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王都への道のり
log-029 甘い香りと閃光の糸
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「おっぎゃああああ!!何してくれてんだこのタコナスビどもはぁぁ!!」
「こっちのセリフだ馬鹿野郎!!何で、ボムバードを逃がしてしまうんだ!!」
…ボムバード逃亡劇が始まっている中、王都の東口にて、東口を担当する衛兵と、エチゴン商会の商人はそろって声を上げていた。
あくどい商売で有名な、エチゴン商会。
積み重ねてきた悪い意味での信用があり、今回の王都入りには念入りな検査が行われていたのだが、そのさ中で発覚した生体移動禁止指定品のボムバードがあったことで、聴取を行いしっかりと対応をしようとしている中…これはちょっと不味いと慌てた商会の一人が、盛大にやらかしてしまい、寝かせていたボムバードを起こして野に放ってしまったのである。
何故、解放してしまったのか。
それは単純に、証拠品がいなくなればいいという短絡的過ぎる思考の結果である。
流石にある程度の悪行を積み重ねてきた物ならばまだしも…その放った輩はまだ商会での日が浅かったがゆえに、浅すぎた行動をしでかしてしまったのである。
既にやらかした奴は、仲間のエチゴン商会の商人たちも不味すぎるので協力してとっつ構えたが、逃げ出したボムバードたちはそうもいかない。
何しろ歩く爆発物とも言われるような羽毛を持つモンスターのため、迂闊に刺激を与えたら、あちこちで連鎖的に爆発しかねないのだ。
かといって、放置していたらそれはそれで不味い状況。
ここは馬車で来た人用の東口であり、その他商品を詰めた馬車を乗せた商人たちも多くいる状態。
そんな中に歩く爆発物が解き放たれてしまったら…どれだけの被害が出るか、想像するのも容易いだろう。
すでにいくつかのボムバードが爆発したことで、少なくない被害が出ている状態。
「誰かさっさとあの暴走鳥共を止めろ!!」
「無茶言うな!!眠っている時なら爆発しないらしいが、ばりばりの興奮状態の今は、触れるだけでもボカンだぞ!!」
どうにかしてとらえたいが、捕獲が難しいボムバード。
実は眠っている時には爆発しない性質があるというが、起きている今は難しいだろう。
どうしたものか、このまま被害が拡大するのを見るしかできないのかと、絶望していた…その時だった。
―――フワァ…
【ゴゲーゴッゴッゴ…ゴゲ?】
「ん?なんだ?」
「何やら、甘い香りが…見ろ、ボムバードたちの動きが、鈍ったぞ」
突然、漂ってきた甘い香り。
その影響か、逃走・暴走・爆走をしていたボムバードたちの歩みが鈍り、香りが漂ってきた方向へ向かって、ふらふらとした足取りになった。
何事かと思ってみれば、馬車の並んでいる東口までの未知から離れた場所に、一凛の花が…いや、花から生えた少女がパタパタと手を振っているようだ。
ふらふらと香りに釣られるようにして、少女に歩み寄っていくボムバード。
危ないと言おうとした者たちもいたが…その前に、閃光が走った。
ズバァァン!!
…一瞬にして、ボムバードたちの羽毛が消え去り、肉体が切断される。
見れば、その花の少女の奥には蜘蛛に乗っているような美女がおり、その手からは細い糸が伸び、ボムバードたちを全て糸で切り裂いていたようだ。
突然の出来事過ぎて、ボムバーたちも己の身がバラバラになっていることに気が付いていないのだろうか。
少しばかりバタバタと動き…そして、力を失う。
地面に倒れきる前に別の糸が伸び、まとめられていく。
【ふふふ、成功したなの!!眠りの香りは時間がかかるから、おびき寄せの香りにしたけど、見事に釣れたなの!!】
【酩酊しているように鈍かったですから、やりやすかったですね】
そう言いながらいう彼女たちの声が聞こえて数秒後、周囲の人たちは何が起きたのか、しばしこの事態を飲み込むのに時間がかかったが、それでもどうにか理解を追い付かせるのであった…
「こっちのセリフだ馬鹿野郎!!何で、ボムバードを逃がしてしまうんだ!!」
…ボムバード逃亡劇が始まっている中、王都の東口にて、東口を担当する衛兵と、エチゴン商会の商人はそろって声を上げていた。
あくどい商売で有名な、エチゴン商会。
積み重ねてきた悪い意味での信用があり、今回の王都入りには念入りな検査が行われていたのだが、そのさ中で発覚した生体移動禁止指定品のボムバードがあったことで、聴取を行いしっかりと対応をしようとしている中…これはちょっと不味いと慌てた商会の一人が、盛大にやらかしてしまい、寝かせていたボムバードを起こして野に放ってしまったのである。
何故、解放してしまったのか。
それは単純に、証拠品がいなくなればいいという短絡的過ぎる思考の結果である。
流石にある程度の悪行を積み重ねてきた物ならばまだしも…その放った輩はまだ商会での日が浅かったがゆえに、浅すぎた行動をしでかしてしまったのである。
既にやらかした奴は、仲間のエチゴン商会の商人たちも不味すぎるので協力してとっつ構えたが、逃げ出したボムバードたちはそうもいかない。
何しろ歩く爆発物とも言われるような羽毛を持つモンスターのため、迂闊に刺激を与えたら、あちこちで連鎖的に爆発しかねないのだ。
かといって、放置していたらそれはそれで不味い状況。
ここは馬車で来た人用の東口であり、その他商品を詰めた馬車を乗せた商人たちも多くいる状態。
そんな中に歩く爆発物が解き放たれてしまったら…どれだけの被害が出るか、想像するのも容易いだろう。
すでにいくつかのボムバードが爆発したことで、少なくない被害が出ている状態。
「誰かさっさとあの暴走鳥共を止めろ!!」
「無茶言うな!!眠っている時なら爆発しないらしいが、ばりばりの興奮状態の今は、触れるだけでもボカンだぞ!!」
どうにかしてとらえたいが、捕獲が難しいボムバード。
実は眠っている時には爆発しない性質があるというが、起きている今は難しいだろう。
どうしたものか、このまま被害が拡大するのを見るしかできないのかと、絶望していた…その時だった。
―――フワァ…
【ゴゲーゴッゴッゴ…ゴゲ?】
「ん?なんだ?」
「何やら、甘い香りが…見ろ、ボムバードたちの動きが、鈍ったぞ」
突然、漂ってきた甘い香り。
その影響か、逃走・暴走・爆走をしていたボムバードたちの歩みが鈍り、香りが漂ってきた方向へ向かって、ふらふらとした足取りになった。
何事かと思ってみれば、馬車の並んでいる東口までの未知から離れた場所に、一凛の花が…いや、花から生えた少女がパタパタと手を振っているようだ。
ふらふらと香りに釣られるようにして、少女に歩み寄っていくボムバード。
危ないと言おうとした者たちもいたが…その前に、閃光が走った。
ズバァァン!!
…一瞬にして、ボムバードたちの羽毛が消え去り、肉体が切断される。
見れば、その花の少女の奥には蜘蛛に乗っているような美女がおり、その手からは細い糸が伸び、ボムバードたちを全て糸で切り裂いていたようだ。
突然の出来事過ぎて、ボムバーたちも己の身がバラバラになっていることに気が付いていないのだろうか。
少しばかりバタバタと動き…そして、力を失う。
地面に倒れきる前に別の糸が伸び、まとめられていく。
【ふふふ、成功したなの!!眠りの香りは時間がかかるから、おびき寄せの香りにしたけど、見事に釣れたなの!!】
【酩酊しているように鈍かったですから、やりやすかったですね】
そう言いながらいう彼女たちの声が聞こえて数秒後、周囲の人たちは何が起きたのか、しばしこの事態を飲み込むのに時間がかかったが、それでもどうにか理解を追い付かせるのであった…
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