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訪れる学園生活
log-51 少しばかり、吹く前に
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ガァァァン!!っと激しく音が鳴りあうのは、グラビティ学園の運動場。
そこは本日、剣技の授業が行われており、生徒たちの安全のために刃が潰れた安全な剣を使用して、試合が行われていた。
各々がどれほど剣を振るえるのか、今後も剣の授業に参加するか、どのような技術を持っているのか見たり盗めたりできないか。
様々な思惑が溢れつつも、単純な試合形式で、楽しめるものも多いだろう。
しかしながら、先ほどから聞こえてくるこの音は、明らかに安全用の剣のものではなく…
ガァンガァンガァァァン!!
【ふぅ…単純な剣の腕前では、デュラハンのほうに軍配が上がるようですが、それでも攻撃が分散する以上、こちらの力押しも聞きますね】
【むぅ、中々厄介だな…貴殿とは先日も交えたとはいえ、それでも強いか。それに…】
【ふふふふ、どうなのミーのプラント剣術!ちょっと頭を使うとはいえ、一度に何本もの剣を扱えて、強いのなの!!】
【…それが許されるなら、私も糸を使いますか。私自身が振るうよりも、糸でこう操ったほうが楽ですね】
【なっ、手数を増やすのはやっぱりずるいぞ二人とも!!そんなことをするなら我だって、この氷炎を剣に纏って…!!】
「…あのー、先生。あの三人、試合に夢中になり過ぎて、止められないのですが、良い知恵を拝借できないでしょうか」
「済まない、ジャック君。アレは無理。従魔の行動の責任は、その主が負わなければいけないだろう」
「でもあれ…うかつに入ったらやばくねぇか?」
「踊るような可憐な姿なのに、やっていることがガチの戦闘…これが、モンスターとしてのやばさか…」
試合の場の一つにて、激突しているハクロにカトレア、ルミ。
本来ならば一対一で対戦するところだったが、途中で興が乗ってきたのか混ざり合い、それぞれでぶつかり合うようになったようだが…少しばかり、乗り過ぎたようだ。
それぞれ人以上の力を持つモンスターなために、剣が音を上げてしまってへし折れてしまい、各々の自前の武器で戦う場になってしまったのである。
なお、カトレアの剣に関しては正確に言えば剣に見た目がそっくりなソードランというランの一種のようで、滅茶苦茶硬い花びらを持ち、剣代わりにしているだけのものである。ハクロは糸で形成しているし、ルミは自前の大剣だが…それぞれがしっかりと渡り合えるのは凄いというべきか。
とりあえず、これ以上白熱して誰かを巻き込むようなうっかりでも起きたら目も当てられないことになりかねないので、どうにかしてジャックは彼女たちを止めた。
お互いに白熱しすぎていたことは自覚していたようで、すぐに止まったが…それでも、こういうストッパーがいないと、止まりにくいのは困りものである。
「…いっそ、シルフィさんに万が一の従魔の止め方があれば、聞きに行ったほうが良いのかな」
【【【お願いします、それは全力でやめてほしいです】】】
「うおっ!?」
ぼそっとつぶやいた瞬間、三人がマッハで土下座した。
この言葉だけで、相当な抑止力があったのか…いや、そもそもシルフィさんがそれだけ嫌なのだろうか。
とりあえず、これはこれで使えそうな気もするが…噂話をすれば襲来してくる可能性も否定できないので、奥の手として取っておくとしよう。
…どこかで自分がネタにされているとは知らず、盛大にくしゃみをしながら研究に励むエルフがいたころ…王都外の道ではある馬車が進んでいた。
「そろそろ、王都ですわね。お兄様に言われてわざわざ来る羽目になったとはいえ、用事以外では散策して良いのが楽しみですわー」
ニコニコと、馬車の中でそう話す令嬢の言葉に、同席していたメイドも穏やかに笑う。
「ふふふ、よっぽど楽しみなんですね。でも、前に行ったときはそこまで興味があるものがないとおっしゃっていたような?」
「なんでも、最近グラビティ王国の王都の服屋で、珍しい糸を使った新製品が出たという話ですもの!!そのような物、全力で狩りに行かなければ服屋に失礼ですわ」
「それもそうですね」
何かこう、思いっきり食いつきに行っている気がするが、ここは自国ではない。
それゆえに、普段以上に周囲の目に晒される場面が多いだろうが…あの国の中では出せないような、楽しそうな様子に少し微笑む。
「でも、今更な用事ですわね。この国の王城で、ちょっと使者としての交流ぐらいなんて…わざわざ出向かなくとも、手紙で済む話ですわよ。我が国の方のゴールデンマチョポッポ便であれば、あっという間のはずですわ」
「人は時として、直接相対したほうが気持ちを伝えやすいそうですが…それを狙ってではないですかね?」
「ふむ、一理ありますわね。では、せっかくですしその狙いに乗るのですわ」
ガタゴトと馬車は揺れ、王都が近づいてくる。
その知らせを運ぶ風は、どこかあわただしくもあるようであった…
そこは本日、剣技の授業が行われており、生徒たちの安全のために刃が潰れた安全な剣を使用して、試合が行われていた。
各々がどれほど剣を振るえるのか、今後も剣の授業に参加するか、どのような技術を持っているのか見たり盗めたりできないか。
様々な思惑が溢れつつも、単純な試合形式で、楽しめるものも多いだろう。
しかしながら、先ほどから聞こえてくるこの音は、明らかに安全用の剣のものではなく…
ガァンガァンガァァァン!!
