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移り変わる季節と、変わる環境
log-081 適職と胃痛と
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―――グラビティ王国の王都にある、冒険者ギルド内。
その中の一角にて、本日は少しばかり騒がしいところがあった。
【それではこちらとこちらですが…評価査定額としては、このぐらいになるでしょウ】
「よっしゃきたぁぁぁ!!苦節20件目、ようやく適正な価格で見てくれるところがここに…」
【こちらは残念ながら、損傷が酷いですネ。ギルドでの査定基準書ではこのぐらいしか…】
「いやいやちょっとまってよ!?まだもうちょっと高く買い取れないの!?」
【この二つ、綺麗ですが一部別の素材をちょっと使って、ごまかしていますネ?味が違ってマス】
「スライムの舌でバレるんかい!!いや、そもそもスライムに舌があるのか!!」
【ふむ…この薬草はちょっと種類が違いますネ。ですが、幸いなことにこちらの方が少しだけ買い取り額が良いものデス】
「うお、予想よりもちょっとだけ良い感じが…」
【でもこちらは、見た目は似ていますが別物の毒草デス。残念ながら一気にがた落ちしマス】
「上げて落とされたぁぁぁぁ!!」
「…ギルドマスター、良いのでしょうか、あれは。一応、アルバイトとして雇うことになったあのスライムさん…ジェリースライムのファイさんですが、冒険者たちの一喜一憂の様が悪魔的と言うかなんというか」
「それがなぁ…一応、確認してみているが、どうもしっかりと適切に判断できているようでな、文句のつけようがない。というか、隙が多い相手に対してしっかりと注意を含めた対応をしているようだ」
この王都の冒険者ギルドを治めるギルドマスターは、少しばかり遠い目をしながら、職員の質問に答える。
「しかし、なんだってまたスライムが職員としてアルバイトをするのやら…」
事の発端は、数日前。
王都に帰還してきたある少年…厄災種およびその予備軍を連れている少年が、王都のギルドに訪れてきたときのことである。
先日の竜種騒動での褒章等の話もしたかったのだが、帰還して早々にやらかしてくれたのが、新しい従魔の登録。
また何か連れてきたのかと思ったら、ジェリースライムだった。
宝石でもありスライムでもある、ただのモンスターであればそれはそれで別に良い。
だがしかし、何故か人型をしている類であり、ハクロ達と同様の気配を感じ取れることから、明らかにただのモンスターではなかった。
聞いた話では、どこかの誰かが失敗作として廃棄した上に、ミミックに食われてその体内の宝石を食い荒らした末に今の姿になったというが…廃棄時点で問題である。
「可能であれば、その作ったやつの詳細を一番知りたいがな…人工的に作れるモンスターに関しての法整備はしっかりとしているが、このケースは重罪だ」
「え?そうなんですか」
「ああ、元々こういうスライムが作られる目的は、色々と取り込んだりするから清掃や、並のジェリースライムのような物であれば宝飾品やペット扱いなどもあるが…明らかにヤバそうなことをして作り上げたスライムの廃棄というのは、とんでもない被害を招くことがあるんだよ」
モンスターは基本的に自然発生や生殖活動などによって発生するが、ゴーレムやスライムと言った人造で生まれるものもいる。
ただし、生み出す際にはしっかりとした届出等が必要であり、勝手に作成する時点で罪が生じるのだ。
「過去にな、物凄いゴミ邸を片付けようと考え、人に頼むと金がかかるから、もうちょっと安上がりにしようとスライムを作ったやつがいたが…素人が作るととんでもないものになる可能性もあり、その最悪の可能性を引き当てた馬鹿野郎がいたんだよ」
「えっと、その最悪のって…」
「ゴミ邸どころか、周辺一帯、人も何もかも丸呑みしようとした。全てを溶かし尽くし、飲み干すような…制御不可能なスライムを作っちまったんだ」
そのような騒動や、他にも似た事例が多々あり、現在では届出等の管理がしっかりするように、様々な法律で義務が発生しているらしい。
「そのおかげで、今は全ての人造系は管理されているが…それでもどうしても違法にやらかす馬鹿がいてな…このスライムも、ある意味それの被害者と言って良いだろう」
