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王都への道のり
log-022 大樹と魔の者
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…深夜、何もかもが静まり返っていた。
月明かりが当たりを照らし、ぱちぱちと焚火が燃えている音だけが鳴り響く。
何事も無ければ、このまま朝を迎え、ジャックたちは近隣の村へこの状況を報告しに迎えただろう。
だがしかし、物事というのはそうたやすく進むものではなく…それは、村の外からやってきた。
―――ズゥン、ズゥン、ズゥン
【…ジャック、起きてください。何かが、来ました】
「ん…揺れ?」
うとうととしながらも、ハクロに起こされ、その場にいた者たちは目を覚まし、警戒を強める。
村人がいなくなったこのボボン村に、近づく大きな足音。
次第に地面が音と共に揺れ始め、星々から降り注ぐ明かりかその姿を映し出す。
それは、巨大な大木のようなもの。
足音を立てているのは、その大木だったが…見た目からして、どう考えても普通の植物ではない。
「…『トレント』だったっけ?木のモンスターで、まず挙げられそうなの」
【ですが、大きいですね…私、番探しの旅をしていた時に、見かけたことはありますけど、あそこまでの大きさのものは見たことが無いですよ】
【グママア】
「あのサイズだと、上位種…いや、それよりもはるかに上か、『メガトレント』、『エルダートレント』、『ビッグバルボルツリー』…どちらかと言えば、エルダートレントに特徴が近いようだ」
―――
『エルダートレント』
トレントと呼ばれる木のモンスターたちの中で、より知識を蓄えまくったものが変貌すると言われているモンスター。
蓄えられたものが多ければ多いほど、比例して体が巨大化し、その反面動きが鈍くなってしまうため、本来の移動しながら獲物を貫き根っこから栄養を吸収する狩りが使えなくなってしまうため、自然と誰もが訪れないような辺境に引っ越し、そこで生涯をおとなしく終えるという習性を持っている。
その身からは次代のトレント、もしくはその能力を受け継いだ別種の植物のモンスターが生まれる可能性を秘めているが、いかんせんトレント時代は人を襲うことが多いのに、エルダーとなったら隠居同然のように引っ込んでしまうため、中々調査が進まない厄介さをもち、未だに情報が少ないモンスターでもある。
―――
いくつかのトレントに似たようなモンスターの中で、ここに来ようとしているのはその中のエルダートレントのようだ。
確定事項ではないが、特徴からして大きな大木や動きの鈍さ等はあっているのだろう。
だがしかし、人がいなくなったこの村に、わざわざやってくる意味が分からないような…
【…あれ?この臭い…】
考え込んでいる中で、こちらのほうが風の流れの下の方にいたからか、その臭いを嗅いだハクロがふと、何かに気が付いた。
「どうしたの、ハクロ」
【あれ、ここに来た時にうっすらと残っていた臭いと同じものを感じますよ】
「となると、人がいなくなったのは…あの木が原因なのか?」
「確かに、トレントならば人を襲ってもおかしくはないが…」
【でも、襲ったというには変ですね。血の臭いもなしですし…敵意も感じられません】
あの大きさでこちらに接近してきており、すでに僕らのことは気が付いているはずである。
しかしながら襲うようなそぶりも見せず、ゆったりと村の中に入ってきた。
そのまま村の中央へ進み…僕らの近くまで来たところで、その巨木の上の方になった顔らしい洞のような部分がこちらに向く。
【…ナゼ、ココニヒトガイル】
「喋った…」
響くような声で語り掛けてきたのは、目の前のトレント。
【コノチハマモナク、アシキモノデル。ハヤクサレ!!】
「悪しきもの?」
警告するかのように声を上げたその瞬間…
ズゥゥゥン!!
