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訪れる学園生活
log-047 因縁とは何のことぞ
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「…ハクロが外に出ていった?」
【そうなの。何か感じたとか言って、王都の外へ向かったようなの】
…まだまだ暗い室内にて、ジャックはカトレアから話を聞いていた。
寝静まっているはずの夜中、寝る必要がほとんどないハクロならば、構内の見回りでもしているのかと思っていた。
しかし、カトレアに話を聞くとそうではなく、何か王都外のほうで妙なものを感じ、それが何なのかは不明だが、確認するために向かったそうだ。
【ミーもちょっと、感知しているのなの。わからないけど…なんか、ぶつかっているのなの】
「ぶつかっている…戦闘しているのか?」
【そうかもなの】
ハクロが強いことはわかっているが、そんな彼女がかなり本気で戦っているに等しい相手らしい。
そんな状況になるなんて…万が一と言うこともありえなくもない。
「急いで、向かったほうが良い?でも、僕が向かったところで何変わるか…いや、考えるよりも、行ったほうが良いような気がする。カトレア、一緒に来てくれないか?」
【わかったのなの!!】
考え込んでも意味がないため、ジャックたちも寮を出てハクロのもとへ向かう。
王都の外のどこへ向かったのか、正確な部分は不明だが…なんとなく、彼女の居場所が分からないような気がしなくもないから、迷うことはなさそうだが…
ガァァァァァン!!
【ぐっ!!腕を上げましたね、前よりもどれほど馬鹿力になっているんですか!!】
【貴殿こそ、強くなっているではないか!!このっ『死の宣告』!!】
バギィィィィン!!
【ギュルゥ!?いたたた、前よりも痛いというか、強力に…並の人間が相手なら、死を招けるものを打たないでくださいよ】
【ぶっ飛ばされるのに、死を無効化するな!!】
王都から少しだけ離れた平原…だった場所。
そこでは今、ハクロとデュラハンが対峙し、争っていた。
互いに扱う獲物が、大鎌と大剣のため、ぶつかり合う火花が飛びちる。
善戦しているように見えるハクロだが、いかんせん接近戦に関しては、デュラハンのほうに軍配が上がる。
それゆえに、真正面からのぶつかり合いはやや不利でもあったのだが、デュラハン側の特殊なスキルの類に関しては、色々と知っているため、対応が可能。
手の内のありようが分かるために、それで補っているのだ。
【ふぅ…それでも、きついですね】
【よく言うね、まだまだ余力を残しているのに】
これだけの戦闘であっても、完全に全力をぶつけたわけではない。
お互いに少々因縁が…例えくだらないことが多かったとしても無いわけではないが、それでも自分たちの実力を把握しており、周囲への影響をそれなりに考慮しているのである。
【ですが、もっともっとパワーを上げたほうが良いですね!!】
【望むところだ。こちらも、より開放して…ん?】
【ん?どうしたのですか?】
ヒートアップしてきて、闘争本能的な部分が刺激されたのもあり、もう少しだけ実力を出そうかと思っていた時…ふと、デュラハンの動きが止まった。
【…何か、近づいてきていないか?いや、この魂の感じから…】
【近づいて…って、この感じ、まさかジャック!?】
デュラハンの言葉に対して、続けて近づくものに関して何かと探り、ハクロは感じ取る。
【いったん勝負中断です!!私の大事な番を、こんな戦いに巻き込んじゃダメなので、止めてきます!!】
【あ、おい!!】
鎌を投げ捨て、素早く身をひるがえし、その場を去るハクロ。
デュラハンが手を伸ばすも、既に残像が残されており、つかむことができなかった。
【そろそろ、近いはずなの】
「あっちの方でドッカンバカンすさまじい音が聞こえていたけど…止まったようだけど、終わったのかな?」
王都の門から出て、ハクロの向かったであろう方向に走っているが、追い付けるような気配はない。
とはいえ、物凄く遠くというわけでもないようで、何とか追い付ければと思っていた…その時だった。
【ジ~~~ャ~~~~ック~~~~!!どうして向かって来ているのですかぁぁ!!】
「あ、ハクロ!!」
前方より物凄い速度でハクロが走り、瞬時に接近してきた。
そのままの勢いでジャックの身体を持ち上げ、王都へ向かって駆け抜け始める。
