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移り変わる季節と、変わる環境
log-061 終わりなき明日は無く
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…ナモアリ村。
そこは、この世界においての大事な故郷であり、のんびりとした田舎の村だった。
王都で過ごしていた日々を踏まえ、改めて思うと特筆すべきようなことも何もなく、むしろ足りないものが多かった典型的な辺境の地。
それでも、この故郷は大事な場所として認識しており、将来仕送りをしたりして、少しづつでも貢献出来たらなと思うこともあった。
だがしかし、そのような淡い思いも、この光景を見れば無残にも砕かれるだろう。
ボゥウウウ…!!
バチバチガシャァァ…
「…」
【…村が、燃えてますね】
この村を知っているジャックとハクロと一緒に見ているのは、ナモアリ村があった場所。
けれども今、そこに広がっているのは村ではなく…激しく炎が燃え広がり、何もかも炎上してる変わり果てた故郷の姿であった。
「これは…既に、ワイバーンの襲撃を受けた後か」
「ひどい、生きている人いるのかな、これ」
この惨状に輝きのラッパの面々も驚きを隠せない様子。
ある程度の被害を覚悟していたとはいえ、現実に見ると相当厳しいものがあるだろう。
【熱いのナノ、すぐに消火するのなの!!】
【炎上を増やさせないように…濃霧発生!!】
ぶしゅううううっと音を立て、ルミが霧を生じさせると、火の勢いが弱まった。
そこに、カトレアが木々を素早く成長させ、地下水をくみ上げて周囲を放水し、沈下察せていく。
【主殿、呆けている場合ではない。今は、救護できるものがいるか、要確認が必要だ】
「そうだった…全員、被害の確認及び、生きている人がいないか、捜索を!!」
悲惨な状況になっていたが、それでも全員命を落としたとは考えたくはない。
何かしらの方法で避難している可能性もあり、全員が同じ場所に居続けて被害に遭ったととは考えにくいため、ギリギリの生存の希望を望み、炎上による捜索の妨害を消火で吹き飛ばし、探しまくった。
そして村の消火も行い1時間後…どうやら、願いは届いていたようだ。
【ああ!!私の家が残って…中に、住人全員いました!!】
「「「マジで!?」」」
【ぎっちぎちなの!!】
【この惨状で良く生き残っていたな!?】
消火活動を進め、村の中を捜し歩く中、かつてのジャックの自宅は灰と化していたが、その横に建設されていたハクロの家が残っていた。
糸や木で組み合わせてできていた家で、炎への耐性は低そうだったが…実はそのことも考慮し、ある程度燃えにくいような作りで作っていたらしい。
その上に、どうやら水をかけられたりした形跡もあって、この大炎上の中で耐えきっていたらしく…その中に、村人たちが詰まっていたのだった。
「村長さん!!無事ですか!!」
「おお、助けが…ジャックと、ハクロさんか!!」
悲惨な状態だったとはいえ、まさかの村民全員が避難しており、熱まで完全には防ぎきれずに何人かが熱にやられて負傷もしくは熱中症のような症状を訴えていたようだったが、それでも生き延びていた。
母も父も無事であり、村長に話を聞けば、どうやら結構危ない状況だったらしい。
「ワイバーンの襲撃が出て…あたりが焼き尽くされてな、全員の避難が間に合わないと思い…失礼ながらも、ハクロさんの家に入れてもらったのだ」
かくかくしかじかと伺った話では、母さんが一応ハクロの家の合いかぎを持っていたらしく、もしも猪の大群等が出てヤバそうならば、家の中に入って避難してほしいと言っていたらしい。
【私の家、結構頑丈に作りましたからね…ジャックの大事な両親が、私にとっての義両親と言える方々が野盗などの襲撃に有っても無事に過ごせるようにしていたんですよ】
「なるほど…それを使って、全員をハクロの家に避難させることを決めたんですね」
「その通りだ。燃やされているため火事でそのまままとめて焼かれる可能性もあり、ギリギリまで井戸の水をぶっかけて湿り気を持たせ、防火対策を行ってから全員駆け込み…その後に、ワイバーンたちが周囲を焼き払っていったのだ…」
間一髪のところで村民全員が家に入り切ったようで、人的被害は最小限に抑えられたらしい。
ハクロの家自体が彼女の体格を考慮して作られて結構大きめにできていたのもあって、村民全員が根性で入り込めば、どうにかなったようだ。
