上 下
43 / 141
訪れる学園生活

log-040 マッドな思いとまともな思いの両立は難しく

しおりを挟む
 ハクロとカトレアに協力してもらうことで、発動できる魔法。
 しかし、過去の事例によれば従魔とのつながりを利用した魔法の発動と言うのは実験されることがあれども成功したためしはない

 それゆえに、今回のこのケースはどういったことが原因になっているのか、その可能性の幅は他者にも広げられるかなどの可能性を秘めており、その謎に対してメスを入れることが決まった。


 だが、そう簡単に口外しては困るようなもの。
 単純に魔法が杖無しで使えるというのは別に良いのだが、その利用方法に関しては良い方向だけではなく、悪い方向に企む人も当然出てきてしまう恐れがある。

 場合によっては、そういった道具を持たないように見せかけて、物凄く小型なモンスターを従魔にして魔法をいきなり解き放して、周囲を破壊しつくすような事件を起こす人が出る可能性もあるだろう。


 だからこそ、本当にどういう理屈で出来ているのか、その正しい仕組みを解明することによって、未然に防ぐための手段も探りたいということで、本日は休日返上で検証のための実験が行われることになった。

「まぁ、検証に関しては…より高度な専門家も呼びたかったのだけれども…技術の秘匿性を考えると、物凄く嫌すぎるけれども、物凄くできれば自主退場してほしかったけれども…馬鹿と天才天災の紙一重の様な人しか呼べなかったわね。技術が技術だけに、秘匿性も必要なのもあるけれども…良いかしら、あなたたち。これから来る人が、どれほどのスカポンタンだとしても、うっかり何かしでかすようなことは無いように、お願いするわね」

 実験に同席するのは、魔法の授業担当のクジャーラ先生。
 この従魔との魔法の行動を見ていた人でもあり、どれほどのものなのかその可能性…いや、危険性も秘めたものだと理解し、忠告してくれた人である。

 そんな人とどうやらもう一人、これから来るらしく…大まかな分析は、その人が対応するようだ。

【というか、スカポンタンって…一体、どういう人が来るのでしょうか?】
「見れば早いけれども、見せないほうが良いとも言う…それなのに、信頼はできるという様々な矛盾を抱え込みまくったパンドラボックスの様な人よ」

 ハクロの問いかけに対して、そう答えるクジャーラ先生。
 パンドラボックス…いわゆる宝箱に擬態して人を喰らうとされるモンスターミミックの上位種に当たるものらしく、パンドラボックスのふたを開けた者には絶望と希望を9:1の割合で与えるというもの、

 そんなものに例えられる時点で、相当ヤバい人しか想像できないだろう。


【ん?】
【ミ?】
「どうしたの、二人とも?」
【んー、何か今、いたような気がしたのなの】
【いえ、気のせいではなく…ここです!!】

ぐわしっ
「あだだだだだだっ!?あたまがあたまがあたまがにぎりつぶされるぅううう!!」

「…え?」

 何もない場所をハクロがつかむと、悲鳴が上がった。

 ぎりりりぃっと音を立てながら、うっすらと人型が浮かび上がり始める。

「ギブギブギギブ!!」

 浮かび上がってきたのは、何やら厚着をしている長身の人物。
 長い金髪の髪をゆらし、ギブアップ宣言をしている耳の尖った人…人?

「ああ、やっぱりサプライズも兼ねて、隠れてねっとりと観察しようとしていたのね、シルフィさん。ハクロちゃん、手を…もうちょっとだけ、強くしてあげて。多分、そうでもしないと反省しないから」
「いや、そこは手を放してあげてね、とかじゃないんですか!?」
「そうよ、そうでもしないとこの人多分、やらかすことが増えるからね…ああ、紹介するわね。彼女がその件のスカポンタン星人…もとい、エルフと呼ばれる亜人種族の一人で、モンスターの研究者でもあるシルフィさんよ。油断したら、やらかすから気を抜かないようにしてね」

 クジャーラ先生によって紹介されたのが、この人…謎の不審者改め、シルフィという名の人。
 何やらエルフとか気になる言葉が聞こえたが、そんなことよりこの状態はどうすれば良いのか。

