絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

志位斗 茂家波

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訪れる学園生活

log-037 健康のために必要な物

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 さて、ハクロとカトレアは健康診断をギルド内で受けることになったが、まだ初受診ゆえに彼女たちの健康状態に関するデータはなく、そもそもの種族が珍しいのものあって、どういうものがあるのか未知の部分も多い。

 それゆえに、ギルド内では慎重に検査を行うことにした。

「えっと、基本的な部分から受けてもらいますね。種族によっての健康基準も変わりますので…お二人とも人型部分があるのでそこは共通して、後はそれ以外の部分として、虫系および植物系の健康基準確認のための検査をそれぞれ受けてもらいます」
【わかりました。…一応、種族によってそこは違う部分もあるのですね】
「はい。全部共通化で切れば楽なのですが、モンスターの形状自体がそもそも多岐にわたるので…今のところ、ある程度の分類に分けつつも、完全に同じものを受けさせることはできないとされています」
【植物があるモンスターだと、葉っぱの提出とかもあるようなの】
「こちらは虫食いやコケムシ病、葉緑素部分欠乏症などの病の可能性があるので、その検査のために必要になるからです。ハクロさんの方の虫の物だと、関節部分の確認等もありますね。過去の事例では、その隙間部分にぎっしりとダニが詰まっていた方もいましたので…」
【ひ、ひぇ…それは、物凄く嫌ですね…】

 想像したくはないが、気が付かないうちに入り込まれていたら恐ろしいので、入念なチェックをお願いするハクロ達。
 モンスターたちにとっては、自身の弱体化につながるような病や元凶があれば、可能な限り無くしたいというのは誰もが同じなのだろう。

 周囲の他の検診を受けるモンスターを見れば、各々種族は違えども、同じ思いを持っている目をしているのがうかがえる。

【やっぱり皆、健康第一ですね】
【この場にいるもの全員、同じ認識なの】

 主のために健康を保つという目的もあるだろうが、それでも病気を未然に防げる可能性があるのならば、やっておきたいのだろう。
 人には分からぬモンスターの言語で会話している内容から、同じ思いを抱いているのがよくわかる。

【さて、まずは基本検査と、その後の種族ごとの違い検査…しっかり受けましょうか】
【問題ないってことを、確認したいなの!!】

 意気込みよく、ハクロ達は検査を受け始めるのであった…









…それから数時間後、本日の健康診断を受けたモンスターたちが全員帰宅し、その診断結果を整理している中で、ギルドの職員たちはある結果に目を通していた。

「ある程度の記録が出そろったとはいえ…その中でも、この二体の記録が、ずば抜けているのが凄い」
「分類的に似たような虫と植物のモンスターと比較しても、能力が桁違いというか」
「この結果、まともに出して上層部が本当かと思いそうじゃないか?」
「「「…」」」

 出てきた数値としては、非常に健康体という結果になるのは良いだろう。
 健康診断の中で、異常が見つからなかったのであれば、それはそれで幸運なことだ。

 しかしながら、出過ぎている数値と言うのもまた困りもので、その扱いに悩まされる。

「…数値の隠蔽や改竄ができない処理が行われているとはいえ、出てくるものが桁違いだ。種族が二体とも異なるとはいえ、他のモンスターより群を抜いている」
「あとはカトレアちゃんはまだ成長途上だけど、ハクロちゃんのバストサイズとか…」
「それは健康診断の数値としては高いけど、検査する品目ではまだまともな方では?」

 様々な項目の結果を見ても、この報告は隠し通せるものではないだろう。

 本人たちのあずかり知らぬところで、悩まされるものは増えるのであった…


「…まぁ、健康なのは良いことだと結論付け、上に正直に出そう。こうなったら、巻き込んだほうが良い」
「現場の大変さを、上層部に理解してもらいましょう、そうしましょう、そうしてやりましょう」
「あと、いくつかのサンプルは専門家のほうに送られることになるが…送って良いモノだよね?」

…まぁ、悩まされるのであれば、その悩みの種をぶちまける方向へシフトしたが。

 
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