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移り変わる季節と、変わる環境
log-084 踊る宝石舞う輝き
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―――竜種騒動を収めた冒険者たちへの、褒章の場兼祝いの場。
会場はグラビティ王国の王城…ではなく、その近くに建てられている迎賓館のような施設だった。
流石に王城で行わないのは、王族のいる場所だからこその警備面の問題もあり、だからこそ各国にはその手の特設会場となる場所や建物が確保されているらしい。
グラビティ王国ではこの邸がその手の会場として利用されており、祝いの場があればここで行われるのが基本らしい。
もちろん、あくまでも冒険者たち向け…ほぼ平民の人たちばかりの場所用でもあり、貴族相手での祝いの場はまた別に建てられており、そちらの方がより豪勢な会場になっているようだ。
「でも、こっちでも十分豪華だよなぁ」
【そうですよね。褒章の場と言ってもそれまでは自由に会場を歩けますし、料理もおいしいですからね】
もぐもぐと皿にのせた料理を食べ、そう答えるハクロ。
彼女の装いは白いドレスであり、ただ白い糸で作ったのではなく何かしらの加工をしたのか星々のような小さなきらめきを纏っており、大きい布地がその蜘蛛の部分を覆っている。
「というか、ルミのほうも入り口付近で周囲を見回っているし…もうちょっとこう、祝いの場を楽しめばいいのに」
【武器を預けることになって、手元に剣がないからこそ、少し落ち着かないようですよ】
透き通った湖のような、透明感のある蒼いドレスを着つつ、落ち着いた様子を見せないルミ。
会場内の参加者たちも武器を預けており、全員丸腰の状態なのだがこちらはリラックスしている様子。
まぁ、こんな場所に襲撃をかけるようなものがあるのかと言われればそうでもなく、警備の人たちもいる様なので安心はできるはずだが…それでも、普段鎧姿だからこそ、慣れていないドレスに落ち着かないようだ。
「お、やぁやぁジャック君にハクロさん、お久しぶりだね」
「ああ、輝きのラッパのダンデームさん。他の面子もお揃いですね」
声をかけられてみれば、竜種騒動で一緒に動いた冒険者パーティ輝きのラッパの面々。
それぞれドレスコードに合わせた衣服を着ており、普段とはまた違った印象を受けるだろう。
しいて言うのであれば…
【あの、ダンデームさん?何で今日は、スキンヘッドなのでしょうか?前は髪が普通に生えていたような…】
「…ははは、実は竜種騒動後に色々と依頼を受ける中で、最悪な目に遭ってね…」
会場の明かりによって反射する、つるつるの頭。
以前あった時と比べて、変わり果てた姿に僕らは驚いた。
「それがな、我々のリーダは先日ある討伐依頼に向かったんだが…」
「そこで出会ったのが、凶悪なスライムで」
【あー、マッドポイズンスライムかナ?先日、その魔石を持ち込んできたから、そいつに頭からやられたんだろうなと思ったヨ】
「ひぇっ!?ス、スラスラスラ…ああ、何だファイさんか…ビビったよ、スライム特有のそのプルプル感に…」
まるでGでも見たかのように飛び上がったダンデームさんだったが、声をかけてきた相手…燃え上がるような真っ赤なドレスを着たファイの姿を見て、ほっと安堵の息を吐いた。
「物凄いトラウマになっている…というか、あれ?他の皆さん、ファイを知っていたっけ?」
【あたし、ギルドでバイトしているからナ。王都ギルドに訪れる冒険者たちは大抵顔見知りになっているゾ】
「ああ、そういえばそうだった」
竜種騒動前はいなかったファイに、何故輝きのラッパの面々が知っているのか一瞬疑問に思ったが、すぐに解消された。
王都のギルドでアルバイトしている以上、彼らが彼女に遭遇する可能性はあるのだ。
「というか、マッドポイズンスライムって何?名前を聞く感じだと、思いっきり毒々しいスライムの姿想像できるけど…」
「その名の通り、おおよそイメージできているようだけど…今回、出会ったのはその変異種で、毛のみを確実に溶かすヤバい奴だったんだ」
「うわぁ…」
【変態性が極まっているな、そのスライム。同じスライムとして、どうしてそうなったのだと言いたいヨ】
かくかくしかじかと話を聞けば、どうやらそのスライムは動物の毛だけを食する変わり者だったらしく、道行く人々の毛の危機が上がっていたらしい。
なので、どうにか討伐しようと何人もの冒険者たちが挑むも、意外にも中々強く、悲惨な目に遭った方々もいるらしい。
その犠牲者の中に、ダンデームさんもいたようだ。
【ついでに腕は確かのようで、綺麗に魔石は取れていたけど…特殊性癖過ぎて、不味かっタ】
「いや、食べたんかい」
【食べては無い、絶対に経験にしたくないなと思えたレベルだっタ。一体何をどうしたら、ああいうスライムになるのか、不思議だナ】
「こちらとしては、ファイさんのような人型のスライムのほうが不思議ですけれどね」
ごもっともである。
「というか、さらに言えばそういう子たちを従魔にできるジャック君も不思議だよね」
「なんというか、そういうのを引き寄せる運でも持っているのか?」
「それを言われても、わからないからなぁ…」
【本当に不思議なことなの】
うんうんとうなずく、落ち着いた新緑のドレスを着こなすカトレア。