「えっと、ハクロ、とりあえずその人放してあげて…って、どうしたの、その顔」

 そういえばやけに珍しく、結構攻撃的な状態でつかんだままだなと思ってみたら、何やらハクロは険しい表情をしていた。

【んー、何故でしょうか。無性に物凄く、イライラするような香りがして…】
【分かるなの。どうしてか、かなりムカッとするような感覚がするのなの】
「おお!!流石、モンスターのお二人さん!!よくわかるね!!そう、実は我が身はちょっと過去のやらかしで、家からも勘当される原因となったこれを察するとは!!」
ギリリリリリ…
「そんなことはさておき、そろそろ頭がトメイトゥの実みたいにはじけそうだから、解放してくれぇぇぇ!!」

 ハクロ達の反応に何やら期待したものがあったようだが、それと同時に痛いものももらっているシルフィさん。
 どうしてハクロ達がやけにいらだったような状態になるのかはさておき…ひとまず、どうにかなだめて手を放してもらうのであった…


「本当に人の頭を爆散させられるところだったよ…ふふ、いつ以来かなぁ、このスリルは。痛みはきつかったとはいえ、人の手に近い構造だからか、ハーピーのかぎづめやグリフォンのマジ噛み、デュラハンのクロスチョップに人面魚のおうふくひれびんたとはまた違った味わいだったよ…」
「…ガチで痛がっていそうだったのに、まだ余裕がありそう」
「そういう人なのよ、この人。黙っていれば美人なのに、中身がウルトラ特級呪物とまで言われているような残念な人で…」


…世の中って、広いなぁ。

しおりを挟む
感想 308

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、ひょんなことで死亡した僕、シアンは異世界にいつの間にか転生していた。 とは言え、赤子からではなくある程度成長した肉体だったので、のんびり過ごすために自給自足の生活をしていたのだが、そんな生活の最中で、あるメイドゴーレムを拾った。 …‥‥でもね、なんだろうこのメイド、チートすぎるというか、スペックがヤヴァイ。 「これもご主人様のためなのデス」「いや、やり過ぎだからね!?」 これは、そんな大変な毎日を送る羽目になってしまった後悔の話でもある‥‥‥いやまぁ、別に良いんだけどね(諦め) 小説家になろう様でも投稿しています。感想・ご指摘も受け付けますので、どうぞお楽しみに。

破滅を逃れようとした、悪役令嬢のお話

志位斗 茂家波
ファンタジー
‥‥‥その恋愛ゲームは、一見するとただの乙女ゲームの一つだろう。 けれども、何故かどの選択肢を選んだとしても、確実に悪役令嬢が破滅する。 そんなものに、何故かわたくしは転生してしまい‥‥‥いえ、絶望するのは早いでしょう。 そう、頑張れば多分、どうにかできますもの!! これは、とある悪役令嬢に転生してしまった少女の話である‥‥‥‥ ――――――― (なお、この小説自体は作者の作品「帰らずの森のある騒動記」中の「とある悪魔の記録Ver.2その1~6」を大幅に簡略したうえで、この悪役令嬢視点でお送りしています。細かい流れなどを見たいのであれば、どちらもどうぞ)

白露の蜘蛛はあなたを愛しましょう ~転生者以上にチート過ぎませんか~ (仮)

志位斗 茂家波
ファンタジー
転生者というのは、チートを持っているのがお決まりのようなもの 少年ルドはそんな転生者の一人だったが、そんなものは持っていなかったが、それでも平穏に暮らせる今世を楽しんでいた。 しかしある日、とんでもなくチートな魔獣が押しかけてきて…!! これは、チートを持たないのにチートを持つものに振り回される喜劇の物語である… ――― 小説家になろう様でも連載しております。 誤字脱字報告、その他意見などありましたら是非コメントをどうぞ。

(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!

ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。 なのに突然のパーティークビ宣言!! 確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。 補助魔法師だ。 俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。 足手まといだから今日でパーティーはクビ?? そんな理由認められない!!! 俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな?? 分かってるのか? 俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!! ファンタジー初心者です。 温かい目で見てください(*'▽'*) 一万文字以下の短編の予定です!

兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?

志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。 そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄? え、なにをやってんの兄よ!? …‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。 今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。 ※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

先にわかっているからこそ、用意だけならできたとある婚約破棄騒動

志位斗 茂家波
ファンタジー
調査して準備ができれば、怖くはない。 むしろ、当事者なのに第3者視点でいることができるほどの余裕が持てるのである。 よくある婚約破棄とは言え、のんびり対応できるのだ!! ‥‥‥たまに書きたくなる婚約破棄騒動。 ゲスト、テンプレ入り混じりつつ、お楽しみください。

処理中です...