「「!?」」
【グマッ!?】
【---何ですか、この気配】
【…アア、オソカッタカ】
突然、周辺の空気がずっしりと重いものになり、周囲の明かりが消え失せていく。
ぞくぞくするかのような寒気もする中、嫌な気配を感じ取った。
見れば、村の中央にいつの間にか扉のような物が存在していた。
おぼろげでありつつ、闇夜になりつつある中でもさらにはっきりと黒く見えるかのような、無y図んしているかのような扉。
ファンタジーとかで見るような魔法陣のような物も浮かび上がっており、ぎぎぎぃっと嫌な音をたてて開いた。
【アキラメロ、シラヌモノドモヨ。アレハセンセンダイノソンチョウガケイヤクデノコシタトイウサイアクノオキミヤゲダ】
僕らを後ろにして、前に立つトレント。
扉が開くとともにぶわっと嫌な空気が周囲へ流れ込み、地面がじゅうじゅうと音を立てて腐食していく。
【ソレハ…アクマ。アシキモノニシテコノヨニハソンザイシテハナラヌモノ】
ずるりと音を立て、扉から出てきたのは、ヤギのような大きな角を持った、異形の怪物。
扉から流れ出してくるものと同じような色合いをした皮膚をしており、どろどろに溶けているようでありつつも形を持っている。
【…悪魔、ですか。教会の本で存在は知りましたが…何で、そんなものが…】
ハクロのつぶやきも聞きつつ、悪魔の全身が出てきたころには、周辺の地面はどす黒く変色しており、家のいくつかも崩れていたのであった…
月明かりが当たりを照らし、ぱちぱちと焚火が燃えている音だけが鳴り響く。
何事も無ければ、このまま朝を迎え、ジャックたちは近隣の村へこの状況を報告しに迎えただろう。
だがしかし、物事というのはそうたやすく進むものではなく…それは、村の外からやってきた。
―――ズゥン、ズゥン、ズゥン
【…ジャック、起きてください。何かが、来ました】
「ん…揺れ?」
うとうととしながらも、ハクロに起こされ、その場にいた者たちは目を覚まし、警戒を強める。
村人がいなくなったこのボボン村に、近づく大きな足音。
次第に地面が音と共に揺れ始め、星々から降り注ぐ明かりかその姿を映し出す。
それは、巨大な大木のようなもの。
足音を立てているのは、その大木だったが…見た目からして、どう考えても普通の植物ではない。
「…『トレント』だったっけ?木のモンスターで、まず挙げられそうなの」
【ですが、大きいですね…私、番探しの旅をしていた時に、見かけたことはありますけど、あそこまでの大きさのものは見たことが無いですよ】
【グママア】
「あのサイズだと、上位種…いや、それよりもはるかに上か、『メガトレント』、『エルダートレント』、『ビッグバルボルツリー』…どちらかと言えば、エルダートレントに特徴が近いようだ」
―――
『エルダートレント』
トレントと呼ばれる木のモンスターたちの中で、より知識を蓄えまくったものが変貌すると言われているモンスター。
蓄えられたものが多ければ多いほど、比例して体が巨大化し、その反面動きが鈍くなってしまうため、本来の移動しながら獲物を貫き根っこから栄養を吸収する狩りが使えなくなってしまうため、自然と誰もが訪れないような辺境に引っ越し、そこで生涯をおとなしく終えるという習性を持っている。
その身からは次代のトレント、もしくはその能力を受け継いだ別種の植物のモンスターが生まれる可能性を秘めているが、いかんせんトレント時代は人を襲うことが多いのに、エルダーとなったら隠居同然のように引っ込んでしまうため、中々調査が進まない厄介さをもち、未だに情報が少ないモンスターでもある。
―――
いくつかのトレントに似たようなモンスターの中で、ここに来ようとしているのはその中のエルダートレントのようだ。
確定事項ではないが、特徴からして大きな大木や動きの鈍さ等はあっているのだろう。
だがしかし、人がいなくなったこの村に、わざわざやってくる意味が分からないような…
【…あれ?この臭い…】
考え込んでいる中で、こちらのほうが風の流れの下の方にいたからか、その臭いを嗅いだハクロがふと、何かに気が付いた。
「どうしたの、ハクロ」
【あれ、ここに来た時にうっすらと残っていた臭いと同じものを感じますよ】
「となると、人がいなくなったのは…あの木が原因なのか?」
「確かに、トレントならば人を襲ってもおかしくはないが…」
【でも、襲ったというには変ですね。血の臭いもなしですし…敵意も感じられません】
あの大きさでこちらに接近してきており、すでに僕らのことは気が付いているはずである。
しかしながら襲うようなそぶりも見せず、ゆったりと村の中に入ってきた。
そのまま村の中央へ進み…僕らの近くまで来たところで、その巨木の上の方になった顔らしい洞のような部分がこちらに向く。
【…ナゼ、ココニヒトガイル】
「喋った…」
響くような声で語り掛けてきたのは、目の前のトレント。
【コノチハマモナク、アシキモノデル。ハヤクサレ!!】
「悪しきもの?」
警告するかのように声を上げたその瞬間…
ズゥゥゥン!!
「「!?」」
【グマッ!?】
【---何ですか、この気配】
【…アア、オソカッタカ】
突然、周辺の空気がずっしりと重いものになり、周囲の明かりが消え失せていく。
ぞくぞくするかのような寒気もする中、嫌な気配を感じ取った。
見れば、村の中央にいつの間にか扉のような物が存在していた。
おぼろげでありつつ、闇夜になりつつある中でもさらにはっきりと黒く見えるかのような、無y図んしているかのような扉。
ファンタジーとかで見るような魔法陣のような物も浮かび上がっており、ぎぎぎぃっと嫌な音をたてて開いた。
【アキラメロ、シラヌモノドモヨ。アレハセンセンダイノソンチョウガケイヤクデノコシタトイウサイアクノオキミヤゲダ】
僕らを後ろにして、前に立つトレント。
扉が開くとともにぶわっと嫌な空気が周囲へ流れ込み、地面がじゅうじゅうと音を立てて腐食していく。
【ソレハ…アクマ。アシキモノニシテコノヨニハソンザイシテハナラヌモノ】
ずるりと音を立て、扉から出てきたのは、ヤギのような大きな角を持った、異形の怪物。
扉から流れ出してくるものと同じような色合いをした皮膚をしており、どろどろに溶けているようでありつつも形を持っている。
【…悪魔、ですか。教会の本で存在は知りましたが…何で、そんなものが…】
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