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訪れる学園生活
log-049 その心は複雑で
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―――ヘビニスト部隊、治療室。
そこは、先日出現したデュラハンに挑み、敗北した騎士団の一つ、ヘビニスト部隊が身を癒しているところ。
死の宣告も扱う相手に対して、誰一人も命を散らさずに帰還した者たちであり、その身に深い傷は無い。
いや、それこそがある意味、心に傷を負う原因となったというべきか…
「この敗北を糧にして、精進せねばな…」
「ああ、命があるが…それすなわち、相手には我々の命を奪う気もなく、容易に無力化できるほどの圧倒的な実力を見せつけられたものだからな」
はぁぁぁっと深い溜息を吐き、ヘビニスト部隊者たちは落ち込む。
国を守る騎士としての志があったというのに、実際の実戦で叩きのめされた事実。
デュラハンと言うモンスター相手だったとはいえ、それでも相性を考え挑み、敗北した事実と言うのは心に来るものがあるだろう。
「だが…城内の噂では、どうやら奴は誰かの従魔に付いたらしい」
「団長が最後に聞いた言葉通り、奴は主を探し…見つけたのでしょうか」
「おそらくそうだろう。だがしかし、それで国の危機が去ったと喜ぶわけにはいかない。我々は奴に敗北し…今もなお、そのデュラハンは存在し続けている。すなわち、いつか相対する可能性もあるだろう」
国の危機が去ったようなものだが、それはあくまでも一時的なものにすぎないと団長は見る。
主となったものが誰なのかは不明だが、その主がこの国へ敵意を向けることがあれば、再びあのデュラハンの刃が迫るのは目に見えている。
今回はまだ命を奪う気はなかったようだが…もしも、そのようなことになれば、今度はただでは済まないことが容易に想像できる。
「だからこそ、その時が来ないように我々はより一層鍛え上げ、今度こそ敗れぬように…!!」
「あのー、ヘビニスト部隊の皆様。少し入ってよろしいでしょうか」
「む?」
気合を入れ、再びの対峙に備えようという心構えを創っていたその時、部屋の扉がノックされた。
「どうした、何かあったのか?」
「皆様にお客様が来ておりまして…その、実際に見られても大丈夫かなと…」
「むぅ?今、我々は恥ずかしくも何もない姿をしているのだが」
「そうではなく…すみません、お通しいたします」
「いったい誰が…っ!?」
部隊の皆が首をかしげる中、部屋の中にその客が入り込む。
何者かと思い、その姿を見た瞬間…皆、驚愕のあまり目を見開いた。
【あー…どうも、先日ぶりだな】
「「「「「で、で、で、デュラハーーーーーーーーーーン!?」」」」」
そこにいたのは、あまりにも早すぎる再会となった…彼らがここに運び込まれる元凶にもなった、モンスター、デュラハンの姿があった。
「おいまて、今の王城を警備する騎士共!!こんなにあっさり、通してどうする!?」
「いや、そもそも実力を考えれば、実力行使で突破されてもおかしくはないが!!」
「それでも堂々とここに入れるなバカヤロォォォォォォォォ!!」
…数分後、ようやく騎士たちの狂乱が落ち着いた。
慌てふためきまくったが、そもそもの話、ここにあっさりと来れるはずがない。
【…剣はきちんと入場前に、おいてきた。敵意も無いし、既に我はルミという名の従魔となっており、主への害をなすようなことが無ければ、攻撃する気もない】
「それでも、死の宣告と言う技があるからこそ脅威でもあるが…その様子だと、今は本当に襲う気もないな」
【ああ、やらかせば主殿に迷惑がかかるのが分かるからな】
最初に落ち着きを取り戻した団長が問いかけ、その質問に答えるデュラハン…いや、既に誰かの従魔になっているというルミ。
きちんと正規の手続きを取って、わざわざやってきたようなのだ。
【何しろ、我は先日、貴殿らを倒したからな…無駄な殺生をせず、主の身を追い求めるだけだったとはいえ、それでも詫びを入れておいたほうが良いと思い、ここに赴いたのだ。改めて、先日はすまなかったな】
「謝罪か…ああ、ならば、受け取るとしよう。こちらとしても、我が騎士団の少しのおごりが見え、引き締める思いを抱けたからな」
先日の戦闘に関して、彼女は謝罪に来たらしい。
兜を脱ぎ、青白い髪を揺らし首を下げたルミ。
その謝罪に対して、彼らは受け取る。
国のために戦った身だが、それでもどこかでおごりがあったかもしれない。
そのことに気が付かせてくれて、自分たちを精進するきっかけにもなったので、悪い感情は無い。
