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移り変わる季節と、変わる環境
log-082 密かにありつつ狙いつつ
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―――王都の学園へ戻り、授業の時間が来る。
ありふれた日常生活がようやく戻ってきている感覚があり、穏やかに過ごせる心地良い時間ともいえるだろう。
だがしかし、一部はどうしてもありふれた日常には程遠い部分もあるが…
【なので、このマキュラ草は単体で育てれば薬草になるけれども、こっちのガリュドリアンゴラ草がそばにあると…猛毒の毒草になっちゃうのなの】
【ギルドや薬師の店などに持ち込む際には、採取時にこれが周囲になかったか、確認してほしイ。種類が少し変わるだけで、買い取り額が変わるから注意しろよナ】
教壇に立っているのは、この薬草学の授業を受け持ったカトレアと、冒険者ギルドのほうからアルバイトのはずなのにすでにある程度の地位を確立しちゃったらしい特別顧問として来たファイ。
二人ともジャックの従魔ではあるが、本日は講師としてこの薬草学の授業を受け持っていた。
「身内が教師をやっている授業…何だろうな、この状況」
真面目にやっているので特に問題はないはずなのだが、何とも言えない気持ちになる。
そう、授業参観で後ろから親に見られている時のような感覚に似ているようなそうでもないような。
【どうしたのだマスター?あたしたち、普通にやれていると思うのだガ】
「いや、何でもないよ」
考え込むようなそぶりをしていたら、ファイに声をかけられる。
特に問題は無いのだ、本当に。
「おいおい、あれもジャックのやつの従魔か…」
「また可愛い子が来るとは…」
ぼそぼそと教室内でそのような声が聞こえてくるが、それはどうしようもないこと。
今日のこの授業だって、可能性はあったことだろう。
【はいはい、おしゃべりはやめて授業に集中するのなの。このあとの薬草は、明日のテストに出てくるものが10個ほどあるから、しっかりと覚えるのなの】
カトレアが手を鳴らし、全員にそう伝える。
テストに出る内容であれば聞き逃してはいけないと、すぐに生徒たちは授業へ意識を向けるのであった。
【せいやっ!!】
「おわぁぁぁぁぁ!!」
…学園ので授業がある中、王城内の騎士団訓練所では今、ルミが騎士たちを相手に訓練を行っていた。
【うわぁ、剣を片手で受け止めて、そのままつかんでいる人事ぶん投げるとか豪快ですね…】
【ぬ?おや、ハクロがここに来るとは珍しいな】
騎士が一人また豪快にぶん投げられる中、やってきたハクロに気が付いたルミ。
いったん、騎士たちとの訓練を中断し、彼女の方へ歩んでくる。
【頼まれていた、剣用の磨き布が出来たので、せっかくなので届けに来たのですよ。スライムコーティングをしてますので、どのような剣でもきれいに研ぎ澄ませますからね】
【おお、ありがたい】
ハクロから布を受け取り、ルミはそう答える。
いざという時のために手入れをしているとはいえ、その手入れ道具も出来れば良いものにしておきたい。
そう考えて以前相談したことがあった、どうやら無事に出来上がったようだ。
【私の糸100%でも可能ですが、ファイの協力でコーティングした糸なので、より一層綺麗に付着物を取り除けますよ】
【ほー、見た目は確かにいつもの白い布地ではなく、どこかきらめきが増しているな…】
ハクロの糸は確かにきらめく輝きを持っているような感じがするのだが、スライムコーティングされたことでより一層輝くように見えるようになっており、試しに噴き上げるだけでも剣もまた同様の輝きを放っているように見え、満足げにうなずくルミ。
その光景を見て、周囲の他の騎士たちもどことなく羨ましそうな顔を浮かべる。
「あ、あのえっと、ルミさんの同僚と言うか、同じ従魔のハクロさんですよね?可能でしたら、我々も同じようなものが欲しいのですが…」
