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訪れる学園生活
log-053 出会いの風はどこからでも
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グラビティ王国の王都の賑わいは、ナモアリ村とは比較にならないほどのものであり、活気あふれる様子は国の力強さを見せつけるだろう。
あちこちで商人が行きかい珍しい反物や食べ物を出していたり、旅の吟遊詩人が歌を披露していたり、ギルドへ向かういかにも冒険者という装いの人や、休みだから遊びに向かう同級生やその上級生の姿なども観られ、移り変わりが面白く見えてくる。
そんな中でジャックは、自身のアルバイトや将来の経験蓄積になりそうなものを探そうと散策していたが…見つからなかったとしても、こうやって見て回るのは悪くはないと思っていた。
いつもならばハクロ達が一緒にいるが、本日は一人での散策。
一人での行動に不安が無いと言えばウソにはなるが、それでも一人の時間と言うのも大切なのかもしれない。
「万が一の不審者に備えての、ハクロから渡された糸玉は懐にあるけど…平和だから使う機会はないな」
こういう人ごみの多い場所だと、スリなどの犯罪者が混ざって来そうなものなのだが、今のところその様子は見られない。
単純に遭遇しない日だからか、それとも別の場所に出現しているか、あるいは見つける前にどうにかされているか…様々なことが考えられるが、平和に過ごせるのであればいい。
まだまだ幼い身でもあるし、下手な厄介ごとに巻き添えになる可能性が少なければ、それだけでも十分なのだ。
「さてと、ひとまず商店街通りへ来たけど…ここはここで、凄い賑わいだな」
王都の中を進み、やってきたのは王都内の様々な出店や店が立ち並ぶ商店街通り。
この辺りに大量の店が集中しており、日用生活雑や食料品、ギルドから降ろされて加工された武器や防具なども販売されており、見て回るだけでも面白い場所。
まぁ、最近はハクロやカトレアからの素材の提供で、彼女立印のブランド品取扱店みたいなものも出てきているというが…特に問題は無いはず。
しいて言うのであれば、質が良いからこそ人気があり過ぎて、毎回品切れになって嘆く客が多いという噂話を耳にするぐらいだろうか。
需要や供給のバランスを考えて、過剰に出せないとはいえ…それでも、人気がしっかりと出るのは良いことだとは思うのだが、そこまで人気が出るとは予想外だったところでもある。
「最近はルミの氷炎を入れたカンテラも売れているとか…冷たい焔が売れるとは、これいかに」
氷代わりのものとして利用されているとも聞き、どのようなものがどう受けるのか、まだまだ未知な部分が多いだろう。
そんなことはさておき、彼女たちブランドの店もあっさり過ぎつつ、見て回っていた…その時だった。
「ん?」
何やら向こうの通りのほうが騒がしい。
ざわざわと人混みを駆け抜けて何かが走っているような…
「んん-っ!!んー!!」
「待て待て待てお嬢様を返せこの変質者ぁぁぁぁぁぁ!!」
「待てと言われて待つ馬鹿がいるかぁぁぁぁ!!」
駆け抜けているのは、何かをわきに抱えて走り抜ける男と、般若と見間違う形相をした女の人。
あの激高ぶりからして捕縛されたらただでは済まないのが明らかすぎるのだが、様子から察するに誘拐が行われているのだろうか。
周囲の人込みは助けようかと動きを見せるが、あの般若ぶりにビビり、逆に動けなくなっている様子なのがうかがえるだろう。
そうこうしてい間に、その者たちはジャックの方へ走ってきた。
「そこをどけどけどけガキィィl!!人生の大博打に勝つための障害になるなぁぁぁ!!」
後方の般若の恐怖もあってか、かなり命がけの必死の形相に見える男。
ここへ来てようやく、なにかもぞもぞと動く袋を抱えているのが見え、誰かを攫ってきていることが判断できる。
ならば、ここは…
「こういう時に、使うのが良いよね。糸玉!!」
懐からハクロお手製の不審者対策用の糸玉を取り出し、投げつける。
それはまっすぐ進み、男へ直撃したかと思った次の瞬間。
ボンッ!!
