81 / 186
移り変わる季節と、変わる環境
log-075 無慈悲なものはどこにでも
しおりを挟む
ボボン村予定を迂回し、森の中を駆け抜けるタゴサックが牽引する馬車。
元々熊っぽい見た目のモンスターなのもあって、駆け抜ける光景は妙にあっていた。
【グマッグマッグマァァ!!】
「張り切っているなぁ、あの熊」
【でも、気持ちはわかりますよ。森の中ってなんとなく落ち着きつつ、過ごしやすい場所を探したりするのも楽しかったりと、色々と感じ取れますからね】
【そうなのそうなの、特にミーとしては植物系だからこそ、日当たりのいい場所が無いかななど、つい探したりしちゃうのなの】
【我は元人間のほうのモンスターゆえか、そこまでは無いが…ああ、でもなんとなく、アンデッド的にはあの日陰は過ごしやすいかなと考えたりもするな】
モンスターが色々と見られるのは、海に次いで森の中も多いらしい。
植物や虫や動物や…その他様々な周囲が根付きやすいからこそ、本能的に居心地の良さを感じるのだろう。
【洞窟も多いらしいですが、食料面で言えば森のほうが良いって言うのも理由にありそうですけれどね。木の実に茸に獣…食料が多い面で見れば、人気な理由もわかりますよ】
【と言いつつ、主殿。ハクロは前に我との道中で、茸にあたって三日ぐらい茸まみれになった日もあったがな】
【ルミ!それは言わないでくださいよ!!大体そっちも、マンイーターにアンデッド系だからギリギリ捕食は免れたけれども、捕まってべとべとになったことがあるじゃないですか!!】
【どっちもどっちなの】
「と言うか、お腹を下すとかじゃなくて生えるってどういうことなの…」
「人間側で言えば、マンイーター…思いっきり人食い植物のモンスターがいる場所は、確認して冒険者たちに討伐しに向かってほしいところだがな」
【あ、安心してください。どちらも、数日間の食料にしましたので】
【意外とあれは、イケる味だった…あの時は焼くしかなかったが、今考えれば揚げるのもありだったか…】
あはははと苦笑できるような笑い話も交えつつも、馬車は森の中を進む。
思いのほか、道中に変な物には遭遇せずに、そのまま突っ切れそうな雰囲気が漂っていたが…そううまくはいかないようだ。
【ウォォーン!!】
「ん?今のは…」
【狼…ではないですね。ウルフ系の魔物の鳴き声です】
【獲物を発見、これより仕留める…と言っているのなの。んー、でもちょっと、経験が浅い気がするのなの。ミーだったら、この馬車襲う気は無いのなの。まず、熊がいるのもあるのなの】
【これはちょっと、恐怖する相手の経験が無い若いやつかもしれないな…自分たちが強いぜとか、そんな感じに思っている感情が伝わってくるぞ】
どうやらウルフ系の魔物…姿が木陰から追いかけてきているのが見えるが、狙ってきているらしい。
「あれは…アントウルフだな。真っ黒な体毛をしたウルフ系の群れで、怖いもの知らずのモンスターだ」
―――
『アントウルフ』
黒い装甲に身を包んだ、狼のモンスター。
体毛自体が鋼のように変化しており、そう簡単に刃を通さない。
―――
【でも、このぐらいなら楽ですね】
すいっとハクロが指を動かせば、透明な糸がきらりと日の光に当たってきらめき……次の瞬間、外でウルフの悲鳴が上がる。
バスン!!
【ウギャッツ!!】
【【【ウォォォンン!?】】】
【だって、関節部分までは硬い装甲が無いので、あっさり切断できますし】
【それに足裏は柔らかいのもあるのなの】
そう言いながら今度はカトレアが指を鳴らすと、外でボゴッと土を突き上げる音がした。
ドスドスゥ!!