【ん?これですか?んー…きちんとお金を支払ってであれば、可能ですよ】
「流石にお金を取るんですか」
【我々の素材は売れるのは知っているし、無償の提供を続けて怠慢を生じさせたくはないからな。我々のほうも、実質ただでやっているわけでもないし…】
【私の方も、色々と彼女にお願いしたりすることがあるので、その対価ですね】
少しばかり不満そうな顔を見せた騎士に対し、二人はそう口にする。
たとえ世話になっている人たちがいたとしても、それはそれ、これはこれ。
無償の提供は当たり前ではなく、当たり前になってしまったらの危険性を知っているのもあるからだ。
【…あとは普通に、剣のほうに夢中になってくださった方が、ジャックを私が独り占めできる時間が増えますからね】
【本音がぼろっとこぼれるのは、ハクロ、お前の悪い癖だと思うぞ】
思いっきり私利私欲な部分が見えるが…それは気にしないでおく。
【ああ、それとルミ、今日は帰ったら測定しますからね】
【何をだ?サイズ合わせなら、かなり前にやったではないか。まぁ、我の場合は基本鎧ゆえに、まともな衣服を着る機会は少ないが…】
【ドレスですよ。先日の竜種騒動で関わった冒険者たちを集めての、祝賀会ですね】
【ああ、なるほどな】
竜種騒動…先日の騒動で起きた事件で、様々な被害が各地で出ていたが、無事に復興してきたところもあり、落ち着いたころ合いになったので少しばかり祝いの場を設けることが決まっていた。
各自の都合の調整や、復興作業などによって多少時期は遅れたが…ようやく来週ごろには開催できると、参加できる者たちへ通達が来ていたのである。
もちろん、あの騒動の中で活躍していたジャックたちも例外ではなく、同時に褒章も授けられる場になっているらしい。
そのため、参加するためのドレスレコードもしっかり用意しようと…
【かなり前だからこそですよ。しっかり着用できないと、駄目ですからね】
【我、デュラハン…アンデッドとして、生ける屍ゆえに肉体的な成長は無いのだが】
【こちら、ファイ経由で手に入れた最新のギルド発行冒険者向けモンスター図鑑となります。アンデッドも進化したりして、成長の可能性があるため…油断していると、もしかしたら太っている可能性もありますからね】
【誰が太るかぁ!!我、鍛えているのだが!!】
【さっき肉体的な成長は無いといった言葉と、おもいっきり矛盾してないですかね?】
多少は生前の部分で引きずられているところがあるのか、鍛錬は欠かさない様子。
【大体貴様のほうが成長して太る可能性があるだろ!!生きている分、そっちのほうは肉体的な意味でなあ!!】
【私の方も太るわけないですよ!!こっちも体形が早々変わることはないですからね!!】
基本的にモンスターは、恐ろしいほどのカロリー摂取でもない限り、デブになること自体が無い。
何故ならば、食したものが全て自身のエネルギーにして、全て消費できずに溜まるエネルギーはあるが、それは体内の魔石の中に蓄えられる。
それゆえに、実は百貫デブのような体形にまで太るモンスターと言うのは、種族的なものでも関わらない限り無いのだ。
まぁ、多少は一部に脂肪としてつくことは否定されないが…お互いに頬をつねり、喧嘩しあう。
【大体体重的には、そっちの方が上ですよね!!】
【こっちは鎧込みだぁ!!脱いだら軽いぞ!主殿の従魔の中で二番目に重い貴様に言われたくはないわぁ!!】
【二番でもその言い方が駄目ですーーー!!】
お互いに相当なモンスターのため、喧嘩も激しい。
いつの間にか剣も鎌も取り出し、ぶつかり合っていた。
「お、おい、誰か止めてやれよ…」
「誰があの二人を止められる?」
「「「誰が、贄になって止めるかだが…」」」
喧嘩の範疇で、そのうち止まる可能性はある。
しかしながら、その争いに踏み込める勇者はいないのであった…
【…と言うか、ルミの姐さんも体形は気にしているのか】
【それが驚きだよな…我々をぼっこぼこにできるような勇ましい方でも、多少は乙女らしい部分があってあんしんしたというか】
ヒュン!!ゴッスゥウウウンン!!