「なるほど…」
【でも、あたしとしては被害は受けていないけどナ。まぁ、日々の生活が大変だったけど…うん、落ち着いて考えたらちょっとむかついたから、しっかり情報提供するのサ】
彼女自身…ジェリースライムのファイと名付けられたスライム自身はそこまで気にしていないらしいが、情報提供は助かるところ。
またどこかでその生み出した馬鹿がやらかさないと限らないわけもないし、失敗作だったという時点で成功するまでまだまだ生み出して遺棄している可能性すらもある。
犯罪をしっかりと断ち切るためにも、犯人の手がかりはあって困るものではないのだ。
そういうことも対応した後…少しばかり、別の話にもなった。
【そもそもあたし、経験も積みたいんだよネ。マスターの従魔になったとはいえ、それでもクイーンスライムとかになりたい野望は、消えたわけではないシ】
スライム系のモンスターに関しては、一つだけわかりやすい共通点がある。
それはなぜか、皆高みを目指して…キングやカイザー、クイーンなどの名が付くようなものへの進化を目指す本能が強いというもの。
大抵のモンスターは確かに強さを本能的に求める部分があるが、スライムはそれがより顕著に出るそうなのだ。
「なら、ルミのように王城で騎士たちにお願いして、戦闘訓練するとか?」
【ふむ、我のほうも手合わせできる相手が追加できれば面白いと思うぞ。まぁ、あの騎士たちにとっては地獄だろうが…我が言うのもなんだが】
【んー、それはちょっと無理かモ。あたしは戦闘も確かにやれるけど…スライムにとって経験って、様々なものを触れることだから、戦闘とはちょっと違うのサ】
戦闘による経験で高みを目指すのは、王道の手順と言って良いだろう。
だがしかし、何も戦いばかりが経験を得られる場所ではなく、様々な環境によって姿を変えるスライムにとっては、戦闘よりも多くのモノに触れる方が経験として蓄積されやすいらしい。
【…あの、一つ思いついたのですが…これはどうでしょうか?】
「ん?どうしたの、ハクロ」
【ファイにとっての経験って、多くのモノを触れるのであれば…】
「…その結果としてギルドで、ある程度の基準での売買が求められる素材買取屋での鑑定士としてアルバイトとして雇ったが…きちんと適切に動けるのがなぁ、不思議に思えるぞ」
「基準と手順を教えただけで、すぐに吸収してこなせているから凄いですが…スライムだからこそ、ちょっとだけ中に取り入れて、より正確に判定できるのも凄いですよ」
「ただ、この経験でよりやばい方向に進化したらシャレにならない気もするが…仕事が普通のバイト以上にできるのがな…スライム鑑定士、有用性あるか?」
「でもまず、人語をしっかり話せて、知性があって、ある程度の優柔や判断も出来て…細かい条件を色々とできるスライム、作れる人いますかね?」
その言葉に、いつの間に彼女の仕事を見て集まっていた他の職員たちはびしっと固まる。
「「「いるわけがねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!いたら犯罪者として捕まえる前に、有効活用しまくるしかないだろそれぇぇぇ!!」」」
…この瞬間、ファイを製造したであろう製造者もとい犯罪者が、今まさにギルド職員たちから有用な職員を生み出せるための贄として、欲せられた瞬間であった。
【えっと、これは…うむ、純度の高い宝石だナ。小さいが、うまい奴だゾ】
「人間に食べられるわけがないですって…」
【あとこれ、お金が無いためにわざわざかき集めたものなのだろうけれども…残念ながら、80%は偽物をつかまされているゾ。味が思いっきり、宝石じゃなイ】
「うそだろぉぉおおおおおお!いや、でも納得するわ、あの馬鹿がぁぁぁぁぁぁ!!だからあれほど偽物には気を付けろと言ったのにーーーーー!!」
「…あっちはあっちで、悲喜こもごもな声が聞こえるというか、別の犯罪の臭いがするような」
「鑑定能力が優れている分、普段見つからないようなものも思いっきり引き上げているようだな…おい、情報をしっかりまとめて、憲兵たちへ連絡して置け。悪質な詐欺師がいる可能性があるぞ」