不思議と言われてもどうしようもないというか、カトレアもやってきた一体と言えるのだがそこはどうツッコミを入れるべきなのだろうか。
とにもかくにも、今回の騒動で活躍した人たちへの褒美が授けられる時間が、もう間もなく来るのであった…
会場はグラビティ王国の王城…ではなく、その近くに建てられている迎賓館のような施設だった。
流石に王城で行わないのは、王族のいる場所だからこその警備面の問題もあり、だからこそ各国にはその手の特設会場となる場所や建物が確保されているらしい。
グラビティ王国ではこの邸がその手の会場として利用されており、祝いの場があればここで行われるのが基本らしい。
もちろん、あくまでも冒険者たち向け…ほぼ平民の人たちばかりの場所用でもあり、貴族相手での祝いの場はまた別に建てられており、そちらの方がより豪勢な会場になっているようだ。
「でも、こっちでも十分豪華だよなぁ」
【そうですよね。褒章の場と言ってもそれまでは自由に会場を歩けますし、料理もおいしいですからね】
もぐもぐと皿にのせた料理を食べ、そう答えるハクロ。
彼女の装いは白いドレスであり、ただ白い糸で作ったのではなく何かしらの加工をしたのか星々のような小さなきらめきを纏っており、大きい布地がその蜘蛛の部分を覆っている。
「というか、ルミのほうも入り口付近で周囲を見回っているし…もうちょっとこう、祝いの場を楽しめばいいのに」
【武器を預けることになって、手元に剣がないからこそ、少し落ち着かないようですよ】
透き通った湖のような、透明感のある蒼いドレスを着つつ、落ち着いた様子を見せないルミ。
会場内の参加者たちも武器を預けており、全員丸腰の状態なのだがこちらはリラックスしている様子。
まぁ、こんな場所に襲撃をかけるようなものがあるのかと言われればそうでもなく、警備の人たちもいる様なので安心はできるはずだが…それでも、普段鎧姿だからこそ、慣れていないドレスに落ち着かないようだ。
「お、やぁやぁジャック君にハクロさん、お久しぶりだね」
「ああ、輝きのラッパのダンデームさん。他の面子もお揃いですね」
声をかけられてみれば、竜種騒動で一緒に動いた冒険者パーティ輝きのラッパの面々。
それぞれドレスコードに合わせた衣服を着ており、普段とはまた違った印象を受けるだろう。
しいて言うのであれば…
【あの、ダンデームさん?何で今日は、スキンヘッドなのでしょうか?前は髪が普通に生えていたような…】
「…ははは、実は竜種騒動後に色々と依頼を受ける中で、最悪な目に遭ってね…」
会場の明かりによって反射する、つるつるの頭。
以前あった時と比べて、変わり果てた姿に僕らは驚いた。
「それがな、我々のリーダは先日ある討伐依頼に向かったんだが…」
「そこで出会ったのが、凶悪なスライムで」
【あー、マッドポイズンスライムかナ?先日、その魔石を持ち込んできたから、そいつに頭からやられたんだろうなと思ったヨ】
「ひぇっ!?ス、スラスラスラ…ああ、何だファイさんか…ビビったよ、スライム特有のそのプルプル感に…」
まるでGでも見たかのように飛び上がったダンデームさんだったが、声をかけてきた相手…燃え上がるような真っ赤なドレスを着たファイの姿を見て、ほっと安堵の息を吐いた。
「物凄いトラウマになっている…というか、あれ?他の皆さん、ファイを知っていたっけ?」
【あたし、ギルドでバイトしているからナ。王都ギルドに訪れる冒険者たちは大抵顔見知りになっているゾ】
「ああ、そういえばそうだった」
竜種騒動前はいなかったファイに、何故輝きのラッパの面々が知っているのか一瞬疑問に思ったが、すぐに解消された。
王都のギルドでアルバイトしている以上、彼らが彼女に遭遇する可能性はあるのだ。
「というか、マッドポイズンスライムって何?名前を聞く感じだと、思いっきり毒々しいスライムの姿想像できるけど…」
「その名の通り、おおよそイメージできているようだけど…今回、出会ったのはその変異種で、毛のみを確実に溶かすヤバい奴だったんだ」
「うわぁ…」
【変態性が極まっているな、そのスライム。同じスライムとして、どうしてそうなったのだと言いたいヨ】
かくかくしかじかと話を聞けば、どうやらそのスライムは動物の毛だけを食する変わり者だったらしく、道行く人々の毛の危機が上がっていたらしい。
なので、どうにか討伐しようと何人もの冒険者たちが挑むも、意外にも中々強く、悲惨な目に遭った方々もいるらしい。
その犠牲者の中に、ダンデームさんもいたようだ。
【ついでに腕は確かのようで、綺麗に魔石は取れていたけど…特殊性癖過ぎて、不味かっタ】
「いや、食べたんかい」
【食べては無い、絶対に経験にしたくないなと思えたレベルだっタ。一体何をどうしたら、ああいうスライムになるのか、不思議だナ】
「こちらとしては、ファイさんのような人型のスライムのほうが不思議ですけれどね」
ごもっともである。
「というか、さらに言えばそういう子たちを従魔にできるジャック君も不思議だよね」
「なんというか、そういうのを引き寄せる運でも持っているのか?」
「それを言われても、わからないからなぁ…」
【本当に不思議なことなの】
うんうんとうなずく、落ち着いた新緑のドレスを着こなすカトレア。
不思議と言われてもどうしようもないというか、カトレアもやってきた一体と言えるのだがそこはどうツッコミを入れるべきなのだろうか。
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