「どわぁぁぁあ!?」
あの手のひらサイズのどこに詰まっていたのかというほど、物凄い量の蜘蛛の糸が飛び出し、ねばねばとしているようで、勢いよく突っ込んでしまった男へ絡みつきまくり、動きを封じた。
まさか早々に使う機会が来るとは思わなかったが、人助けに使えたのならばよかっただろう。
ハクロに感謝しつつ、突っ込んだ衝撃で糸玉にめり込んでしまった、人が入っているらしい袋を引っ張り出すのであった…
【ふふふ、役に立ったようで、良かったです】
【アレは中々取れないのなの。捕縛するには適しているのなの】
【下手すると、口が塞がれて窒息しそうだが】
【大丈夫ですよ。アレ、ギリギリのところで呼吸を確保できるように隙間や粘着性を調整していますからね。そう、本当に意識を失えたらいいなと思えるほどの絶妙な部分で…】
あちこちで商人が行きかい珍しい反物や食べ物を出していたり、旅の吟遊詩人が歌を披露していたり、ギルドへ向かういかにも冒険者という装いの人や、休みだから遊びに向かう同級生やその上級生の姿なども観られ、移り変わりが面白く見えてくる。
そんな中でジャックは、自身のアルバイトや将来の経験蓄積になりそうなものを探そうと散策していたが…見つからなかったとしても、こうやって見て回るのは悪くはないと思っていた。
いつもならばハクロ達が一緒にいるが、本日は一人での散策。
一人での行動に不安が無いと言えばウソにはなるが、それでも一人の時間と言うのも大切なのかもしれない。
「万が一の不審者に備えての、ハクロから渡された糸玉は懐にあるけど…平和だから使う機会はないな」
こういう人ごみの多い場所だと、スリなどの犯罪者が混ざって来そうなものなのだが、今のところその様子は見られない。
単純に遭遇しない日だからか、それとも別の場所に出現しているか、あるいは見つける前にどうにかされているか…様々なことが考えられるが、平和に過ごせるのであればいい。
まだまだ幼い身でもあるし、下手な厄介ごとに巻き添えになる可能性が少なければ、それだけでも十分なのだ。
「さてと、ひとまず商店街通りへ来たけど…ここはここで、凄い賑わいだな」
王都の中を進み、やってきたのは王都内の様々な出店や店が立ち並ぶ商店街通り。
この辺りに大量の店が集中しており、日用生活雑や食料品、ギルドから降ろされて加工された武器や防具なども販売されており、見て回るだけでも面白い場所。
まぁ、最近はハクロやカトレアからの素材の提供で、彼女立印のブランド品取扱店みたいなものも出てきているというが…特に問題は無いはず。
しいて言うのであれば、質が良いからこそ人気があり過ぎて、毎回品切れになって嘆く客が多いという噂話を耳にするぐらいだろうか。
需要や供給のバランスを考えて、過剰に出せないとはいえ…それでも、人気がしっかりと出るのは良いことだとは思うのだが、そこまで人気が出るとは予想外だったところでもある。
「最近はルミの氷炎を入れたカンテラも売れているとか…冷たい焔が売れるとは、これいかに」
氷代わりのものとして利用されているとも聞き、どのようなものがどう受けるのか、まだまだ未知な部分が多いだろう。
そんなことはさておき、彼女たちブランドの店もあっさり過ぎつつ、見て回っていた…その時だった。
「ん?」
何やら向こうの通りのほうが騒がしい。
ざわざわと人混みを駆け抜けて何かが走っているような…
「んん-っ!!んー!!」
「待て待て待てお嬢様を返せこの変質者ぁぁぁぁぁぁ!!」
「待てと言われて待つ馬鹿がいるかぁぁぁぁ!!」
駆け抜けているのは、何かをわきに抱えて走り抜ける男と、般若と見間違う形相をした女の人。
あの激高ぶりからして捕縛されたらただでは済まないのが明らかすぎるのだが、様子から察するに誘拐が行われているのだろうか。
周囲の人込みは助けようかと動きを見せるが、あの般若ぶりにビビり、逆に動けなくなっている様子なのがうかがえるだろう。
そうこうしてい間に、その者たちはジャックの方へ走ってきた。
「そこをどけどけどけガキィィl!!人生の大博打に勝つための障害になるなぁぁぁ!!」
後方の般若の恐怖もあってか、かなり命がけの必死の形相に見える男。
ここへ来てようやく、なにかもぞもぞと動く袋を抱えているのが見え、誰かを攫ってきていることが判断できる。
ならば、ここは…
「こういう時に、使うのが良いよね。糸玉!!」
懐からハクロお手製の不審者対策用の糸玉を取り出し、投げつける。
それはまっすぐ進み、男へ直撃したかと思った次の瞬間。
ボンッ!!
「どわぁぁぁあ!?」
あの手のひらサイズのどこに詰まっていたのかというほど、物凄い量の蜘蛛の糸が飛び出し、ねばねばとしているようで、勢いよく突っ込んでしまった男へ絡みつきまくり、動きを封じた。
まさか早々に使う機会が来るとは思わなかったが、人助けに使えたのならばよかっただろう。
ハクロに感謝しつつ、突っ込んだ衝撃で糸玉にめり込んでしまった、人が入っているらしい袋を引っ張り出すのであった…
【ふふふ、役に立ったようで、良かったです】
【アレは中々取れないのなの。捕縛するには適しているのなの】
【下手すると、口が塞がれて窒息しそうだが】
【大丈夫ですよ。アレ、ギリギリのところで呼吸を確保できるように隙間や粘着性を調整していますからね。そう、本当に意識を失えたらいいなと思えるほどの絶妙な部分で…】
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