それからさらに数日が経過したころには、王都ギルドには不思議なスライムの買取屋の噂が、他にも流れていた白蜘蛛の姫や黒樹の花壇、地獄の首無し教官等の噂と同じように並ぶのであった…
その中の一角にて、本日は少しばかり騒がしいところがあった。
【それではこちらとこちらですが…評価査定額としては、このぐらいになるでしょウ】
「よっしゃきたぁぁぁ!!苦節20件目、ようやく適正な価格で見てくれるところがここに…」
【こちらは残念ながら、損傷が酷いですネ。ギルドでの査定基準書ではこのぐらいしか…】
「いやいやちょっとまってよ!?まだもうちょっと高く買い取れないの!?」
【この二つ、綺麗ですが一部別の素材をちょっと使って、ごまかしていますネ?味が違ってマス】
「スライムの舌でバレるんかい!!いや、そもそもスライムに舌があるのか!!」
【ふむ…この薬草はちょっと種類が違いますネ。ですが、幸いなことにこちらの方が少しだけ買い取り額が良いものデス】
「うお、予想よりもちょっとだけ良い感じが…」
【でもこちらは、見た目は似ていますが別物の毒草デス。残念ながら一気にがた落ちしマス】
「上げて落とされたぁぁぁぁ!!」
「…ギルドマスター、良いのでしょうか、あれは。一応、アルバイトとして雇うことになったあのスライムさん…ジェリースライムのファイさんですが、冒険者たちの一喜一憂の様が悪魔的と言うかなんというか」
「それがなぁ…一応、確認してみているが、どうもしっかりと適切に判断できているようでな、文句のつけようがない。というか、隙が多い相手に対してしっかりと注意を含めた対応をしているようだ」
この王都の冒険者ギルドを治めるギルドマスターは、少しばかり遠い目をしながら、職員の質問に答える。
「しかし、なんだってまたスライムが職員としてアルバイトをするのやら…」
事の発端は、数日前。
王都に帰還してきたある少年…厄災種およびその予備軍を連れている少年が、王都のギルドに訪れてきたときのことである。
先日の竜種騒動での褒章等の話もしたかったのだが、帰還して早々にやらかしてくれたのが、新しい従魔の登録。
また何か連れてきたのかと思ったら、ジェリースライムだった。
宝石でもありスライムでもある、ただのモンスターであればそれはそれで別に良い。
だがしかし、何故か人型をしている類であり、ハクロ達と同様の気配を感じ取れることから、明らかにただのモンスターではなかった。
聞いた話では、どこかの誰かが失敗作として廃棄した上に、ミミックに食われてその体内の宝石を食い荒らした末に今の姿になったというが…廃棄時点で問題である。
「可能であれば、その作ったやつの詳細を一番知りたいがな…人工的に作れるモンスターに関しての法整備はしっかりとしているが、このケースは重罪だ」
「え?そうなんですか」
「ああ、元々こういうスライムが作られる目的は、色々と取り込んだりするから清掃や、並のジェリースライムのような物であれば宝飾品やペット扱いなどもあるが…明らかにヤバそうなことをして作り上げたスライムの廃棄というのは、とんでもない被害を招くことがあるんだよ」
モンスターは基本的に自然発生や生殖活動などによって発生するが、ゴーレムやスライムと言った人造で生まれるものもいる。
ただし、生み出す際にはしっかりとした届出等が必要であり、勝手に作成する時点で罪が生じるのだ。
「過去にな、物凄いゴミ邸を片付けようと考え、人に頼むと金がかかるから、もうちょっと安上がりにしようとスライムを作ったやつがいたが…素人が作るととんでもないものになる可能性もあり、その最悪の可能性を引き当てた馬鹿野郎がいたんだよ」
「えっと、その最悪のって…」
「ゴミ邸どころか、周辺一帯、人も何もかも丸呑みしようとした。全てを溶かし尽くし、飲み干すような…制御不可能なスライムを作っちまったんだ」
そのような騒動や、他にも似た事例が多々あり、現在では届出等の管理がしっかりするように、様々な法律で義務が発生しているらしい。
「そのおかげで、今は全ての人造系は管理されているが…それでもどうしても違法にやらかす馬鹿がいてな…このスライムも、ある意味それの被害者と言って良いだろう」
「なるほど…」
【でも、あたしとしては被害は受けていないけどナ。まぁ、日々の生活が大変だったけど…うん、落ち着いて考えたらちょっとむかついたから、しっかり情報提供するのサ】