【ギャィンツ!?】
【【【ウオォォッフゥン!?】】】
【ああ、後は普通にこれも効くようだな…『死の宣告』】
馬車の外を見ていたルミがぼそっとつぶやき、周囲に霧が発生したかと思えば…
【ギャフゥン!?』
【【【ワォォォォォンン!?】】】
「…うわぁ、あっさりとやられる仲間に、腰を抜かしたウルフが逃げていくよ」
「嬢ちゃんたち、見た目は綺麗だがやることが結構えげつないな」
馬車を取り囲む動きをしていたはずが、次々出る犠牲に怯えたのか、すぐさま逃げ出すウルフたち。
まぁ、気持ちはわからなくもない。
相手のことが分からなくとも、自分たちの強さや数の利もあって、敗北するつもりなんてなかったのだろう。
だがしかし、相当相手が悪すぎたというか、なんというか…ここに彼女たちが一緒に来てしまったのが、彼らの運の尽きだったのかもしれない。
森の中の襲撃はある意味定番なのかもしれないが…そんなことも関係ないと、ハクロ達への安心感と、少しばかりの畏怖を抱きそうであった…
「でも、それでも陸戦か…空からの襲撃もあるって話だけど、それへの対抗策は?」
【一応、この馬車の上に私たちで少しトラップを仕掛けましたよ】
【巨大怪鳥がわしづかみにでもすれば、瞬時にボンッ!!ってなるようになっているのなの!!】
【地道な作業だが、これも上への安全策だからな】
「ちょっと待てい、嬢ちゃんたち。いつの間に、人の馬車にそんな仕掛けを」
…まぁ、この森の間だけのトラップで、後で外すようだ。
ところで、ぼんってなるというけど…それ、僕ら側のほうも大丈夫なものなの?
元々熊っぽい見た目のモンスターなのもあって、駆け抜ける光景は妙にあっていた。
【グマッグマッグマァァ!!】
「張り切っているなぁ、あの熊」
【でも、気持ちはわかりますよ。森の中ってなんとなく落ち着きつつ、過ごしやすい場所を探したりするのも楽しかったりと、色々と感じ取れますからね】
【そうなのそうなの、特にミーとしては植物系だからこそ、日当たりのいい場所が無いかななど、つい探したりしちゃうのなの】
【我は元人間のほうのモンスターゆえか、そこまでは無いが…ああ、でもなんとなく、アンデッド的にはあの日陰は過ごしやすいかなと考えたりもするな】
モンスターが色々と見られるのは、海に次いで森の中も多いらしい。
植物や虫や動物や…その他様々な周囲が根付きやすいからこそ、本能的に居心地の良さを感じるのだろう。
【洞窟も多いらしいですが、食料面で言えば森のほうが良いって言うのも理由にありそうですけれどね。木の実に茸に獣…食料が多い面で見れば、人気な理由もわかりますよ】
【と言いつつ、主殿。ハクロは前に我との道中で、茸にあたって三日ぐらい茸まみれになった日もあったがな】
【ルミ!それは言わないでくださいよ!!大体そっちも、マンイーターにアンデッド系だからギリギリ捕食は免れたけれども、捕まってべとべとになったことがあるじゃないですか!!】
【どっちもどっちなの】
「と言うか、お腹を下すとかじゃなくて生えるってどういうことなの…」
「人間側で言えば、マンイーター…思いっきり人食い植物のモンスターがいる場所は、確認して冒険者たちに討伐しに向かってほしいところだがな」
【あ、安心してください。どちらも、数日間の食料にしましたので】
【意外とあれは、イケる味だった…あの時は焼くしかなかったが、今考えれば揚げるのもありだったか…】
あはははと苦笑できるような笑い話も交えつつも、馬車は森の中を進む。
思いのほか、道中に変な物には遭遇せずに、そのまま突っ切れそうな雰囲気が漂っていたが…そううまくはいかないようだ。
【ウォォーン!!】
「ん?今のは…」
【狼…ではないですね。ウルフ系の魔物の鳴き声です】
【獲物を発見、これより仕留める…と言っているのなの。んー、でもちょっと、経験が浅い気がするのなの。ミーだったら、この馬車襲う気は無いのなの。まず、熊がいるのもあるのなの】
【これはちょっと、恐怖する相手の経験が無い若いやつかもしれないな…自分たちが強いぜとか、そんな感じに思っている感情が伝わってくるぞ】
どうやらウルフ系の魔物…姿が木陰から追いかけてきているのが見えるが、狙ってきているらしい。
「あれは…アントウルフだな。真っ黒な体毛をしたウルフ系の群れで、怖いもの知らずのモンスターだ」
―――
『アントウルフ』
黒い装甲に身を包んだ、狼のモンスター。
体毛自体が鋼のように変化しており、そう簡単に刃を通さない。
―――
【でも、このぐらいなら楽ですね】
すいっとハクロが指を動かせば、透明な糸がきらりと日の光に当たってきらめき……次の瞬間、外でウルフの悲鳴が上がる。
バスン!!
