絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

志位斗 茂家波

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移り変わる季節と、変わる環境

log-078 ばっくりといかずとも

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ーーーバクンッツ!!
ガキィンッツ!!

【ギャグゲェ!?】
「…え?」

 目の前に迫っていたはずの、避けられない最悪の事態。
 迫りくる牙に身体をかみ砕かれるかと思っていたが…その予想は、今まさに、牙と共に砕け散った。

 突然の出来事に、周囲にいた者たちは驚愕の表情を浮かべる。

 そのほんのわずかな一瞬の間に、ハクロはジャックを糸で引き寄せ、自身の胸元に抱き寄せる。
 もちろん、前からの経験でしっかりと向きを前のほうにして窒息を避ける形で素早く後退し、その光景を目にする。

【あれは…宝石、いえ、それに似た腕…?】
「何なのさ、あれは…」

 頭の後ろの柔らかさや先ほどまでの命の危機に心臓をバクバクさせながらも、目の前に起きた光景をしっかりと眼にする。

 箱の中から出た宝石の腕は、そのままぐいぐいと無理やりこじ開けよとしているが、痛手を与えられた箱…見たとしてはおそらくミミックのようなモンスターが抵抗し、開かない。

【ーーー!!】
ボボボボンッツ!!
【ギャゲ!?】

 その抵抗に何かいら立ったのか、宝石の腕の掌が輝いたかと思えば、つかんでいた部分が爆発する。


 どうやらレーザーのような物が放たれたようで、その身を貫通した。

【ぶぁ!!ようやく出られターーーー!!】

 爆発した衝撃で、ぬるんっとミミックの身体から出てきたのは、宝石のような見た目をした少女の姿。

 いや、まさに宝石そのものと言うか、硬いはずのモノなのにやけにぬるりと軟体的な動きをしている、奇妙さを併せ持つ。


「あの宝石のような、軟体生物のような物は…もしや、ジェリースライムか!」
「ジェリースライム?」

―――
『ジェリースライム』
その名の通り、宝石の姿を持ったスライムの一種。
周囲の影響を受けやすいスライムが宝石を多く捕食し、その身が宝石へと変貌した。
ただし、スライムとしての性質も失われておらず、硬さと柔らかさを両立させ、その見た目の美しさから生きた宝石そのものともされている。
―――

「だが、何故そんなものがあの中に…?」

 珍しいスライムの一種のようだが、どうやらあのミミックとは一応対立している模様。


【ギャギャーーー!!】
【シツコイ!!それ以上あたしを喰らうナァ!!】


 ミミック側も反撃と言わんばかりに体当たりを喰らわせ、殴り返すジェリースライム。
 どうやら敵対関係にあるようで、何かしらの事情があるらしい。

「とりあえずハクロ、カトレア、ルミ、あの宝石の人に加勢してあげて!!」
【分かりました、ジャックを喰らおうとしたので、問答無用で消し飛ばします!!】
【なのっ!!あの箱、後で鉢植えにでも魔改造してやるのなの!!】
【主の身を危機に晒すとは、騎士として不覚、これで挽回いたします!!】

 ひとまずは、スライム側へ加勢し、全員でフルボッコにするのであった…
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