【ぐべぇぇぇぇぇ!?】
「…あの二人、いや、二体が例の竜種で活躍した者たちでもあるのか…」
…そんな中で、その喧嘩の様子を見ている者がいた。
「声をかけて探りたいが…今は無理だな。機会を見て動くか…」
哀れな犠牲を見たので、迂闊に踏み込むのは不味い。
そう判断し、その場をいったん離れるのであった…
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だがしかし、一部はどうしてもありふれた日常には程遠い部分もあるが…
【なので、このマキュラ草は単体で育てれば薬草になるけれども、こっちのガリュドリアンゴラ草がそばにあると…猛毒の毒草になっちゃうのなの】
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教壇に立っているのは、この薬草学の授業を受け持ったカトレアと、冒険者ギルドのほうからアルバイトのはずなのにすでにある程度の地位を確立しちゃったらしい特別顧問として来たファイ。
二人ともジャックの従魔ではあるが、本日は講師としてこの薬草学の授業を受け持っていた。
「身内が教師をやっている授業…何だろうな、この状況」
真面目にやっているので特に問題はないはずなのだが、何とも言えない気持ちになる。
そう、授業参観で後ろから親に見られている時のような感覚に似ているようなそうでもないような。
【どうしたのだマスター?あたしたち、普通にやれていると思うのだガ】
「いや、何でもないよ」
考え込むようなそぶりをしていたら、ファイに声をかけられる。
特に問題は無いのだ、本当に。
「おいおい、あれもジャックのやつの従魔か…」
「また可愛い子が来るとは…」
ぼそぼそと教室内でそのような声が聞こえてくるが、それはどうしようもないこと。
今日のこの授業だって、可能性はあったことだろう。
【はいはい、おしゃべりはやめて授業に集中するのなの。このあとの薬草は、明日のテストに出てくるものが10個ほどあるから、しっかりと覚えるのなの】
カトレアが手を鳴らし、全員にそう伝える。
テストに出る内容であれば聞き逃してはいけないと、すぐに生徒たちは授業へ意識を向けるのであった。
【せいやっ!!】
「おわぁぁぁぁぁ!!」
…学園ので授業がある中、王城内の騎士団訓練所では今、ルミが騎士たちを相手に訓練を行っていた。
【うわぁ、剣を片手で受け止めて、そのままつかんでいる人事ぶん投げるとか豪快ですね…】
【ぬ?おや、ハクロがここに来るとは珍しいな】
騎士が一人また豪快にぶん投げられる中、やってきたハクロに気が付いたルミ。
いったん、騎士たちとの訓練を中断し、彼女の方へ歩んでくる。
【頼まれていた、剣用の磨き布が出来たので、せっかくなので届けに来たのですよ。スライムコーティングをしてますので、どのような剣でもきれいに研ぎ澄ませますからね】
【おお、ありがたい】
ハクロから布を受け取り、ルミはそう答える。
いざという時のために手入れをしているとはいえ、その手入れ道具も出来れば良いものにしておきたい。
そう考えて以前相談したことがあった、どうやら無事に出来上がったようだ。
【私の糸100%でも可能ですが、ファイの協力でコーティングした糸なので、より一層綺麗に付着物を取り除けますよ】
【ほー、見た目は確かにいつもの白い布地ではなく、どこかきらめきが増しているな…】
ハクロの糸は確かにきらめく輝きを持っているような感じがするのだが、スライムコーティングされたことでより一層輝くように見えるようになっており、試しに噴き上げるだけでも剣もまた同様の輝きを放っているように見え、満足げにうなずくルミ。
その光景を見て、周囲の他の騎士たちもどことなく羨ましそうな顔を浮かべる。
「あ、あのえっと、ルミさんの同僚と言うか、同じ従魔のハクロさんですよね?可能でしたら、我々も同じようなものが欲しいのですが…」
【ん?これですか?んー…きちんとお金を支払ってであれば、可能ですよ】
「流石にお金を取るんですか」
【我々の素材は売れるのは知っているし、無償の提供を続けて怠慢を生じさせたくはないからな。我々のほうも、実質ただでやっているわけでもないし…】