【ウギャッツ!!】
【【【ウォォォンン!?】】】
【だって、関節部分までは硬い装甲が無いので、あっさり切断できますし】
【それに足裏は柔らかいのもあるのなの】
そう言いながら今度はカトレアが指を鳴らすと、外でボゴッと土を突き上げる音がした。
ドスドスゥ!!
【ギャィンツ!?】
【【【ウオォォッフゥン!?】】】
【ああ、後は普通にこれも効くようだな…『死の宣告』】
馬車の外を見ていたルミがぼそっとつぶやき、周囲に霧が発生したかと思えば…
【ギャフゥン!?』
【【【ワォォォォォンン!?】】】
「…うわぁ、あっさりとやられる仲間に、腰を抜かしたウルフが逃げていくよ」
「嬢ちゃんたち、見た目は綺麗だがやることが結構えげつないな」
馬車を取り囲む動きをしていたはずが、次々出る犠牲に怯えたのか、すぐさま逃げ出すウルフたち。
まぁ、気持ちはわからなくもない。
相手のことが分からなくとも、自分たちの強さや数の利もあって、敗北するつもりなんてなかったのだろう。
だがしかし、相当相手が悪すぎたというか、なんというか…ここに彼女たちが一緒に来てしまったのが、彼らの運の尽きだったのかもしれない。
森の中の襲撃はある意味定番なのかもしれないが…そんなことも関係ないと、ハクロ達への安心感と、少しばかりの畏怖を抱きそうであった…
「でも、それでも陸戦か…空からの襲撃もあるって話だけど、それへの対抗策は?」
【一応、この馬車の上に私たちで少しトラップを仕掛けましたよ】
【巨大怪鳥がわしづかみにでもすれば、瞬時にボンッ!!ってなるようになっているのなの!!】
【地道な作業だが、これも上への安全策だからな】
「ちょっと待てい、嬢ちゃんたち。いつの間に、人の馬車にそんな仕掛けを」
…まぁ、この森の間だけのトラップで、後で外すようだ。
ところで、ぼんってなるというけど…それ、僕ら側のほうも大丈夫なものなの?
41
お気に入りに追加
87
あなたにおすすめの小説

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。
下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。
豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。
小説家になろう様でも投稿しています。

妹ちゃんは激おこです
よもぎ
ファンタジー
頭からっぽにして読める、「可愛い男爵令嬢ちゃんに惚れ込んで婚約者を蔑ろにした兄が、妹に下剋上されて追い出されるお話」です。妹視点のトークでお話が進みます。ある意味全編ざまぁ仕様。

転生ヒロインは乙女ゲームを始めなかった。
よもぎ
ファンタジー
転生ヒロインがマトモな感性してる世界と、シナリオの強制力がある世界を混ぜたらどうなるの?という疑問への自分なりのアンサーです。転生ヒロインに近い視点でお話が進みます。激しい山場はございません。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです
かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。
強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。
これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる