア公爵家当主、シャレアが礼を述べよう」
会場の中心に、上から演出のための光を浴びながら現れたのは、公爵家の人物。
流石に国王がこの場に来ることはできなかったようだが、それについでの高い爵位の貴族が対応するようで、その背後には各自へ向けた多くの褒章が詰まった袋やら宝箱やら、様々なものが用意されていた。
「ベクトルア公爵家…貴族の爵位としても、おもいっきりわかりやすいほど高い位置にいる方が来るとは」
「これは思いのほか、大物が来たなぁ…」
「威厳溢れるおじいさんって感じで、凄いな」
【本当ですよね。村の村長さんよりも何倍もの貫禄がありそうですよ】
公爵家の登場に会場はざわめきつつも、すぐに宴の場から褒章の場へと空気が切り替わる。
各自、先日の竜種騒動で収めた功績が記録されており、内容によって与えられるものが変わってくるようだ。
単純にお金から貴金属、何かしらの許可証や珍しい品物など、その中身は多岐にわたるだろう。
「なっ…こ、これは幻の超毛薬…!!ほ、本当にこれが褒章で良いんですか!?」
「ああ、いや。これはおまけのような物だ。輝きのラッパの面々よ、貴公らは竜種騒動で前線に立っていたという報告もあるから、こちらの金が本来の褒章だが…冒険者たちの素行等も調査する中で、その悲劇を聞いて…目の前で見てわかるような状態なのが、同じ男としては同情できるからな」
「ありがとうございます…!!」
また、褒美を与えるにしても普段の素行等でしっかりと人間性などを把握しつつ、本当に彼らが欲しがっているのは何かというのを前もって調べているようで、誰もかれもが思わぬ褒美に涙していたりする様子がうかがえた。
というかダンデームさん、誰が見てもガチ涙…復活するといいね。
【あれ、本物のようだヨ。間違いなく、復活するね、毛根】
「公爵家が偽物を渡して来たら、色々と不味いだろ」
そうこうしている間にも次々に渡されて行き…ついに、ジャックたちの番となった。
―――
「それでは最後に、今回の竜種騒動の中で、その元凶と対峙し収めたとされる…ジャック及び、その従魔たちよ前へ!!」
…名前を呼び、壇上に上がってきた者たちを見てベクトルア公爵家当主のシャレアは表情を変えずに内心思っていることを悟られないようにしながら、観察を行う。
王国の中で、噂に名高いモンスターたち。
厄災種、その予備軍などと言われているらしいが、見た目だけであれば美しい女性たちと言って良いだろう。
(…見た目だけでも美しいが…その実力もまた、とんでもないか)
一部上層部には伝わっている、竜種騒動の中でのさらなるヤバい情報。
取り逃がしたとはいえ、それでも悪魔との対峙やドラゴンとの戦闘など、並大抵のものではできないことだ。
幸いなことに、それだけの力を持ちながらも、今のところは人への敵対はなく…力の矛先を向けられていない状況は安心したいところ。
しかし、それは彼女たちの判断によって簡単に覆る可能性もあり、付き合い方を考えなければ相応の代償を支払わされる可能性すらある。
「さてと…それでは褒美を与えていくとしよう。ただ、その前に一ついいだろうか?」
「何か、ありましたでしょうか?」
「ああ、大したことではないが、君たちの功績が色々と大きくてね。褒美としての金なども用意してあるが、その他にも一つ、何か欲しいものがあれば用意しようと思ってね。可能なものに限るが…何か、望みたいものがあるか?」
少なくとも、相手の考え方を読まなければいけない。
こういう時に、このような場は何かと利用しやすくもあるだろう。
相手の望むものを確認し、それをどう使おうかと考える様子を見て、今後の予想は立てやすい。
強大な力を持つ従魔たちを有していながら、更に欲するものがあれば…それを満たせる範囲で補うことができれば、多少はこちらの手元に置いて制御しやすくなる。
「…望みですか。そうですね…」
単純に金であれば、まだ余裕はある。
これが領地や爵位であれば、今の段階であれば男爵の位を与えて、少しずつ貴族として楔を付けていくこともできる。
他の物であっても、その望み次第で…今後の対応を考える必要がある。
さて、この少年は何を望むのか。
これだけの従魔を率いておきながら、どのような欲望を持つのか。
「…でしたら、一つ欲しいものとしては…家、ですかね」
「…家、だと?」
「はい。今回冒険者としての活動を行ってますが、自分はまだ学生でして…寮暮らしをしております、大型従魔を持ち込んだ方々の寮室をつかってますが、少々手狭なので…思い切って、全員でゆったりと過ごせるような家でもあればなぁと‥」
「なるほど…」
竜種騒動を収めた功績から、富や名声なども与えることができるだろう。
だが、どちらと言えば冨のほうに寄っているが、彼が望むのは家だという。
皆でゆったりと過ごす…安らぎの場所を求めるか。
(---なるほど、まだ楽な方か)
考えてみればこのものは、まだ幼き学生の身。
大人への道を進みつつも、欲深き者共のには染まっていない様子だ。
ならば、悪しきものが混ざらないように手助けできる場所を提供したほうが良いだろう。
「わかった、ならばその住まいに関しても、こちらのほうで手配をしていこう。都合よく、先日少々訳ありでいくつかの家から没収したものがあってな…少々整理してから、そのどれかを与えることにしよう」
その没収した原因も、実は色々と辿ると彼らが関わっている部分もあるが…ひとまずは、手ごろなものがあって良かったと内心安堵の息を公爵は吐くのであった…
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