「ただし、周囲が炎上し続けたので誰も出られなくなって、次第に部屋の温度も上がって危険になりつつあったが…」
「そこへ我々が到着し、ギリギリで間に合ったか…」
「うわぁ、ハクロさんの家凄い…でも、限界までいれたからか、あちこち壊れて、崩壊寸前だったようだよ」
【そのぐらい、大丈夫ですよ。むしろ、私の家が役に立って…本当に、良かったです】
「ありがとう、ハクロ、この家作ってくれて…」
本当に、心の底から今、彼女に感謝をする。
流石に村全体がほぼ焼け野原になったが、それでも全滅と言う最悪の事態は避けられたのは良かっただろう。
とにもかくにも、今は無事を喜ぶよりも先に、この場所から避難するほうを優先する。
「幸い、ワイバーンの通過後なら、すぐ戻ってくる可能性は…」
【ギャォォォォォォォォォォォォウス!!】
「「「!!」」」
今回の目的は情報収集及び、避難民がいれば救助の優先。
そのことを忘れずに動こうとした矢先…最悪の咆哮が聞こえてきた。
「まさかっ!!」
「話の途中だが、ワイバーンだ!!しかもありゃ、フレイムワイバーン一体…だけじゃねぇ!!十数体ほどいるぞ!!」
声のしたほうへ目を向ければ、そこにはばさばさと空の彼方より飛んで来るものたちの姿があった。
遠距離からでも分かるほど、くっきりとした燃え盛るような赤い体。
竜種とはいえワイバーンの名前だからか、手のほうに大きな翼が付随しているようなトカゲにも見えるが、全身が真っ赤に燃え盛っているようであり、その眼はギラギラとこちらへ向けて輝いている。
【不味いですね…どうやら、彼ら、生存者に気が付いていたようです】
【丸焼きを楽しみにしていたのに、何か消えたからおかしいなと…そんな言葉が聞こえたのなの】
【胸糞悪いが…状況としては、最悪だな】
どうやら村人たちが生き延びていたことが分かっていたらしいが、それでも時間がたてば焼かれてしまうだろうと考えていた様子。
しかし、急に熱がこの辺りから失せたことで異変に気がついたらしく、こちらへ向かってきていたようだ。
「全員、こちらに向けての攻撃態勢を確認!!ブレスが来ます!!」
「村人たちの保護が間に合わない!!全員、炎から身を守れぇーーーー!!」
その声が響くと同時に、ワイバーンたちの一斉のブレスが解き放たれ…周囲が一気に、炎で包まれるのであった…
そこは、この世界においての大事な故郷であり、のんびりとした田舎の村だった。
王都で過ごしていた日々を踏まえ、改めて思うと特筆すべきようなことも何もなく、むしろ足りないものが多かった典型的な辺境の地。
それでも、この故郷は大事な場所として認識しており、将来仕送りをしたりして、少しづつでも貢献出来たらなと思うこともあった。
だがしかし、そのような淡い思いも、この光景を見れば無残にも砕かれるだろう。
ボゥウウウ…!!
バチバチガシャァァ…
「…」
【…村が、燃えてますね】
この村を知っているジャックとハクロと一緒に見ているのは、ナモアリ村があった場所。
けれども今、そこに広がっているのは村ではなく…激しく炎が燃え広がり、何もかも炎上してる変わり果てた故郷の姿であった。
「これは…既に、ワイバーンの襲撃を受けた後か」
「ひどい、生きている人いるのかな、これ」
この惨状に輝きのラッパの面々も驚きを隠せない様子。
ある程度の被害を覚悟していたとはいえ、現実に見ると相当厳しいものがあるだろう。
【熱いのナノ、すぐに消火するのなの!!】
【炎上を増やさせないように…濃霧発生!!】
ぶしゅううううっと音を立て、ルミが霧を生じさせると、火の勢いが弱まった。
そこに、カトレアが木々を素早く成長させ、地下水をくみ上げて周囲を放水し、沈下察せていく。
【主殿、呆けている場合ではない。今は、救護できるものがいるか、要確認が必要だ】
「そうだった…全員、被害の確認及び、生きている人がいないか、捜索を!!」
悲惨な状況になっていたが、それでも全員命を落としたとは考えたくはない。
何かしらの方法で避難している可能性もあり、全員が同じ場所に居続けて被害に遭ったととは考えにくいため、ギリギリの生存の希望を望み、炎上による捜索の妨害を消火で吹き飛ばし、探しまくった。
そして村の消火も行い1時間後…どうやら、願いは届いていたようだ。
【ああ!!私の家が残って…中に、住人全員いました!!】
「「「マジで!?」」」
【ぎっちぎちなの!!】
