絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

志位斗 茂家波

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王都への道のり

log-025 先へ進むよ、忘れずに

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…悪魔も去り、ボボン村に平穏が戻った。
 トレントによって眠らされていた村人たちも起床し、元の生活に戻っている。

 数日間ほど行方不明の状態ではあったが…幸いなことに、が、村に誰も訪れていないので騒ぎになることもない。
 寝ていた村人たちも、そのうち時間の経過に気が付くだろうが、何事もなかったのであればちょっとした不思議の範疇で収まり、自然と忘れるだろう。


「…もしかすると、そこも悪魔の仕込みがあったかもね。贄を求める間、邪魔されないように工作していたとか…」
【ありえない話では無そうなのが、怖いですね】

 ガタガタと馬車に揺られ、過ぎ去ったボボン村を思いそう口にする。

 痕跡は消しており、悪魔がいたことが気が付かれないだろう。
 あのトレントや、抗った先代村長の功績を残せないのは残念だったが…いや、平和を残せたことこそが、彼らにとって最大の功績であり褒章かもしれない。



 さて、そんな道中過ぎ去った場所は置いておくとして、痕跡を消す作業で数日間ほど遅れが生じたとはいえ、いよいよ明日には王都に到着となる。

 なお、この到着までの日程が当初の予定よりも遅れても問題は無い。
 大体、前世の世界と違って安全面としては、盗賊やらモンスターやら、より多くの危険があるがゆえに保証されていない部分が多いため、数日程度ならば誤差の範疇になるらしい。

 
 ちょっとばかり旅の危険性を意識させられてしまったが…それでも、もう間もなく安全な場所へ到着する。

【よっと…ジャック、それはそうとできましたよ、たのまれていた鉢です】
「お、ありがとう、ハクロ」

 しゅるるっと糸を編み込み、作り上げられた一つの鉢。
 そこに土を入れ…あのトレントからもらった木の実、食した後に残った種を植えた。

 トレントの種を植えたら、また新しくトレントができるのではないか。
 そう思ったが、どうやらモンスターとしてか、普通の植物としてか、半々の確立になっているようだが、前者であれば穏やかで友好的なものが多く、後者ならそのまま育てればいいという、どっちに転んでも良い結果になるようだ。

「ただし、種を食べるようなことだけは絶対にしてはいけないか…」
【ごくまれに、寄生樹タイプが発芽して、人を乗っ取ってしまうものもいるようですよ】

 スイカの種を丸呑みにして、お腹で育つみたいな嘘のようなネタがあるが、それがこの世界だとガチであり得るタイプなのが怖いところ。
 しかも、その方法で生まれたモンスターの場合、ほとんどがかなり苛烈で凶悪なものが多いようで…まれにとはいえ、それでも防止するために種を抜いたり、そもそも種を付けないようにさせるなどの工夫が凝らされるらしい。

 過去の例では、一介の貴族がやらかして乗っ取られて、相当な被害が出たとかなんとか…怖いなぁ。

 それでも、やらかさなければ良いようなので、しっかりと種は土に植えた。
 もらった木の実は皆で分けて食したが、かなり美味しく、同じようなものを得ることができるようになれば嬉しいだろう。

「じっくり育って、多くの木の実が手に入ると嬉しいなー♪」
【ふふふ、私も楽しみですよ】

 ニコニコとしつつ、馬車は進む。
 もう間もなく、目的地へ着いて…
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