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訪れる学園生活
log-043 大人だからこそ、根っこが一応はまだいい方だからこそ
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―――深夜、誰もかれもが寝静まり、王都から明かりは消えている。
夜間の襲撃を想定して衛兵たちは交代で王都の周辺を見回り、今日もこの国の夜は更けていく。
そんな中、王都内のとある一室…シルフィの部屋は明かりがついており、彼女は本日あった様々なことをまとめていた。
「ふぅ、思った以上に多くデータが集まったか…ああ、情熱がたぎって眠れないからこそ、書き出しまくるのに、まだまだ吐き出しきれないから眠れないのが、辛いところか」
「辛いと言っておきながら、物凄く目をギラギラと輝かせて、嬉しそうにしていますけれどね」
シルフィの言葉に、ふぁぁっとあくびを上げながらも、呆れたようにツッコミを入れるカンナ。
まだまだ朝まで時間があるが、この様子であれば徹夜は免れないだろうと予想を立て、明日の授業中に眠りこけさせないように炎上香と呼ばれる眠気覚ましのお香を調合しておく。
「ははは、だってそうじゃないか!!あのうざったいクジャーラが頼んできたかと思えば、噂を聞いてから存分に間近で観察したいモンスターたちに、正当な理由で接近できる機会を得られたからね!!」
意気揚々と興奮しながら、シルフィはそう口にする。
前々から話だけは聞いており、多少のやばそうなものも弾き、色々と機会をうかがっていたのだが、今回ようやくめぐりまわってきたこの機会。
本当ならばもっともっと大量に知りたいことが多かったが…いかんせん、まだ初対面なことに加えて呪いでの警戒を高めてしまったので、次の機会まではおとなしくしているしかないことが歯がゆいぐらいか。
それでも、この出会いには意味があった。
「…今回の接近に関して、王家からの特務命令も出ていたようですが、そちらもできたのでしょうか?」「ん?ああ、あれだね」
普段の行動こそ問題ばかりなのでそちらに目を向けられがちだが、一応はモンスターの研究者でも専門家でも学者でも、その他諸々の道を進んでいる彼女。
エルフゆえの長い寿命を活かして様々な知見を得ており、その審美眼だけは信頼が強いのだ。
言い換えれば他の部分は大問題しかないと思われているが…それはさておき、今回は従魔を介して魔法が使えたという驚くべき事例に関しての調査も兼ねて、別の探りも入れていたのだ。
「アラクネ、アルラウネ…彼に付き従う従魔たちの診断、厄災種かどうかの探りだけど…そこはしっかりと確認してきたよ」
先ほどまでの興奮状態から切り替わり、先ほどまで仕上げていた書類を手にするシルフィ。
真面目にやる姿は美しく、普段からこれであればとカンナは心から願うが、その願いは叶うことは無いと断言されるだろう。
「…結果としてはまず、ハクロちゃん…アラクネのほうは、間違いなく厄災種だ」
姿絵を記録し、その詳細な情報をまとめ、シルフィは口を開く。
「厄災…いや、やっぱり狂愛種の呼び方の方が、良いね。愛のために身を捧げ、愛のために心が囚われ、愛によって呪われ、扱い方によっては繁栄も滅亡も導きかねない…ああ、まさか、また見ることができたのは何て素晴らしいことだろうか」
「確か…これで、3回目でしたっけ。貴女様の長いエルフの人生の中で、厄災種に巡り合うのは」
「そうだよ。確か、龍や鳥の類だったけど…どれもこれも同じようなくくりにできるはずなのに、こうも違うとは、コレだからモンスターの研究というのは面白いものだ」
そう、彼女は過去に、研究の傍らで…その道に歩む前にも、厄災種に遭遇した時があった。
その経験があったからこそ、一目でわかってしまうのである。
「いやぁ、それにしても狂愛種でもあるだけあって、彼女にとってあの少年は凄まじく大事なんだね。確認中に少し感じていたけど、どれほどの愛が彼にかかりまくっているのか…幸せ者と言ってあげるべきか、それに魅入られてしまった哀れなものと言うべきか、判断が付かないよ」
「そこまでの、モノとして捉えられますか」
「そうだ‥‥うん、まず間違いなく、やらかせばこの国は終わるほどだったのが、わかったからね」
どれほどモンスターに対しての思いがあれども、踏み入ってはいけないものがあるのは理解している。
どの口が言うのだと様々な前例を出されようが、それでも彼女は厄災種に対してだけは、絶対に虎の尾を踏むような真似をする気はない。
「…国に報告するけど、確定だねと伝えたら、上層部の状態が目に見えそうだ。ああ、王城勤めの薬師たちがまたデスマーチを喰らいそうなのが、哀れか」