【この惨状で良く生き残っていたな!?】
消火活動を進め、村の中を捜し歩く中、かつてのジャックの自宅は灰と化していたが、その横に建設されていたハクロの家が残っていた。
糸や木で組み合わせてできていた家で、炎への耐性は低そうだったが…実はそのことも考慮し、ある程度燃えにくいような作りで作っていたらしい。
その上に、どうやら水をかけられたりした形跡もあって、この大炎上の中で耐えきっていたらしく…その中に、村人たちが詰まっていたのだった。
「村長さん!!無事ですか!!」
「おお、助けが…ジャックと、ハクロさんか!!」
悲惨な状態だったとはいえ、まさかの村民全員が避難しており、熱まで完全には防ぎきれずに何人かが熱にやられて負傷もしくは熱中症のような症状を訴えていたようだったが、それでも生き延びていた。
母も父も無事であり、村長に話を聞けば、どうやら結構危ない状況だったらしい。
「ワイバーンの襲撃が出て…あたりが焼き尽くされてな、全員の避難が間に合わないと思い…失礼ながらも、ハクロさんの家に入れてもらったのだ」
かくかくしかじかと伺った話では、母さんが一応ハクロの家の合いかぎを持っていたらしく、もしも猪の大群等が出てヤバそうならば、家の中に入って避難してほしいと言っていたらしい。
【私の家、結構頑丈に作りましたからね…ジャックの大事な両親が、私にとっての義両親と言える方々が野盗などの襲撃に有っても無事に過ごせるようにしていたんですよ】
「なるほど…それを使って、全員をハクロの家に避難させることを決めたんですね」
「その通りだ。燃やされているため火事でそのまままとめて焼かれる可能性もあり、ギリギリまで井戸の水をぶっかけて湿り気を持たせ、防火対策を行ってから全員駆け込み…その後に、ワイバーンたちが周囲を焼き払っていったのだ…」
間一髪のところで村民全員が家に入り切ったようで、人的被害は最小限に抑えられたらしい。
ハクロの家自体が彼女の体格を考慮して作られて結構大きめにできていたのもあって、村民全員が根性で入り込めば、どうにかなったようだ。
「ただし、周囲が炎上し続けたので誰も出られなくなって、次第に部屋の温度も上がって危険になりつつあったが…」
「そこへ我々が到着し、ギリギリで間に合ったか…」
「うわぁ、ハクロさんの家凄い…でも、限界までいれたからか、あちこち壊れて、崩壊寸前だったようだよ」
【そのぐらい、大丈夫ですよ。むしろ、私の家が役に立って…本当に、良かったです】
「ありがとう、ハクロ、この家作ってくれて…」
本当に、心の底から今、彼女に感謝をする。
流石に村全体がほぼ焼け野原になったが、それでも全滅と言う最悪の事態は避けられたのは良かっただろう。
とにもかくにも、今は無事を喜ぶよりも先に、この場所から避難するほうを優先する。
「幸い、ワイバーンの通過後なら、すぐ戻ってくる可能性は…」
【ギャォォォォォォォォォォォォウス!!】
「「「!!」」」
今回の目的は情報収集及び、避難民がいれば救助の優先。
そのことを忘れずに動こうとした矢先…最悪の咆哮が聞こえてきた。
「まさかっ!!」
「話の途中だが、ワイバーンだ!!しかもありゃ、フレイムワイバーン一体…だけじゃねぇ!!十数体ほどいるぞ!!」
声のしたほうへ目を向ければ、そこにはばさばさと空の彼方より飛んで来るものたちの姿があった。
遠距離からでも分かるほど、くっきりとした燃え盛るような赤い体。
竜種とはいえワイバーンの名前だからか、手のほうに大きな翼が付随しているようなトカゲにも見えるが、全身が真っ赤に燃え盛っているようであり、その眼はギラギラとこちらへ向けて輝いている。
【不味いですね…どうやら、彼ら、生存者に気が付いていたようです】
【丸焼きを楽しみにしていたのに、何か消えたからおかしいなと…そんな言葉が聞こえたのなの】
【胸糞悪いが…状況としては、最悪だな】
どうやら村人たちが生き延びていたことが分かっていたらしいが、それでも時間がたてば焼かれてしまうだろうと考えていた様子。
しかし、急に熱がこの辺りから失せたことで異変に気がついたらしく、こちらへ向かってきていたようだ。
「全員、こちらに向けての攻撃態勢を確認!!ブレスが来ます!!」
「村人たちの保護が間に合わない!!全員、炎から身を守れぇーーーー!!」
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