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王都への道のり

log-031 入寮説明

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 門での聴取も終え、無事に入った王都内。
 そのまま真っすぐに学園へ向かい、入寮の手続きを取る。

 本格的な学園での学びは、寮での準備を考慮して2日後になるらしく、それまでには片付くだろう。


「とはいえ、寮でどのような部屋が与えられるのか、想像していたけど…結構、大きな部屋ですね」
「ああ、その通りだ。ここはグラビティ学園の中で、様々な従魔契約を結んでた生徒用に作られているからな」

 思った以上に広い部屋を見てつぶやいたジャックの言葉に答えるのは、寮長にして先輩のブライアンさん。
 今年度の推薦された生徒たちがやってくる寮の部屋の調整を行い、事前情報からどこの寮室が良いのか決める立場にあるらしい。

 いつもならまだ平日の授業時間でもあるらしいが、今日は新しい寮生が…僕らが来ることもあって、案内のためにやってきているそうだ。

「何しろ、従魔契約を行う学生は少なくもないからね。小動物程度ならば、一般寮室もあるが…大型のものとなると、この寮室で一緒に過ごしてもらうことになるんだ」

 
 元々、従魔契約を結んだモンスターに関しては、別の場所が与えられてそちらに送る形ではあったらしい。
 だがしかし、契約を結んだモンスターの中には珍しい素材になるものや、いたずら・好奇心などの対象になってしまうものもおり、過去にはそれで事件に発展したこともあったため、ある程度は契約者と共に入れるようにしたほうがいいということで、同室になれるような部屋が増設されたのだとか。

「昔の話で、当時の学園のある生徒の従魔がクリスタルワーム…美しい水晶の鱗が取れるモンスターだったが、当時はこのような同室が無くて…」

 別の場所にワームはおり、そこで飼われている形だったが、その鱗を目当てに忍び込む賊がいたらしいが、それが悲劇の元となった。

 そのワーム、飼い主以外には全く懐いていなくて、自身が傷つくのを酷く嫌っていたらしい。
 鱗を採取しようとした賊…当時は貴族領も併設されていた学園だったために、ある男爵家の男子生徒がこっそりと忍び込み…

「…相当激怒したんだろうね。ただ、クリスタルワーム自身には実はたいした戦闘能力が無いんだけど、ワームの類を呼び寄せる力を持っていて…今でも語り継がれる『くねくねダンスの悲劇』となったそうだ」
「何が起きたのか、詳細は?」
「聞かないほうが良いよ。世の中、知らないほうがいいこともある」
【絶対にやばそうですね…】

 そんな悲劇もあったがゆえに、その時から学園は色々と改革の道を歩み始め、現在の形式になったらしい。
 貴族寮の方もその件とは別に何やら婚約破棄だとか玉の輿だとか、そういうトラブルが生じたのもあって、平民用と貴族用での学園が分裂し、現在貴族用の学園は王都内の反対側に建設され、そちらに全て移設されている。

 また、出来る限り目の届くいた範囲のほうが対処しやすいということで、従魔との同室になるような部屋作りも行われたそうだ。


「そんなわけで、事前情報から君のほうも中々のサイズのモンスターがいるということで、大型対応のこの寮室にしたわけだが…もう一体、増えているね」
【そうなの!ミー、カトレア、なの!】

 事前連絡ではハクロだけだったが、ここにカトレアが追加された。
 そのため、寮の部屋としては大丈夫なのかと思ったが、一応大型対応の部屋のため、ある程度までなら大丈夫らしい。

「まぁ、かつては拘束震動突撃牛バイブルホーンというモンスターも入っていたことがあったからね。ちゃんと寮を出る際には徹底的に綺麗にするようにする義務はあるから、そこは守るように」
「はい」
「あとは、従魔はきちんと清潔が求められるから定期的な洗浄も求められるが…さて、そこはどうしようか。彼女たち、風呂は入る方か?」
【入る方ですね。私、ジャックと一緒に入りたいですし…】
【ミーもなの!!】

「…絵面がな。普通の従魔用洗い場はあるが…いかんせん、見た目が人に近いのが問題だな」

 人が多く入り組む寮内なのもあって、ある程度の清潔は求められる。
 そのため、出来る限り綺麗にしてもらうための洗い場もあるが…大抵は獣とか蟲とか、人型ではないもの向きの場所であり、彼女たちのような人型部分があるものは覗きの心配などがあるだろう。

【一応、やろうと思えば視線を感知して、その眼めがけて糸を飛ばせますよ】
【蔓、真下からぶすっと刺せるなの】
「絵面が酷いことになるからやめて」
「男子寮女子寮以外の去勢寮は作りたくはないかな…いやまぁ、かつて貴族との学園だった時は、一時期検討されたという話もあるが…」

…あったのか、そんな検討時期が。
 いったいどういう経緯でなったのかは気になるところだが、これもまた聞かないほうがいい話だろうか。

 とりあえず、風呂場に関しては空いた時間に女子風呂に入ってもらうことで、合意するのであった…



「ところで聞くけど、これ以上増やす気はないよね?一時期、30匹以上連れ込んだ生徒の前例があるけど…」
「いやいやいや、流石に無いですって!!」

 なお、その生徒が連れ込んだのは、植物系のミンミントンという豚の様な植物のモンスターだったらしいが…その後が、大変だったとか…
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