絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

志位斗 茂家波

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移り変わる季節と、変わる環境

log-064 厄災はまだマシで

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―――村人たちの避難先は、事前に決められている。
 カルク領内を襲撃するフレイムワイバーンの群れはまだ残っているのもあり、安全な場所に避難させつつも、すぐに他の場所へ調査に向かわなければいけない。

 先ほどは勝利できたとは言え、終わったわけではないのだ。

 それゆえに、再びGMマチョポッポに乗りこみ、次の現場に急行する間、ふとハクロが口を開いた。

【…すみません、輝きのラッパの皆さん、質問して良いでしょうか】
「ん?どうした?」
【竜種…先ほどのワイバーンですが、全部があのようなものでしょうか?どこか、違和感があって…】
「違和感、だと?」
【ええ】

 フレイムワイバーンたちのナモアリ村への襲撃は退けた。
 その戦闘は苦戦するかと思われたが、思いのほかハクロやカトレア、ルミの力が強くて勝利することはできたが…そのワイバーンたちに違和感を抱いていたようだ。

【やけに、柔らかい…と言うよりも、弱いような…竜種だからこそ、もっと強いかと思っていたのですが、聞くほどのものではなかったことに、違和感を覚えたのです】
「単純に、ハクロさんたちのほうが強すぎるだけとかは無いのか?」
【いえ、それはそれで自覚…うん、まぁ、否定はできませんが】
【否定できない事実なの】
【我、元人間でもあるからこそ実力がかけ離れ過ぎたものになっているのは自覚はしているぞ】

 輝きのラッパのリーダーであるダンデームさんの言葉に対して、少しだけ言葉を詰まらせつつも、ハクロはその違和感を口にする。

【かなり昔のことですが…私の兄弟で、竜種を仕留めたものがいて、その肉を皆で味わった時があったんです。まだ当時は、生肉でかぶりついていたのですが…もっと、硬く、身体の半分がもげたり焼き尽くされていたりと、相当な激戦と相手の強さを感じ取ってました】
「さらりとすさまじいことをしているな、ハクロさんの兄弟」
【ですが、今回のワイバーンには、その時感じたものが無いんですよ。いえ、むしろこう、実力が全く生かされていないというか、力だけを持ちつつも扱えていないような…未熟?とでもいうべきでしょうか】

 ハクロの感じた違和感。

 それは、ワイバーンたちの強さがやけに弱い…と言うよりも、どこか未成熟なものを感じ取っていたらしい。

【人間の皆さんが知っての通り、私たちモンスターの出現はいくつかあります。その場で突然生じるもの、何らかのものが原因で生まれるもの、生殖活動で増えるもの、人為的に創られるものなど…発生自体は、いくつかあるのです】
「ふむふむ」
「そのことぐらいは、学園で学ぶことだよね」
【ただ、今回のワイバーンの感覚的には…色々と、混ざっているような感覚がありました】
「混ざっているだと?」
【ええ、今回のワイバーンは、スペックは生まれたものを使いつつもどこか未熟なもので、確かに強力ですが中身に伴わないものを扱いきれていない…自然に生まれたり創られたものにしては弱すぎるし、生殖活動などでは強すぎる…妙なアンバランスなんですよね】

 あまりにも分りにくく、伝えづらいのだろう。
 それでも、このワイバーンたちにはどこかおかしな点があるようだと言うことは、分かる。

【まるで、…わざとそのように調整しているような…というのは、考え過ぎですかね?】
「「「…」」」

 ハクロのその問いかけに対して、誰も返答を返せない。

 それではまるで、この襲撃自体が何者かの手によって仕組まれて、ワイバーンたちもそれに利用されているだけのもの。
 つまり、もっと根本的な部分により凶悪なものが潜んでいる可能性もあるのだ。


「…ありえない、と言いたいがスライムやゴーレムと言った人造で作れるモンスターもいるから、否定しきれないな…」
「ただ、竜種を作るようなやつがいるか?災害ともいえるし、例えそうだとしても何の目的で?」
【…うーん、何だろうな、この感じ。昔、それをやらかした奴がいたようないなかったような…ああ、人間時代の記憶がほぼ無いが、今ので何かあったような…】

 三者三葉、それぞれの反応は異なるが、それでも彼女の感じ取った違和感を持ったらしい。

【と言うかルミ、今、さらっと過去の記憶の無いことで言っていたようだけど…】
【ん?ああ、そうだ主殿。我、確かにデュラハンになる前の記憶は失われているが、それでも生前のことは何かきっかけがあれば少しは思い出せるぞ】
「そのことなんだけど…ルミのその、生前のいた場所って確か悪魔によって滅ぼされた国の可能性があるけど…それと、関係ある案件じゃないよね?」
【…あー…主殿、今の言葉で、ちょっと思い出したのと同時に、最悪な可能性が出てきたのだが】
「おいおい、なんか余計にヤバい話になろうとしていないか?」
「ひぇぇぇ、聞きたくないけど、聞かないと不味い予感が‥‥!!」

 彼女の言葉を聞き、全員物凄く嫌な予感を感じ取ったのだろう。

 それでも、この事態の原因の鍵になるような言葉を聞けそうな…次の瞬間だった。



ドォォォォォォォォン!!
【マヂョボーーーーーーーッヅ!?】
「どわぁぁ!?」
「なんだなんだ!?」

 突然、強烈な爆発音と揺れが襲い掛かり、マチョポッポの悲鳴が聞こえてきた。

【なぬ?攻撃を受けた?】
【マヂョマヂョマヂョォオオオオ!!】
【左翼をやられた、緊急胴体着陸試みるから皆備えろ!!と言っているのなの!!】
「「「うそだろおい!?」」」
【ジャック、私に抱き着いてください!!多少の衝撃なら、守れますから!!】

 いきなりの緊急事態にうろたえつつも、無慈悲にも落下の感覚が襲い始める。

 幸い、マチョポッポの羽はふかふかであり、多少の衝撃は打ち消せるだろう。
 しかし、撃墜されたような事実に嫌な予感は落下と共に急加速するのであった…


「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!マチョポッポ便での落下生存確率は76%らしいけど嫌だぁぁぁ!!」」」
「意外に高いのか低いのか、わかりにくい確率なんだけど!?

…大体は助かるけど、最悪の場合は命を落とすのは変わらないようである。
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