しいて言うのであれば、ぼこぼこにされた部分はまだ多少恨みもあるが…今はまだ、実力ではかなわないので、いずれ再戦を申し込みたいという気持ちへ昇華させる。
「それにしても、ルミ…か。どうやら貴殿は、無事に主に巡り合えたようだな」
【ああ、その通りだ。主殿のために、騎士たるもの忠誠を捧げるもの。主君の刃となれることこそが、騎士としての本懐でもある】
「それは、同意しよう」
種族が違うとはいえ、同じ騎士道を志す者同士。
その部分は分かり合えるのだろう。
【そして主のためにも、ある程度の過去の清算をしたほうが想い…それもあって、ここに謝罪に来たのもあるのだ。貴殿らは、この国のために相手が何であろうとも挑み、全力を尽くしたもの…その場では敵同士の立ち位置にあったが、それでもその志は戦友として誇れるものであった】
「そのように言われるのは、ありがたいな。敗北をした身とはいえ…それでも、まだまだのもの。ああ、そうだ貴殿が主を持つ身になり、ここにいるのであれば都合が良い。もしも、機会があれば…我々がより強くなったその時に、貴殿へ挑みたいが良いだろうか」
【問題は無い。敗北を知ってこそ、己を見つめなおし、より刃を研ぎ澄ませ、それを実感するのも騎士としてのありようだ】
先日敵対した身とはいえ、堂々とした振る舞いに、その騎士道精神。
最初こそ驚かされたとはいえ、こうして話してみればなかなか分かる人物…いや、モンスターではあるが、デュラハンになれるだけのものであることを、彼らは感じ取る。
それゆえに、より一層精進しなければいけないと、改めて思わされるだろう。
【さて、それでは謝罪も済んだところで…実は一つ、王城に使える騎士団の皆さんに、頼みたいこともあってやってきたのだ】
「というと?」
【我、主を得た身だが…いくら我がデュラハン…騎士としてのモンスターとはいえ、より主殿のために、精進していきたい心構え。しかしながら、相手がなかなかいなくてな】
ルミの話曰く、出来れば今後も騎士としての道を究めたい。
しかしながら、実戦に勝るような鍛え方が無く、デュラハンである彼女の実力は先日戦ったヘビニスト部隊の全員が知っているように極めて高いがゆえに、その相手も限られてしまう。
【一応、まともに戦える友もいるが…残念ながら、戦闘方面に対して興味が強いわけではない。そこで…可能であれば、ここの騎士団たちと戦わせてくれないだろうか】
「…つまり、全員貴殿に叩きのめされろと?」
【そこまでは言っていない】
ヘビニスト部隊の実力に目を向けたのか、どうやらここで出の戦闘訓練に参加していきたい様子。
実力があり過ぎるがゆえに、相手にもならないかもしれないが…それでも、戦闘をして刃を研ぎ澄ませるのには、この方法が良いと思っているのだろう。
「…だが、こちらにメリットが無いわけでもないな。我が部隊は先日貴殿に叩きのめされたが…他の部隊も、敵がいなければどこかで慢心している可能性もある。その引き締めを考えつつ、実力者への挑みは実力向上につながることを考えれば…悪くはないか」
無茶苦茶な相手だが、その騎士道精神は人のみでも見習う部分があるだろう。
それに、騎士団がいくらいても、実戦が無ければどこかで慢心し、痛い目を見てしまう可能性がある。
だからこそ、引き締めと腕前の向上のためには、自分たちの高めたい目標が必要になり…その指針として、彼女にいてもらうのも悪くはない。
「皆、良いだろうか?」
「トラウマがあるが…でも、克服及び実力向上の糧にできるのでらえば、反対はしない」
「ああ、今度こそ勝てるように…日々、実力を見せつけ、上回れるように努力できればいい」
他の団員に聞いてみたが、反対意見は無いようだ。
先日痛い目を見せられたとはいえ、強さの指針が近くにある方がありがたいのもある。
それゆえに、全員了承し…それから数日後、デュラハンのルミは、王城内の騎士団たちへの特別講師として、招かれるようになったのであった…
「しかし、貴殿の実力は相当なものだが…生前は、どこの騎士団にいたとかはわからないのか?」
【それが、生前の記憶は残念ながらなく…ちょっと調べ中だが、鎧の一部にあった装飾が、どうもかなり大昔に存在した、ある聖国の騎士団の鎧と似ているから、そこ出身ではないかと思われている。…まぁ、その国の話を聞けば、どうして我がデュラハンになったのかという理由も見えそうだがな】
「どういうことだ?」
【…悪魔に滅ぼされた国であり、そこにいた騎士団は皆…非業の死を遂げたという記録があったからだ】
…正直な話、生前に関して彼女は興味が薄い。