【こんな夜中に出かけたら、危険ですよ!!今ちょっと、知り合いの応対をしていただけですが、その中に巻き込まれたら、ジャックの身がぬぱぁぁんってなっちゃいますよ!!】
「何その気が抜けるような変な擬音!?いや、まず知り合いって…その対応で何でそんな変なことになるの!!」
【ちょっとばかり、恨みつらみをぶつけ合っていたので!!】
何やら少々ボロボロな様子だが、怪我をしている様子はない。
その様子に少しほっとしていたが…周囲に、異変が現れた。
「ん?なんだ…霧が?」
先ほどまで晴れていたはずなのに、何やら霧のような物が出てきた。
【これは…ああ、もう追いついてきたのですね。あの重装備なのに、よくもまぁ】
「ハクロ、知っているの?」
【ええ、これは…私の知り合いの、特技のような物です】
ハクロがそう答える中、霧の奥深くから音が聞こえてきた。
ガシャンガシャンと思い金属がぶつかっているような音を立てて、その音の主が姿を現す。
大きな騎士鎧のような物で、相当な年月を経ているせいか、それともハクロと戦っていたからなのか、ずいぶんくたびれた様子のものになっている。
しかし、その頭は首の上にはなく左手の上に、鎧兜を付けたものがあった。
【…あれ、誰なの?】
【あれは、私の昔の旅仲間にして、喧嘩友達でもあるデュラハンです】
「デュラハン…」
警戒心を強めているのか、ハクロが僕を後ろへ隠すように動かす。
【…なるほど、彼が、貴殿の番…か?】
【ええ、私の大事な大事な大事な番…ジャックです。紹介できてよかったですが、ここで争う気は無いので…お引き取り、願えないでしょうか】
ハクロの知り合いということあってか、ここに至る前に何か話していたのだろう。
僕の姿を見て問いかけ、ハクロはすぐに答える。
【なるほど、そうか…彼が…】
ジャックの姿を見ながら、デュラハンはつぶやく。
【…ああ、なんと言うことか。このものが…魂を、響かせるのか】
そう言いながらデュラハンは歩み寄ってくる。
【何ですか?彼を人質にでもして勝負を有利にしようとしたら、許しませんよ】
【そんなこと、誰がするか。いや…そうではなく…ハクロの番、ジャックとやら…】
ハクロの言葉にツッコミを入れつつも、そのデュラハンは跪き、兜を脱ぐ。
重い兜の下にあったのは、月明かりに生える青白い髪色をした女性の顔。
女騎士と言うべき風貌で、その眼はこちらを真っすぐに見据えている。
【…あなたが、この魂の震える先にいるもの…主となるべき御方か】
「え?何、いきなり言われても…何なの?」
【突然、跪いたなの】
【まさか…貴女が感じていた相手って…!!】
【ああ、そうだ。間違いない。生涯仕えるべき主がいるという本能の先には…この方がいたようだ。ハクロの番という、ジャック殿…いえ、主殿。我が身をどうか、仕えさせていただけないだろうか】
「…えええええええ!?」
まさかのハクロの知り合いのモンスターが、突然頼み込んできたのであった…
【そうなの。何か感じたとか言って、王都の外へ向かったようなの】
…まだまだ暗い室内にて、ジャックはカトレアから話を聞いていた。
寝静まっているはずの夜中、寝る必要がほとんどないハクロならば、構内の見回りでもしているのかと思っていた。
しかし、カトレアに話を聞くとそうではなく、何か王都外のほうで妙なものを感じ、それが何なのかは不明だが、確認するために向かったそうだ。
【ミーもちょっと、感知しているのなの。わからないけど…なんか、ぶつかっているのなの】
「ぶつかっている…戦闘しているのか?」
【そうかもなの】
ハクロが強いことはわかっているが、そんな彼女がかなり本気で戦っているに等しい相手らしい。
そんな状況になるなんて…万が一と言うこともありえなくもない。
「急いで、向かったほうが良い?でも、僕が向かったところで何変わるか…いや、考えるよりも、行ったほうが良いような気がする。カトレア、一緒に来てくれないか?」
【わかったのなの!!】
考え込んでも意味がないため、ジャックたちも寮を出てハクロのもとへ向かう。
王都の外のどこへ向かったのか、正確な部分は不明だが…なんとなく、彼女の居場所が分からないような気がしなくもないから、迷うことはなさそうだが…
ガァァァァァン!!
【ぐっ!!腕を上げましたね、前よりもどれほど馬鹿力になっているんですか!!】
【貴殿こそ、強くなっているではないか!!このっ『死の宣告』!!】
バギィィィィン!!