まぁ、そんなことを気にする必要は、無いだろう。
触らぬ神に祟りなし、愛に狂いし者へ、深く踏み入れなければ良いだけのものだ。
それでも、なぜかいつもいつも自分なら大丈夫だろうと、根拠のなさすぎる馬鹿が出るのはどういうことなのか、こればかりはわからない。
長い長いエルフの人生の中でも、いつの世でもいつの間にか出ていることがいる愚か者には、勝手なことをされたくない。
「おっと、そういえばもう一体の…カトレアちゃんか、アルラウネの。あの子のほうはまだ厄災種じゃないよ。そうだね…アルラウネの中の、希少種と言うべきか、より上の進化種への道がありつつも、同時に厄災種の道も歩める可能性がある子だったね」
「…将来的に、厄災種になる可能性が高いと」
「おそらくは。まぁ、厄災種は何故か、厄災種に集いやすいという研究もあるようだけど…その例に漏れない可能性もあるか」
ハクロは既に、厄災種。
カトレアに関しては通常種とは異なる希少種の類…将来的により別の進化の道を歩み、違う種族へ変貌を遂げる可能性があるが、その道の中に厄災種の類もあるだろう。
今回得られた中で、色々と分かったが…こうやって結果を見ると、本当に心の底から万が一の馬鹿が出ないでほしいと願いたくもなる。
「それに…あの少年、ジャックと言ったか。従魔を介しての魔法を発動させるとは、これはこれで凄い子供が出てきたねぇ。できないと思われたいたものを、行えるとは、世間の常識を塗り替える気だろうか」
厄災種を従えている時点で相当なものだが、この様子ならば今後の成長も気になるところ。
彼から従魔たちに与える影響は大きいはずで、健やかに、良い方向に育ってくれることを願いたくなる。
「さてと、そのためにも悪い大人…大人相手とは限らないけど、そういうものは全力で根絶させるように伝える報告書を仕上げないとね」
わかっているからこそ、今はまだ暖かく見守り、それとなく守るほうが良い。
そう判断し、シルフィは報告書を怒涛のお勢いで完成させていくのであった…
「ついでに叶うなら、もっと厄災種も見たいから引き寄せてほしいかなぁ…」
「それ、確実に国が絶望に陥りそうなのですが。明らかにヤバいものを招き入れ過ぎたら、国どころか世界が滅びますよ」
「ふふふ…冗談だって。流石に、モンスター研究が出来なくなるほどの世界滅亡なんてものはあってほしくはないよ。ああ、でも…」
―――私の目で、様々なものを解析し、どのようなものかは理解できるけど…彼の場合は、その絡みついた糸が、さらに別のを手繰り寄せそうだから、ありえない話ではない…のかな?
夜間の襲撃を想定して衛兵たちは交代で王都の周辺を見回り、今日もこの国の夜は更けていく。
そんな中、王都内のとある一室…シルフィの部屋は明かりがついており、彼女は本日あった様々なことをまとめていた。
「ふぅ、思った以上に多くデータが集まったか…ああ、情熱がたぎって眠れないからこそ、書き出しまくるのに、まだまだ吐き出しきれないから眠れないのが、辛いところか」
「辛いと言っておきながら、物凄く目をギラギラと輝かせて、嬉しそうにしていますけれどね」
シルフィの言葉に、ふぁぁっとあくびを上げながらも、呆れたようにツッコミを入れるカンナ。
まだまだ朝まで時間があるが、この様子であれば徹夜は免れないだろうと予想を立て、明日の授業中に眠りこけさせないように炎上香と呼ばれる眠気覚ましのお香を調合しておく。
「ははは、だってそうじゃないか!!あのうざったいクジャーラが頼んできたかと思えば、噂を聞いてから存分に間近で観察したいモンスターたちに、正当な理由で接近できる機会を得られたからね!!」
意気揚々と興奮しながら、シルフィはそう口にする。
前々から話だけは聞いており、多少のやばそうなものも弾き、色々と機会をうかがっていたのだが、今回ようやくめぐりまわってきたこの機会。
本当ならばもっともっと大量に知りたいことが多かったが…いかんせん、まだ初対面なことに加えて呪いでの警戒を高めてしまったので、次の機会まではおとなしくしているしかないことが歯がゆいぐらいか。
それでも、この出会いには意味があった。
「…今回の接近に関して、王家からの特務命令も出ていたようですが、そちらもできたのでしょうか?」「ん?ああ、あれだね」
普段の行動こそ問題ばかりなのでそちらに目を向けられがちだが、一応はモンスターの研究者でも専門家でも学者でも、その他諸々の道を進んでいる彼女。
エルフゆえの長い寿命を活かして様々な知見を得ており、その審美眼だけは信頼が強いのだ。
言い換えれば他の部分は大問題しかないと思われているが…それはさておき、今回は従魔を介して魔法が使えたという驚くべき事例に関しての調査も兼ねて、別の探りも入れていたのだ。