【ふぅ…単純な剣の腕前では、デュラハンのほうに軍配が上がるようですが、それでも攻撃が分散する以上、こちらの力押しも聞きますね】
【むぅ、中々厄介だな…貴殿とは先日も交えたとはいえ、それでも強いか。それに…】
【ふふふふ、どうなのミーのプラント剣術!ちょっと頭を使うとはいえ、一度に何本もの剣を扱えて、強いのなの!!】
【…それが許されるなら、私も糸を使いますか。私自身が振るうよりも、糸でこう操ったほうが楽ですね】
【なっ、手数を増やすのはやっぱりずるいぞ二人とも!!そんなことをするなら我だって、この氷炎を剣に纏って…!!】
「…あのー、先生。あの三人、試合に夢中になり過ぎて、止められないのですが、良い知恵を拝借できないでしょうか」
「済まない、ジャック君。アレは無理。従魔の行動の責任は、その主が負わなければいけないだろう」
「でもあれ…うかつに入ったらやばくねぇか?」
「踊るような可憐な姿なのに、やっていることがガチの戦闘…これが、モンスターとしてのやばさか…」
試合の場の一つにて、激突しているハクロにカトレア、ルミ。
本来ならば一対一で対戦するところだったが、途中で興が乗ってきたのか混ざり合い、それぞれでぶつかり合うようになったようだが…少しばかり、乗り過ぎたようだ。
それぞれ人以上の力を持つモンスターなために、剣が音を上げてしまってへし折れてしまい、各々の自前の武器で戦う場になってしまったのである。
なお、カトレアの剣に関しては正確に言えば剣に見た目がそっくりなソードランというランの一種のようで、滅茶苦茶硬い花びらを持ち、剣代わりにしているだけのものである。ハクロは糸で形成しているし、ルミは自前の大剣だが…それぞれがしっかりと渡り合えるのは凄いというべきか。
とりあえず、これ以上白熱して誰かを巻き込むようなうっかりでも起きたら目も当てられないことになりかねないので、どうにかしてジャックは彼女たちを止めた。
お互いに白熱しすぎていたことは自覚していたようで、すぐに止まったが…それでも、こういうストッパーがいないと、止まりにくいのは困りものである。
「…いっそ、シルフィさんに万が一の従魔の止め方があれば、聞きに行ったほうが良いのかな」
【【【お願いします、それは全力でやめてほしいです】】】
「うおっ!?」
ぼそっとつぶやいた瞬間、三人がマッハで土下座した。
この言葉だけで、相当な抑止力があったのか…いや、そもそもシルフィさんがそれだけ嫌なのだろうか。
とりあえず、これはこれで使えそうな気もするが…噂話をすれば襲来してくる可能性も否定できないので、奥の手として取っておくとしよう。
…どこかで自分がネタにされているとは知らず、盛大にくしゃみをしながら研究に励むエルフがいたころ…王都外の道ではある馬車が進んでいた。
「そろそろ、王都ですわね。お兄様に言われてわざわざ来る羽目になったとはいえ、用事以外では散策して良いのが楽しみですわー」
ニコニコと、馬車の中でそう話す令嬢の言葉に、同席していたメイドも穏やかに笑う。
「ふふふ、よっぽど楽しみなんですね。でも、前に行ったときはそこまで興味があるものがないとおっしゃっていたような?」
「なんでも、最近グラビティ王国の王都の服屋で、珍しい糸を使った新製品が出たという話ですもの!!そのような物、全力で狩りに行かなければ服屋に失礼ですわ」
「それもそうですね」
何かこう、思いっきり食いつきに行っている気がするが、ここは自国ではない。
それゆえに、普段以上に周囲の目に晒される場面が多いだろうが…あの国の中では出せないような、楽しそうな様子に少し微笑む。
「でも、今更な用事ですわね。この国の王城で、ちょっと使者としての交流ぐらいなんて…わざわざ出向かなくとも、手紙で済む話ですわよ。我が国の方のゴールデンマチョポッポ便であれば、あっという間のはずですわ」
「人は時として、直接相対したほうが気持ちを伝えやすいそうですが…それを狙ってではないですかね?」
「ふむ、一理ありますわね。では、せっかくですしその狙いに乗るのですわ」
ガタゴトと馬車は揺れ、王都が近づいてくる。
その知らせを運ぶ風は、どこかあわただしくもあるようであった…
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