だが、何故デュラハンになったのかという部分は知りたい思いもあり…少しだけ探ったのである。
そこは、先日出現したデュラハンに挑み、敗北した騎士団の一つ、ヘビニスト部隊が身を癒しているところ。
死の宣告も扱う相手に対して、誰一人も命を散らさずに帰還した者たちであり、その身に深い傷は無い。
いや、それこそがある意味、心に傷を負う原因となったというべきか…
「この敗北を糧にして、精進せねばな…」
「ああ、命があるが…それすなわち、相手には我々の命を奪う気もなく、容易に無力化できるほどの圧倒的な実力を見せつけられたものだからな」
はぁぁぁっと深い溜息を吐き、ヘビニスト部隊者たちは落ち込む。
国を守る騎士としての志があったというのに、実際の実戦で叩きのめされた事実。
デュラハンと言うモンスター相手だったとはいえ、それでも相性を考え挑み、敗北した事実と言うのは心に来るものがあるだろう。
「だが…城内の噂では、どうやら奴は誰かの従魔に付いたらしい」
「団長が最後に聞いた言葉通り、奴は主を探し…見つけたのでしょうか」
「おそらくそうだろう。だがしかし、それで国の危機が去ったと喜ぶわけにはいかない。我々は奴に敗北し…今もなお、そのデュラハンは存在し続けている。すなわち、いつか相対する可能性もあるだろう」
国の危機が去ったようなものだが、それはあくまでも一時的なものにすぎないと団長は見る。
主となったものが誰なのかは不明だが、その主がこの国へ敵意を向けることがあれば、再びあのデュラハンの刃が迫るのは目に見えている。
今回はまだ命を奪う気はなかったようだが…もしも、そのようなことになれば、今度はただでは済まないことが容易に想像できる。
「だからこそ、その時が来ないように我々はより一層鍛え上げ、今度こそ敗れぬように…!!」
「あのー、ヘビニスト部隊の皆様。少し入ってよろしいでしょうか」
「む?」
気合を入れ、再びの対峙に備えようという心構えを創っていたその時、部屋の扉がノックされた。
「どうした、何かあったのか?」
「皆様にお客様が来ておりまして…その、実際に見られても大丈夫かなと…」
「むぅ?今、我々は恥ずかしくも何もない姿をしているのだが」
「そうではなく…すみません、お通しいたします」
「いったい誰が…っ!?」
部隊の皆が首をかしげる中、部屋の中にその客が入り込む。
何者かと思い、その姿を見た瞬間…皆、驚愕のあまり目を見開いた。
【あー…どうも、先日ぶりだな】
「「「「「で、で、で、デュラハーーーーーーーーーーン!?」」」」」
そこにいたのは、あまりにも早すぎる再会となった…彼らがここに運び込まれる元凶にもなった、モンスター、デュラハンの姿があった。
「おいまて、今の王城を警備する騎士共!!こんなにあっさり、通してどうする!?」
「いや、そもそも実力を考えれば、実力行使で突破されてもおかしくはないが!!」
「それでも堂々とここに入れるなバカヤロォォォォォォォォ!!」
…数分後、ようやく騎士たちの狂乱が落ち着いた。
慌てふためきまくったが、そもそもの話、ここにあっさりと来れるはずがない。
【…剣はきちんと入場前に、おいてきた。敵意も無いし、既に我はルミという名の従魔となっており、主への害をなすようなことが無ければ、攻撃する気もない】
「それでも、死の宣告と言う技があるからこそ脅威でもあるが…その様子だと、今は本当に襲う気もないな」
【ああ、やらかせば主殿に迷惑がかかるのが分かるからな】
最初に落ち着きを取り戻した団長が問いかけ、その質問に答えるデュラハン…いや、既に誰かの従魔になっているというルミ。
きちんと正規の手続きを取って、わざわざやってきたようなのだ。
【何しろ、我は先日、貴殿らを倒したからな…無駄な殺生をせず、主の身を追い求めるだけだったとはいえ、それでも詫びを入れておいたほうが良いと思い、ここに赴いたのだ。改めて、先日はすまなかったな】
「謝罪か…ああ、ならば、受け取るとしよう。こちらとしても、我が騎士団の少しのおごりが見え、引き締める思いを抱けたからな」
先日の戦闘に関して、彼女は謝罪に来たらしい。
兜を脱ぎ、青白い髪を揺らし首を下げたルミ。
その謝罪に対して、彼らは受け取る。
国のために戦った身だが、それでもどこかでおごりがあったかもしれない。
そのことに気が付かせてくれて、自分たちを精進するきっかけにもなったので、悪い感情は無い。
しいて言うのであれば、ぼこぼこにされた部分はまだ多少恨みもあるが…今はまだ、実力ではかなわないので、いずれ再戦を申し込みたいという気持ちへ昇華させる。
