絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

志位斗 茂家波

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移り変わる季節と、変わる環境

log-069 難しい話は大人に任せましょう

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…世の中、大変な作業と言うのはどこにでもありふれている。
そして騒動の後にもまた、より大きな作業が待ち受けているものだ。



ドドドッドン!!
【なの~、これで畑は大体修復完了、無事に今日から栽培できるようになったのなの!】
「おお、ありがたい」
「燃やされ尽くして0からなのは覚悟していたけれども、これで続きができるのは…」

ゴウウウ!
【ふう、復興用の建材はこれで十分か】
「助かった、切り出すのだけでも一苦労だったが…」
「いやいや、どういう剣技でしっかりと加工済みの材木になるのコレ!?」

シュルルルルルゥ!!
【ふぅ、これで私の糸を編み込んだので、結構頑丈になりましたよ。また焼き尽くされる機会に備えて、川からの共用某水路から水漬けにする仕組みも組み込んだので、大丈夫でしょう】
「いざという時の火災に役立ちそうで、助かるねぇ」
「また焼き尽くされるような未来は避けたいがな…」



…フレイムワイバーンたちによって、破壊され尽くしたナモアリ村。
 そこでは今、ジャックは夏季休暇の里帰り兼竜種騒動の復興工事を手伝っていた。

「0からの状態にされたも同然だったのに、結構早く復旧してきたなぁ…流石、ハクロ達のおかげだよ」
【ふふん、ジャックに褒められて物凄く満足です!】
【なのなの、うれしいのなの!!】
【主殿に使える騎士として、光栄です】

 ひとまずの昼休憩の中、一緒に昼食をとりながら今の復興状態を確認していた。

「ワイバーンやあの悪魔の件に関しては、大人たちに任せたけど…こういう復興工事も、任せることができたらなぁ」
【それはちょっと難しいようですよ。ナモアリ村以外にも、カルク領内ではあちこち被害が報告されて、今も復興工事をしていますからね】

 ここはまだ、ハクロたちがいるから早く進んでいるのだが、それでも竜種の被害は大きな爪痕を残していたようだ。




 カルク領内を襲撃した、竜種騒動…その黒幕には、あの悪魔が関わっていた。
 これが公にできればいいのだが、実験体だのやばい魔石だの、様々な情報が多すぎるがゆえに一度に出した場合の危険性があり、まずは国に報告して、今後の対策を少しづつでも良いので進めていくらしい。

 内容が内容だけに、ある程度黙秘をすべきなのだろうが…まぁ、こういうことは大人に任せたほうが良いだろう。

 冒険者としての対応もするべきだろうが、ジャック自身の本職はまだ学生であり、幼き身。
 ゆえに、下手に大きなことを背負うこともできず、今はしっかりとこの身に見合った分をやるしかない。

 その一つとして、復興作業を行っているのだが…ハクロ達がいてくれたおかげで、村の復興は想定以上に早く進んでいる。

「場合によっては、他の領内の村や町への復興作業手助けも視野に入れつつ…今はまだ、出来る範囲だけをやっていくしかないね」

 悪魔の手によって引き起こされた人災、いや、悪災。
 放置しておくわけにはいかないが、それでもああいう類はどこかへしばらく身を隠し、追いかけられない。

 だから、今はやれる範囲だけでも精一杯こなせるように、動くしかないのであった…


「それにしても、夏季休暇中はゆったりと過ごしたかったけど…復興工事で忙しいなぁ」
【今後のことも考えて、防災意識も取り入れた街づくりもしてますからね…】












「…竜種騒動の報告も終え、あとは復興作業だが…領内への打撃が痛いな」

…ジャックたちが休憩を終えて作業に戻ろうとしていたその頃。
 このカルク領を治めているカルク男爵は、ようやくなすべきことの一つが終わったので一息をついていたのだが、出てきていた情報に対して悩ませていた。

「竜種…ワイバーンの被害は相当広範囲か…いくつかの村や町は復興できそうだが、鉱山やその他資源の場所も焼かれたのが痛いな…」

 人が集う場所であれば、そこまだ立て直すことができるだろう。
 だがしかし、そうではない場所…領内の資金源ともいえる鉱山なども被害に遭っており、こちらの復興作業のほうが遅れそうなのだ。

 人の住まう町はまだ良いが、鉱山の場合は鉱毒の対処や周辺への影響の確認、仕事を行う人員確保などの作業が多く、すぐには進めきれない。

 国への復興のための救援申請はすでに終えているが、それでも今年は厳しいだろう。

「特に、今回は悪魔が関わっていた可能性が大きいか…はぁ…やっかいなことだな」

 上がってきた報告によれば、この竜種騒動の根本的原因は、どこかの悪魔の手によるものらしい。
 出てきた魔石も今までにないものでまったく使い物にならず、廃棄方法すら困るようなゲテモノになっているようで、その量も非常に多い。

 いや、処分先に関しては奇跡的にも見つかったが…処理できる量を考慮すると、すぐに消えるわけではないのが厳しいだろう。

「…おのれ、悪魔め。ここまで大変な目に遭わせたこと…いつか、必ず仕返しをしなければな…!!」

 膨大な仕事量の増加によって、悪魔へ全力で恨みを向け、いつかはその皮でも剥ぎ取ってやろうかと意気込むカルク男爵。

 今はひとまず、領民の安全や生活の確保のためにも東奔西走するしかないのであった…
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