絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

志位斗 茂家波

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訪れる学園生活

log-046 求めしものは

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…騎士団の一つ、ヘビニスト部隊の壊滅。

 その一報はすぐに届けられ、今回のデュラハンがどれほどのものなのか理解させるだろう。

「だが…すべての命が奪われてはいないようだ。かろうじて息の根はつながっているようだ」
「相手はこちらの命を摘み取る気は無いのか…?何かを求めている動きらしいぞ」
「でも、探しているだけならば放置、という選択肢はできないな。国の騎士団としての面子がかかっている」

 グラビティ王国の騎士団の会合の場にて、届けられた報告。
 その内容を確認する限り、デュラハンの実力は相当高いようだが命を奪わず…いや、それほどの技量があるということを見せつけているようなそぶりさえ見えてくるだろう。

「なら次は、ローズ部隊を向かわせるか?」
「いや、相性が悪すぎる。そもそも、相性がいいと考えて向かわせた結果がこれだ」
「ぬぅ、たかが一体の魔物にこうも蹂躙されるとは…騎士団全体の引き締めや強化を行いたいが、それよりも目の前に脅威が迫っているのはな…」

 ぬぐぐぐっと歯がゆい思いを感じながらも、考える騎士団の上層部の者たち。
 
「…いっそ、化け物のような強さを持つ相手ならば、化け物をぶつけるべきでは?」
「化け物…例の、厄災種とやらの方か?」

 悩んでいる中、ふと一人がそう発言した。

 厄災種…この王都内に最近住み始めた、ある少年の従魔。
 そんなやばいものを入れて良いのかという話もあったが、今のところは敵対する様子もなく、協力的になってもらえれば王都の守りの要としては心強くもある。

 そして、同時に厄災種自体は相当な実力を持っていることもわかっており…ならば、化け物じみた強さを持つデュラハン相手にぶつけてみても良いのではないかと思われたのだ。

「しかし、素直にこちらの要請に従うと思うか?」
「他人の言うことをやすやすと聞いてくれないようですが…情報では、その少年をとても大事に想っているとのこと。ならば、その身の危機につながるかもしれないと思わせれば自発的にでも…」

「会議中、失礼いたします!!」
「む?」

 出す案を検討していた中、突然会議室に誰かが飛び込んできた。

「斥候部隊の者か、どうした?」
「はっ、報告なのですが…今聞こえてきた内容にもつながる話でして、先ほど、その厄災種のアラクネが、寮室を出て、王都外へ向かわれました!!」
「…何だと?もしや、既に察知して…」

 どうやって相手をさせるかと考えていたが、実行に移す前に彼女が自ら動いていたらしい。

「これはこれで、手間が省けましたな。うまくいくかはわからないですが、お互いに争ってくれれば…」
「いや、待て。一つ、問題があるのだが」
「何だ?」

「…化け物には化け物をぶつける理屈だったが、考えてみたら、そんなもの同士が戦ったら…周囲への余波が、一番危険では?」
「「「…あ」」」

 その言葉に、その場にいた者たちはやらかしたという表情を浮かべた。
 しかし、止めようにも既に彼女は出ていっており、後手に回る羽目になるのであった。







【…む?】

 騎士団上層部の者たちが、このやらかしの事実に気が付いて、余波対策をどうにかしなければ非常に不味いと焦っていたその頃。

 王都がもうそろそろ目前に迫ってきた中で…そのデュラハンはある気配に気が付いた。

【何か強そうな気配と、怪しい霧が出ている様子が見えたので、来てみましたが…やはり、貴女でしたか】
【貴殿は…】


 霧の中から出てきた、ハクロの姿。
 それを見て、デュラハンも歩みを止める。

【久しぶりですね、えっと…人の換算で言えば、数年ぶり…ですかね?首無し騎士の方】
【…ああ、そうだな。そちらも旅をしていたようだったが、ずいぶん様子が変わったようだな、蜘蛛女】
【その言い方は、もうやめてください。私はようやく番を見つけて、今はハクロという名前になってますからね】
【番を得たのか…そうなると、貴殿の旅路は終えたのか】

 ハクロの言葉に対して、答えるデュラハン。
 その話しぶりは、まるで数年ぶりに出会った友のような会話である。

【ええ、それで…今、貴女が向かう先に、私の大事な番がいますので…よろしければこのまま、引き返していただけないですかね?せっかくの安寧を、邪魔されかねないので】

 そう言いながらハクロは糸を出し、大きな鎌を作り上げ、構える。

【悪いが、それはできない相談だ。…この先に、我が主になるべき方がいるような魂の震えがあるからな。それを邪魔するようなものは退ける…例え、貴殿が相手でも】

 ハクロに対し、大剣を構え、そう告げるデュラハン。

 先ほどまでの穏やかな会話が嘘のように、張り詰めた空気となる。



【あの時、せっかく仕留めたグレートボアを、貴女が首の炎の加減間違えて、灰と化した恨みはありますからね!!】
【こちらこそ、貴殿がうっかりでぶつかって、危うく底なし沼に囚われそうになった恨みはある!!】

【【お互いに譲れない云々よりも、その恨みをここでーーーーー!!】】

…張り詰めた空気はどこへ逃げたのか。
そこにあった空気は既に、両者の過去のいざこざより生まれた恨みのぶつけ合いの者へと、変わり果てていたのであった…






「ん、ふわぁ…あれ?ハクロは?」
【ミー、見ていたなの。何か過去に旅路をちょっとだけ共にした、友の気配を感じたから会いに行くって言っていたなの】
「友の気配?そういえば、僕に出会う前に旅をしていたらしけれども…出会ったときは一人だったような?」
【そのあたりは知らないなの】
「…気になるし、ちょっと見に行ってみようかな」
【やめておいたほうが良い気がするなの。アレは…ハクロにしては珍しい、恨みのある目をしていたなの】

…寮室で残されていた会話もあったが…それを聞いている者はいないのであった。

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