「アラクネ、アルラウネ…彼に付き従う従魔たちの診断、厄災種かどうかの探りだけど…そこはしっかりと確認してきたよ」
先ほどまでの興奮状態から切り替わり、先ほどまで仕上げていた書類を手にするシルフィ。
真面目にやる姿は美しく、普段からこれであればとカンナは心から願うが、その願いは叶うことは無いと断言されるだろう。
「…結果としてはまず、ハクロちゃん…アラクネのほうは、間違いなく厄災種だ」
姿絵を記録し、その詳細な情報をまとめ、シルフィは口を開く。
「厄災…いや、やっぱり狂愛種の呼び方の方が、良いね。愛のために身を捧げ、愛のために心が囚われ、愛によって呪われ、扱い方によっては繁栄も滅亡も導きかねない…ああ、まさか、また見ることができたのは何て素晴らしいことだろうか」
「確か…これで、3回目でしたっけ。貴女様の長いエルフの人生の中で、厄災種に巡り合うのは」
「そうだよ。確か、龍や鳥の類だったけど…どれもこれも同じようなくくりにできるはずなのに、こうも違うとは、コレだからモンスターの研究というのは面白いものだ」
そう、彼女は過去に、研究の傍らで…その道に歩む前にも、厄災種に遭遇した時があった。
その経験があったからこそ、一目でわかってしまうのである。
「いやぁ、それにしても狂愛種でもあるだけあって、彼女にとってあの少年は凄まじく大事なんだね。確認中に少し感じていたけど、どれほどの愛が彼にかかりまくっているのか…幸せ者と言ってあげるべきか、それに魅入られてしまった哀れなものと言うべきか、判断が付かないよ」
「そこまでの、モノとして捉えられますか」
「そうだ‥‥うん、まず間違いなく、やらかせばこの国は終わるほどだったのが、わかったからね」
どれほどモンスターに対しての思いがあれども、踏み入ってはいけないものがあるのは理解している。
どの口が言うのだと様々な前例を出されようが、それでも彼女は厄災種に対してだけは、絶対に虎の尾を踏むような真似をする気はない。
「…国に報告するけど、確定だねと伝えたら、上層部の状態が目に見えそうだ。ああ、王城勤めの薬師たちがまたデスマーチを喰らいそうなのが、哀れか」
まぁ、そんなことを気にする必要は、無いだろう。
触らぬ神に祟りなし、愛に狂いし者へ、深く踏み入れなければ良いだけのものだ。
それでも、なぜかいつもいつも自分なら大丈夫だろうと、根拠のなさすぎる馬鹿が出るのはどういうことなのか、こればかりはわからない。
長い長いエルフの人生の中でも、いつの世でもいつの間にか出ていることがいる愚か者には、勝手なことをされたくない。
「おっと、そういえばもう一体の…カトレアちゃんか、アルラウネの。あの子のほうはまだ厄災種じゃないよ。そうだね…アルラウネの中の、希少種と言うべきか、より上の進化種への道がありつつも、同時に厄災種の道も歩める可能性がある子だったね」
「…将来的に、厄災種になる可能性が高いと」
「おそらくは。まぁ、厄災種は何故か、厄災種に集いやすいという研究もあるようだけど…その例に漏れない可能性もあるか」
ハクロは既に、厄災種。
カトレアに関しては通常種とは異なる希少種の類…将来的により別の進化の道を歩み、違う種族へ変貌を遂げる可能性があるが、その道の中に厄災種の類もあるだろう。
今回得られた中で、色々と分かったが…こうやって結果を見ると、本当に心の底から万が一の馬鹿が出ないでほしいと願いたくもなる。
「それに…あの少年、ジャックと言ったか。従魔を介しての魔法を発動させるとは、これはこれで凄い子供が出てきたねぇ。できないと思われたいたものを、行えるとは、世間の常識を塗り替える気だろうか」
厄災種を従えている時点で相当なものだが、この様子ならば今後の成長も気になるところ。
彼から従魔たちに与える影響は大きいはずで、健やかに、良い方向に育ってくれることを願いたくなる。
「さてと、そのためにも悪い大人…大人相手とは限らないけど、そういうものは全力で根絶させるように伝える報告書を仕上げないとね」
わかっているからこそ、今はまだ暖かく見守り、それとなく守るほうが良い。
そう判断し、シルフィは報告書を怒涛のお勢いで完成させていくのであった…
「ついでに叶うなら、もっと厄災種も見たいから引き寄せてほしいかなぁ…」
「それ、確実に国が絶望に陥りそうなのですが。明らかにヤバいものを招き入れ過ぎたら、国どころか世界が滅びますよ」
「ふふふ…冗談だって。流石に、モンスター研究が出来なくなるほどの世界滅亡なんてものはあってほしくはないよ。ああ、でも…」
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