【ギュルゥ!?いたたた、前よりも痛いというか、強力に…並の人間が相手なら、死を招けるものを打たないでくださいよ】
【ぶっ飛ばされるのに、死を無効化するな!!】
王都から少しだけ離れた平原…だった場所。
そこでは今、ハクロとデュラハンが対峙し、争っていた。
互いに扱う獲物が、大鎌と大剣のため、ぶつかり合う火花が飛びちる。
善戦しているように見えるハクロだが、いかんせん接近戦に関しては、デュラハンのほうに軍配が上がる。
それゆえに、真正面からのぶつかり合いはやや不利でもあったのだが、デュラハン側の特殊なスキルの類に関しては、色々と知っているため、対応が可能。
手の内のありようが分かるために、それで補っているのだ。
【ふぅ…それでも、きついですね】
【よく言うね、まだまだ余力を残しているのに】
これだけの戦闘であっても、完全に全力をぶつけたわけではない。
お互いに少々因縁が…例えくだらないことが多かったとしても無いわけではないが、それでも自分たちの実力を把握しており、周囲への影響をそれなりに考慮しているのである。
【ですが、もっともっとパワーを上げたほうが良いですね!!】
【望むところだ。こちらも、より開放して…ん?】
【ん?どうしたのですか?】
ヒートアップしてきて、闘争本能的な部分が刺激されたのもあり、もう少しだけ実力を出そうかと思っていた時…ふと、デュラハンの動きが止まった。
【…何か、近づいてきていないか?いや、この魂の感じから…】
【近づいて…って、この感じ、まさかジャック!?】
デュラハンの言葉に対して、続けて近づくものに関して何かと探り、ハクロは感じ取る。
【いったん勝負中断です!!私の大事な番を、こんな戦いに巻き込んじゃダメなので、止めてきます!!】
【あ、おい!!】
鎌を投げ捨て、素早く身をひるがえし、その場を去るハクロ。
デュラハンが手を伸ばすも、既に残像が残されており、つかむことができなかった。
【そろそろ、近いはずなの】
「あっちの方でドッカンバカンすさまじい音が聞こえていたけど…止まったようだけど、終わったのかな?」
王都の門から出て、ハクロの向かったであろう方向に走っているが、追い付けるような気配はない。
とはいえ、物凄く遠くというわけでもないようで、何とか追い付ければと思っていた…その時だった。
【ジ~~~ャ~~~~ック~~~~!!どうして向かって来ているのですかぁぁ!!】
「あ、ハクロ!!」
前方より物凄い速度でハクロが走り、瞬時に接近してきた。
そのままの勢いでジャックの身体を持ち上げ、王都へ向かって駆け抜け始める。
【こんな夜中に出かけたら、危険ですよ!!今ちょっと、知り合いの応対をしていただけですが、その中に巻き込まれたら、ジャックの身がぬぱぁぁんってなっちゃいますよ!!】
「何その気が抜けるような変な擬音!?いや、まず知り合いって…その対応で何でそんな変なことになるの!!」
【ちょっとばかり、恨みつらみをぶつけ合っていたので!!】
何やら少々ボロボロな様子だが、怪我をしている様子はない。
その様子に少しほっとしていたが…周囲に、異変が現れた。
「ん?なんだ…霧が?」
先ほどまで晴れていたはずなのに、何やら霧のような物が出てきた。
【これは…ああ、もう追いついてきたのですね。あの重装備なのに、よくもまぁ】
「ハクロ、知っているの?」
【ええ、これは…私の知り合いの、特技のような物です】
ハクロがそう答える中、霧の奥深くから音が聞こえてきた。
ガシャンガシャンと思い金属がぶつかっているような音を立てて、その音の主が姿を現す。
大きな騎士鎧のような物で、相当な年月を経ているせいか、それともハクロと戦っていたからなのか、ずいぶんくたびれた様子のものになっている。
しかし、その頭は首の上にはなく左手の上に、鎧兜を付けたものがあった。
【…あれ、誰なの?】
【あれは、私の昔の旅仲間にして、喧嘩友達でもあるデュラハンです】
「デュラハン…」
警戒心を強めているのか、ハクロが僕を後ろへ隠すように動かす。
【…なるほど、彼が、貴殿の番…か?】
【ええ、私の大事な大事な大事な番…ジャックです。紹介できてよかったですが、ここで争う気は無いので…お引き取り、願えないでしょうか】
ハクロの知り合いということあってか、ここに至る前に何か話していたのだろう。
僕の姿を見て問いかけ、ハクロはすぐに答える。
【なるほど、そうか…彼が…】
ジャックの姿を見ながら、デュラハンはつぶやく。
【…ああ、なんと言うことか。このものが…魂を、響かせるのか】
そう言いながらデュラハンは歩み寄ってくる。
【何ですか?彼を人質にでもして勝負を有利にしようとしたら、許しませんよ】
【そんなこと、誰がするか。いや…そうではなく…ハクロの番、ジャックとやら…】
ハクロの言葉にツッコミを入れつつも、そのデュラハンは跪き、兜を脱ぐ。
重い兜の下にあったのは、月明かりに生える青白い髪色をした女性の顔。
女騎士と言うべき風貌で、その眼はこちらを真っすぐに見据えている。
【…あなたが、この魂の震える先にいるもの…主となるべき御方か】
「え?何、いきなり言われても…何なの?」
【突然、跪いたなの】
【まさか…貴女が感じていた相手って…!!】
【ああ、そうだ。間違いない。生涯仕えるべき主がいるという本能の先には…この方がいたようだ。ハクロの番という、ジャック殿…いえ、主殿。我が身をどうか、仕えさせていただけないだろうか】
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