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王都への道のり

log-021 酒で身を滅ぼすとはいうが

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…ボボン村は今、静まり返っていた。

 村人たちが誰一人としていなくなり、閑散としている。
 何が起きたのかは不明だが、日が沈み始めた今、すぐに周囲を捜索するのは難しいだろう。

【私たちモンスターでも、すぐには気が付けないほど薄れてましたが、臭いもあり…これが、恐らく村人たちをどこかへやった犯人の手がかりになるでしょう】
「でも、その臭い自体がそもそも何なのかわからないな」
「争った形跡もないということは、痺れ薬か眠り薬か…その類だとは思うが、村人全員を消す意味は何があるのだ…?」

 暗くなる中、むやみに動くのは危ないと思い、ジャックたちは今、村の中央の広場にて馬車の中に入りながら話し合っていた。

 外はタゴサックが警戒してぐるぐると回っており、1時間おきにハクロと交代する予定である。

 こういう時に、人間と違って眠る必要性が少ない相手が夜中の警戒に当たってくれるのは、中々心強く思えるだろう。


【念のために、周辺にわなを仕掛けておいたので、万が一何かしらの大群相手でも、対応できるようにしましたが…相手の正体が不明な以上、早めにここを去ったほうが良いでしょうね】

 村人たちの安否が気になるが、この状況ではすぐにはわからないので、まずは身の安全の確保が必要である。

 強行軍で暗い中を進んでここを去るという手もあるが…明るい昼間と違ってリスクはある。
 夜だからこそ、眠りが必要ないようなモンスターたちがはびこりやすくもあり、凶暴なものがうろついている可能性も否定できない。

 タゴサックやハクロのような、強さを持つ者たちがいるから大抵は大丈夫だとは思うが、それでも暗い夜の中の襲撃は、対応しきれない可能性もある。

 なのでここはいったん、朝まで時間を待ち…明るくなればすぐにでも、発って別の場所で助けを求めるべきだ。

「幸いなことに、ボボン村は酒飲みがご利用する分、人の出入りもそれなりにある。今晩は自分たちしかいなかったが、それでも早いうちに誰かがやってきて、異変に気が付くだろう。その前に、こちらが別の村ですぐに連絡を取り、対応を相談できるだろうが…」

 安全性を確保しきれない現状、日の光が差し込むまで、待つしかない。

 ハクロが周辺にわなを仕掛けまくったので、何かしらの大群だったとしても、逃げる時間は稼げるはずである。

「しかし、本当に何があったんだ、ここは…村人が攫われていたとしても、全員を攫う目的は一体?」
【ボボン村の、お酒の作り方を盗むためというのは?】
「いや、それは無い。ここの製法は特に秘匿はされていないが…作り手によって大きく変貌するからな。むしろ、その変貌を避けるために連れ去ったというほうが考えられそうだが…作りに関係ない子供とかの姿もないから、その可能性も薄いか…」

 相手の目的が見えない。
 けれども、残されたものから考えると、村人は全員何者かに攫われたと考えたほうが良い。

「何にせよ、朝まで油断できない、か…すまないな、王都までの道中は可能んであれば平穏無事にしたかったが、まさかこんな事態に巻き込まれるとは」
「いえ、ガンゴードさんのせいではないですよ。こういう不測の事態は、いつどこで起きてもおかしくは無いですって」
【ええ、そうですよ。予想が付かないようなことは、世の中ありますからね。私も昔、予想外の事態に巻き込まれて…なんやかんやで兄蜘蛛が姉蜘蛛に変わったアレとか‥‥、いえ、これちょっと関係ない話でしたね】
「関係ない話っていうけど、その内容に何があったのか気になるんだけど」

 さらっとやばそうな話も出てきたが、今は警戒するとき。

 ハクロ達に任せるのも良いが、うっかり眠ればいざという時に対応に支障が出る可能性がある。

 そのため、寝ずの番を過ごす羽目になりそうであった…


「ふわぁ…やっぱ、眠いかも…」
【大丈夫ですよ、ジャック。あなた一人ぐらいなら寝ても。ここは私たちに任せて、ゆっくり眠ってください】
「そうだな。子供はもう寝る時間だ。ここから先は、我々大人組に任せてもらおう。…一応聞くが嬢ちゃんは大人だよな?」
【ふふん、私はしっかりとした大人…いえ、モンスターなので、成体ですよ。脱皮したりしますが、永遠に成長するだけです】

…そういえば、蜘蛛って脱皮するっけ。ハクロの脱皮か…え、どういう感じになるの?









…ハクロの脱皮する姿を想像しようとして、思いつかないジャック。
 そんな思いがある中で、村の近くにあったとある林の中では…ボボン村の村人たちが運ばれていた。

 全員おとなしく、いや、深い眠りについた状態で、体に力が入っていない。
 命が無くなったわけではなく、眠らされているだけだ。

 そんな彼らをえっさほいさと運ぶのは、小さな切り株のような植物たちで、苦労しながらも目的地へ向かって歩んでいく。
 痕跡を消すために、後方で地面をばさばさと葉っぱではたきつつ、一人ずつ傷つけることが無いように、丁寧に運ぶのであった…
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