彼女自身…ジェリースライムのファイと名付けられたスライム自身はそこまで気にしていないらしいが、情報提供は助かるところ。
またどこかでその生み出した馬鹿がやらかさないと限らないわけもないし、失敗作だったという時点で成功するまでまだまだ生み出して遺棄している可能性すらもある。
犯罪をしっかりと断ち切るためにも、犯人の手がかりはあって困るものではないのだ。
そういうことも対応した後…少しばかり、別の話にもなった。
【そもそもあたし、経験も積みたいんだよネ。マスターの従魔になったとはいえ、それでもクイーンスライムとかになりたい野望は、消えたわけではないシ】
スライム系のモンスターに関しては、一つだけわかりやすい共通点がある。
それはなぜか、皆高みを目指して…キングやカイザー、クイーンなどの名が付くようなものへの進化を目指す本能が強いというもの。
大抵のモンスターは確かに強さを本能的に求める部分があるが、スライムはそれがより顕著に出るそうなのだ。
「なら、ルミのように王城で騎士たちにお願いして、戦闘訓練するとか?」
【ふむ、我のほうも手合わせできる相手が追加できれば面白いと思うぞ。まぁ、あの騎士たちにとっては地獄だろうが…我が言うのもなんだが】
【んー、それはちょっと無理かモ。あたしは戦闘も確かにやれるけど…スライムにとって経験って、様々なものを触れることだから、戦闘とはちょっと違うのサ】
戦闘による経験で高みを目指すのは、王道の手順と言って良いだろう。
だがしかし、何も戦いばかりが経験を得られる場所ではなく、様々な環境によって姿を変えるスライムにとっては、戦闘よりも多くのモノに触れる方が経験として蓄積されやすいらしい。
【…あの、一つ思いついたのですが…これはどうでしょうか?】
「ん?どうしたの、ハクロ」
【ファイにとっての経験って、多くのモノを触れるのであれば…】
「…その結果としてギルドで、ある程度の基準での売買が求められる素材買取屋での鑑定士としてアルバイトとして雇ったが…きちんと適切に動けるのがなぁ、不思議に思えるぞ」
「基準と手順を教えただけで、すぐに吸収してこなせているから凄いですが…スライムだからこそ、ちょっとだけ中に取り入れて、より正確に判定できるのも凄いですよ」
「ただ、この経験でよりやばい方向に進化したらシャレにならない気もするが…仕事が普通のバイト以上にできるのがな…スライム鑑定士、有用性あるか?」
「でもまず、人語をしっかり話せて、知性があって、ある程度の優柔や判断も出来て…細かい条件を色々とできるスライム、作れる人いますかね?」
その言葉に、いつの間に彼女の仕事を見て集まっていた他の職員たちはびしっと固まる。
「「「いるわけがねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!いたら犯罪者として捕まえる前に、有効活用しまくるしかないだろそれぇぇぇ!!」」」
…この瞬間、ファイを製造したであろう製造者もとい犯罪者が、今まさにギルド職員たちから有用な職員を生み出せるための贄として、欲せられた瞬間であった。
【えっと、これは…うむ、純度の高い宝石だナ。小さいが、うまい奴だゾ】
「人間に食べられるわけがないですって…」
【あとこれ、お金が無いためにわざわざかき集めたものなのだろうけれども…残念ながら、80%は偽物をつかまされているゾ。味が思いっきり、宝石じゃなイ】
「うそだろぉぉおおおおおお!いや、でも納得するわ、あの馬鹿がぁぁぁぁぁぁ!!だからあれほど偽物には気を付けろと言ったのにーーーーー!!」
「…あっちはあっちで、悲喜こもごもな声が聞こえるというか、別の犯罪の臭いがするような」
「鑑定能力が優れている分、普段見つからないようなものも思いっきり引き上げているようだな…おい、情報をしっかりまとめて、憲兵たちへ連絡して置け。悪質な詐欺師がいる可能性があるぞ」
それからさらに数日が経過したころには、王都ギルドには不思議なスライムの買取屋の噂が、他にも流れていた白蜘蛛の姫や黒樹の花壇、地獄の首無し教官等の噂と同じように並ぶのであった…
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