【私の方も、色々と彼女にお願いしたりすることがあるので、その対価ですね】
少しばかり不満そうな顔を見せた騎士に対し、二人はそう口にする。
たとえ世話になっている人たちがいたとしても、それはそれ、これはこれ。
無償の提供は当たり前ではなく、当たり前になってしまったらの危険性を知っているのもあるからだ。
【…あとは普通に、剣のほうに夢中になってくださった方が、ジャックを私が独り占めできる時間が増えますからね】
【本音がぼろっとこぼれるのは、ハクロ、お前の悪い癖だと思うぞ】
思いっきり私利私欲な部分が見えるが…それは気にしないでおく。
【ああ、それとルミ、今日は帰ったら測定しますからね】
【何をだ?サイズ合わせなら、かなり前にやったではないか。まぁ、我の場合は基本鎧ゆえに、まともな衣服を着る機会は少ないが…】
【ドレスですよ。先日の竜種騒動で関わった冒険者たちを集めての、祝賀会ですね】
【ああ、なるほどな】
竜種騒動…先日の騒動で起きた事件で、様々な被害が各地で出ていたが、無事に復興してきたところもあり、落ち着いたころ合いになったので少しばかり祝いの場を設けることが決まっていた。
各自の都合の調整や、復興作業などによって多少時期は遅れたが…ようやく来週ごろには開催できると、参加できる者たちへ通達が来ていたのである。
もちろん、あの騒動の中で活躍していたジャックたちも例外ではなく、同時に褒章も授けられる場になっているらしい。
そのため、参加するためのドレスレコードもしっかり用意しようと…
【かなり前だからこそですよ。しっかり着用できないと、駄目ですからね】
【我、デュラハン…アンデッドとして、生ける屍ゆえに肉体的な成長は無いのだが】
【こちら、ファイ経由で手に入れた最新のギルド発行冒険者向けモンスター図鑑となります。アンデッドも進化したりして、成長の可能性があるため…油断していると、もしかしたら太っている可能性もありますからね】
【誰が太るかぁ!!我、鍛えているのだが!!】
【さっき肉体的な成長は無いといった言葉と、おもいっきり矛盾してないですかね?】
多少は生前の部分で引きずられているところがあるのか、鍛錬は欠かさない様子。
【大体貴様のほうが成長して太る可能性があるだろ!!生きている分、そっちのほうは肉体的な意味でなあ!!】
【私の方も太るわけないですよ!!こっちも体形が早々変わることはないですからね!!】
基本的にモンスターは、恐ろしいほどのカロリー摂取でもない限り、デブになること自体が無い。
何故ならば、食したものが全て自身のエネルギーにして、全て消費できずに溜まるエネルギーはあるが、それは体内の魔石の中に蓄えられる。
それゆえに、実は百貫デブのような体形にまで太るモンスターと言うのは、種族的なものでも関わらない限り無いのだ。
まぁ、多少は一部に脂肪としてつくことは否定されないが…お互いに頬をつねり、喧嘩しあう。
【大体体重的には、そっちの方が上ですよね!!】
【こっちは鎧込みだぁ!!脱いだら軽いぞ!主殿の従魔の中で二番目に重い貴様に言われたくはないわぁ!!】
【二番でもその言い方が駄目ですーーー!!】
お互いに相当なモンスターのため、喧嘩も激しい。
いつの間にか剣も鎌も取り出し、ぶつかり合っていた。
「お、おい、誰か止めてやれよ…」
「誰があの二人を止められる?」
「「「誰が、贄になって止めるかだが…」」」
喧嘩の範疇で、そのうち止まる可能性はある。
しかしながら、その争いに踏み込める勇者はいないのであった…
【…と言うか、ルミの姐さんも体形は気にしているのか】
【それが驚きだよな…我々をぼっこぼこにできるような勇ましい方でも、多少は乙女らしい部分があってあんしんしたというか】
ヒュン!!ゴッスゥウウウンン!!
【ぐべぇぇぇぇぇ!?】
「…あの二人、いや、二体が例の竜種で活躍した者たちでもあるのか…」
…そんな中で、その喧嘩の様子を見ている者がいた。
「声をかけて探りたいが…今は無理だな。機会を見て動くか…」
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