「それにしても、ルミ…か。どうやら貴殿は、無事に主に巡り合えたようだな」
【ああ、その通りだ。主殿のために、騎士たるもの忠誠を捧げるもの。主君の刃となれることこそが、騎士としての本懐でもある】
「それは、同意しよう」
種族が違うとはいえ、同じ騎士道を志す者同士。
その部分は分かり合えるのだろう。
【そして主のためにも、ある程度の過去の清算をしたほうが想い…それもあって、ここに謝罪に来たのもあるのだ。貴殿らは、この国のために相手が何であろうとも挑み、全力を尽くしたもの…その場では敵同士の立ち位置にあったが、それでもその志は戦友として誇れるものであった】
「そのように言われるのは、ありがたいな。敗北をした身とはいえ…それでも、まだまだのもの。ああ、そうだ貴殿が主を持つ身になり、ここにいるのであれば都合が良い。もしも、機会があれば…我々がより強くなったその時に、貴殿へ挑みたいが良いだろうか」
【問題は無い。敗北を知ってこそ、己を見つめなおし、より刃を研ぎ澄ませ、それを実感するのも騎士としてのありようだ】
先日敵対した身とはいえ、堂々とした振る舞いに、その騎士道精神。
最初こそ驚かされたとはいえ、こうして話してみればなかなか分かる人物…いや、モンスターではあるが、デュラハンになれるだけのものであることを、彼らは感じ取る。
それゆえに、より一層精進しなければいけないと、改めて思わされるだろう。
【さて、それでは謝罪も済んだところで…実は一つ、王城に使える騎士団の皆さんに、頼みたいこともあってやってきたのだ】
「というと?」
【我、主を得た身だが…いくら我がデュラハン…騎士としてのモンスターとはいえ、より主殿のために、精進していきたい心構え。しかしながら、相手がなかなかいなくてな】
ルミの話曰く、出来れば今後も騎士としての道を究めたい。
しかしながら、実戦に勝るような鍛え方が無く、デュラハンである彼女の実力は先日戦ったヘビニスト部隊の全員が知っているように極めて高いがゆえに、その相手も限られてしまう。
【一応、まともに戦える友もいるが…残念ながら、戦闘方面に対して興味が強いわけではない。そこで…可能であれば、ここの騎士団たちと戦わせてくれないだろうか】
「…つまり、全員貴殿に叩きのめされろと?」
【そこまでは言っていない】
ヘビニスト部隊の実力に目を向けたのか、どうやらここで出の戦闘訓練に参加していきたい様子。
実力があり過ぎるがゆえに、相手にもならないかもしれないが…それでも、戦闘をして刃を研ぎ澄ませるのには、この方法が良いと思っているのだろう。
「…だが、こちらにメリットが無いわけでもないな。我が部隊は先日貴殿に叩きのめされたが…他の部隊も、敵がいなければどこかで慢心している可能性もある。その引き締めを考えつつ、実力者への挑みは実力向上につながることを考えれば…悪くはないか」
無茶苦茶な相手だが、その騎士道精神は人のみでも見習う部分があるだろう。
それに、騎士団がいくらいても、実戦が無ければどこかで慢心し、痛い目を見てしまう可能性がある。
だからこそ、引き締めと腕前の向上のためには、自分たちの高めたい目標が必要になり…その指針として、彼女にいてもらうのも悪くはない。
「皆、良いだろうか?」
「トラウマがあるが…でも、克服及び実力向上の糧にできるのでらえば、反対はしない」
「ああ、今度こそ勝てるように…日々、実力を見せつけ、上回れるように努力できればいい」
他の団員に聞いてみたが、反対意見は無いようだ。
先日痛い目を見せられたとはいえ、強さの指針が近くにある方がありがたいのもある。
それゆえに、全員了承し…それから数日後、デュラハンのルミは、王城内の騎士団たちへの特別講師として、招かれるようになったのであった…
「しかし、貴殿の実力は相当なものだが…生前は、どこの騎士団にいたとかはわからないのか?」
【それが、生前の記憶は残念ながらなく…ちょっと調べ中だが、鎧の一部にあった装飾が、どうもかなり大昔に存在した、ある聖国の騎士団の鎧と似ているから、そこ出身ではないかと思われている。…まぁ、その国の話を聞けば、どうして我がデュラハンになったのかという理由も見えそうだがな】
「どういうことだ?」
【…悪魔に滅ぼされた国であり、そこにいた騎士団は皆…非業の死を遂げたという記録があったからだ】
…正直な話、生前に関して彼女は興味が薄い。
だが、何故デュラハンになったのかという部分は知りたい思いもあり…少しだけ探ったのである。
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